生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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その想い、扱い注意。

最近タマっち先輩が私を避けている気がする。

『燐とキャンプ用具見る約束しちゃった。また今度な!』

『勇者部の助っ人で行ってくる!』

『今日は1人で回りたい気分なんだ!』

前々から誘っても何か予定が入っていると言われ断られる。

西暦の時は暇そうにしてたのに。

 

「それで私たちに相談と…」

 

向かい合う様に美穂さんと蛍さんが座っている。

 

「話聞いてどう思いますか?」

 

「別に問題ないように思うよ。普段通り話してるならたまたまな気がする」

 

「だよね。珠子の機嫌が悪いようにも感じないし」

 

確かに家では普段通り会話している。

嘘をついている素振りも無い。

 

「本当にそうなんでしょうか…」

 

ちびちびと紅茶を飲みながら考える。

こういう時に限って悪い方向へ思考が進む。

 

「じれったいなぁ。ならついて行けばいいんだよ!」

 

美穂さんが頭を掻きながら言い放つ。

 

「ついて行くって…まさかストーカー!?」

 

「百聞は一見に如かずって言うでしょ。杏が自分の目で確かめればいいだけだし」

 

「一理あるけど…あんさん別に無理にしなくていいか…」

 

「…分かりました。」

 

「ええええ!?」

 

蛍さんには申し訳ないけど私は真意を見てみたい。

この行為が正しくなくても何で一緒に居たがらないのかその答えを知らなくちゃいけない。

 

作戦当日。

タマっち先輩が家を出たのを確認し行動を始める。

 

「あんま派手に動かないでね」

 

「はい」

 

見失わないギリギリの距離を保ちながら美穂さんに先導して貰う。

何度か尾行した事があると言ってたけど深くは聞かなかった。

 

「警戒心無さそうで良かった」

 

「こんな堂々と歩いていていいんですか?」

 

「逆にコソコソしてた方が目立つよ。それに人の中に紛ればそうそうバレないって」

 

一直線の道だけど人通りが多い。

後ろを急に振り向かれても少し視線からズレれば気の所為と思う。

 

「ん、店に入ってくね」

 

そこは変哲の無いキャンプ用のショップ。

店の外から覗き込むように見たけど普通に品定めをしてるっぽい。

 

「怪しい行動はしてないね。もういいんじゃない?」

 

「そうですね。私の杞憂…」

 

踏ん切りをつけ帰ろうとしたその時

 

「あっ…」

 

見てしまった、いや見るのが運命だったのかもしれない。

タマっち先輩が知らない子に笑顔で手を振っていた。

ドクンと心臓が跳ねあがる。

 

「あの人…知ってますか…?」

 

もし知ってると言ってくれれば安心する。

そう言うと信じていた。

 

「記憶にないかな。制服着てれば分かるけど私服だしね」

 

針で胸をつつかれる感覚に陥る。

その人誰?私に何で言わないの?

私を1人置いてかないでよ…

 

「こっちに来るから移動しよう…杏?」

 

何で何で何で…?

 

「杏ッ!?ったく!こんな時に!!」

 

抱きかかえられた気がするけど頭の中がタマっち先輩の笑顔で埋め尽くされる。

 

「ここでいっか…大丈夫?」

 

意識を戻すと美穂さんが心配そうに私を見ていた。

周りを見ると公園のベンチに座らされたようだった。

 

「取り乱してしまいました。すみません…」

 

「うんん、気にしないで。しかし、とんでもない事になったね…」

 

隣に座り深く息を吐いた。

何をしても疑問しか湧かない。

 

「どうして言ってくれないの…?」

 

別に誰と会おうとも構わないしそこまで縛るつもりもない。

けど何も言わないで楽しそうにするのは嫌だ。

まるで1人置いていかれたような気持ちになる。

 

「悩んでても自分を追い込むだけだよ。ちゃんと向き合った方がいい」

 

背中を優しく擦りながら声をかけてくれた。

でも私の心の嵐は止まらない。

 

「言うのが怖いんだ」

 

返事もせずただ頷くだけ。

口が重くなったかのように開かない。

 

「そっか…でも有耶無耶にするのが友達として良い事なの?」

 

横に首を振る。

そんなの分かってる、聞かなくちゃいけないのは理解してる。

出来ないのは私の心が弱いから。

 

「…よしっ!」

 

パンと膝を叩き勢いよく立ち上がる。

 

「うだうだするのは面倒!」

 

スマホを取りだし電話をかけようとしてる。

 

「え、ちょ…ちょっと待って!」

 

この状況でかける相手はただ1人。

手を伸ばしてスマホを取り上げようとしても綺麗にかわされる。

しかもニヤニヤ笑ってるし!

