生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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注意

この章は第62話「サヨナラの向こうへ」の続編です。
キャラ崩壊をふんだんに入れております。
また零の章のネタバレを含む話があります。
適宜連絡はしますが閲覧の際は気をつけてください。


日常の章
日常の始まり


パチリと目が覚め周りをゆっくり確認する。

少し日が昇るのが早くなってきたのかカーテンから見える空が明るく感じる。

体を起こし時計を見ると6時を過ぎた辺りを差していた。

私は眠い目を擦りながら洗面所へ向かう。

顔を冷水で一気に洗い眠気を吹き飛ばす。

 

「よしっ…」

 

一旦部屋に戻り寝巻から制服へ着替える。

時間に余裕があるけど部屋着から制服を着るのが面倒と思ってやめた。

今日は皆寝起きが遅そうだから先にご飯作っとこ。

青のエプロンをつけ冷蔵庫を覗く。

私が担当の時はあるものでなんか作る感じ。

献立とかも無くシンプルな料理が中心。

冷凍したご飯があるから納豆とインスタントの味噌汁でいいや。

多めに水を入れお湯を沸かす。

 

「おはよー…」

 

「ん、おはよー」

 

銀が顔だけ出し引っ込んでいった。

誰がやってるか確認しただけかな。

沸かしている間に昨日ラップに包んだご飯をレンジに入れ、冷蔵庫からカップの納豆を取り出す。

 

「ふあぁ…今日もシンプルな料理だな」

 

眠気が取り切れていないのか欠伸をしながら人数分の箸を持っていく。

 

「いつも通りよ。ホテルのバイキングみたいなの期待されても困るしね」

 

「珠子さんいつも足りないって文句言ってるっけ」

 

そこで設けられたのが『おかわりは自己責任』というハウスルール。

夕飯ならまだしも朝は忙しいのにおかわりなんてされたら学校に遅れちゃうからね。

お椀に味噌汁の元を入れてると2階がバタバタと騒がしくなってきた。

 

「おはよー!今日もいい目覚めだったなぁ!」

 

「おはようございます…」

 

「おはよう珠子、杏。そろそろ出来るから座ってて」

 

段々リビングがにぎやかになって来た。

一時期1人でこの家にいたがそれはもう辛いったらありゃしない。

完全に依存してるけどあの寂しさは今まで以上に効いた。

 

「…おはよう」

 

お湯が沸いたタイミングで千景が出て来た。

 

「おはよう。昨日も徹夜したの?」

 

「少しだけ。セーブするタイミングが掴めなくて長引いたの」

 

「それは仕方ない。今出来たから手伝って」

 

「ついで過ぎない?」

 

そう言っても手伝ってくれるんだから。

起きるタイミングは大体この順番が定着しつつある。

 

「それじゃ…」

 

『いただきまーーす!!!!!』

 

全員揃って食べるご飯は美味さが違うなぁ…

手抜きとは言え雰囲気で食べてるもんだしね。

量が少ないからすぐ食べ終わり登校準備をする。

私と銀は讃州中学に通うが3人は籍すら存在してない状態だった。

黒花さんがでっち上げて名無しの権兵衛は回避したもののこのタイミングで転校は逆に怪しまれる。

そこで通信教育を受けさせ補填している。

ちなみに名字が高木にされていた。

問い詰めたら

『お前の家なんだから揃えないと不自然だろ?』

と言われてしまった。

もうちょいどうにかならなかったのかなぁ…

 

「それじゃ行ってくるよ」

 

「いってらっしゃーい!」

 

珠子に見送られ家を出ていく。

家事は3人が協力しながらやってくれるから安心。

当時、勇者は神様みたいな存在として扱われていたから家事を殆どしなかったそうだ。

だから一から教える事になったけど少しづつやらせてやっと一人暮らし出来るくらいまで成長した。

頑張った甲斐があるもんよ。

 

銀のトラブルメーカーが発動するのを想定し始業の1時間半前に出る。

生きてた時もギリギリ間に合わない上忘れ物を連発するというドジっ子とも取れる行動をしてたらしい。

今日も例外なく巻き込まれるが2人で対処するから早く終わる。

 

