TS転生娘は最強キャラロールプレイがしたい   作:TS最強娘万歳!

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趣味の悪い巻き貝だ

 というわけで、俺は騎士団に入った。

 本気になった俺を誰も止められないことがわかったため、俺の要求を飲むしかなくなった結果だ。

 

 それに加えて、俺の家族に手を出したら、ただじゃおかないと、それとなく家族に人質としての価値があることを伝えたので、ある程度は扱える相手だと、騎士団の偉い人たちも思ってくれているだろう。

 目指すは、最強の駒みたいな立ち位置だ。

 

 やっぱり、最強キャラとして、主人公のピンチに颯爽と駆けつけたいから、この騎士団への所属はマストだった。

 あとは、主人公っぽいやつが所属してくるのを待って、俺の最強キャラっぷりを見せつけてやるだけ。今からでもワクワクしちゃう。

 

 ちなみに、あの強い剣士は、毒のせいで戦えない体になった。優秀な人材を使い潰す組織は辛いね。

 まぁ、最強キャラたる俺がいるから安泰だ。

 

 あぁ、それと、俺の産んだ卵が孵った。ドラゴニュートっぽい特徴の可愛い女の子だった。

 その子を見た時、俺は天啓をうけた。この子は、きっと騎士団に入団して、ヒロインになるのだ。そういう業を背負っていると、俺はひと目で気がついた。

 

 最強キャラ、オッケー。ヒロイン、オッケー。騎士団、オッケー。あとは主人公だ。俺は主人公を見繕わなければならない。

 

 そんなこと考えながら数日過ごしていたら、俺の配属先が決定した。

 南の海に面した町……ハルニアだ。

 

 海に面しているといっても、港はない。海の中には、魔物がうじゃうじゃといて、船なんか進めないからだ。

 だれが確認したか知らないが、その海を進むと世界の果ての瀑布があるとか。それはいいだろう。

 

 一応、ハルニアから、もう少し西へと行けば、内海が広がっており、そこは魔物が少なく豊富な海の幸が取れるという話だが、ここは違う。

 

 人を死へと誘う海に面する、まぁ、要するに僻地だった。噂によると罪人や、借金をばっくれた人間しかここには住まないとか。

 治安最低じゃん。

 

 おそらく、これは左遷だろうとあたりをつける。

 ちょっと、やりすぎてしまったから、たぶん腫れ物扱いだ。

 

「先輩。では、私はパトロールへと行ってきます!」

 

「ん? そう。サボりか。まぁ、いいけど、終業時間までには帰ってこいよ?」

 

「わかりました!」

 

 と、まぁ、こんな感じでやる気がない。

 

 ちなみに俺の出自に関しては、騎士団内部で機密事項として扱われている。

 何も知らない先輩に、年端のいかない少女である俺の心配をされないのは、魔力を使える人間が使えない人間より圧倒的に強いからだ。大人とか子どもは、もはや関係ないと言ってもいい。

 

 そんな感じで、俺は当然のように海に出る。

 海の魔物を絶滅させてやるのだ。

 

「ひゃっはー! 魔物は絶滅じゃー!」

 

 服を脱ぐ。

 海の中は、神秘の世界だ。

 新しい魔力の使い道がないか、新しい魔物を見つけたら、素材を収集しながら、俺は海を泳いでいった。

 

 

 ***

 

 

 海には、絶対に近づくなと、お父さんやお母さんには、毎日のように言い含められていた。

 友達のミーちゃんが行方不明になってから、私は、近づかない海の方をぼんやりと見つめる。なんとなくだけど、そっちにミーちゃんがいるような気がしたからだ。

 

 そうして過ごしていたある日のことだった。

 いつものように海の方を眺めていたら、人影を見つけた。

 そっちに行ってはいけないと、私は声をかけようとした。

 

 歌が、聞こえてくる。頭がふわふわとするような、不思議な歌だった。

 

「ミーちゃん?」

 

 その人影が、どうしても私の友達とそっくりに思えてしまう。

 だから、駆け寄った。

 でも、人影は、走っているどころか、歩いている様子もないのに、まるで私に近づかない。無我夢中で、私は友達めがけて走った。

 

「え……あれ?」

 

 気がつけば、浅瀬にいた。

 私が追いかけていた人影はいない。心地よい歌は変わらずに聞こえる。まるで夢の中のように、ぽかぽかとした気持ちになって、ふらふらとする。

 

