勇者部の活動は多岐に渡る。
校内に限らず幼稚園、地元の会社、果ては市と大小関係ない。
ただ規模が大きいと準備や手続きに時間を有するから基本保留にする。
学生は勉強するのが本業だしね。
大戦後、妙にメディアからの依頼件数が多くなったらしいけど黒花さんが丁重に断っている。
勇者の名が好評されたタイミングなのもある。
個人的な意見としてはこじんまりとやるのが好きなんだけど。
今回はソフトボール部の試合の助っ人が入っていた。
練習試合だからガチにならなくていいとの事。
代表には友奈と夏凛が選出され私は観戦しに行くだけ。
それにソフトボール部には燐が所属している。
やっているのは知っていたけど試合そのものは見たことが無かった。
野球に比べ規模が小さいし細かなルールに差があるもののスピード感ある試合が行える。
「ピッチャー友奈、ファースト夏凛…いい守備位置だね」
ファーストは如何に早く捕球するかで勝負が分かれる重要なポジ故、焦るとミスりやすい。
修羅場をいくつも乗り越えたし身体も柔らかいなら問題ない。
ピッチャーはランナーを背負った時にどれだけ自信を持って投げれるかが大切。
なぜば大抵なんとかなるで乗り切った友奈なら逆に安心感すらある。
ちなみに燐はライトの守備。
試合は学校の校庭で行われたから外から観戦する事になった。
誘ったのは蛍だけだったが東郷と園子が見に来てた。
「友奈ちゃーーん!!完全試合期待してるわー!」
「ホームラン打っちゃえにぼっしー!!」
「えっと…これが通常なの?」
「昔のノリってやつだから気にしないで」
旗まで作ってるのはいくらなんでもやりすぎだと思う…
試合そのものは危なげなく進んでいた。
友奈が三振を取り、夏凛がヒットを打ち、燐や他の部員が繋ぎ2ー0。
勇者部で運動ができる2人がいる以上負ける見込みはないはずだった。
7回2アウトから友奈のピッチングが乱れ2,3塁のピンチ。
一発出れば逆転もある状況。
息を整え真っ直ぐキャッチャーを見つめ、構えの姿勢を少し取ったのち投げる。
選んだ球種はストレート。
しかしバッターは狙ってたのか芯で捉え振り抜いた。
快音と共に打たれたボールは内野を超えレフトへ。
2アウトである以上ランナーは既に走り出しており抜ければ同点は確実。
しかも長打を予想して後ろに下がっていたのか燐が猛ダッシュで前進してる。
間に合わないと悟ったのか前に飛びグラブを伸ばす。
ダイビングキャッチ、取れればMVP外せば戦犯。
私は息を飲んでその瞬間を焼き付ける。
ボールはグラブの中に入るも全身を地面にうった反動で跳ねあがった。
手を丸め何とか抑え込み勢いよくグラブをあげる。
審判が入ったのを確認しゲームセットとなった。
起き上がった燐は顔まで土まみれでだったけど満面の笑みで戻って来た。
「痛てて…あちこち沁みるよ…」
「あんな派手にやったんだもん。擦り傷で済んで良かったよ」
保健室の先生が不在だったから私が変わりに消毒した。
消毒液とガーゼだけ拝借した以外弄ってないし大丈夫でしょ。
「2人も依頼引き受けてくれてありがとうね」
「全然いいよ!美穂ちゃんの友達なら猶更だよ!」
「良いプレー見れたし今日空きがあって良かったわ」
付き添いで友奈と夏凛が来てくれた。
「たまたま届いただけだって」
「運も実力の内って言うし。あのプレーは燐が頑張った結果んだから誇りなよ」
「そっか…うん、そうだね!」
何事もポジティブに考えないと自殺未遂した時になっちゃうからね。
「2人とも勇者って聞いたけどまったくそう見えないんだけどね」
「え…?」
「アンタ…今なんて言った…?」
友奈と夏凛の表情が固まる。
「燐ッ!?それ言ったらダメだよ!」
「あっ…!美穂ちゃんごめん!」
「大丈夫。こっちと会わないと踏んで言わなかった私の責任だし」
「どういう事なの?」
「簡単に言えば2人の前で私が変身してバレた」
「何やってんのよ…」
2人は誰が勇者か知ってるんだね。
というか黒花さん殆ど喋ってたなんて聞いてないよ。
「2人は大赦の人なの?」
「ううん、普通の学生だよ」
「先生に助けられたわね」
「2人にもだよ。今まで黙っててくれたしね」
