ゴールデンウィークを迎え勇者部でド派手にやろうという話が上がった。
知名度はかなりあるのにこれ以上何をするのやら。
「花火打ち上げ、無人島生活、遊園地貸し切り…全部出来そうなのが恐ろしいよね」
財力と気合いで何とかするのが勇者部。
無理難題もなんとでもして来たからか依頼の数も段々多くなってきた。
黒花さんが『ここは注文の多い料理店か』と頭を抱えながら言ってたくらい。
毎度ご苦労さんです。
「ただ世間の状況を見てなので身内で盛り上がるものがいいと思うんです」
「そうね。大赦も私たちに睨み聞かせてるしね」
元勇者という名がある以上監視の目は続いている。
行き過ぎた行動は黒花さんが対処してくれてるからマシ。
「となれば…キャンプ?」
「無人島はダメなの〜?」
「幾ら乃木家管轄とは言っても余計監視の目が強くなって落ち着けなさそうよ」
「それにガチ勢がいるし何とかなるでしょ!」
「トラック借りた方がいい?」
「その場で借りれるのもあるし大丈夫だと思う」
「楽しくなってきたじゃない〜!」
「では場所を決めていきましょう」
ネットで行き先を決め、予約をした。
大人数で行くから事前に言っとかないとね。
「という事でぜひお力添えを…」
帰ってきて早速珠子に銀と一緒に頭を下げた。
「なーるほど…もちろん行くとも!なぁに大舟に乗ったつもりでいタマえ!」
「その舟穴空いてそうね」
「な、ん、だ、とぉ〜!!」
「黒花先生込としても2人で10人の世話をするのよ。目が行き届く訳無いわ」
「確かに…」
「そこは大丈夫。2チームに分けてやるから珠子は5人を見てくれればいいから」
「ちなみにその5人は誰なんですか?」
「当日くじ引きで決めるんです。なのでだからアタシらもどんなものか知らないので…」
不正がないよう何も考えて無さそうな黒花さんが作成する。
黒花さんに縋り付いたり神頼みする人がいたくらい混沌としてた。
機材やテントは用意してくれるらしいので材料を追加で購入することになった。
さすがに部費は使えないから黒花さんのポケットマネーと園子のブラックカードで補う。
「付き合わせて悪いね」
「全然大丈夫!美穂ちゃんこそごめんね」
「元々裏方業が板に合ってるから。気にしないで」
友奈と共にスーパーで買い物中。
明後日開始だから生物買っても保存さえちゃんとすればもつでしょ。
話ながらも野菜をカートに放り込む。
「なんやかんや2人で何かするの初めて?」
「んー…そうかも。いつも誰かがいたからね」
大半東郷がセットで着いてきていた。
今日は滝行してくるとか言ってたっけ…
「まぁいい機会かもね」
「ん?」
「後で聞きたいことあるけどいい?」
「もちろんいいよ!」
相変わらずの即答。
ホントお人好しなんだから。
買い物を終え、カフェで買ったコーヒーをベンチに座り奢ってる。
コーヒーを少し飲み貰ってきた砂糖を入れ再び飲んでいる。
かなり入れてたけど甘すぎないのかな…
「それで聞きたい事って何?」
少し周りを見渡してから話を始める。
「先の大戦で友奈が見た景色を知りたくてね」
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「大戦って天の神との…」
「そう。神婚の時だね」
あまり思い出したくないのが本音。
私の寿命も短かったし皆を傷つけちゃった。
「えっと…ここで話していいの?」
「多分ね。第三者が聞いても理解出来ないだろうし。それに話したくなければ拒否していいからね」
「えっ!顔に出てた!?」
「んーん、単に気遣いで言っただけ。まぁその反応見ると図星らしいけど」
先生も私の祟りを早い段階で見抜いていた。
ただ、先生自身も祟りで体を奪われていたからかもしれないけど。
それでもこの2人は凄いや…
「ごめんね、でも大丈夫」
逆に言う決心がついた。
