今日はワクワクドキドキの運動会。
陽キャは輝き陰キャは地獄の催し。
そして、恋と汗が飛び交う修羅場でもある。
「今年もグラウンドが燃えてるなぁ」
「熱いねー。いやぁ、テンション上がるね!」
「私は暑いよ…フゥ…」
蛍は水分を取りながら椅子に座って観戦していた。
組み分けはA組、B組、C組とクラス番号に沿って行っている。
尚、勇者部全員とバラバラになりB組は私だけだった。
というかA組が過剰戦力過ぎるでしょ!!
C組は銀と樹ちゃんがいるだけで後はA組になっている。
勝てる気しないよ…
「やっぱ勇者部の皆強いよね〜」
「だねー。私一人じゃ太刀打ち出来ないよ」
スコアもAが頭1つ抜けてる。
ちなみにビリは私たちB組。
「次は…二人三脚か…」
「あっ!蛍ちゃん行かないと!」
「もう行くの?」
「だって早めに点呼するんだよ!?」
「そうだった!じゃ行ってくるね」
「気をつけてね〜」
2人に手を振り椅子に座る。
客席は当然無いから教室から自分の椅子を持ってきてグランドに並べた。
太陽の下だと暑くなって嫌だけど地べたよりかはマシ。
「よっ、随分負けてんな」
「煽りに来たんですか」
黒花さんがニヤニヤしながら来た。
「圧倒的火力にトリッキーな戦略、そして平凡。戦力差は明らかだろ?」
「分かってますよ…私たちじゃ舞台にすら上がれませんよ」
「あぁ、だからオレが上げてやるよ」
「は?」
いきなり何を言って?
舞台に上がる?どうやって?
「まぁ、お楽しみって事で。今は2人の活躍見てやれよ」
ポンと肩を叩き離れていった。
その後ろ姿を唖然として見てたけど空砲の音で現実に戻された。
コースに設置されている三角コーンを回りゴールに戻る。
それを繰り返し全員がクリアした順位で得点が入る。
大切なのはお互いの呼吸を合わせ動くこと。
まさに2人で1人ってやつだね。
どの組も止まったり転けそうになったりと上手くいっている所はほとんど見当たらない。
いよいよ燐と蛍の番が回ってきた。
手汗が滲み出て心臓がバクバクする。
親が自分の子供みて変に緊張する気持ちがよく分かる。
2人はゆっくりとだけど着実に歩みを進めていた。
スピードよりも確実性を取ったのは偉いと思う。
ターンも焦ることなく突破し難なく交代した。
その瞬間1人で手を叩きガッツポーズを決めた。
後で褒めちぎってあげないとね。
結果は、2位と順当な所に収まった。
「2人ともお疲れ様〜!いやぁ凄かったよ!!」
「そんな事ないよ。それに燐のお陰だしね」
「いやいや!蛍ちゃんが合わせてくれたからだよ!」
お互い譲り合って謙虚だなぁ。
そこが仲の良さでもあるしね。
「もうお昼だっけ?」
「違うよ。先生による50メートル走だよ」
「へー、先生かぁ…待って、これ得点入るの?」
「入るっぽいね。走れない先生は代走頼んでるから。私たちの先生は…黒花?」
思わず顔を覆い空を仰いでしまった。
さっきの言葉の意味と恥ずかしさが同時に襲いかかり体温がどんどん上がるのを感じた。
肩を軽く叩かれ手を離すと勇者たちがやってきていた。
「先生出るとか聞いてないんだけど?」
「私もさっき聞いたんだよ…」
「この競技B組絶対勝つね〜」
「直線一本勝負ですしね」
黒花さんの実力を知る人からすれば結果は見えている。
しかも黒のジャージに着替えガチる気満々。
「手加減無しでやる気だ!」
「私たち負け確定じゃない」
「併走する先生が気の毒ね…」
東郷の言葉通り、本当に周りが気の毒に感じる結果だった。
走る姿は正に影そのもの。
今は人の体に収まっているはずなのに使徒だった頃を彷彿とさせる走り。
文句なしの1位でB組に貢献する形になった。
帰ってきたら皆から質問攻めにあっていたけど
『何事も公平性は大事だろ?』
とニヤケながら答えていた。
そして待ちに待ったお昼。
今日の弁当は3人が作って持たせてくれた。
ただ、中身は開けてからのお楽しみらしく見てない。
「さてさて〜。中身は…っと」
入っていたのはのりご飯、卵焼き、唐揚げなどのといった王道の具材。
シンプル好きな私には刺さるし冷食を使ってないのも更にいい。
「はぁ〜…美味しい〜…」
「だろー?いやぁ、朝早く起きて良かったな〜」
「うんうん、よく分か…あああっ!?」
驚きながら振り向いたせいで危うく弁当を落としかけた。
そこには愛妻弁当を作ってくれた3人が笑みを浮かべながら立っていたから。
「そんな驚く事じゃないでしょ」
「確かにそうだけどタイミングってのがあるよ…」
「顔が溶けてましたもんね」
その顔見られたのか…
写真撮られてたら絶対ソイツ殺ってやろ。
「にしても美味しいよ。元気が体の底から出てくる感じがするよ」
「三ノ輪さんにも作ってあげたら喜んでたわ」
