受験勉強も本格化してきており周りの顔つきが険しくなってきた。
模試や大規模テストで自分の立ち位置がハッキリした影響もある。
私は可もなく不可もなくって所だったからこのまま続けるだけ。
目指す高校は中堅やや上だから少し力入れて頑張れば大丈夫。
問題は…
「ここまた間違えてるよ」
「ふええ〜…」
目の前で頭を抱えている燐。
私と蛍が同じ高校を第1志望にしてると聞き、一緒に目指す事になった。
とは言え偏差値と成績が釣り合わってないからかなり頑張る必要がある。
「2人とも志望校下げない?」
「目的が変わってるよ」
「燐が頑張るって言うから私たちがサポートしてるの忘れないでね?」
「そうだけどさぁ…」
愚痴を零すも再び問題集と向き合う。
ほとんど仕送り状態となってるから塾に通えず学校の勉強ですらやっと。
だから私たちの学校に行くって聞いた時は耳を疑った。
けど燐の強い熱意に根負けし3人で学校終わりに燐の家に集まり教え合う事にした。
「そういえば蛍は資金の方は大丈夫なの?」
「元々持ってるお金で足りるよ。それに足りなかったら分家が出してくれるって」
さすが名家。
両親がいないとしても積み上げてきたものが違い過ぎる。
普通に暮らすだけでも全て消費するにはかなりの時間かかるだろうしね。
ただ成人した後が怖いと思ってしまう。
園子の所じゃ無いけど変な習わしとかありそう。
これって仕事病なのかな?
「美穂はどうなの?」
「私は先生が出してくれるから問題ないし給料も残ってるから」
「あんな大仕事したんだから相当あるもんね」
黒花さんから報酬を貰った数日後に名義不明の預金があった。
桁が凄すぎたけど恐らく大赦からだろう。
報酬と口止め料の合算ってとこかな。
生活は黒花さんが管理してくれるから無駄な支出が出ないようにするだけ。
「2人とも余裕そうだね特に美穂ちゃんは…」
「そんな事ないって。私だって死にものぐるいでやってるよ」
「嘘つけー!宿題と授業だけで平均90点出すくせに!」
「真面目に受けてるんで」
「私だって真面目に受けてるよ!なのに点数上がらないのは変だって!」
「そう言われてもねぇ…」
言い訳にしか聞こえないけど乃木の血を引いてるんで。
園子は散華の影響もあるけど直ぐに見て覚えることは無いと思う。
ただ銀の証言では『居眠りしてでも答えられる』と言ってたけど本当かな…
「その頭この期間だけ貸してくれない?」
「フランケンシュタインか」
「人格入れ替わるかもよ」
「私が美穂ちゃんに…何か物壊しそう」
「今度はキング○ングかい」
「逆に燐の方は器用になるかもね」
「それはある。意外と手先細かく動かせるし」
談笑しちゃってるけど楽しそうだから良し!
まぁ損をするのは燐だけになるけど。
「ふわぁ…眠っ…」
「余裕そうな欠伸だね」
「体育の日は眠くなるんだって」
私はその場にゴロンと寝転がる。
無機質な天井が見える。
「寝てたら起こしてね〜」
「自分で起きなって」
「へいへい」
聞こえてくるのはペンを走らす音と軽いため息。
見なくてもその光景をイメージするのは容易。
1人寝転がるとか舐めプ甚だしいけど出来ちゃうもんは仕方ない。
そのまま天井を眺め続けボーッとしていた。
「今日はここまで!」
燐の力強い声で意識を戻した。
横を見ると窓がオレンジ色に光っていた。
「ん〜…お疲れ様」
「何もしてないのによく言うよ」
「それが美穂らしいんだよ」
「そこは否定して欲しかったよ蛍ちゃん…」
玄関まで見送ってもらい帰宅の時に着く。
皆には遅れることは事前に伝えてあるから心置き無く帰れる。
段々暑くなってきたのか汗が皮膚から滲み出てくる。
「そろそろ半袖着ようかな」
「もう夏だもんね」
「ホント。あっという間だよ」
バス停までの短い距離だけど一緒に帰る。
私は街の方へ向かい、蛍は山の方へ向かうバスに乗るから話せる時間は短い。
「蛍は変わらなくていいね」
「逆に変われて羨ましいよ」
「そんな事ないって。私たちは悪い変化だから」
「別にヤンキーになった訳じゃないから気にしないよ」
「極端な例だね…」
気づいたらバス停に着いてしまっていた。
あっという間過ぎる。
「じゃまた明日」
「うん、またね」
手を振りながら蛍は信号の無い横断歩道へ向かう。
真っ直ぐな道だから信号がなくても車の位置は分かる。
すると遠くからエンジン音が聞こえてきた。
音からして普通自動車といったところ。
にしてもやけに騒がしいような…
「サイレン?」
左から2つのライトが物凄い速さで向かってきていてその背後を赤い光が外壁を照らしていた。
暴走車が追いかけられてるのか。
実に物騒…
「蛍?」
さっき渡ろうとしていた蛍はどこに?