 そのまま私は、倒れる。

 波がたまに押し寄せてきて、それが口の中に入ってしまうが、なぜか苦しくはなかった。

 

 そうしていると、もぞもぞとなにかが私の上へとのしかかってくることがわかる。

 

「ミー……ちゃん……?」

 

 だから、友達の名前を呼んだ。

 私のことを見つけて、戻ってきてくれた気がしたから。

 

「ギチギチ……ガ……ウガウガ……」

 

「ひ……っ」

 

 貝、のような生き物なのだと思う。人間くらいの大きさだった。

 その殻から這い出した、軟体のウネウネとした触手たちが、私のことを絡めとろうとしている。

 

 ヌメヌメとした触手たちが、全身を包むように服の中に入って来ている。気持ちが悪い。

 動こうとする私を押さえつける。

 

「あが……痛い! 痛い、痛い、痛い」

 

 体の奥を、剣で貫かれたかのような、鈍い痛みが走った。

 逃げ出そうとするが、体にうまく力が入らない。じんじんと痺れてしまっている。どうすればいいかわからない。

 涙が流れる。

 

「ミーちゃん。ミーちゃん……。誰か……」

 

「なるほど、その貝殻から噴き出す音で、脳を錯覚させるわけか」

 

 誰かの声がした。

 その声に気がついたのか、私の上にのしかかる貝が動きを止めて、そちらへと触手を向ける。

 

「ギチギチ……ガガガ……」

 

「でも、わからないな。音が原因ということはわかるが、魔力が音で伝播するわけではあるまい。持って帰って、要検証か」

 

 女の子が、そこにはいた。沖の方から、ずっと歩いてこちらにきた。

 海に濡れた白い長髪を体にまとわりつかせた女の子だ。蛇のように縦に割れた瞳孔に、スカーレットの目をしている。一糸纏わぬ姿で、ところどころに爬虫類の鱗のようなものが生えた彼女は、同じ人とは思えないほどの美しい出たちだった。

 

 まるで、その美しさに吸い込まれてしまったかのように、私の上にのしかかる貝は、女の子にばかりに意識を向ける。

 

「ガシャッ!!」

 

 すごい速さで、触手が伸びた。

 きっと、あの女の子も、今の私のようになってしまうのだろうと思った。

 

 けれど、そうはならなかった。

 

「この触手には、体の働きを抑制する毒の回路か……。全く、趣味の悪い巻き貝だ」

 

 伸ばした触手はちぎれていて、貝のからだから離れた触手を女の子は掴み、それをじっくりと眺めている。

 

「ギシャ……」

 

「おっと……うーん、貝殻は割りたくないからなぁ。持って帰って、ちゃんと調べたいし」

 

 女の子を襲う触手は一本も届かなかった。全てが貝の体から切り離され、海へと消える。

 十秒もなかっただろう、おそらく、全ての触手がなくなってしまったのだ。貝の攻撃がやむ。

 

「ギギギ……」

 

「まぁ、無難に電気かな?」

 

「ガガ、ガガガ……」

 

 気がつけば、女の子は、貝殻に手を当てていた。

 痙攣する様に貝は震えると、そのままに、ぐったりと動かなくなる。

 私の上にのしかかっていた貝の重さが、今までよりも、ズッシリと感じられた。

 

「う……」

 

「大丈夫ですか? そちらへと私の攻撃の被害が及ばないように調整はしたのですが……」

 

「あ、はい……」

 

 たぶん、女の子が貝になにかをしたことが原因の痛みはなかった。

 

「では……」

 

 女の子は、私の上に乗ったままの、貝の死体を私からどかす。

 触手の一本が、私の中へと深々と突き刺さったままでいることがわかる。

 

 浅瀬に、寝転んだままでは危ないからか、軽く上半身を抱き上げられる。

 

「あ……」

 

「じゃあ、抜きますよ? 痛みますから……、いえ、そうですね。この毒の魔力回路は、麻酔として使えそうですか。少しアレンジして……こうですね」

 

 女の子は、私の頭へと手を当てる。

 お日様に包まれるような優しく温かい気分になる。辛いことや、悲しいことを全て忘れてしまえそうな、とても幸せな心地よさだった。

 

「あ……あん……」

 

「はい、抜けました。こうして、治癒の回路を」

 

 刺さっていたところに、女の子は手を触れると、そのしっとりとしたみずみずしい手で撫で回した。

 

「ひゃ……」

 

 むず痒くて、ピクリと体が震えるが、不思議と嫌ではなかった。

 

