その後乃木のメンタルと高嶋の怪我が治り団結力が上がった。
教師からだと微笑ましいが敵として見るなら焦る。
同時に白夜から伝えられた『超大規模作戦』。
この間に大社施設を襲撃するよう神託があった。
ようやっと暇な時間が消える。
とはいえ本庁を潰すのはあまりに露骨。
巫女の宿舎も友香がいるしパス。
「んー…」
喫茶店でコーヒーを飲みながらこれまで集めたデータを眺める。
報道されても消される所がベスト。
「お困りですか?」
声を掛けられたが聞き覚えが無い。
見ると茶髪でメガネをかけた男性が立っていた。
見た目的に20代前半ってとこか。
「人違いじゃありません?」
「いえ、合ってますよ。黒花千早さん」
「お前、何者だ?」
目付きを更に鋭くし睨む。
名前を知るのはごくわずかだ。
大社の関係者とも思えない。
「そう警戒しないでください。立ち話だと辛いので前座ってもいいですか?」
「まず名乗る方が先だろうが」
「おっと、失礼しました。僕は『暁』。本名では無いですがご了承ください」
暁と名乗る男はオレの前に本当に座ってきた。
コイツメンタル強くないか。
「何用だ」
「依頼主からあなたのサポートをしろと命じられましてね」
「生憎と手は足りてる」
「そう邪険にしないでください。僕もあなたと同じ裏切り者なのですから」
その言葉を聞いた時、ピタリと手を止めてしまった 。
「裏切り者?」
「はい。正確には残存する全人類のですが」
「待て。お前の依頼主は…」
暁は人差し指を天井に向けた。
この話の流れ的に該当者はただ1人。
「マジかよ…」
「大マジだよ。まだ信頼してくれないかな?」
「いや、信頼するさ」
というか信じるしか無いだろ。
それにしても接触方法が大胆だ。
周りには他の客もいる。
多少はぐらかすとしても内容が物騒になるってのに。
「それは良かった。さて、キミがたてている計画。いいとは思うけど僕なら…」
パソコンを取られスクロールやら打ち込みをしている。
オレは黙ってコーヒーを飲みながら見てるだけ。
「ここをおすすめするね」
返されたパソコンの画面にあったのは製薬会社。
しかも大手ではなくマイナーなところ。
「ここは?」
「大社が新薬開発のために経営している所だよ。HPが普通なのは隠れ蓑にしてるから」
「そんな根拠どこにある。しかも新薬なら問題ないはずだ」
「根拠は言えないけどここでは勇者の身体負担を減らす薬を作ってる」
「何…?」
「勇者だって毎回入院させてれば体の負担が大きくなり治りが悪くなる。だから外部治療によって治りを早くさせる」
そんな話一度も聞いたことがない。
しかも真実だとしたら彼女たちは兵器に、いや世界を動かす歯車に成り下がる。
「こんなことって…」
「驚くよね。僕もスカウトされ人道を外れたとしても許せないものはある。どうだい?一緒に滅茶苦茶にしようじゃないか」
暁はオレの顔を覗き込むように近づいてきた。
眼鏡越しだがその眼にはやる気以外の何かがあった。
「分かった…その提案に乗ろう」
「物分かりがよくて助かるよ。場所はこことは違うから合図が来たら連絡するよ」
しぶしぶ暁と連絡先を交換し帰っていった。
「なぁ、暁って男を知ってるか?」
帰ってきてそうそう白夜に聞いてみる。
「あかつき?うーん…聞いてない」
「顔覚えてるから覗いてみるか?」
頷いたのを見てオレは頭を差し出した。
記憶を覗く時は白夜と額を合わせるようにする。
理由は無い、たんに白夜がそうしたいって言ったから。
「この人、使徒だ」
「使徒?」
「神の使い。ちはやと同じだけどはくやの力も持ってる」
つまり、神様と直接会話できると。
自己完結してるのは羨ましいがひねくれそうだ。
「共犯者か。最悪だな」
頭脳派というべき性格だけど鼻につく。
上手くやれ気がしない。
「というか知ってたなら言ってくれよ」
「今来た」
「おいおい…」
報連相が出来てないって。
とりあえず待つしかないか。
そして来る超大規模作戦当日。
暁の指定したポイントは山中にある横長の倉庫。
整備が行き届いていてるのに周りには木が生い茂っている。
「本当にここなのか?」
「そうだよ。起爆させるから下がって」
鍵の部分にC4をしかけ物陰に隠れる。
まもなくして爆音と共にドアが吹き飛ぶ。
鉄製なのか物凄い音がした。
「爆弾なんてどこで拾って来たんだ」
「支給品。戦いの神様だからなんでも持ってるんだって」
「ハッ、なら核爆弾寄越せっての」
「それじゃつまらないよ。とことん苦しめてやらないと」
「…それもそうか」
中に入ると地下への階段があった。
そこを降りると研究室と言わんばかりのごちゃごちゃした部屋が広がっていた。
白衣を来た人がパソコンを見てたり、如何にも怪しそうな薬を調合している。
時が止まっているからシュールに見えるけど。
「これがサーバーか」
メカメカしい機材に向かってライフルを乱射する。
今回の目標はあくまでデータの破壊。
元が無ければいくら優秀でも修復するのには時間がかかる。
保険で各パソコンをハンドガンでチマチマ撃ち抜く。
跳弾とかして周りに怪我させたら隠密の意味無くなるし。
「こんな所か。そっちはどうだ?」
「粗方壊し終わったとこ。最後は…」
奥にあった所長室と書かれた扉を蹴破る。
ここだけ豪華なつくりとなっていて奥には小太りのおっさんが座っていた。
「こいつが元凶か」
こんな奴にアイツらを駒にさせられるのか。
「…怖い顔してるけど大丈夫かい?」
「あ、あぁ…つい感情が出ちまった。すまん」
「無理もないよ。この顔気持ち悪くて吐き気を感じるから」
暁は何のちゅうちょも無く男の額を撃ち抜いた。
あまりに自然の動きに見入ってしまう。
「これで完璧。どうせ隠蔽されるしこのくらい問題ない」
男はリラックスした顔を浮かべているが血が後方に吹き出している。
気づいたら死んでるとか恐怖でしかない。
「苦しめるんじゃなかったのか」
「本音はしたいよ。ただやり過ぎてバレたら元の子も無いから」
このタイミングで溶けたら現行犯逮捕確定だから早めに撤収する。
市内まで降りてきたタイミングで解除され街が騒がしくなる。
「ミッションお疲れ様」
「お疲れさん。手際がいいんだな」
「キミとだからだよ。今後も上手くやれると思うんだけどね」
「そりゃ良かった」
そのまま何事も無く解散した。
どうやら勇者の方はかなりの量がやってきていて2、3時間くらい戦ったらしい。
それなのに大きな怪我なく帰ってきたのは絆所以か。
ともかく実力は上がってきている。
サシの殺り合いも視野にいれとかないとな。
オレはイメトレがてらに剣の素振りをする。
最も警戒すべき相手は乃木だ。
彼女の戦闘スタイルは対人寄り、練度で言えば完全に上位。
正統法じゃ勝算は低い。
となれば想定外のことをするだけだ。
「と言ってもアイツ対応しそうだなぁ…」
そんなタラレバ考えてたらキリない。
今は体に知識を叩き込むだけだ。
あのクソ野郎が介入してきました…
本編の因縁を回収しないと行けないのでね。
まぁ嫌な予感しかしませんけど!