生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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別れ

勇者と巫女による壁外調査が決定し、実質的な長期休暇となった。

お土産話期待してるがどうせ話せないだろう。

 

「外は食べきったよ。いたらすぐ気づくもん」

 

白夜がこう断言してるから。

立てこもってるやつを避難する時見たけど破られたか自滅したかの2択だ。

そしてこの調査の最終目的地は諏訪。

既に消えた地に行くとは滑稽だ。

四国を飛び出して数日、オレは巫女たちが通う学校へ向かった。

理由は友香と久しぶりに面会するためとアイツに会うためだ。

 

「おや、城から客人が来るとは聞いたがアンタとはな」

 

廊下で寄りかかりながら待っていたら白衣を来た女性が話しかけてきた。

 

「よう、ロクデナシ。タバコはやめたのか?」

 

「鍵かけてしまったさ。お前もその口調治さないのか?」

 

「それはお互い様だろうが」

 

隣に寄りかかってきたのは烏丸久美子。

高嶋友奈を導き、巫女の教師を勤めている。

歳上だが立場が同じ以上敬語はやめた。

しかも白衣と黒のロングコートって色違うだけで似てるし。

 

「それで何用なんだ。こっちは暇じゃないでな」

 

嘘つけ。オレと同じ手抜き授業してるくせに。

 

「壁外調査についてどう思う」

 

「…ただのヘイト解消だろな」

 

「だろな。私もそう思っていた」

 

壁内で不安に感じている市民が大勢いる。

勇者の活躍だけじゃ実感も無くヘイトが溜まるばかり。

そこで外の様子を見に行かせることで希望を持たせる。

 

「バカのやる事は理解できない」

 

「アイツらは自分の地位が守られればいいんだよ」

 

「私欲の為とはいえつくづく度し難いな」

 

こういうクソ野郎は速攻で殺すに値する。

なのに手を出せないのが辛い。

 

「そろそろ行くわ。あと、西園寺は借りてくぞ」

 

「そっちがメインか。まぁいい、好きにしろ」

 

オレは勢いをつけ姿勢を但し歩きはじめる。

 

「あばよ」

 

呟くように言いオレは離れていった。

なんか話しかけてきてたがガン無視。

意味はあるがどう捉えるかは本人次第だからな。

 

待合室のようなところに友香が座っていた。

雑誌や新聞が置いてあったが黙ってテレビを見ている。

 

「よっ」

 

「最近静かだと思ってたのになんですか?」

 

「忙しかっただけだ。白夜が会いたがってたぞ」

 

「行きたいですけど遠征が始まったんじゃ無理ですよ」

 

「だよなー」

 

向い合うように座る。

誰かと話す時は対面が1番よ。

 

「お前の実家について聞きたくてな」

 

その言葉を聞いた瞬間、友香がムッとした顔をする。

地雷ネタなのは知ってるが作戦の為だ。

 

「実家に何の用ですか…」

 

「確か山1つ持ってるんだよな」

 

「そうですけど」

 

「そこにある小屋貸してくれないか?」

 

パンと両手を合わせ頼み込む。

顔も申し訳なさそうにしとく。

敷地内にあるのはリサーチ済み。

無理なら代替地はあるし諦める。

 

「は、はぁ!?」

 

表情が驚きに変わる。

大声だしたから周りの巫女がオレたちを見てる。

 

「なんでそんな突拍子も無い話が出てくるの…」

 

トーンを抑え混乱そうに聞いてくる。

 

「こちとらも切羽詰まっててな。人目につかないとこが欲しいんだよ」

 

そんな怪しいそうな目をするんじゃない。

少なくてもそこではなんもせんよ。

 

「分かったよ。コイツの練習だ…」

 

コートの隙間からチラリとハンドガンを見せる。

 

「本物ですか」

 

「そうさ。この練習場所が欲しくてな」

 

「…なんで持ってるんですか」

 

「勇者を守るためだ。最近物騒になってるからな」

 

当然大嘘だ。

単にこれまでの信頼を逆手に取るだけ。

 

「分かりました。勇者様に関わる話ならほっとくわけにも行きませんし」

 

「助かる〜!やっぱ持つべきは友だな!」

 

「友達と思ったことはありません」

 

「辛辣だなぁ。とりま手配早めによろしく〜」

 

オレはヒラヒラと手をなびかせながら部屋を出ていく。

鍵を手に入れたら作戦を始めなければ。

 

暁は独断で大社施設に殴り込みをしているらしい。

時が止まってなかろうと関係なく行き破壊行為を続けている。

一緒に仕事をしたのは使徒としての覚悟を見たかったんだろう。

あの時からオレは一度も襲撃をしていない。

と言ってもサボりではなく、それなりに動いている。

友香から小屋の家を貰ったのは会ってから3日後。

勇者たちが遠征中なのはかなり大きい。

 

「それじゃ始めようか。白夜、準備はいいか?」

 

オレはハンドガンをまじまじと見ながら白夜を見た。

 

「うん…本当にいいの?」

 

白夜が念をおしてくるよう聞いてきた。

 

「どうした?白夜らしくないな」

 

「だって、ちはや辛そうだもん…」

 

「…あーあ。バレちまうかぁ…」

 