「痛かったですか……?」

 

「痛くないです……気持ち良くて……」

 

「そうですか、終わりました。立てますか?」

 

「いいえ、力が入らなくて……」

 

 ふわふわとした気分が続いているからか、手足を動かすのが億劫で、歩くこともできそうにない。

 

 女の子が、貝の死体に手を当てると、それは、瞬きのうちにどこかへと消えてしまった。

 

「記録完了、と。じゃあ、おぶっていきましょう」

 

「あ……」

 

 一瞬で担がれた。

 濡れた、女の子の体はじっとりとしていて冷たい。

 

「この海は魔物がたくさんで危ないですから、気をつけてくださいね? さっきの貝みたいに、人間を誘き寄せるすべを持った魔物もいますから、安全を考えるなら、別の街へと引っ越したほうがいいですね」

 

「え、はい」

 

 でも、私の親はそういう話をすると、決まってごめんねと言う。

 だから私はここで暮らしていかなくちゃなんだ。

 

「私も、いつも助けられるわけではないので……」

 

 少し寂しそうに女の子は言った。

 この女の子は、とてもいい子なのだろうと、私は感じた。

 

「あなたは、いったい……」

 

「騎士団のメンバーです。最近配属されてきました」

 

「騎士団……?」

 

 悪い人や魔物をやっつけるのが騎士さまの仕事だと、そう聞くけれど、実際にそんなところを見たことはなかった。

 この街は、もともと魔物の被害も多いし、犯罪も多い。それなのにだ。

 彼らのいる場所に駆け込んでも、追い払われたという話も聞いた。

 

「当分はこっちにいると思うので、よろしくお願いします」

 

 それにしても、私と同じくらいの歳の女の子にしか見えない。

 この子が強くてすごいことはわかる。だから、騎士団に所属できたのだろう。私とは大違いだ。

 

「そういえば、海ではなにを?」

 

 たぶん、全身が濡れていたから、海を泳いでいたのだと思う。魔物ばかりの海で泳ぐなんて、信じられないことなのだけれど、この子ならば、大丈夫なのだろう。

 

「あ……魔物を絶滅させようと思って……」

 

「魔物を……絶滅……」

 

 信じられない言葉だった。

 でも、確かに、魔物がこの世界からいなくなれば、それはとてもいいことだと思う。この女の子くらい強ければ、それはできることなのだろうか。

 

 実現できるかはわからないが、その言葉の魅力に私はどうしても囚われてしまう。

 

「ここで、いいですか。下ろしますよ?」

 

「え?」

 

「服、脱がしますよ?」

 

「え?」

 

 すんなりと、私の来ていた衣服が全て剥がされた。

 あの貝にやられて、破れたりもしていたから、あってないようなものだったかもしれない。

 

「傷は……うん、さすがは治癒の魔力回路ですね。もう大丈夫そうです。じゃあ、ここらへんで体を洗いましょうか」

 

「あれ?」

 

 どこからか取り出したのか、女の子は、水の入った桶のようなものを真ん中に置いて、周りには簡単に柵のようなものを立てた。

 

 桶の水を体にかけて、女の子は自分の体を洗っている。

 

「海って、嫌ですよね。塩水でベトベトして、日によっては冷たすぎたり、運が悪ければ、潮に流されて遭難するかもしれませんし。危険な生き物もいる。娯楽で海に行こうとする人間の気がしれません。温水プールが一番です」

 

「温水プール……?」

 

 温かい水のプールだろうか。

 この街に、そんな場所はない。この女の子のもともと住んでいたところには、そういう場所があるのだろう。

 

「あぁ、忘れてください。塩水と、血でベトベトでしょう? 気持ちいいですよ? それとも、洗ってほしいですか?」

 

「そんな……」

 

 恥ずかしさで顔が赤くなるのが自分でもわかった。

 

「遠慮しないで洗ってあげます」

 

「ひゃん……」

 

 抵抗はできなかった。

 ミーちゃんでも、こんなに近くはなかった。これは、きっと、友達よりも近い距離だ。

 

「綺麗な肌してますね。すごいですよ」

 

「やん……」

 

 丁寧な手つきが気持ち良かった。

 そうして、私の心は、強くてかっこよくて美しいこの女の子に無茶苦茶にされてしまう。

 

 きっと、これが、私の初恋だった。






「私も、(助けるときには最強キャラムーブができて満足できるけど)いつも助けられるわけではないので……」


評価、感想痛み入ります。ありがとうございます。
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