生者に夢を、死者に花束を   作:薫製

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何を残すか

今日はある人物に久しぶりに呼び出され英霊の碑に胡座をかいて待っていた。

波と鳥の鳴き声以外聞こえないのは相変わらず。

まぁ永遠の眠りにつくっていうなら最後の場所だが。

 

「遅くなりました」

 

「構わん。待つのは慣れている」

 

立ち上がり声の方を見るとオレの信頼出来る後輩が私服姿で現れた。

訣別の儀で左目の視力をほとんど奪われ眼帯をつけている。

それ以外は大きな変化もなく元気そうだ。

 

「オレの望んだ世界はどうだい?楽しめてるか」

 

「私個人としては普通ですが大赦は最悪と思ってますよ」

 

「ったく。ゴミ処理してるのにまだ態度変えないのか」

 

「人柱にするって案が出てましたから」

 

「1回潰すか」

 

「正気ですか?」

 

「冗談に決まってんだろ。それにジジイがいるなら尚更潰さんよ。んで要件は?」

 

「その大赦から勇者さ…勇者に伝言があるそうです」

 

園子とオレで大赦からアイツらに直接関わらないことを約束させた。

責任者はもちろんオレで窓口の役割をしている。

 

「ここで話すってことはよからぬことらしいな」

 

「はい。伝言内容は…」

 

その内容はアイツらの気持ちをガン無視した内容だった。

 

「本気か?」

 

「そのようです」

 

「…バカか。せっかく立ち直ってきたのにまた戻すのか」

 

今の大赦は前のような統一された思考で動いていない。

権力を持っているだけの空っぽな機関。

この依頼もジジイの目に入っていないだろな。

 

「私も反対しましたがどんな形であれ作りたそうです」

 

「どんな形でも…本当にそう言ったのか?」

 

「はい」

 

「なるほどな…」

 

その言葉を聞き、オレの中にひとつの案が浮かんだ。

過去を掘り返してもアイツらの負担にならない案が。

 

「よし、引き受けよう」

 

「いいんですか?あの子たちは辛いのに」

 

「安心しろ。オレにいい案がある」

 

「信じていいんですか…」

 

「信じろ。それしか言えんからな」

 

目を伏せながらため息をつかれた。

 

オレはお前の先輩なんだから信じろっつーの。

「なら任します」

 

「あとこっちからの伝言頼めるか?」

 

「私は連絡係では無いんですが…なんでしょう」

 

「あぁ…」

 

伝言を託し解散となった。

見てよろクソ野郎共、これがオレなりの辞表ってやつだ。

──────

黒花さんから緊急招集を受け部室に集められた。

その中には西暦組も含まれている。

 

「よし全員集まったな」

 

パンと手を鳴らし黒板の前に立っている。

 

「新入り3人がいませんよ?」

 

「アイツらは今回の話とは無関係だ」

 

「勇者関連…なんですね」

 

「部長ご名答〜。しかも皆大好き大赦からの依頼だ」

 

鞄から1冊の本を取り出し机に置いた。

柄の着いた青色の表紙に書かれていたのは『勇者御記』の文字。

かつて乃木若葉が歴史を、友奈が本音を綴った本。

 

「…人の心とか無いんですか」

 

全員の顔が露骨に曇る。

特に友奈は明確な拒否反応すら出してる。

 

「それは思う。だが断れない依頼なんでな」

 

「くろっち。皆の事を思って受けたの?」

 

「あぁ、そのつもりだ」

 

「ならそれは間違ってます。友奈ちゃんをまた苦しめるんですか」

 

「友奈の辛さは分かっている。そのうえで引き受けた」

 

少し息を多く吸い間を空ける。

 

「依頼内容は『始まりの勇者から終わりの勇者が辿った軌跡をまとめろ』らしい」

 

空気が固まった。

確かに初期の方は文献が無くあっても検閲が入っていて使い物にならない。

ならばもう一度作ればいい、生き証人となった勇者たちを使って完全な勇者御記を。

 

「ふざけるな!そんな事認められるか!」

 

夏凛が黒花さんに掴みかかる。

 

「オレに怒るのはお門違いだが」

 

「同罪よ!こんな馬鹿げた提案をよく話せるわね!」

 

「黒花先生、私は貴方を見損なったわ」

 

「いつもなら断るのに引き受けるなんてらしくないです」

 

「どうしたんだよ…」

 

「まさかだと思うけど何か弱みとか掴まれてたりしないか?」

 

珠子の予測に息を飲む。

こんな依頼を断れない別の理由があるに違いない。

 

「先生、何か言えない訳があるんですか?」

 

風先輩が訴えるも顔色一つも変えない。

 

「勇者部六ヶ条、忘れたわけじゃ無いですよね」

 

「もちろん、というかお前ら一旦落ち着け。まだ話終わってない」

 

夏凛の手を払い除け服を整える。

 

「確かにバカげた提案だし納得はしてない。だがやろうとしてる事には賛成だ。だから…」

 

黒花さんは御記を持ちゴミ箱へ勢いよく投げ捨てた。

 

「オレたちで一から作ろうじゃねぇか」

 

「は???」

 

全く分からない。

一から?何を?

