生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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勇者たちとの戯れ

教師の仕事ってのは何も勉学だけじゃない。

メンタルヘルスケアだっけ?そんなのもやらないといけない。

中学生の時期は精神的にも不安定になりやすい上、勇者もしてるんだから余計だ。

 

「特別休暇、ねぇ…」

 

オレは指示書を見ながら呟く。

学生だから土日は基本休みだが大社からの要請で順番に休ませるようにと指示された。

ただ、高嶋だけは戦闘中精霊の力を使用したらしく入院中。

まぁ日程も勝手に決められていたし全員に配るだけだったが。

 

「今日は誰だ…って郡か」

 

5人の中である意味注目している勇者。

母親は天空恐怖症候群の末期寸前、父親はパートの仕事をしてるがギリギリの生活に違いない。

家庭環境が歪だと育つ子も歪んじまう。

子供ってのは親の背中を見て育つからな。

そんな実家へ帰省のため高知へ向かったとの旨を受けた。

止める理由もないが休みにならないのではと思ってしまう。

とは言え他人の事情に首を突っ込むバカはしない。

その代わり別のアプローチをさせてもらおう。

 

郡が帰って来た翌日、2度目の侵攻が起こった。

授業中に止まるものの教卓で本を読んで質問を待っていたから姿勢は楽できた。

4人がフッと消えるのを確認し深く息を吐く。

バレないかヒヤヒヤするなこれ…

目の前には彫像のように固まった上里がいた。

視線を下げ問題を真剣に解いている。

顔に耳を近づけ呼吸音を聞こうとしたが無かった。

 

「本当に止まってるんだな」

 

てことはオレの寿命段々短くなってるな。

何歳まで生きるかにもよるがこの程度微々たるものだが気にしてしまう。

いつ帰ってくるか分からないし席に戻り続きを読み始める。

 

時が再始動し全員が無事に帰って来たのを確認し、授業を再開した。

高嶋がどうやら病室から抜け出したようで入院が延長された。

正義感強いとは思ってたけど何やってんのやら…

昼飯後、戦闘訓練が無くなった旨を聞き郡を仕事部屋に呼び出した。

 

「疲れているのに悪いな」

 

郡と向かい合うように座る。

 

「大丈夫…です」

 

「無理に敬語じゃなくていいぞ。話しにくいだろうし」

 

「じゃあ遠慮なく」

 

姿勢を崩し背もたれに寄りかかった。

本音を聞きたいのに強張ったら意味ないしな。

 

「早速だが郡の戦う理由を教えてくれ」

 

「ストレートに聞くのね」

 

「当たり前だ。面倒な遠回りは嫌いだからな」

 

「…私が勇者だから」

 

「ほう…」

 

思わぬ回答に驚いてしまった。

出会い初めた時、塞ぎこんでて戦うのが嫌だと言っていた。

 

「なら勇者とは何をする役割だ?」

 

「人々をバーテックスの脅威から守る」

 

「それだけか?」

 

「ええ、それだけよ」

 

回答として点数つけるなら50点くらいか。

前のめりに座り直し顔を正面から捉える。

 

「理由に関して否定はしない。だが勇者の捉え方には異論を唱えるな」

 

「どうして?」

 

「お前は兵器じゃない。言われた通りの事をするだけじゃ人口知能でも出来る」

 

他人だったりプライドだったりと様々だが何かを守りたいという気持ちはある。

無いとか言ってるやつは気づいていないだけ。

 

「郡は郡だ。お前を本当に見てくれる人の為に力を振るえ」

 

「見てくれる人…」

 

オレの見立てじゃ1人しかいないがどうなんだろな。

考えこむように目線をそらしている。

本音を少し聞けただけ良しとするか。

 

「こんな所だな、もう帰っていいぞ」

 

あんま長居させても余計疲れるだけだしな。

郡は鞄を持ち部屋を出ていった。

しかし勇者が理由とはな。

変な解釈されなきゃいいが。

 

