TS転生娘は最強キャラロールプレイがしたい 作:TS最強娘万歳!
魔力操作で、一時的になら元の姿に戻れることを確認した後、あのロリコンクソトカゲの死体を持って帰って、地下に作った俺の研究施設で研究をすることにした。
あのトカゲが言っていた、『最硬』というのは伊達ではなく、俺の使ったような反則を使わなければ、壊したり、加工したりは難しい素材だった。
それ以外にも、内臓一つ一つが、開けてびっくりな特性を持っているのだから、驚きだった。
そうして、魔物狩りを続けつつ、何事もないと装って、暮らしていたのだが、一年後、十一の時に転機は訪れる。
妊娠をしたのだ。
箱入りの娘のお腹が大きくなっていくのだから、両親は大慌てだった。
最初は、夜中に抜け出して男とこっそり会っていたと誤魔化していたが、実際に生まれてきたのが卵だったため、誤魔化しも効かなくなった。
両親は、俺の存在を隠していたが、屋敷の誰かが密告をしたのだろう。騎士団がやってくる。
「エリン・スカーレット。お前は魔物の眷属か……?」
「そうではない……と言ったら?」
「お前の魔力波長を調査する。そうすれば、白黒はっきりするからな」
「そうですか」
正直なところ、魔力波長ならば簡単に偽装できる。
体が、ちょっとトカゲっぽくなった、というのが眷属となったということだろうか。とはいえ、体内の魔力循環に気をつけているうちは、その特徴も発現はしないのだが。
「調べる。手を出せ」
「はい」
よくわからない機械のようなものが手首へと当てられる。
なんというかパンデミックで急激に普及した体温計のような装置だった。興味深い。後でこっそり、一つもらっておきたいものだ。
ピーピーピー、と嫌な音がする。
「ふん、出たな、やはり魔物の眷属か……この波長は……登録ナンバー003……なっ、魔竜ヘルヒムだと……!」
「魔物の眷属だと、どうするのですか?」
不敵に笑って、穏やかに、騎士さんを見つめる。
心なしか、緊張に場が包まれているような気がする。
「隊長!」
「私の一存では決めかねる。本部に至急連絡だ。この女は、魔力封じの手枷につないでおけ」
「はい!」
魔力封じの金属なら、俺も研究した。
でもあれは、外部から、魔力の流れを乱すものだ。体の深くで、綿密に魔力を編めば、簡単に突破することができる。最強キャラは、封印能力なんかも突破するのも当然だ。
だが、ここは大人しく繋がれておくことにする。
そういう流れだと思った。
そのままに、私は王都へと移送されていく。
***
リースガルム王国、それがこの国の名前だった。
北の氷河、南の瀑布、西の砂漠、東の森林、中央にして空の天山。この五つの魔境に囲まれたこの大陸で、唯一存在する国と呼べる共同体が、この王国だ。
人間の暮らす領域の中で、天然の要塞……いわゆる盆地にあたる場所に、王国の首都は存在する。
「これが、例の女か……」
俺を取り囲むうち、一番に偉そうな男が言った。
こう、裁判のようにして、たくさんの騎士団の人間が、俺の周りに座っている。
「はい、この女が……魔力波長を測定した結果ですが、魔竜ヘルヒムの眷属であると……」
「魔竜ヘルヒム……一年半ほど前に反応が消失した聞いたが……」
「はい……同時に不可解に東の森で魔物たちが減少していると報告もあります」
あ、それ、たぶん、俺の魔物狩りのせいだ。
全ては、魔物の特性を研究して、最強キャラへと近づくためなんだけど、最近は本当に絶滅に近づいてきたんじゃないかってくらい、めっきり魔物見なかったんだよね。
「やはり、この女と、なにか関係が……?」
バリバリにある感じだ。
「く……この不安定な時期に……! 魔竜ヘルヒムの消失により、均衡が崩れ……各地で魔物の行動が活発化している……眷属の動きもだ! そこに、この女だ……」
魔物、というのは他の種族、例えば人間とかに種を植え付けたり、血を吸ったり、苗床にしたり、取り込んで改造したりして眷属を作る。
あのトカゲの血を浴びてしまったのは、本当に失敗だったと言えるだろう。カッコいいから、まぁ、いいけど。
スッと俺は手を挙げる。
「なんだ? エリン・スカーレット」
「私を騎士団に入れてはくださいませんか?」
「意味がわからぬ。いつ、人を裏切るかわからぬやからを、騎士団になど置けるわけはないだろう」
フッと、不敵に笑ってみせる。
魔力封じの手枷を壊して、こうカッコよく弾き飛ばす感じに壊して、おもむろに立ち上がる。
「な……っ!?」
驚きに場全体が包まれる。
俺はそんな男たちを見回した。
「そうですね……そこのあなた。私と踊ってくださいませんか?」
「愛憎、俺は……ダンスは苦手でしてね」
一番に反応して、剣を構えた男だった。
この男が、おそらくここにいる中で、一番に強い。俺の最強キャラっぷりを見せつけるには丁度いい相手だろう。
剣の形の鱗を作る。雷切は、魔力の消費が大きいため、今はまだお預けだ。
