生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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黒花千早は逆徒である

同気したバーテックスの映像を見終わったのか白夜はゆっくり目を開きふぅとため息をついた。

事前に死亡した情報は仕入れていたがその経緯を知りたかった。

 

「ちかげがわかばを襲ってて途中から服が消えてた…」

 

「資格を剥奪されたか。やはり精神の問題だったな」

 

村でオレが焚きつけたのが原因だ。

本来なら大社本部に郡を置いて行ってとんずらする予定だった。

まだ乃木が来るだけなら良かったが暁のデマを刷り込まれた状態とはな。

まさかオレの後任が暁とかじゃねぇだろな…

 

「残存勢力は2人。これじゃ負けちまうのも無理ないか」

 

「2人を救えるのはちはやだけ。ここで見殺しにすれば神様も裏切りを不問にすると思う」

 

「なーに言ってんだよ。これ以上掌を返す訳にはいかんだろ」

 

「だよね。もしちはやが神様につくって言ったらここで食ってた」

 

「物騒な事言うなよ…さすがに無いとはいえ怖いわ」

 

前回変身した時のデータを元に白夜が再度練り直した。

ポータルの不調も解消され、ハッキング?にも耐えれるようにしたらしい。

神域の争いは認知できんって。

 

「暁の対策は?」

 

「気休めなら…神様も教えてくれないしデータにも残ってない。完全に未知数だよ」

 

オレと同じ力を持っているかそれ以上か。

最悪、乃木に背後から切られそう。

 

「まっ、なるようになるか」

 

オレは寝袋にダイブした。

深く考えるのはやめだ。

分からないもんは分からない。

ぶっつけ本番、かかっこいってな。

 

「そんな気持ちで大丈夫なの?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「どっからその自信来るの?」

 

「経験値」

 

「ちはやのそういうとこ理解出来ない」

 

「案ずるな。誰も理解出来ん」

 

白夜がケラケラと笑っていた。

自然な笑みは初めて見た。

 

「周囲の警戒だけは怠るなよ」

 

「分かった。ここは絶対守る」

 

鍛錬出来ればいいが狭すぎて無理。

ここはイメトレ一択。

オレは目を瞑り集中する事にした。

 

イメトレをするはずが目の前にあったのは一面白い世界だった。

誰かに呼ばれたのか。

 

「悪いが謝る気は全く無い」

 

「別に責めに来たわけじゃないわ」

 

目の前に現れたのは制服姿の郡。

 

「なら何の用だ」

 

「御礼を言いたくて」

 

「ほう?乃木にけしかけといて御礼とはどんな風の吹き回しだ」

 

「確かに私は乃木さんを襲ったわ。けどその前に先生は私を受け止めてくれた。それが嬉しかったの」

 

オレは黙って聞き入る。

 

「結果は誰にも言えないくらい悲惨だけど私は最後の最後に大切な人の為にこの命を捧げたわ。悔いなんて無いくらいに」

 

「答えは得たのか」

 

「えぇ」

 

嘘偽りのない真っ直ぐな表情。

お前もそういう顔出来るんだな。

 

「そいつは、いいな」

 

フッと笑い返した。

人の成長ってのは自分も嬉しくなるもんか。

 

「先生はこれからどうするの?」

 

「決まってんだろ。世界を救うんだよ」

 

「でもその道は…」

 

「あぁ、いばらの道だろな。それも承知の上だ」

 

人を捨て神の奴隷に落ちたからこそなすべき務め。

世界から否定されたのに救うなんて偽善にもほどがある。

それがオレに出来るお前らへの罪滅ぼしなんだから。

 

「もし土井と伊予島に会ったら先生が謝ってたと言ってくれ。しばらくそっちには行けないからな」

 

「分かった。すぐに来たら容赦なくその顔面殴ってやるわ」

 

「そうならんようがむしゃらに生きてやるよ」

 

晴れ晴れとした気持ちを背負い再び目を閉じる。

 

 

ぺちぺちと何かを叩く音が耳元でする。

 

「ん…?」

 

目を開けると視界がぼやけていたが白い何かがオレの頬を軽くたたいている。

 

