生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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反抗準備

バーテックスの襲撃を幾度目を終えたある日、巫女の神託により当分無いことが判明した。

白夜も神様にデータを集められたから作戦を練り直すと言われたらしい。

長めの休暇が確定された事から大社が温泉旅館を貸し切り、修学旅行さながらだ

旅館まではオレの送迎で行った。

 

「あ"あ"あ"…これよこれ…」

 

夜空を眺めながら露天風呂に肩まで浸かる。

少し暑いが1月下旬で寒いのもあり、肌感覚だけどちょうどいいくらい。

 

「スイ〜…」

 

隣で泳ぐ白夜もオマケで連れてきた。

置いていったら文句言われそうだったから大社に金払って許可貰った。

まぁぼったくられた気がするがどうせ潰すんだと考え目をつぶった。

 

「先生に先を越されてしまったな」

 

乃木と上里が入ってきた。

白夜の首根っこを掴み横に座らせた。

 

「なんだ、MVPに一番風呂を譲れってか?」

 

「別に気にしてないさ。ふぅ〜…身に染みるな…」

 

「顔蕩けてるぞー」

 

「この顔レアですよ」

 

「マジか。白夜あの顔覚えとけ」

 

「ん。これ役に立つの?」

 

「ただの思い出だ」

 

「思い出…なるほど」

 

ジーっと乃木の顔を見つめてる。

そこまでガン見しなくてもいいのでは…

すると露天風呂のドアが勢いよく開いた。

 

「もう入ってやがる!一番風呂目指してたのに。クソゥ…こうなったら!」

 

土井が飛び込むように入って来た。

温泉をプールと勘違いしてるのか。

 

「貸し切りだからいいが他所でやるなよ」

 

「分かってるって!そこまで馬鹿じゃない」

 

「本当かな…」

 

その後、高嶋、郡、伊予島と続いて入る。

さっきまで広く感じていた風呂も今は狭いと思うくらいだ。

 

「さてさて…身体チェックの時間と行こうか」

 

手をワキワキさせながら土井が上里に近づいていく。

身の危険を感じ後退りをしている。

 

「タマっち先輩、温泉は人の体を調べる場所じゃないんだよ!」

 

伊予島が上里の前に手を広げ立ちふさがる。

むっとした顔を浮かべたものの伊予島の体に焦点を合わせた。

 

「あんず…よく見たら、お前も成長してないか?」

 

「え?」

 

「許せーんっ!」

 

タゲが変わっただけでやるのか。

仲いいしいどうせ毎度やってんだろな。

 

「何やってるの?」

 

「持つ者と持たざる者の醜い争いだ」

 

「力のこと?」

 

「魅力ってやつだ。白夜はもう持ってるから気にするな」

 

「分かったー」

 

タオルで肌を隠しているが目立った怪我は無さそうだ。

戯れ程度とはいえ危なっかしいが。

 

「また休みもらえたら今度は花見行こうよ!」

 

「それはいいな。丸亀城の桜は綺麗だからちょうどいい」

 

「場所とか上への報告はしてやるから楽しんでこいよ」

 

こういう面倒なことは大人の役割だ。

それに裏で頑張って手配して報われるのが私にとって残された数少ない喜びの1つだしね。

 

「先生と白夜ちゃんも一緒ですからね」

 

「ん?はくやも?」

 

「そうですよ。皆で楽しまなくちゃつまらないですよ」

 

「提案ならタマに任せタマえ!大社をギャフンと言わせてやる!」

 

「全く、何処までもお人好しなんだから…」

 

少しこころが暖かくなったものの表情を崩さず直ぐに切り替える。

この休暇が終えれば難易度は上がるだろう。

その時に有耶無耶にしていた壁をどう乗り越えるか。

実に楽しみだ。

 

その壁はすぐに現れた。

物量で物を言わすのかと思いきや先陣を切った乃木を囲い込み集中砲火を浴びさせた。

途中、高嶋が合流したがかなり無理をしたらしい。

戦闘終了後大社管理下の病院に運ばれ今にいたる。

表向きは心配するが裏側ではにやけが止まらなかった。

やっと神様もまともに動き始めたんだしな。

指示はまだ来ないがそろそろ行動しないと。

 

「オレに戦う力をくれ」

 

白夜に神様と話がしたい旨を伝えたら了承を得た。

 

「なぜ戦う?」

 

声は白夜なんだが重みが違う。

頭の上から話しかけられてる感じ。

 

「いずれ戦う事になるが神様の力を得ても自分のものに出来なきゃ意味が無い」

 

学力は自己完結するが戦力は経験値が物言う。

相手は歴戦の勇者、対人経験が無くてもそれなりに強い。

前に武術やってればまだマシだったんだろうけど。

 