 

「珠子〜?ちょっと聞きたい事があるんだけど今何処?」

 

終わった…

逃げ道を塞がれた以上向かい合わなきゃ。

 

「…分かった。んじゃ後で〜」

 

やりきった感満載のため息をつき電話を切った。

 

「無理やりだって…」

 

ヘナヘナと座り込んでしまう。

荒治療にも程がある。

 

「まぁまぁ、変に遠回りするよりかはいいって。それにあの珠子だよ。変に嘘つけないのは1番理解してるでしょ?」

 

「そうですけど…ハァ、余計拗れないかなぁ…」

 

「大丈夫、影から見てサポートするから」

 

ぐっと親指を上げドヤ顔してる。

美穂さんだからまだ信用できるからいいけど。

 

待ち合わせ場所は住宅街にある少し小さめの公園にあるベンチ。

美穂さんも私たちと会う前、ここで色々悩んだり気分転換してたらしい。

見晴らしが良すぎるから少し離れた場所に待機して貰って会話は通話状態で聞く事にした。

 

「ううぅ…緊張する…」

 

タマっち先輩に会って訳を聞く。

単純な事なのに落ち着かない。

待つのがこんなにも辛いなんて…

 

「おっ待たせー!」

 

ビクンと勝手に立ってしまいスマホを落としかけた。

 

「あれ、美穂は?」

 

「え、えーっと…急に用事が出来たんだって…」

 

「なんだよー。聞きたい事あるとか言って消えるなんて失礼な奴だな」

 

プンプン怒っているけど私の為に用意してくれた場なんだ、覚悟決めないと。

タマっち先輩を横に座らせ顔を見ながら話す。

 

「あのね…聞きたい事があるのは私の方なんだ」

 

「ん?」

 

「今日、タマっち先輩の後着いて行ったの」

 

目を丸くして驚いていた。

 

「えっ、最初から?」

 

「うん、あのお店入るまでだけど」

 

「マジか!全く気づかなかった…あんず忍者だったのか!?」

 

「美穂さんと一緒に行ったんだよ」

 

「美穂と?…そっか、昔殺し屋だったもんな」

 

「タマっち先輩!」

 

通話してなくてもそれは言っちゃいけない。

過去を乗り越えているとしても深堀されたら誰だって辛い。

 

「ごめん。口が滑った」

 

しゅんとテンションが下がってしまった。

 

「それでね、今日会ってた子誰なの?」

 

「ん?あぁ、依頼だよ」

 

悪びることも無くサラッと言う。

 

「依頼?」

 

「風と前会った時に直々に言われてな。キャンプ初心者が使いやすい道具紹介してくれって」

 

「私美穂さんから聞いてないよ?」

 

「あれ?風が言うとか聞いたけど」

 

「え?」

 

思わずスマホを取り出し耳に当てる。

 

『次会ったら絶対しばいてやる…』

 

地の底から聞こえてくるような声が聞こえたと思ったら切れた。

つまりただの連絡ミス?

 

「もう…」

 

緊張がほどけ背もたれに溶けるようによりかかってしまった。

 

「あんず!?」

 

「大丈夫…ちょっと疲れただけだよ」

 

「何で尾行なんてしたんだ?」

 

「だって私の事避けてる感じがあったから…」

 

「避けてる訳無いだろ。でも依頼で頭いっぱいだったからそう捉えちまったかもな」

 

そういえば最近外に出る機会が多いと思ってた。

ちゃんと聞かないで勝手に憶測で動いていた私も悪い。

 

「ごめんね…」

 

「あんず?」

 

「1番信頼しなきゃいけないのに疑っちゃった…」

 

元は心配という気持ちから始まり、嫉妬へ変わった。

今回は勘違いで済んだけどこれが続くと考えると不安でいっぱいになる。

 

「いや、タマに責任がある。無意識とはいえあんずを離すような態度したんだ。そう捉えるのも無理ないさ」

 

「いいんだよ。私が勝手に思い込んだのが悪いんだから…」

 

「タマが悪い!」

 

「私のせいだよ!」

 

外というのを忘れるくらい言い合った。

途中から感情に任せてたから支離滅裂。

気づいたらお互い息切れしていた。

 

「ハァ、ハァ…疲れた…」

 

「かなり白熱したからね…ふふっ…」

 

息切れしてるのに笑みが零れた。

こんな言い合ったの久しぶり。

 

「まだ知らない事あるんだな…」

 

「そうだね。これからもっと知ってかなきゃ」

 

1度止まった時間が動き出してるんだ、大切にしなくちゃね。

 

──────

 

後日。

 

「何か言うべき事があるんじゃないんですか?」

 

部室で足と腕を組み睨みつける。

相手は当然風先輩。

正座し体を縮こませてる。

 

「申し訳ございませんでした… 」

 

「全く、個人の依頼とは言え部長をかえさないなんて」

 

いつもの部長ムーブが裏目に出てしまったらしい。

 

「だってなんかしてないとこう…落ち着かないのよ」

 

「典型的な職業病ね」

 

「確かに友奈ちゃんと離れる事になったら落ち着かないわ」

 

「須美、それ絶対違うぞ」

 

「とにかくOGを名乗る以上サポート中心、依頼が来ても必ず部長に報告。いいですね?」

 

「はい…って何で美穂に言われなきゃなんないの!」

 

「美穂さんも被害者なんだから」

 

「ええぇ…」

 

と言っても2人がルンルンで帰ってきてたから全然気にしてないんだけどね。

喧嘩するほど好き位が丁度いい。

まぁストーカーしない程度には納めたかったけどね。

だってあの時杏をお姫様抱っこして移動させたんだもん。

仕方ないとはいえ他に手はあったろうけど。

これ珠子に言ったら嫉妬間違いないなぁ…




杏メイン回でした。
小説を中心に展開しようと思いましたがやはり珠子ネタにして曇らせるようにしました。
我が行いに一点の曇りもなし。
タイトルは小説繋がりで仮面ライダーセイバーリスペクトでした。
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