TS転生娘は最強キャラロールプレイがしたい 作:TS最強娘万歳!
主人公っぽいやつを見繕おうと考えていたが、いかんせんいい考えが思い浮かばなかった。
どうせなら、俺の娘と同い年がいいから、いい感じに主人公っぽい因果を持った男の子がいないかなと、けっこう遠出をして探し回ったりしているのだが見つからない。
「火の魔法。できたよ!」
「そうですか」
あの砂浜で拾った女の子だ。
オウムガイみたいな魔物に襲われているのを助けたのだが、よく俺が魔物狩りから帰ってくる時間に、騎士団の詰所の前で出待ちしている。
手のひらに作った魔力回路から、小さな小さな火を灯して、私にそう尋ねてきた。
「次は、何の魔法……」
「私としては、やはり魔眼がオススメです」
「魔眼……」
強くなりたいから、こうして、俺に魔法の教えを乞うている。
察するに、なすすべもなく魔物にやられてしまったのが、相当に悔しいとみえる。
一緒に魔物を絶滅させようねと、ことあるごとに口に出すくらいだ。
俺の魔法は、別に門外不出の技というわけではない。誠実に頼み込んでくれたなら、対価なく教えるつもりだ。
とはいえど、魔法に必要な魔力回路の形成には、繊細な魔力操作が重要だ。
教えたからといって、一朝一夕にできるものではない。その点、魔力でロウソクに灯るくらいだが、小さな火を起こした彼女は才能がある方だと言えるだろう。
「魔眼とは、厳密には光と情報を媒介に発動する遠隔魔力回路です。光の受容器である目を利用し、その情報を魔力回路に添加、さらに目に構築した魔力回路から発せられる光により、対象との間に相互作用を引き起こし、結果として焦点を合わせた場所に共鳴する魔力回路を生成する、そういう魔法です。もともと存在する目という器官を利用することで、比較的安価に、遠隔での魔力回路の生成が可能となります。私はこれを魔眼と名づけました」
「相変わらず、魔法って難しいね……」
「要するに……あまり魔力を使わずに、相手を見ただけで攻撃できる魔法です」
「わぁ、とってもわかりやすい」
代償としては、使い過ぎると目に負担がかかり、視力が失われることだ。
まぁ、使ってたら、これ以上はやばいって、痛みとかそういうのでわかるし、休みを設けて普通に使う分にはそういうリスクもないから、いいだろう。
「回路は……ちょっと待っててください」
魔物の目玉を取り出す。生成の魔法だ。
この魔法は、分解の魔法で魔力に分解して、その際に得た情報を、再度魔力回路で入力することで、分解した物質を魔力から生成する魔法である。ちなみに分解した数と同じ数しか生成できないから、たくさんコピーするとかは無理だったりする。
それはともかく、取り出した目玉だ。
目玉の上に、魔力回路を描いていく。
「それが……」
「ええ、これが魔眼です。ほら……」
適当にその目玉をそこらへんに転がっている岩の方に向ける。
ちゅどんと音がして岩が爆発した。
「わぁ……」
「使ってみますか?」
「え? いいの? うわっ。目玉って、こんなぷにっとしてるんだねぇ」
魔力回路を構築した目玉を渡した。
彼女は、じっくりとその回路を形成する魔力の流れを観察していた。
「標的に向けて魔力を流せば発動します」
「えい!」
ちゅどんと、俺が爆破させた岩のその向こうにある岩が爆発した。
威力も射程も申し分ない。光が届く限りは、その射程の中だ。
「お見事です」
「それにしても、この魔力回路、すごく細かいし……それに、だんだんと変わってる?」
「時間発展を組み入れた動的回路です。今回は永続性を意識してループする構造として組み上げました。一つ記念にどうぞ」
やっぱり、瞬間的な威力を求めるのなら、一回きりの構造になる。
最大の威力ではないぶん、こちらの方が安定しているから、まぁ、単にリソースをどう割り振るかの問題だ。
「あはは……すごいね」
俺から、魔力回路を刻み込んだ魔物の目を受け取って、彼女は乾いた笑いを浮かべていた。
「ちなみにこれが回路図です」
紙を手渡す。