「間に合ったな!いやぁ、美穂がいなかったらどうなってた事やら…」

 

「ホントね。じゃ、勉強頑張りなよ~」

 

私はクラスへ入るといつもの風景が広がっていた。

神樹の加護が無くても日常そのものは変わらない。

 

「おはよ~!元気そうで良かったよ〜!」

 

相変わらず元気の燐と優しく手を振る蛍を見れてホッとした。

訣別の儀の後、大赦からの要請でしばらく休校となっていた。

再開したのはまさかの3月末。

春休み返上で駆け足でテストをやった記憶がある。

あのごたつきを見れば当然だけどキツいって…

 

「そっちこそ元気有り余ってそうじゃない?」

 

「もちろん!走って四国1周しちゃうくらいだよ!」

 

「スケールが大きすぎるって…」

 

とまぁ無事3年にあがれ、2人とは同クラスになったが勇者組とは被らなかった。

操作されているなら私嫌われ過ぎない?

 

「そういえば燐、引越しの予定は?」

 

両親の離婚によって母親方の実家か今暮らしてる場所のどちらに住むことになったのか聞いていなかった。

 

「あー…実はここに残ることになったんだ」

 

「てことは今のまんま?」

 

「うん、ただお母さん出張で家に居ない事多くなるんだって」

 

確か、四国でも有名な商社に勤めてたはず。

学校に行くだけでもお金掛かる上に養わないといけないから負担が増すに違いない。

 

「1人で大丈夫?私が一緒に居た方がいい?」

 

「気持ちだけで充分だよ。それに今と変わらないしね!」

 

「無理しないでね。前みたいに塞ぎこまれると困るんで」

 

「うっ、適度に頼らせてもらいます…」

 

今思うとかなり病んでたもんね。

まぁ間接的に友奈の不調に勘づける要因になったから少し感謝してる。

話していると予鈴が鳴り先生が入ってきた。

毎度恒例の神樹への礼拝は継続されているけど真実を知るからこそ違和感しかない。

 

普段通り授業をこなし放課後をむかえる。

 

「今日も部活行くの?」

 

「そうだね。たまに顔出さないと罰ゲーム勝手に決められそうだから」

 

「前覗かせてもらったけどそんな雰囲気じゃないと思うけど?」

 

「表面だけ、やると言ったらやる人の集まりだよ。それじゃまた明日〜」

 

2人に手を振り部室へ向かう。

良くも悪くも有言実行がモットーになっている勇者部。

暴走癖持ちは何人かいるけど一時と比べ格段に落ち着いた。

背負うものが無くなったから羽を伸ばせるのかな。

 

「ちわー、高木ですー」

 

「どこぞの酒屋よ」

 

入ったら夏凛のツッコミが飛んできた。

しかも求めていた通りの反応だったし。

 

「部長ー。今日黒花さん来るの?」

 

「はい。もうそろそろだと思います」

 

「了解~。旧部長そこ荷物置くんで邪魔です」

 

「なんかアタシだけ当たり悪くない!?」

 

「高校生活エンジョイしないでここにいるからですよ。また彼氏できないってほざかないで欲しいので」

 

「やめてー!現実突き付けないでー!」

 

「理解してるなら頑張ってよ…」

 

元気そうなノリで良かった。

樹ちゃんも普段通りだけど部長としての立場を理解し始めている。

本当の独り立ちもまもなくかな。

 

「たかみ~」

 

「どうしたの?」

 

「最近構ってくれなくて養分不足してるんよー」

 

「はいはい、分かりましたよ」

 

私は何の躊躇もなく園子を抱きしめる。

周りから息をのむ音がしたが気にしない。

園子の顔を皆に敢えて見えるように抱いたから後でどうだったか聞かないと。

 

「いつまでやりましょうか?」

 

「ずっとして欲しいかな~…」

 

「欲張りさんめ」

 

「妹だからね」

 

その言い訳ズルいって。

ならば…

 

「…大好きだよ。園子」

 

耳元で愛を囁いてみる。

すると突き放すように私の拘束から離れた。

顔をそっぽに向け手で口元を覆っている。

 

「あれ、もういいの?」

 

「…バカ」

 

罵倒頂いちゃったよ。

まぁやりすぎた感はあるけど。

 

「大胆だね…」

 

「あぁ…遂にそのっちにまで手を付けるなんて…」

 

「そこ、私が下心全開な男みたいに言わないで欲しいんだけど」

 

「来たぞー…ってなんだこの甘ったれた空気」

 

黒花さんが銀を連れて入って来た。

というか貴方空気読むの早くない!?