「あんな誓約書見せられたらね…」
全て終わったし黒花さん問い詰めるか。
変なこと書かさしてたらぶん殴って修正してやる。
「今後皆さんが勇者だった事は内緒にするので安心していいですよ」
「ならいいけど。まぁ美穂の友達だから信用できるし」
「しかも同い歳でしょ!凄い縁だよ!」
友奈が燐と蛍の手を取りブンブン振ってる。
本音を言えば2人を勇者達に近づけるのを意図的に避けていた。
バーテックスや外の世界を気にせず生きて欲しいし、1人の友として私と接してもらいたかった。
誰もが持つ日常とはかけ離れた日々だったからこそ望んだ当たり前の願い。
勇者の姿を晒した日、帰ってきて1人でかなり葛藤した。
次会った時どんな顔するのか、無理やり親友関係を続けちゃうのか。
まるで喧嘩した後の賢者タイムみたいにずっと悩んでいた。
結果は私の考え過ぎ。
いつも通り接してくれたし逆に謝罪を受けた。
『美穂ちゃんに負担かけてごめんなさい!』
なんて言われたら困惑するよ。
でも安心出来たし良かった。
「燐も家帰って綺麗にしたいだろうし帰ろうか」
「部室のシャワーは落ち着かなかったんだよね」
「それじゃまたね〜!あっ、依頼も待ってるからね!」
今日は燐の家に私と蛍が泊まりに行く事になっていたから2人とお別れをした。
燐の家に来るのは久しぶり。
まぁ自殺未遂の時は訪問してないからノーカウントで。
「狭くてごめんね」
「大丈夫、お母さんは帰ってくるの?」
「ううん。泊まりで行ってるから気にしないで」
相変わらずの出張続き。
1人で何とかなるけど受験も控えているから辛そう。
「燐は風呂入ってきなよ。ご飯は作っとくから」
「え!いいよ!2人は座ってていいのに!」
「私たちにも手伝わせて。疲れてるのに余計負担にさせたくないしね」
「2人とも…ありがとう」
「余談だけど昨日の夕飯は?」
「肉じゃがだよ」
「了解〜」
燐が着替えを持って浴室へ入るのを確認し冷蔵庫の物色を始める。
「んー…蛍、料理スキルはある?」
「多少なら。でも自信は無いかも…」
「おっけー。なら王道で行こう」
玉ねぎ、じゃがいも、人参、肉を取り出し棚からカレールーを取り出す。
「これだけあれば行ける。炊き込みは急速で何とかなるでしょ」
「カレーね。私は何すればいい?」
「野菜の皮むきと切る作業をして欲しい。その間お米研ぐからさ」
「任せて」
自信ないと言ってたにも関わらず包丁さばきがいい。
基本を抑えられてるし安定感もある。
米を研ぎ終え炊飯器を起動させる。
「ふー…気持ちよかった~」
「あがるの早いね」
「まぁ汚れは全部落としたし汗を流すだけだったからね。今日はカレー?」
「そうだよ。燐は待っててね」
「はーい」
肉を先に鍋に入れ少し焼いた後ルーと野菜を放り込み煮込む。
シンプルに出来るし美味い。
「蛍入ってきていいよ。後は私に任せて」
「分かったよ」
火の加減を調整しながら煮込み続ける。
簡単にやるなら気にするポイントじゃないけど多少は工夫させたい。
「手伝おっか? 」
「んー…サラダ作ってもらえる?」
「あいよー」
蛍からしたら待ってて欲しいんだろうけど今から1品作るとしたら微妙に時間が足りないからこっそりやってもらうことにした。
ある程度煮込め蛍が上がって来たから交代で入った。
親友とは言え他人の家の風呂に入るのは変に緊張する。
あがったらご飯が炊きあがっていたらしく盛り付けをしていた。
案外早く出来るもんだね。
『いただきまーす!!!』
…うむ、無難に美味しい。
野菜も大きすぎない程度に切られているから食べやすい。
「美味しいーーー!!」
「そこまで喜ぶなんて…でも嬉しい」
「味は殆ど小細工入れてないし…やっぱ愛が込められてるのが効いてるのかな」
「ブフッ!?」
「うわっ!蛍ちゃん大丈夫!?」
「ゲホッ、ゲホッ…大丈夫…」
「驚くようなこと言った?」
「いや合ってるんだけど言うのが急なの…」
ワイワイと過ごしていたら日付をまたごうとしていたから布団に潜ることにした。
普通別々で寝るが燐が並んで寝たいとの要望があった。
「川の字寝なのは分かるけど何で私が真ん中…」
普通燐が中心になるでしょうに!
