生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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暁を堕とし明日を掴め

この戦いは誰にも知られる事はないだろう。

人の皮を被った化け物同士が争っているし、勇者たちも目の前の敵を倒す事で精一杯。

それでもオレはここに立つ理由がある。

例えどんなにくだらなくても、命を懸ける価値がある。

暁は光弾と実弾を分けながら近づけないよう立ち回っている。

オレはスペンサー銃を大量に展開し弾同士を撃ち消すように暁に迫る。

あちこちに吹き飛び爆音が鳴り響き続ける中、オレは焦りを隠しきれなかった。

結界を維持するほど現実に与える影響が強くなる。

コイツはそれを狙って決め手を与えない。

時間が経てば経つほど圧倒的にこっちが不利。

 

「クソっ!」

 

チラリと超巨大の方を見ると小さな火の玉が襲いかかっていた。

乃木が命張っている光なんだろう。

 

「彼女死ぬ気だね。まぁアレを倒せても僕を倒さなければ解決しないんだけど」

 

「だからこそお前を、殺すッ!!」

 

空間から鎖を伸ばし暁の四肢を縛る。

 

「ほぉ…」

 

「逃がさないっ!!」

 

地面を蹴りあげ太刀を前に構え突撃する。

だがライフルで右の鎖を撃ち抜かれ銃口が向けられる。

発射されるギリギリで避けるも光弾の速さが勝り避けきれなかった。

左手が蒸発し、顔も熱で半分焼け視界の半分が真っ暗になった。

 

「ぎぃッ、あああああああッッッ!!!」

 

不死とは言え痛覚は残された。

脳がキャパを越える激痛でショートし、視界がぐちゃぐちゃになる。

残った右手で斬り掛かろうとしたが外れたらしく空をきった。

それが最後で意識がある程度戻った時には地面に倒れていた。

記憶を切り取られたように何があったか思い出せない。

痛みは感じない、いや感じなくなっている。

アドレナリンだっけ?脳がシャットダウンしないよう無理くり抑えてる。

 

「呆気ないね。もう少しやると思ったのに」

 

オレを見下ろすように暁が銃口を向ける。

 

「最後に言い残す事はあるかい?」

 

「…貴方は本当に人間が嫌いなの?」

 

「愚問だね。そうでなければ人を殺して正気でいられる訳が無い」

 

その目には正気は無い。

こいつは既に人を捨ててるんだ。

 

「私も最初はそう思ってた。友人に裏切られ慈悲を受けた時なんて最悪の気分だったよ。けどその死体を見て心は泣いてたんだ」

 

バーテックスだった白夜に見透かされた時、即座に否定はした。

でもあの後涙が勝手に溢れた。

裏切られた気持ちより生きて欲しかった気持ちが勝ってた。

いくら鬼になろうとも人の心を変えるなんて無理。

それに気付けなかった私は愚かだ。

 

「手遅れだとしても最後くらい良い事しないとね」

 

「ならここで屍になれ。そうすればあの世で教え子に会える」

 

「良い考えだけど1人じゃ寂しんでね…」

 

左腕を再生しライフルを両手でつかむ。

 

「お前も連れて行くッ!」

 

「何ッ!!!」

 

ポータルを上から落とすように私たちを飲み込ませる。

転送先は壁の上。

樹海化の範囲ギリギリだが充分。

高所にワープし、暁にしがみつきグルグル周りながら外へ押し出す。

 

「小癪な真似をッ…!」

 

「離せるものならやってみろ!」

 

腹を何度も蹴られるが絶対離さない。

深淵のような暗闇が広がる世界。

地獄ですらなく生きながら落ちていく無限の穴。

ろくでなしが行くにはこれ以上相応しい所は無い。

 

「うおおおおぉ!!!」

 

「こんな事、認められるものかぁぁぁ!!!」

 

壁の外へ落ちる前、視界に入ったのは超巨大が崩れ落ちる瞬間だった。

白夜の予測も偶には外れるんだなぁ。

でもごめん、約束守れなかったね…

先逝ってるよ…

 

