気づいたらいつもの劇場にいた。
「また…」
1度見なくなっただけで新鮮な感じに思えた。
今日の作品はなんだろ。
しかし、待てど待てど幕が上がらない。
不思議に思っていると後ろに誰か座った。
都合よく金縛りになり身体が動かない。
ただ、口は動いた。
「ここは貸切じゃなかったの?」
『そうだね。でも主催者ならどう?』
変声機でも使っているようで少し高めに聞こえる。
「悪いけど貴方の趣味に付き合う暇は無いんだけど」
『いいじゃん。もう少し付き合ってよ〜』
「よく分からない映画を見続けさせられる私の気持ちになって欲しいな」
『ええー…』
ギシリと椅子が軋む音がし、気配がより近くに感じた。
おそらく頭の後ろ付近にいる。
『それにしてもあの子可哀想だよね。チャンスを目の前で握りつぶされたんだから』
夢だからってボロクソに言ってくれる…
「今あの子に伝えても実感が無い。次第に思い出して行くと思うからその時でも遅くないと思うけど」
『でも、その時っていつなんだろね?1ヶ月?10年後?もしかして永遠に来ないかも』
痛いとこついてくる。
「来なかったら私が背負う。」
『そうやって何でも背負うとこ。反吐が出るよ』
それは私自身も思う。
けどそうじゃなきゃ報われない。
あの日私の行った事が無駄になる。
すると聞き慣れたベルが鳴った。
『もう終わり…また会おうね。今度はお茶でもね』
主催者の気配が消え身体が動くようになった。
後ろを向いたが当然いなかった。
次第に瞼が重くなってきた。
ここで寝ろと言うのか。
不本意だが覚めるなら仕方ない。
私は眠気に身を任せた。
夢で寝て現実で起きるのは少し不思議な感覚だった。
まぁここに入れるなら本望だけど。
いい匂いが寝ぼけた頭をクリアにしていく。
「おはよう。起きるの早いね」
「あっ。おはようございます!」
そこには昨日の朝と変わらない銀がキッチンでご飯を作っていた。
手際よく作っているのを見ると身体が勝手にというイメージかな。
けど夜の1件があるから感情抑えてるんだろな。
「家の事任せちゃうけど大丈夫?」
私は靴を履きながら聞いた。
学校に行くとは言え明日は土曜。
1日の辛抱ではあるが不安だった。
「任せてください!」
と胸を張って答えてくれた。
「分からない事あったらチャットで聞いてね。先生の目盗んで答えるから」
「取られないようにしてくださいよ」
「分かってるって。じゃ行ってくるよ
「ちょっ…それ不意打ちですって」
照れたような、困惑したような表情を浮かべた。
昨日の報告書は全てが黒塗りという訳じゃない。
名前と年齢だけではあるが。
「ごめんごめん。言ってみたかっただけ」
私は銀の頭をワシャワシャと撫でた。
思ったけど頭撫でるのやる側も気持ちいい…
ヤバい。学校に行きたくない衝動が来る。
「行ってきます!!」
勢いよく扉を開け登校した。
学校に着くと燐と蛍から病気の事をしつこく聞かれた。
2人はお見舞いに行こうとしてたけど私が全力で止めたのを気にしてた。
最終的にはこっそり仮病の事を漏らし予鈴で誤魔化す。
しかし、山場は放課後に待っていた。
「熱大丈夫だった!?」
猪のように教室から出てきた私に抱き着く友奈。
軽く腹に入って痛いんだけど。
「うっ…うん。大丈夫だよ」
「良かった~。昨日お見舞い行こうとしたんだけどバー…」
「友奈ちゃん。部活が忙しかったのよね」
友奈は遅れてきた東郷さんの言葉にハッとした顔をし急いで手で口を塞ぎ2回頷いた。
まぁ行けない理由も知ってるしその場にいたし。
「今日も部活あるの?」
本題へ話を変えた。
「あるよ!今日は来れるんだよね!」
「もちろん。一昨日の約束果たさないとね。」
その言葉を聞きぴょんぴょん飛ぶ友奈。
天然故の行動だから可愛いったらありゃしない。
「友奈ちゃん、昨日美穂さん休んだって聞いてかなりショックだったのよ」
だからあのテンションなのか…
「申し訳ないことしちゃったね。なら今日はとことん付き合わないとね」
「ええ。他にも紹介したい人もいますから」
「それじゃ行こっか。友奈〜、そこで跳ねてるなら東郷さんの後ろは貰ってくよ〜」
慌てて帰ってくる友奈。
2人はカップルのような関係だから私は割り込む気は無いけどね。
「これが…勇者部…」
入れ入れと言われていたから少し期待値があった。
あったけど…
「普通ですね」
「ねぇ…ほんとに期待の新人なの?」
「あっ、先輩お邪魔してます」
「おおう…」
礼儀良くお辞儀を風先輩にしておいた。
ファーストインプレッションが一番大切だからね。
にしてもほんわかした雰囲気。
ここで昼寝したら最高なのでは?