今日は白夜と一緒に散歩をしている。

ただ歩いている訳ではなく偵察も兼ねている。

主に大社が関係している施設を中心に周り、裏口の有無や警備の数を頭に叩き込む。

覚えきれなくても動く記憶媒体と化した白夜が補ってくれる。

細かな点も瞬時に気付いて覚えてくれるから便利。

本日のターゲットは大社掛け持ちの病院。

勇者を神が仕留めそこなった場合ここで潰す可能性が高いから。

今後中は使うかもしれないから外観を把握しておく。

 

「急患はあそこか。少し正面玄関から離れてるな」

 

ブラブラと歩きながら小声で会話をする。

病院の裏がやけに静かだったからかなり抑え気味だ。

 

「地下もあるよ」

 

「VIP用かもな。看板には何も書いてなかった」

 

「特別な人ってこと?ならそこに運ばれるかも」

 

「大体把握したな。撤収するぞ」

 

そそくさと病院を後にしショッピングモールへ向かう。

ここは偵察とかじゃなく純粋に飯を食べにきた。

 

「何食べたいか?」

 

看板の前で白夜に聞く。

フードの隙間から見える黒い目がキョロキョロとせわしなく動いている。

 

「うーー………」

 

「できればお早めに決めて欲しいんだが」

 

「待って。ハンバーグ、ラーメン…ううぅ…」

 

めっちゃ悩んでるよ。

お昼時だからどんどん人が集まってくる。

 

「ったく、今日はカツにするぞ」

 

白夜の手を連れカツ屋の前に立たせる。

どうせここでも悩むのは確実。

 

「この定食にしろ。複数の味が楽しめるんだから」

 

意見を殆ど聞かず食券を2つ買い、カウンターで呼び出しアラームと引き換えに渡す。

後は席を確保し呼ばれるのを待つだけ。

 

「で、どうしてここにいるんだ?」

 

向かい合うように土井と伊予島が座っていた。

席を探して歩き回っていたら見つけたし空いていたから横入りした。

 

「ただの買い物だって。てかそのセリフこっちが言いたいぞ!」

 

2人の横には紙袋があった。

 

「飯を食いに来ただけだ。そうだろ白夜」

 

「うん。勝手にちはやが決めた」

 

余計な一言いいやがって…

そもそも悩んでいるのが悪いんだろうが。

 

「お2人さんは何頼んだ?」

 

「シンプルにうどんにしました。トッピングは違いますけどね」

 

体はうどんで出来てるってか?

もうこれ以上考えても無意味だろな。

2人のアラームが鳴り先に取りに行った。

 

「うどん…ちはやおかわ―――」

 

「早いしダメだ」

 

「ぐううう…」

 

その顔何度見た事やら。

 

「何だ何だ。そんなに食べたいのか?」

 

「うん!食べたい!!」

 

「食い気味だね…」

 

「仕方ないなぁ。これからタマのことを先輩と呼ぶなら食べさ――」

 

「せんぱい!!」

 

「言うの早いんだよ!最後まで聞けぃ!」

 

そうこうしてたらこっちのも鳴り始めたから白夜を無理やり立たせ取りに行かせる。

不機嫌なのは食べる前だから。

何でもいいから食べさせちまえば

 

「はあああ~…美味しい~…」

 

御覧の通り上機嫌に。

 

「幸せそうに食べてますね」

 

「これが白夜だ。覚えときな」

 

「うどん欲しいか?」

 

「いらない!ハムハム…」

 

「えええ…」

 

カツを頬張りながらご飯をかきこむ。

上品の欠片も無い食べ方だけど見てて爽快だ。

 

「しかし人気者は違うな」

 

既に2人が勇者なのはバレている。

当然店の対応も周りの反応もスター級。

正直うざく感じるが仕方ない。

 

「なー。ゆっくり食べたいのに集中できないんだよ」

 

「撮影とかされると厄介ですし」

 

「まぁ今はオレがいるし問題なかろうさ」

 

写真を撮りたい奴は勇者だけを求めてるに違いない。

オレが写るには一向に構わんが白夜は前例もあるから警戒しないとな。

その後4人で談笑し、食べ終わり次第解散となった。




これで縁ができたな!!(強引)
本編見たらこの交わり入れなきゃダメでしょ。
しかものわゆの方も順番的に合ってるし。
ほんわかムードどこまで続くんでしょうね…
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