パターンごとに簡略化した図だ。微細な構造をいちいち書いていたら面倒だし、わかりづらい。簡潔さを意識して書き上げた回路図は、なかなかにすっきりとしている。
「これが……」
「少し複雑ですけど、修行すれば大丈夫です」
「大丈夫……かな?」
まだ、魔力回路の微細構造を作ることが、彼女にはできていないため、初級の初級、ひよっこと言えるだろう。
しかし、人間は成長するものだ。コツコツと積み上げていけば、きっと、いまの俺くらいには、魔力の扱いもうまくなれる。
「動的回路はまだ無理でしょから、まずは静的な、非量子スケールの二次元構造の回路の練習をしていきましょう」
「はーい」
起こる事象の規模が劣り、まるで実用的ではないが、多少の訓練にもなる。
ちなみに少し調べたら、このくらいの魔力回路は魔法陣と呼ばれていて、マニアックな人間なら多少は知っているようだった。
すごく大きく描いて、たくさんの魔力を使用して、なんとか使えるくらいだったから、廃れてしまったそう。
「では、これに」
「わかった」
新しく取り出した魔物の目玉に、彼女は魔力回路を刻んでいく。
意欲はあるから、きっと数年くらい修行を積み重ねれば、実践で使いこなせるくらいにはなっているだろう。
***
そろそろ終業時間だと、騎士団の詰所に帰ってきた。
その時に、綺麗な女の人が騎士団の詰所から出ていくのが目に入った。薄手の服の、いかにも男性を相手にする職業ですと、言った感じの人だった。
「うわ……」
入ると、臭いが、まぁ、うん。
「ちっ……もう帰ってきたか……」
「仕事場に、そういうの呼ぶのどうかと思うんですけど」
もし、ここが、王都の詰所くらいお堅く、お上に報告されたりしたら、たぶん不祥事で退職だろう。
先輩は乱れた衣服を整えていた。
「だいたいお前も、サボってるだろ」
「私はパトロールです」
「それに、そいつはなんだ? 友達か? ここは 託児所じゃないんだ」
俺の後ろについてきた少女を指差して、先輩は言った。
「私の弟子です。数年もすれば、騎士団で活躍してくれるはずです」
「はん……女がか? だいたいお前も、コネで入ったんじゃねぇのかよ? 女の、しかも子どもだ。それに、こんな辺境に飛ばされるっていうのは、厄ネタじゃねぇのか?」
「決闘してみますか?」
なんとなく提案する。
こういう揉め事のとき、決闘で解決すると俺の前世の知識は言っていた。
「いや、俺に女の……それに子どもをなぶる趣味はねぇ」
「そうですか」
「そうだ」
やりたいことリストは埋まらなかった。
今はまだできないようだが、機会があれば積極的に挑戦しておこう。
「それにしても、男の人というのは仕方ないですね。もしかして、私のこともそういう目で見ているのではないですか?」
むにむにと自分の胸を触る。
あのロリコントカゲにやられたあたりから、少しずつ大きくなってきた。他にも骨盤のかたちとか、腰つきももう女性のものだ。
まぁ、だから、歩いていると男にそういう目つきで見られることもある。
「だれがお前みたいな色の知らない子どもを……」
「いえ、私、子どもがいますし」
「は……?」
「え……?」
騎士の先輩に、俺の連れてきた女の子も驚いていた。
ここは異世界だ。結婚年齢も低いはずだし、それほどおかしくはないと思ったのだけれど。
「おかしい、ですか?」
「いや、まぁ、政略結婚なら……いや、それでも、だったら騎士団に入っているのはおかしくないか……? 妻なら、手元に置いておくはず……」
「……実は市井の男の人で……。恥ずかしながら……夜中に抜け出して、こっそりと……」
「うわ……あれか? 世間知らずの箱入りのお嬢様がって……えげつねぇ男もいるもんだな……。それで、傷物の女としてこうして僻地に送られてきたってわけか」
どうやら、勝手に納得してくれているようだ。
これは表向きの理由だし、真面目に考えれば粗ばかりだということがわかりそうなものだが、まぁ、いいか。
「いえ、あの人はとても誠実な方でした。他の誰よりも私をとても愛してくれていて……」