どうしてこうなったのやら…
「寝る場所は好きに決めていいって言ったからだよ~」
「そうだけどさぁ…」
「美穂、もう諦めた方がいいよ」
「分かったよ…って蛍グルだった?」
「棚からぼたもちなだけ」
「ははぁ…」
何度か添い寝したから分かる。
絶対なにかある。
モゾモゾと布団の中で動く。
両端から吐息が聞こえるんじゃ落ち着かないって。
それに2人が近づいてきてる。
「えっと…何か用かな?」
自分でも何言ってるか分からないけど出てきた言葉がそれだった。
でも聞こえてないのか2人が私の布団の中へ侵入して来た。
頭の中がバグりそうなくらい混乱してる。
「美穂ちゃん」「美穂」
両耳から違う呼び名が聞こえる。
ASMRっぽいけどそんなのの比べ物にならないくらいヤバい。
「な、なななんでしょうカァ??」
声裏返るわ手汗出るわで悲惨。
園子の時より危険だよこれ!!
「いつも傍にいてくれてありがとう。美穂がいるだけで安心出来るの」
「いつも気にかけてくれてありがとう。1人でいる寂しさを無くしてくれるの嬉しいんだ」
小声で交互に感謝の言葉を述べる。
背筋がゾクゾクしこしょばゆい。
「あ、ありがとう…?」
「もう、緊張しなくていいのに〜」
「逆にするよ!?それに恥ずかしいって!!」
「照れてるとこ初めて見た。とっても顔赤いよ」
「当たり前でしょうが!」
大声あげてツッコミたかったけど抑える。
「フッ」
「ふわぁ!?」
突如耳元に柔らかな風が入ってきた。
それだけで私の背中がゾクゾクと震え上がる。
「凄い跳ねた…耳弱いの?」
「いや、ただ驚いただけ…」
「ホントぉ?可愛い声出してたけど?」
「燐、後で覚えときなよ」
「うわ〜やられる〜」
3人で軽く笑いあった。
こうやって日常を過ごせるのは私にとっても安心になる。
2人が更に耳を食べるのかってくらいまで近づいてきた。
「「大好きだよ」」
「!!!???」
人生2度目の突然告白。
これは好意?それとも愛?
グルグル思考を巡らせていた時、両頬が一気に熱くなった。
「はっ、あっ…」
「エヘヘ…しちゃったね」
「うん、本当は口が良かったんだけどね 」
「蛍ちゃん大胆だよ〜」
「り、ん…ほた、る…」
「美穂ちゃん?」
混乱してパクパクと口が動くだけ。
「これって…えぇ…?」
「バクっちゃった…」
「なら、よいしょ…」
ふにんと私の顔に柔らかい物が当たる。
「うえええ!?蛍ッ!?」
蛍が私に密着し頭を撫でていた。
つまり顔にあるのは…
「ずるいー!私もするー!」
反対側からしなやかな体がくっついてきた。
めっちゃ暖かくなったのに心拍数がどんどん下がる。
これが母性っていうのかな…?
「…2人ともありがとう」
心臓がバクバクしながらも何とか落ちつきを取り戻せた。
「びっくりさせてごめんね。こうしないと伝えられなくて」
「まぁ計画は美穂ちゃんが入ってる時にたてたんだけどね…」
ぶっつけ本番にしては出来過ぎだって。
「そんなことないよ。思いはちゃんと受け止められたし」
「そっか…安心したら眠くなっちゃた」
「このまま寝ちゃおっか」
気持ちいしいっか…
「おやすみ…」
目を閉じるとすぐに夢の中へ意識が消えていった。
今日はいい夢見れそう。
ハーレムルート化してきてますがそこまで大規模にしません。
身内に甘々なだけです。
心を許してるのでガードも緩いんです。
以上!閉廷!!