「人間は面倒な生き物だ」

 

「面倒だから生きてる意味があるんだよ」

 

「生きる意味か。まぁいい、貴様の判断を信じよう」

 

神様は手を前に出してきた。

前回同様、頭を合わせると再びあの感覚に陥る。

しかも長いときた。

これは少々辛いが他人の戦闘データを移してるなら仕方ない。

やがて神様は手を離した。

肉体は変わっていないがパンチを軽くしてみるとキレがあった。

 

「確かに戦う力は得た。ここからはオレの技量次第か」

 

「うう…」

 

パタリと白夜が床に倒れ込んだ。

 

「白夜!」

 

「えへへ…ごめん。疲れちゃった」

 

「お疲れ様。今日は早めに寝なよ」

 

「うん。そうする…」

 

お姫様抱っこでベットまで運び寝かせた。

すぐに目を閉じ寝息をたて始めた。

 

「さてと…」

 

今回与えられた能力を整理する。

頭の中にゲームのステータスのようなイメージが出る。

格闘・剣技・射撃のいろはから応用、各武器の仕組み、そして作成。

 

「作成?」

 

道具もないのにどうやって作るんだ。

イメージでポンって出てくるやつか?

説明無しと、仕方ない。

 

「来いっ!」

 

日本刀のイメージを持ちながら手を前に出す。

掛け声は気合いを入れる感じ。

しかし変化は無い。

 

「めんどくさがり屋はどっちなんだよ…全く」

 

頭を掻きながら胡座を組む。

武器なきゃ意味ないんだろうが。

腹減ったしなんか作るか。

白夜は寝てるしオレだけでいいや。

男飯の定番、牛丼にするか。

包丁を出そうとしたらたまたま横に置いてあった。

 

「あ?」

 

さも当然のようにあったもんだから反応が遅れた。

よくよく見ると黒い渦から包丁の柄だけ出ている。

恐る恐る抜くと何の変哲もなさそう。

しっかりと研がれているから軽く擦るだけで切れるだろな。

問題はなんで出てきたかだ。

さっきとの違いは…

 

「目的か」

 

単に出すだけじゃなくその使用方法、目的を明確なしなくちゃならない。

包丁を置き、射撃練習をするイメージを浮かべてみる。

すると手元にハンドガンが現れた。

いいけど生成方法どうにかならんのかね。

マガジンをスライドさせると弾が入っていた。

見よう見まねに近いが脇を閉め銃を目元近くで斜めに構える。

本物なんて持ったことないのに手にフィットする。

 

「悪くない…」

 

いらないと思ったら黒の粒子となって手から消えた。

終い方が簡単なのはいいか。

機会を待つとするとしよう。

 

戦闘で全員が負傷したから休みとなっていた。

勇者間でいざこざが発生した上、入院中の高嶋に本部へ呼び出された上里と場を仕切るツートップが居ないんじゃ重くなるのは見えていた。

見えていたけどその発生源があまりにも重すぎた。

授業中もペンが1ミリも進んでないし、休み時間も固まりっぱなし。

 

「はぁ…」

 

「なぁ、アイツ相当へこんでるけどかなりやられたのか?」

 

「やられたというよりひなたが居ないことのショックだろ」

 

「あー…」

 

バーテックス襲撃前からずっと一緒だったんだっけな。

そら依存もするわ。

 

「しかし上里が帰って来るまでまだ時間はある。どうにかせんと」

 

「先生、私に任せてもらえませんか?」

 

伊予島が立候補してきた。

正直オレが立ち直らせてもこのタイミングじゃメリット無い。

それに勇者の問題は勇者が解決すべき。

教師は引っ込んどくに越したことない。

 

「分かった。乃木を頼む」

 

頷き乃木の所へ行き何か話した後、立ち上がり教室を出ていった。

残されたのはオレと土井だけ。

 

「行かないのか?」

 

「いや、行っても邪魔なだけだろ。タマはここでドカりと座って待つとする!」

 

「とか言って内心ドキドキなんじゃないか〜?愛しの伊予島が乃木に取られる〜ってな」

 

「そんな事ないだろ!若葉にはひなたがいるしそんな馬鹿なことがある訳…」

 

「フッ、恋心ってのは隠すもんだぜ」

 

「恋っ…心…!んあああ!!待ちやがれーー!」

 

慌てるように2人の後を追うように教室を出ていく。

ホントチョロいな。




戦闘参加出来ないんで熱いシーンをバンバンカットする作者。
単に書くのが面倒とかじゃないんですよ?
いやマジで。
それと男主人公じゃないからこそ書ける合法的な入浴シーン。
イチャイチャ感出てるかは分かりませんが満足して欲しいです!(無理やり)

次回は動乱を起こしたアイツが現れます。
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