「あぁ……なんというか、うん。その男は、今はどうしてるんだ?」
「私が子どもを授かると、どこか遠くに行きました。父は激怒していましたから、身の危険を感じたのでしょう。やむをえないことです」
「なんというか、俺が親でもそうだよな……そんな男は命をって思っても……はぁ、自分の娘がって、考えたくねぇなぁ、同情する。そんなヤベェ男にお熱とか……」
「職場にお金で買った女を呼ぶ方に、言われたくありません……」
ふふ、恋に盲目な少女ロールプレイだ。
なかなかに決まっているだろう。
「あのな、リーナちゃんはな……俺の妻になる女なんだ」
「そういう商売の方では?」
「いや、俺は騎士だから頭金さえ払えば、あとは毎月の支払いで、身請けできるって……。前金はもう払ったから、正式なのはまだだが今は俺だけの相手をしてもらってる」
「……そうなんですか」
「あとはそうだな……毎月、少し多く支払う必要があるが、俺がもし急な病や仕事で死んでも、家族に負債が残らないよう取り計らってもらえるんだぞ!」
「へぇ……よくできてますね」
ローンに、生命保険のセット……なのだろうか。
堂々と人身売買がまかり通っているというのは、さすが異世界なのだが、商法が妙に生々しい。
正直な話、他人の色恋や借金の話はどうでもいいと思う。
「式にはお前も呼んでやるさ」
「はい、わかりました。では、終業時間を過ぎたので、私は帰らせてもらいますね。片付けは任せました」
「いや、ちょっとまて、お前……! はぁ……まぁ、子どもだ。仕方ねぇか……」
女の子の手を引いて、詰所を出て行く。
あとはこの子を家へと送り届けて、俺は海の近くの地下に作った研究施設に帰るつもりだ。
「ねぇ、さっきの子どもがいるって話って……」
詰所に来たときより、彼女の表情が、少しくらい気がした。
「ん? あぁ、今は私の両親のところに預けています。たまに帰って様子を見に行くんですが、かっこいいですよ?」
こう、ドラゴニュートっぽい特徴が幼いときから発現している。俺、ああいうの好きだ。
「男の人と……その……」
「ん? あぁ、あれ、嘘ですよ。事情はちょっと複雑ですね。私の、あの魔法を使うときの姿と関係してます」
「え……?」
表情から翳りがなくなり、女の子の目が、一際輝いたように見えた。
その気持ちはよくわかる。きっと、どうして俺があんなふうなかっこいい姿になっているのか興味が湧いたのだろう。自分もなりたいと。
だが、それはロリコンクソトカゲにされる気持ち悪いこととトレードオフ。決してお勧めできない。
「時が来たらお話ししましょう」
それに耐えられる覚悟があるというのなら、俺は決して止めはしない。
一応、素材としてあのロリコンクソトカゲの血は残っているから、再現は可能だ。
「うん、わかった。絶対だよ」
「ええ、絶対です」
俺は両手で、強く彼女の両の手を握る。
俺たちは同じものに格好良さを見出す同志なのだと、今、確信した。
「それで……その……お家……行ってもいい?」
恥ずかしさを隠しきれないまま、おねだりをするように、彼女は言った。
「ええ、構いませんよ?」
魔物の殲滅にしか興味がない子だと思っていたが、共通の嗜好があった。
俺は確かに最強キャラムーブにしか興味がないが、かっこいいものも好きだ。彼女もそういうタイプだろう。
友達として、ぜひお家に招き入れたい。
「ほんと……!?」
「ええ、こっちです」
方向転換し、海の近くの地下施設へ向かう。
居城機能もそれなりの、俺の家だ。
「あ、そうです。なんて名前でしたっけ……?」
「え……」
そういえば、教えてもらったような気がする。少し俺は頭を捻った。
「メディーナ……でしたっけ?」
「……うん、メディーナだよ。私はメディーナ」
「じゃあ、メティと呼びましょう。私のことはエリンで結構です」
「わかった。エリン」
今生、俺は初めて友達ができた。
ちなみに、女の子の名前はアリシアといいます。
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