自分の中で終わらすんじゃない、誰かにこの事を知って欲しい、そう思えたから。
「どこから話す?」
「私が友奈を突き飛ばした後かな」
「あー…先に質問いいかな?」
「どうぞ」
「何で私を教室から追いやったの?」
「あの時はもう会話しながら殴りあってる状態だったからね。なら物事を動かした方が空気そのものをぶっ壊せると考えたの。まぁ、ヘイトは凄かったけど…」
タハハと人差し指で頭を掻いていた。
悪と思うことをみんなの為にやってくれる。
辛いけど1番重要な役割。
「私の為にありがとう」
「礼は入らないよ。ささっ、始めよっか」
「うん。あの後闇雲に走って学校の外出たら大赦の人が待ってたの。そのまま車で神聖な場所まで運ばれて清めたって感じ」
「随分手際がいいね。そういう手筈だったの?」
「そうだね。アレが最後のお別れだったから…」
神婚の話は最後にして欲しいと神官さんから言われた。
奥にトラックが止まってた気がするから最悪の事態も有り得た。
「なるほど。それは賢明な判断だ」
「美穂ちゃんは高嶋ちゃんと決着つけてたんだよね」
「正確には高嶋の肉体をパクった暁…天の神の使徒の残留思念ってとかな」
「ん?高嶋ちゃん本人じゃないってこと?」
「まぁそんなとこ」
「良かった〜。私の恩人と殺しあってたと思ってたんだ」
「本人と会ってたの!?」
「うん!とっても優しくしてくれてね」
「ほえー…凄いなぁ」
美穂ちゃんも凄いと思うけどね…
過去の勇者を精霊にしちゃうんだもん。
「それでね神樹様に乗って運ばれたの。その時、後ろで戦ってるのが分かってるのに祈るしか出来ない。とっても辛かった…」
今すぐ助けに行きたい。
でも私の役目は神婚、神樹様も私を守るように動いていたから行けない。
だから届かないのにずっと謝ってた。
「他の人が傷つくのは嫌いだもんね。良く耐えたよ…」
「ありがとう。連れてこられたのは海の底みたいな所だった。私の体に白い蛇が巻きついてきて精神がどんどん削られていくの」
手を合わせて皆の安全を祈ってた。
何も見えないし何も聞こえない。
孤独がこれ程苦しいなんて初めての感覚。
「でもね、東郷さんが来てくれたの帰ろうって何度も言ってくれて私の本音を出せれた」
初めて東郷さんが私を呼び捨てで呼んだんだっけ。
それだけ必死だったし私も生きたかった。
「手が届きそうになった時、精霊が意地悪して防がれたんだ。そこからあんま覚えてないんだよね」
多分私の精神が消えちゃったんだと思う。
「気づいたら東郷さんが泣きながら私を抱きしめてくれたの。それが嬉しくて泣いちゃった。その後は…」
「もう大丈夫かな。私も見てたしね」
「そっか…あのね、美穂ちゃんが最後背中押してくれた気がしたんだよね」
天の神の攻撃で一時押されていた時、美穂ちゃんと皆の声が聞こえた。
それがブースターのようになって押し返せた。
「ちゃんと届いてたんだ…良かった…」
安心したようにホッとため息をついた。
「話してくれてありがとう。友奈の辛さが知れて良かった」
「私も話を聞いてくれて嬉しかった」
「もう隠し事は無しだからね?」
「それは美穂ちゃんもだよ」
「…確かに」
少し私と似ている所もあるけど悪に対する姿勢が違う。
普通ならしたくない事を引き受け、道を開く。
それを勇気と言うんだろうけどその背中は傷だらけ。
なのに前を向いていれる。
その姿が眩しいし、羨ましい。
「そろそろ帰ろっか。あんま長く居たら心配されそうだし」
「そうだね」
この日々は私が望んだ世界でもある。
人が人として生きる、どうしてその言葉が出たのか分からないけど1つ言える。
その思いはこれまで生きてきた人が持つ純粋な願いなんだって。
ゆうみほ回でした。
2人とも勇者の力を束ね神化?した者ですからね。
たまには勇者部組とも絡ませないと。