音を聞いたんだから渡る前か終わった頃だろう。
けど現実は違った。
普段通りの足取りで渡っていた。
「バカッ!!」
鞄を投げ捨て蛍の元へ駆け出す。
こんな時勇者の力があればと思ったけどあんな奇跡要らない。
これが試練だと言うなら証明するだけだ。
体がライトに照らされたのに気づいたのか暴走車の方を向いた。
接触まであと僅か。
その前に…!
「蛍ーーーーーッッッ!!!」
腹の底から声を出し立ち尽くした蛍に飛びつく。
その瞬間、目の前が白くなり甲高い音とともに全ての感覚が消える。
私がどうなったか分からないけど吹き飛んだ感覚は無かった。
「き…だい…ぶ…か!?」
耳鳴りが残ってたけど男性の低い声が聞こえる。
「は…い…」
口がカラカラに乾いていたけど返事をする。
視界も黒くなっていき警察官の姿がクリアになった。
「少し動けるかい?」
「蛍は…あの!女の子がいませんでした!?」
勢いよく起き上がり警官に詰め寄る。
私が無事でも蛍が無事じゃなきゃダメだ。
「大丈夫、転んだ時に擦り傷を負っただけだよ。今はあそこで休んでもらってるから安心して」
指さした先にはパトカーがランプを回しながら止まっていた。
痛む体を動かし走り出す。
自分の目で確かめなきゃいけない。
夢じゃないって思いたい。
近くに止まってるはずなのに遠く感じる。
「蛍…蛍…蛍ッ…!」
何度も名前を呼びながらパトカーにたどり着き、片側だけ開けられたドアから車内を見る。
そこには顔を下に向けた蛍が座っていた。
「蛍ッ!」
「美穂…?美穂ッ!」
警察官が中にいたけど構わず抱き合った。
蛍の体から温もりを感じとれた。
良かった…生きてる…
「ごめんなさい…!私の不注意で危ない目に合わせたの…!」
「いいんだよ…蛍が生きててくれるだけで嬉しいんだから」
「でもッ!」
ペチンとおでこを弾く。
軽くだったけど突然やったからか唖然としてる。
「罰が欲しいならあげる。でも何か償うとかはやめてね。隣に入てくれる事が私の幸福だから」
燐の自殺未遂もだったけど死なれることよりも居なくなる方が怖く感じる。
それに蛍が居なくなったら杏が悲しむしね。
「ほんと優し過ぎるよ…」
「よく言われる」
蛍の頭をポンポンと叩く。
泣いたのか目が赤くなってたけど笑ってくれた。
軽く事情聴取を受け、蛍とは別のパトカーで送ってもらった。
「最近こういう事件って多いですか?」
聞くタイミングも無いだろうから話しかけてみた。
「そうですね。あの異常事態から増えました」
「異常事態…空が赤くなった時ですか?」
「はい。巷ではあの光を浴びたら凶暴化するとか言われてるらしいので気をつけてください」
「…忠告ありがとうございます」
真実は決して公表できない。
けどこの世界は私たちが望んだものだ。
人がどこまで変われるか見定め導く責務がある。
その為に私に出来る全てを費やす。それだけだ。
家の前はさすがに迷惑かけるから少し離れた場所で降ろしてもらった。
辺りは真っ暗になっていて虫が鳴いていた。
ここまで遅くなったらご飯食べ終わってるんだろな。
そんなことを思って鍵を開け入るといい匂いがしてきた。
「おかえり〜。今日は遅かったな」
銀が廊下の壁に寄りかかるように座っていた。
「まぁ色々あってね」
「皆待ってるから早く風呂入りなよ」
「待って、食べてないの?」
「当たり前だろ?美穂がいないと始まらないって」
優しいのか律儀なのか分からないねこりゃ…
「なら風呂入る前に食べよっか。どうせ珠子が腹空かしてそうだし」
「よく分かってる〜。伝えとくから手洗って着替えろよー」
「分かったよ」
無くして初めてわかる大切さって話がある。
私も経験したし無くした時の喪失感は半端ない。
これも同じ。変わりゆく世界に残る数少ない変わらない景色。
長く続くことを祈りたいけどそれは叶わないかもしれない。
だからこそ私は刻み続ける。
胸に輝く星が消えるその一瞬まで。
不定期更新と言ったな。あれは嘘だ。
という訳でもなく溜め込んでいたものを吐き出しているので根本的な解決にはなってません。
ホント何百と続けている人の頭の中を知りたいですね。
自分もかなり妄想して考えてますけどワンパターン化しちゃうんですよね。
あと話数で検索かけたらほとんどの人評価高くて笑っちゃいました。
自分やる気だけは凄いんだなぁ。(自虐)
まぁ評価など気にせず好きに突っ走るだけ!
だからよぉ…止まるんじゃねぇぞ…