魔力を足に集中させ、接近する。
「ふ……」
「……っ」
振るった剣と、受ける剣がぶつかり合って、鈍い音が立つ。
剣を滑らせるように勢いを流されて、俺の一撃が受け切られる。
「はあ……っ!」
身体能力に飽かせて、剣を振り回し、高速で攻撃を与え続けるが、全てを剣によって捌かれる。
まるで手応えがない。
「子どもの、その体格にしては速い。そして、一撃が重い。これは、冷や汗がとまりませんね」
「ご冗談を……!!」
力一杯に剣を叩きつけるが、流れるように美しい手際で、その攻撃も逸される。
まるで、流水を切り付けているような感覚だった。攻撃ごとに、相手は一歩一歩、後退はしているものの、体勢はまるで崩れない。
「副団長!」
「作戦通りだ。お前たちは下がっていなさい」
俺の攻撃を捌きながら、話しかけてきた下っ端へと返答している。
ずいぶんと余裕なようだ。
「さすがは騎士団。剣術では敵いませんね。では、魔法を使いましょう」
「魔法……?」
この世界には、魔力がある。しかし、魔法使いはいなかった。
人間にできることといえば、せいぜい、身体強化や、剣に魔力を込めて叩き切ることくらいだ。
魔力があるのに、まるで、夢のない話だろう。
「私は、最強の存在になりたかったわけです。あなたも、それほどに剣を鍛えているのですから、この気持ちはわかるはずでしょう?」
「……っ! 強くなりたかったから、魔物に魂を売ったというわけか……!」
「いいえ……これは、ちょっとした事故でですね……。とにかく、私はたくさんの魔物を殺して、研究をしたわけです。そこで一つの結論を得ました」
練った微細な魔力を、足元から、地面へと張り巡らせる。
「な……っ、魔法陣……?」
「いいえ、陣ではなく回路です」
「細く練った魔力を編んで……いや、そんなレベルでは……! これが、人間の魔力なのか!?」
電気回路のようなものだ。例えば、この、俺の手にある鱗の剣も、そんなふうに天然の回路が通っているからこそ、『最硬』となる。
回路だけあってか、量子レベルまで至る微細なコントロールが必要となり、ようやく魔物の回路を再現できる。こうして事象が形になる。
「適切にこの魔力回路を組めば、魔物が起こすような不可解な現象も、人間には再現できる! この魔力の輝きこそが……っ、人の持つ可能性の輝きです! もっと私たちは先へと行ける! さぁ、これが、私の最強――魔の極地です!」
「狂人か……!」
足元の回路に魔力の操作を集中したため、白い髪に、縦に割れた瞳孔があらわになる。あのトカゲに近づいてしまったカッコいい俺の姿だ。
「最強たる私のことを、あなたは止められるでしょうか? ああ、ちなみにこの技は、天蓋と言います」
そのまま、距離を詰める。
足元から広がった回路により、周辺の重力は、二倍ほどになった。俺は、もちろん影響は受けない。
「なに……っ!?」
先ほどより、男の動きが鈍い。それでも、剣を振れているだけで上出来だろう。
剣と剣が打つかり合い、甲高い音を立てる。
「ふふ、ようやく私の全力を受けてくださいましたね」
「ぐあ……っ」
そして、相手の剣が砕け散った。
俺のありったけの力をかけた衝撃に耐えきれなかったのだろう。
武器を失い、男は無手でこちらを睨む。
「ふふ、皆さん!! 私、勝ちましたよ! この男が、一番強いのでしょう? わかってます。つまり、私が最強です!」
なかなかの剣技だったが、それだけだ。
切り札もいくつか、温存したまま勝てているし、これなら俺が最強キャラで間違いがないだろう。
「……あれ? 皆さん?」
あたりにはもう、誰もいなかった。
どうやら、戦いに夢中になっている間に、みんな逃げてしまったようだ。俺の最強キャラっぷりを観客たちに見せつけられなかったということになる。残念で仕方がない。
「ぐふ……がは……っ。残念だが、お前は……ここで死ぬ……ゲホ……」
「そんなに血を吐いて……大丈夫ですか……?」
駆け寄る。さっきまで元気に戦っていたのに急に倒れてしまっていた。
別に俺は剣を砕いただけだ。内臓が壊れるような攻撃はしていない。
「俺は囮だ……お前の鱗に攻撃が通らないとわかっていた。だから、毒だ。毒ならば、お前を殺せる」
首を傾げる。
「私、肺呼吸じゃないので、多分死なないと思うのですけど……」
魔力呼吸だ。
魔力を使い、酸素との魔力反応で得たエネルギーを、直接脳や身体に送っている。そっちの方が効率が良かった。肺で、気体を吸収したりはしていないから、毒ガスとかは効いたりしない。
最強キャラは、そんな小細工で死んだりしないのだ。
「はぁ、仕方ありませんね」
死にかけの男を背負う。
そのままに、雷切で、建物を横にぶったぎって、外へと、悠然と、そう見えるように歩いていく。これはもう、カッコいい最強キャラだ。
主人公は人間相手のときは敬意を持って敬語で話します。