「どうしたんだ白夜?」

 

「最後の神託が来たの。『壁が強固になる前に焼却する。使徒よ目覚めの時だ』って」

 

来たか…

動かないはずの心臓が大きく鼓動するのが聞こえる。

 

「侵攻が始まると同時に紋章が起動するの」

 

白夜がオレの胸元を指さす。

そう言えば契約の証とは聞いていたが具体的な話はしてない。

 

「これが起動するとどうなる?」

 

「常時神様から監視される。行動だけじゃなく思考も全て」

 

プライバシーもクソもねぇな。

というかオレの思考読まれたら即処刑じゃん。

 

「戦う前から詰みかよ」

 

「監視そのものは無効に出来ない。だからその全てを偽装する」

 

「ハッキングか。しかし相手は神様だぞ?」

 

「神様だって完全じゃない。機械と同じ穴がある。そこをつく」

 

いつものぼーっとした白夜ではなく目を引き締め真剣な表情だった。

 

「はくやが同気して情報をかく乱させる。その間に皆を助けてあげて」

 

「待て待て、それだと白夜が前線に出る事になるぞ。いくら何でもそんな無茶は容認できない」

 

「もちろんここに残るよ。使うのはバーテックスだけ」

 

「…中継か」

 

白夜がコクリと頷く。

神様を人、オレたちをサーバー、バーテックスをカメラと例えるとサーバーを変え映っている映像の順序を変えるだけ。

人はスグに気付けず眺め続ける。

とんだ博打だな。

 

「どのくらい耐えれる?」

 

「分からない。けど撃退するまで耐える」

 

「頼んだぞ」

 

この状況を変えれるかは白夜にかかっている。

恐らく死ぬ気で頑張るに違いない。

オレも頑張らんとな。

 

そして運命の日がやって来た。

突然、右胸が熱くなり服の上から鷲掴みをしながら倒れた。

息が出来ないくらい辛い、汗も噴き出てくる。

 

「もう少し耐えて!」

 

白夜が背中をさすってくれた。

意識が飛びそうなくらい苦しかったが次第に治まってきた。

 

「はぁ…はぁ…終わったのか…?」

 

「これからだよ。監視の目は逸らしたけど戦いが始まってる」

 

息を整え何とか立ち上がる。

もう少し休憩したかったが時間が惜しい。

即座にポータルを展開する。

 

「行ってくる」

 

「行ってらっしゃい。待ってるよ」

 

オレは笑みを浮かべ中へ入った。

 

 

樹海に入るのはこれが初めてだ。

樹の海って呼ばれるのも納得するくらい一面根っこが生えていた。

後ろを向くと遥か先に黄緑色に輝く木があった。

 

「お前が神樹か…子供に世界救わして趣味悪いんだよ」

 

そして目の前には大型のバーテックスが集団で2人を襲っていた。

高速で動いていて視界に捉えるのがやっとだけど見覚えのない恰好をしてた。

禍々しい雰囲気を放っており足が竦んでしまいそうだ。

変身をし、分離し始めている節持ちのバーテックスへ一気に飛んでく。

 

「どおおりゃああああ!!!!」

 

武器を召喚せず拳に力を込めぶん殴る。

手っ取り早いのもあったがバーテックス用兵装がどこまで反映されるか知りたかった。

殴った箇所が抉れただけで再生しようと動いていたが胸と同じ紋様が浮かび灰になるようにボロボロと崩れていく。

火力抑えたとはいえ一撃で沈められるとは。

 

「次はお前だッ!!」

 

地面に着地し刀を空間から引き抜き、片っ端から斬りまくる。

流石に斬るだけだと再生の遅延程度が限界。

 

「はああああぁぁぁぁ!!!」

 

乃木が空から加速して突っ込んで来た。

オレの斬った部位を攻撃し倒していく。

 

「派手な登場だな…ってその怪我!?」

 

「気にするな…ゴホッ…」

 

隣に降り立った乃木は吐血を繰り返してるのか口元が赤い。

あの速さは戦闘機に乗っているレベルだ、内側にかかるGも相当だろう。

 