「はい。ぼた餅です」
「久しぶりに食べるかも。いただきます」
うん、これこれ。
程よい甘さと型崩れしないギリギリの柔らかさ。
一度作ろうと挑戦してみた物のコレジャナイ感があった。
「あっ…申し遅れました。2年の高木美穂です。友奈と東郷さんとは1年の頃同じクラスでした」
「アタシは部長の犬吠埼風。この子は妹の樹」
樹ちゃんはおどおどしながらお辞儀していた。
直接会うのは初めてだけどくせ毛な所が似ている。
いいなぁ。
「それにしても、友奈から話は聞いてるけどずいぶんマイペースね」
「ここが居やすいからですよ。まるで実家に帰省した感じです」
まぁ実家の雰囲気なんて覚えてないし帰りたくないけど。
それでも世界を救える子が揃いも揃ってこんなだとはね…
私はやりやすいからいいけど大赦から見ればブチ切れ案件だろな。
「あぁ。風先輩少しいいですか?」
「いいわよ。今日は依頼の整理だけっぽいしね」
そのまま人気のない屋上へ連れて行った。
「すみません。どうしても人気のない所を選ばないといけなかったので」
「まさか人に言えない相談だったり~?」
私がにこやかに言ったからか冗談を返してくれた。
それはそれで申し訳ないんだけど…
「そうですね。まずは、
一定の人に伝わる隠語に近い。
当事者にとっては嫌味かもしれないけど。
「あんた…大赦の勇者?」
表情が反転し疑いの目を向けてきた。
部長の威厳なのかな、圧も感じる。
「いえ。大赦には知り合いがいるだけです。あくまで個人的な介入です」
「個人?聞いたことないんだけど」
「そらそうですよ。私も成り立てなので」
多少の戦闘経験はあるけど。
「目的は?」
「現役勇者の守護と少しの観察ですかね。別に危害を加える気はありませんよ」
グランドで活動している生徒を眺めながら言った。
顔見て話すとボロ出しそうだったから。
「無理に信じろとは言いません。判断は任せます」
仮に入れなくても個人で合流すれば大きな変化はない。
ただその場合信用値ダダ下がりになりそうだからここは通したい。
「…一つだけ条件を出させて」
「応じられる範囲なら」
「みんなにそれ言いなさい。本番で分かるより今言った方が負担軽くなるわよ」
つまり、隠し事は無しと。
さっき部屋を見た時まずは相談的な文言があったっけ。
「お気遣いありがとうございます」
「お互い様って事よ。早く戻らないと変に疑われるからね」
ならそれなりの誠意を示さないと。
てことで変身しました。
百聞は一見に如かずって言うじゃん。
私的利用はNGだけど短時間だから見逃すでしょ。
反応として風先輩は呆れ、東郷さんと樹ちゃんは唖然と、そして友奈は目を輝かせていた。
あと補欠要員の名目で銀も紹介しておいた。
樹海化に絶対巻き込まれるから早めに知ってもらおう。
こうして見学をほとんどすることなく入部をした。
7話でようやく入部しました。
立ち位置上、敬遠気味だったのでここしかないなと。
キャラブレブレかもですけど頑張って抑えます。
あと評価とお気に入りありがとうございます。
勇者シリーズを書くのは初なので励みになってます。
頑張りますのでよろしくお願いします。