「これ食べたら誰だって喜ぶって」
「あっ!タマちゃんだ!!」
弁当を持った燐と蛍が帰ってきた。
燐は家の都合上用意できないから蛍の家のお手伝いさんに頼んで作ってもらってた。
「見てよこのタコさん。綺麗だと思わない?」
「ちゃんとタコになってるね。誰が作ったの?」
「それは私が作りました。足作るの苦労したので不揃いかなと…」
「なーに言ってる!あんずのタコさんはちゃんとタコだぞ!!」
ちなみに2人のは高級ホテルが作ったような豪華なお弁当だった。
蛍が頭を抱えて『後でキツく言わないと…』とボヤいていた。
愛の重さは人それぞれだしね。
お昼を終え運動会も終盤。
眠気と疲労に耐え競技を行っていく。
点数も誤差範囲内とかなりの拮抗ぶり。
そして最後のプログラムであるクラス合同リレーが行われようとしていた。
「そんじゃ行ってくる」
2人と気合いのグータッチをしグラウンドの真ん中へ移動する。
各学年から2人選出した6人でリレーをしていく。
順番が勝負の鍵となるから念入りに確認しあった。
私たちの作戦は最初と最後を早い人に任せ真ん中のロスタイムを消す方針。
その中でも私はアンカーを任された。
他の組もアンカーは最速を入れてくるから責任重大だ。
「それがこの組み合わせとはね…」
A組は友奈、C組は銀と同士討ち状態。
「まさか美穂と友奈さんとやることになるなんて…燃えてくるじゃん!」
「2人とも強いからね!よーしっ!負けないぞー!」
2人ともやる気満々だ。
「手加減してもらっても?」
「ダメに決まってるだろう。それとせこい技も無しな」
「ゲェ…」
「そう言って美穂ちゃん強いんだから」
話していたら先頭の人がスタートラインに並ぶ。
『よーい…っ!』
パンと軽い音と共に戦いの火蓋が切られた。
それぞれ全力と想いを込めバトンを繋いでいく。
少ないからあっという間にアンカーまで来た。
反対側を見ると見慣れた生徒が走っていた。
「友奈、あれ夏凛?」
「そうだよ!」
「やっぱそこのチームズルいですって!」
最低友奈は負かしたいな。
ストレートに入ったのを確認し軽く助走しながら待つ。
そして重たいバトンが私の手に置かれた。
同時に前を向き自分の走るコースのみを視界に入れ走る。
歓声が人一倍大きくなるけど私の耳に強く聞こえるのは呼吸と鼓動だけ。
誰よりも前へ、その先に見えるゴールを越えるため走り続ける。
ここが。この瞬間が、私の魂の場所なんだから…!
カーブを抜け白いテープが見えた時、2人の息遣いがハッキリ聞こえた。
並び位置は同じ、負けられない想いを背負い負かすだけ。
「「「届けェェェェェ!!!」」」
咆哮に近い声を上げ私はテープに飛び込んだ。
土まみれになりながら倒れる。
空を仰ぎ荒い呼吸をする。
肺が痛いくらい空気を求めている。
痛みに耐えヨロヨロと起き上がるのがやっとなくらい疲れた。
『えーっと…しばらくお待ちください!』
困惑気味の声がスピーカーから聞こえた。
テントの方を見ると騒がしく動いている。
嫌な予感しかしない。
『アンカー3人のゴールがほぼ同じという事で…3組に1位のポイントを与えます!!』
聞こえてきたのは怒りと不満の声。
本来なら1人に与えられるものを3人で山分けするんだからそら文句も出る。
「動けるかーい…?」
「ギリギリ〜…」
「何か結果聞いて余計疲れた…」
「邪魔になるから戻ってからまた倒れよ〜…」
体にむち打ち何とか立ち上がり椅子に戻る。
本気の勝負はいいけどガラじゃないから余計疲れた。
運動会はあっという間に終わり、A、C、Bという順位になった。
最下位とはいえ最後のリレーで1位を取ってたらひっくり返せるくらいの点数差。
片付けを終え、待っててくれた3人と銀と共に帰った。
「ほんと惜しかったなぁ〜」
「最後はすごく熱い展開でしたよ」
「あんなの普通に出来るものじゃないわ」
「そんな拮抗してたんだ…」
「何か気配近いなって思ってたら…」
必死すぎて気にすらしてなかった。
燃やし尽くしてあの結果なら異論は無い。
これで私の中学生最後の運動会は幕を終えた。
今まで勇者の活動で制限されてたから手抜きしてたけど今年は本気でやれた。
お陰で心スッキリだ。
「高校でもひと暴れしますかね!」
「程々にしろよー」
「へいへい、分かってますよ」
「…」
「千景さん、大丈夫ですか?」
「えぇ…大丈夫…」
家着いたらご飯食べて早めに寝ますかね。
明日は筋肉痛確定だし。
ゆゆゆいでも描かれていた運動会ネタでした。
全員を何らかの形で入れないとと思いやったので軽めのオールスター回になりましたね。
そしてなんの脈絡も無くネタを放り込むいつものスタイル。
元ネタ伝わってるかなぁ…