今も心が若干揺らいでいる。

アイツらとはお別れしてないんだからな。

 

「こうでもしないとオレは無能になっちまう。腹括るしかねぇだろ」

 

安全装置を解除しこめかみに突き付ける。

深く深呼吸をして無理くり心を落ち着かせる。

 

「少しの別れだ。また会おう」

 

指が最後まで震えていたけどお構いなく引いた。

目の前が電源の切れたテレビのように暗くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、家に来るよう伝えておいた大社職員に死体となったオレは発見された。

頭を銃で撃ち抜かれ即死だったとさ。

凶器及び弾は現場から持ち出され、同居していた少女も行方不明。

警察もお手上げ状態といった所。

 

『シナリオとしては完璧。素晴らしい手際の良さだ』

 

「そいつはどうも」

 

オレは暁と電話をしながら椅子に深く腰掛ける。

友香の手配して貰った小屋…ではなくその近くにある洞窟。

小屋を借りるのはただのフェイク。

事情聴取で言ったのか警察が来てるのを確認してる。

 

『キミも大胆なことするね』

 

「人間やめるんなら形から入るもんだろ」

 

見た目は肌が白くなっただけで、契約時となんら変わらないが中身はバーテックスに入れ替わっている。

お陰で衣食は困らないし素の状態でも勇者とタイマン張れるくらいはなった。

ただ、神様との契約がかなり強固になったらしい。

 

『キミの死を知ってメンタル壊すのも目的かい?』

 

「あぁ、勇者システムは感情で大きく変わる。地獄を見て来た後なら更に効くだろう」

 

『歪んだ顔を拝むのが楽しみだね。僕も行きたいがやる事が多くていけない。感想を待ってるよ』

 

連絡を終えふぅと息を吐いた。

いちいち癇に障ること言うな…

 

「ちはや?」

 

「大丈夫だ。それよりもコイツの改修を頼む」

 

通話に使用していた携帯を渡す。

時代遅れのガラケーと呼ばれる機種。

神様が勇者システムをコピーし作成した新たな力。

一度変身したがあまりにも火力が強すぎて制御が出来なかった。

刀の一振りで海を割るとかモーセすらも腰ぬかすだろ。

 

「いいけど機械苦手だよ?」

 

「変えるのはそこじゃない。契約主を白夜にする」

 

「はくやに?なんで?」

 

「これは人が扱える力を大幅に超えている。それを望むんだろうがバランスがなってない」

 

「つまりちはや仕様にすればいいんだね。任せて」

 

携帯を受け取り、奥へ行こうとする。

白夜が作った結界がありそこで神聖な作業を行えるようになっている。

一度入ったが嫌な圧を感じて気持ち悪くなった。

 

 

「なぁ…」

 

「ん?」

 

そんな白夜をオレはふと引き留めた。

自分でも何で止めようとしたのか分からないが言ってしまった以上仕方ない。

 

「もしだ…もし、オレが神様を裏切ったら白夜はどうする」

 

「どうするって、はくやは…」

 

言い淀み目が泳いでいる。

神様は生みの親でオレは育ての親みたいなものだ。

どの道を進もうとどちらかを裏切るのは確実。

 

「酷な質問して悪いな。今は頭の片隅に入れといてくれ」

 

オレは無理くり笑顔を作り白夜を奥に追いやる。

困惑させといてシステム作れとか酷だろオレ…

 

葬儀そのものは終え、オレの肉体は集合墓地に埋葬された。

両親が行方不明の時点でこうなるとは思ったが墓地に名前が無いのは空しい。

既にオレの墓は拝んでいる。

こうして影に隠れてるのはただ一つ。

 

「会いに来るのが遅れてしまったな…」

 

乃木が献花してくれた。

疲れているだろうのに来てくれるなんて嬉しいな。

 

「皆を誘ったんだが都合が合わなくて私1人だけだ」

 

分かってるわ、どうせメンタル危ないやつもいるんだろうし。

 

「外の世界に生存者はいなかった。諏訪も行ったが念入りに破壊されていた」

 

それは初耳だ。

恨みでも晴らしたのかね。

 

「先生…あなたの身に何があったんだ…」

 

握こぶしを震えながら強く握っている。

 

「私たちに関わったからか…?なんで先生が死ななくてはならなかった…」

 

独り言を墓石に向かって言っている。

当然答えないし答えられない。

オレは黙って聞くだけだ。

 

「…今度は皆でちゃんと来る。だから私たちの生き様を見ててくれ」

 

そう言い残し乃木は離れていった。

 

「全員で来る、か」

 

騒がしくなるがいい顔で来てくれよ。

死人の顔は見たくないからな。

 

周りの木々に花が咲き春の訪れを感じて来たその日。

やけに長い静止が終わった後、白夜が体をユラユラと揺らしながら出てきた。

感情が豊かになって来たとしてもこんな白夜は見たことない。

だから余計嫌な予感を感じる。

焦点が合っていない目を見ながらゆっくりと言った。

 

「たまことあんずが死んじゃった…」

 

洞窟内は水を打ったような静寂が響いた。




あの鬱展開を迎えてしまいました。
救済ストーリーならここで介入するのがセオリーですけど300年後に救うんで殺りました。
ハッピーエンドは見せたんでバットにしても問題ないでしょ!
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