「ちはやぁぁぁぁぁ!!!」

 

全てを手放す一歩前に会いたかったヒトの声が聞こえた。

 

「白夜ッ!!??」

 

壁の外へ手を伸ばすように飛び降りてきた。

 

「君も裏切るのか!その体を与えられた意味も知らずに!」

 

「知ってるよ!それでもはくやはッ!!」

 

白夜の手に赤い紋様が現れ光るのと同時に落下が止まった。

暁を見ると引きつった顔のまま固まっている。

 

「これは…?」

 

「時を止めたの。今動けるのはちはやとはくやだけ」

 

白夜の手を取り拘束を解いた。

水中を泳ぐようにその場に浮いている。

 

「いつの間に仕込んでたんだ?」

 

「元々あった力。ちはやが苦戦してるの見えたから来ちゃった」

 

「全く…でも、ありがとう」

 

ポータルを開きながらデザートイーグルを懐から出す。

白夜を抱え少し距離を置きただ一点を狙う。

幾ら片目を失ってるとは言えこの距離ならいける。

 

「人の死は誰であっても悲しい。その感情を失った貴方のような奴は…」

 

これが私にとって最初で最後の人殺し。

躊躇する事なく眉間に風穴を開ける。

 

「ここで消えるべきです」

 

そのままポータルへ入り離脱した。

とりあえず壁の上に着地し静止を解除する。

超大型の崩壊が再度始まり今度こそ終わった。

 

「これでやれたんだね」

 

「うん。ちはや顔大丈夫?」

 

「痛みはあるけど平気。この体じゃなきゃ狂ってたよ」

 

私たちの周りをはなびらが舞う。

これが解除の予兆なのかな。

 

「帰ろう。我が家に」

 

白夜の手を握り大量の花びらに呑まれた。

 

 

 

いつもの洞窟…とはいかず丸亀城に現れてしまった。

 

「よりによってここかよ…」

 

「ちはやあれッ!!」

 

指さす先を見ると体中から血を流している乃木が倒れていた。

周囲を確認し誰もいないのを把握し近寄る。

服が黒く焦げており、露出していた肩は皮膚が酷く爛れている。

息も微弱ながらしているが最悪肺もダメージを受けているかもしれない。

このままだと衰弱していく一方だ。

 

「何で誰も来ないんだよ…!勇者の位置は把握出来てるはずだ!」

 

「電波障害!?あかつきはこれも見越してたの…!」

 

相打ちを想定してたのか。

腹が立つくらい用意周到な野郎だな!

 

「やるしかない…」

 

オレはゆっくりと乃木を抱え立ち上がる。

病院の位置は偵察の時に把握している。

人通りの少なく安全に引き渡せるポイント…

 

「白夜!座標の修正を!」

 

「分かった!」

 

オレの体に後ろから抱き着き思考を繋げて貰う。

これでより正確にポータルを固定できる。

だが強めの障害なのか安定しない。

焦る気持ちを抑え場所を探す。

何処だ…何処にあった…!

「…見えた!!」

目の前にポータルを出し白夜を連れ突入する。

出た場所は病院の地下駐車場。

下見はしてないがホテルのような豪華な造りをした入口があった。

 

「ここかっ!」

 

自動ドアだったが使用されてないのかロックがされていた。

刀を勢いよく射出する。

防弾ガラスでもない上、高速で放ったからいともたやすく割れた。

同時に鳴り響くアラート。

ここに人が集まるのも時間の問題だ。

ガラスの破片が飛んでいないソファーに乃木を横たわせる。

 

「お前は…いやお前らはよく頑張ったよ。少しの間だが休め」

 

顔についた髪を払いのけ座標を再指定し、その場を後にした。

もし会えたなら先生って呼んで欲しいな…




チートにはチートをぶつけるんだよ!
時止め、火傷の原因、暁の因縁と本編で1ミリも触れなかったことをここで回収するスタイル。
特に火傷の理由は知りたかった人も多いのでは無いのかなと。

終わる雰囲気ですがまだまだ続きますよ!
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