 

「やりすぎたか?いやぁ〜そこまで食いつくとは思わなくてな」

 

「じゃ…じゃあ今までのは…」

 

「導入兼冗談だ」

 

プツンと私の中で何かが切れた。

 

「夏凛」

 

「えぇ、タイミング合わせなさい」

 

「何だお前らそんな顔しかめて…」

 

手加減ゼロのストレートを顔面に両側からぶつける。

助走は無いけどかなり勢いつけたからドアに向かって吹き飛んだ。

 

「「大バカ野郎がぁぁぁ!!」」

 

「おおおおー。ハモってる〜」

 

「ドア壊さないでよ〜」

 

「何か鈍い音したけど大丈夫かな?」

 

「大丈夫ですよ友奈さん。あれでも美穂の師匠なんで」

 

「お・前・ら・なぁ!!加減をし…ゴハァ!?」

 

ドアに寄りかかるように耐えた黒花さんに平手打ちし横に飛ばす。

今度は棚にぶつかり倒れた。

 

「冗談の限度ぐらい分かるでしょうが!」

 

「ゲボッ…なら暴力の限度も弁えろ!」

 

「お黙り!あなたは冗談の引き際がガバなんですよ!」

 

「お前はオレの親か!?」

 

「もうめちゃくちゃだよ…」

 

 

 

「痛っ…派手に殴りやがって…」

 

頬を擦りながら再び前に立つ。

私は正しいことをした確固たる自信があるから腕を組み睨みつける感じで話を聞く。

 

「アレは報告書みたいなもんだ。結城のも今頃は硬っ苦しく変換されてるだろう。そんなの残しても印象に残らんだろ」

 

「待ってください。誰に見せようと思ってるんですか?」

 

「おっと、肝心な事言い忘れてた。オレの計画は『四国に住む人の記憶に残る勇者御記を作成する』だ」

 

今度は驚きで場の空気が固まった。

それは勇者の資料をちまちま改編しながら出している大赦に真っ向から喧嘩売る事になる。

 

「公表するんですか…」

 

「そうだ、嘘偽りない真実を伝え後世に残す。オレたちの頑張りを無駄にしないためにもな」

 

「思いには納得するけど本質的には変わってないわ」

 

結局書くことには変わりない。

このまま流せば速攻でバレる。

 

「だからお前らの知恵と力が欲しいんだよ。正確に言えば勇者部として積み上げてきた経験だがな」

 

「経験?」

 

「この3年ちょいに様々なことしたろ。そこで得たものを全て注ぎ込むんだ。そうすれば大赦の思惑とは全く違う御記が完成すると踏んだ」

 

やっと黒花さんの思惑が分かった。

作ろうとしているのは御記じゃない。

300年という長い時間をかけて紡がれた物語を作ろうとしてるんだ。

 

「子供向けレベルまでに落とすんですか」

 

「小説と演劇の二刀流だ」

 

「直ぐに出来る話じゃないですね」

 

「早く作れとは言わんさ。それぞれの生活に合わせてやればいい」

 

とはいえあまり長い時間かけれないのは事実。

今年は受験生が多いから進歩しなさそうだけどやれるだけやるまでだ。

 

「それを最初に言って欲しかったです…」

 

「ひねくれてるんでな」

 

なら早く治せと言いたい…

こんな時に発作みたいに起こさないで。

その日は黒花さんの提案に納得し後日役決めとなった。

 

夜。

何故か黒花さんも着いてきて久しぶりに卓を囲んだ。

 

「オレの奢りの寿司だ。たんと食えよ」

 

「まだ作ってなくて良かった〜」

 

「作ってたら頼まんさ」

 

「それでも1人分足りなかったけど」

 

6人分となると桶もかなり大きく箸でとるのも一苦労。

 

「それにしても今日の黒花さん酷かったですよ」

 

「やりすぎた事は自覚してるし反省する。だが怒りすぎじゃないか?」

 

「友奈のこと考えたらあれくらい当然です」

 

温かいお茶を飲み一服する。

前もそうだったけど冗談とヘイトが極振りしてる。

 

 

「分かりましたよ。これ以上叱られると飯が不味くなっちまう」

 

雑な逃げ方して…

 

こっそり黒花さんのマグロ食ってやろうかな。

 

「モグモグ…そういえば大赦になんて説明するんだ?」

 

「そりゃ『てめぇらのケツに御記ぶっ込んでやる』ってな」

 

「ブフッ!?」

 

「うわっ!美穂が吹いた!」

 

「千早さん今のはちょっと…」

 

「んだよ。事実だろが」

 

「自分で数秒前言ったこと忘れるとか頭鶏なの? 」

 

吹き出したご飯粒を処理しながら黒花さんを見る。

これまでの黒花さんの笑顔には何か考え事をしていたからか影が混じっている感じだった。

その影は今は感じず純粋?に笑えてるように思う。

まぁ『私』になってないから本音じゃ無いんだろうけど。

その人格を全面に出されると対応しにくいから程々がいい。

それに私たちの家族の一員なんだしね。

寿司パはかなり続き黒花さんが帰る頃には精神的に疲れた。




勇者部として何か形に残るようなものをしたいと考えこの話にしました。
簡単に言えばプレイバックですね。
シリーズものではありますがタイミング見て続ける感じです。
苦し紛れの繋ぎネタにしか見えない?
…正ッ解!(やけくそ)
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