「…そうかい。郡の敵討ちはいいのか?」

 

「貴様を許す気は無い。だが、こうして戦うのなら…力を貸して欲しい…先生」

 

「…ハッ、また呼んでくれるとは嬉しいねぇ。そんじゃ期待に応えてやるよ!」

 

先ほど倒したバーテックスが破裂し中から小型があふれ出してくる。

その後方には人の口のようなバーテックスがいた。

オレは巨大な門を展開する。

中から出すのは全てを屠る一撃必殺。

かつてこの国で製造された遺物、45口径46CM3連装砲。

時代に置いてかれ飾りとかしたロマン砲。

 

「発射と同時に耳塞いで叫べ。内側からぶっ壊れたく無きゃな」

 

接続開始、目標遠距離型及び小型。

対頂点用徹甲弾装填。

誤差修正、視界良好、発射可能。

 

「これが日ノ本の力だっ!てええぇぇぇぇ!!」

 

雷が落ちたような轟音が響く。

地面が反動だけで揺れる。

放たれた3つの砲弾は小型を次々と貫き目標へ飛んでいく。

遠距離型が口から大量の光の矢を放つも止めることは出来ない。

着弾と同時に爆発し爆風で周りの小型が消し飛ぶ。

アドリブでやってみたがまさか弾を入れ替えるだけで有効打になるとは。

維持が辛いから紫の光にして終う。

 

「次は…っ!!」

 

何かが見えた訳じゃないが横方向に飛び跳ねるように避けた。

ほぼ同時に居た場所に赤黒い光が飛んできた。

 

「凄い反応速度だ。今のは取ったと思ったんだけどね」

 

「暁ッ…!」

 

樹海をスーツ姿で歩いてきた。

両手には大型の2連装ライフルを持っている。

 

「もう1人は既に処した。残るは彼女だけだよ」

 

「貴様…よくも友奈を…!」

 

「待て!今のお前に倒せる相手じゃない!」

 

刀を強く握り暁に向かっていこうとする乃木を肩を掴んで止める。

目は充血したように赤く、怒りに呑まれているのが見てわかる。

 

「そこをどけッ!そいつは皆の仇だ!!」

 

「お前は大型の相手をしろ!こいつはオレが仕留めなきゃいけないんだよ!!」

 

白夜が見た超大型が姿を見せた。

本来ならオレが対処すべきだが暁が現れた今、乃木でも勝てるのはアイツしかいない。

 

「どうしてだ!!」

 

「自分で蒔いた種だからだ!これはオレのケジメでもあるんだよ!!」

 

「っ!!」

 

戦場で、しかも敵の真ん前で言い合うとか自殺行為に近い。

だがここで止めなきゃ全滅は確実だ。

オレの思いに気付いてくれたのか乃木の目が元の色に戻っていく。

 

「…分かった。頼んだぞ…」

 

羽根を羽ばたかせ超大型へ飛んでいく。

 

「待たせたな」

 

暁の方を向くと特に変わった様子もなく立っていた。

 

「構わないよ。最優先対象は君なんだから」

 

「それじゃここで白黒つけようか」

 

オレは太刀を両手に持ち対峙する。

相手は遠距離兵装、近づけば有利になるが警戒はしとかんとな。

暁がノーモーションでライフルを放つ。

光弾では無く砲弾クラスの実弾。

反射的に刀で真っ二つに斬り、割れた弾はオレの横を通り抜け爆発する。

 

「そう上手く行かない、か…」

 

「当たり前だ。簡単にくたばってたまるかよ」

 

「では始めようか。人類の存在をかけた証明を」

 

これが最後の戦い、この世で出せる全力をぶつけ明日を作る。




全盛期黒花登場!
武装ベースはFateのギルガメッシュのように物量で殴るスタイル。
召喚コストはありますがゆゆゆ世界だと不死性も含めてチートな部類かなと。
そして暁との直接対決。
いつも通り本編裏での戦いですけどこんなやべぇ奴らに若葉着いて行けませんって。

あと、タイトルの「逆徒」って複数形で使われるらしいですけど「逆らった使徒」の意味でつけたのでよろしくお願いします。
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