 

「園子顔赤いぞ。熱でもあるのか?」

 

「だ、大丈夫よ~!この部屋暑いな~って思ってただけだから!」

 

「確かに暑いな。いや熱いか?」

 

あ、バレた。

私を見る目がカップルを蔑む感じになった。

弁解しとかないとあらぬ疑いかけられそう…

 

来週参加するゴミ拾いのルートや手順、時間を共有し解散となった。

部活があると基本2人で帰る。

無かったら私がスーパーに行って買い物して行くだけ。

とは言っても適当に買って3人に作らすんだけどね。

 

「ただいまー」

 

「おかえりなさい。今作ってるので待っててください」

 

お出迎えは杏がしてくれた。

奥から肉の焼ける音がする。

手を洗い自室で部屋着に着替えリビングへ向かう。

 

「今日の、ご飯は、何ですか~?」

 

キッチンで調理中の珠子と千景に話かける。

3人の中で料理の腕が一番あがったのが珠子だった。

アウトドアで基本は抑えていたからか物覚えは早い。

ただ地雷行動をしまくるから別の意味でヒヤヒヤしたけど…

 

「生姜焼きよ。3枚で足りるかしら?」

 

「全然大丈夫よー!白米さえあれば何とでもなる!」

 

「そう思って炊き立てを用意してるんだなぁ!!」

 

「神が居られる!」

 

全員分の生姜焼きを盛りつけ終えリビングに集まる。

 

『いただきまーす!!!』

 

生姜焼きって意外と難しいんだよね。

食べやすくするにも手間暇がかかって大変…

 

「美味いッッ!!」

 

筋張った感じも無いし顎の負担がゼロに近いくらい柔らかい。

脂も少なめだから胃もたれしない。

最高かよ…

 

「はあぁぁ~こりゃハマるって…」

 

「遂に美穂を唸らせたぞ!」

 

珠子がガッツポーズをしながら喜んでいる。

思えば美味しいとか感想を言った事はあるけど語彙力が死ぬのは無かったっけ。

 

「いや、素晴らしいとしか言えないって」

 

「味付けも濃すぎませんしね。んじゃおかわり行ってきまーす!」

 

「少し手伝ったけどここまで美味しいとは思わなかった」

 

「タマっち先輩が輝いて見えるよ…!」

 

食べ終わった後は自由時間となる。

誰かを誘ってなんかしたり早めに寝る等基本フリー。

今日は私のところにお誘いは無いからネットサーフィンに浸る。

SNSの投稿で今何が足りないのか、どんな不満があるのかを調査したりニュースでどんな動きをしてるか把握する。

正確な情報は自分で動かないと掴めないけどどんな情報が必要なのかを理解するのが大切。

しばらく見ていたら眠気がやってきたから寝るようにした。

これが私の基本的な日常。

他の皆とは多少差がある程度でほぼ同じ。

まぁこんな生活出来るなんて夢にも思わなかった。

でもこれが勝ち取った明日だと言うなら私は思う存分楽しませて貰う。

これから先ずっとこの家族と共に…




遂に始まりました日常回!
戦闘でカッコイイのもいいけどゆゆゆの醍醐味はくだらない日常パートでしょ!
前回の後書きにも書きましたが色んな要素がぶち込まれています。
基本自分の妄想を書いてるだけなので悪しからず。

あと前話で80話突破しました!
あと20話…行けるねこりゃ。
100話近くなったら何かやろうかやらないか…
分かりません!!(適当)
それと投稿日もマチマチだったりしますが2、3日ぐらいで投稿にしますのでよろしくお願いします。
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