TS転生娘は最強キャラロールプレイがしたい   作:TS最強娘万歳!

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とりあえず、決闘しますか?

 俺は十四歳になった。

 身長は少し伸びたが、あまり変わらない。胸ばかり大きくなって、最強キャラとしての威厳のなさが、最近の課題だった。

 やはり、女に生まれたのが失敗だったか。ドラゴニュートのカッコよさで押し切るしかないかもしれない。

 

「ん……おはよ」

 

「おはようございます」

 

「服はここに置いておいたよ?」

 

「ありがとうございます」

 

 ベッドから出る。ちなみに俺は、夜、裸で寝るタイプだ。服とか寝るときは煩わしいと思う。

 

 メティの用意した服を着る。彼女の用意した下着は、すこし可愛らしいすぎるものだと思うのだが、どうせ隠れるからなんでもよかった。騎士団の制服を着て準備をする。

 

「朝ごはん」

 

「はい」

 

 まだ眠い。

 魔法を使って、睡眠時間を少なくすることはできるのだが、ゼロにはできない。最強となるための研究に没頭しすぎて夜更かしをするとこうなる。

 

「あーん」

 

「はむ。もぐもぐ」

 

 口を開けるとメティがご飯を放り込んでくれる。

 眠くてなんの食べ物かはわからなかったが、とりあえず美味しかった。

 

 彼女が、何故俺の世話をしているかといえば、それは彼女の両親が死んでしまったからだった。治安の悪いこの街ではよくあることだ。なんでも、粉々に爆散して死んだらしい。本当に物騒だ。

 行く宛をなくした彼女は、俺のところに転がり込んで、家政婦みたいなことをしている。

 

「あ、そうだ。これ見て?」

 

 ウネウネと蛇のように彼女の長い髪の毛が動く。

 彼女の動かす数ふさの髪の毛の先端は、ツボミのように膨らんでいる。花開くようにして、露出した中の目玉が俺を見つめる。

 

 俺が見たことによって、魔眼が発動するが、対の回路を即座に作って無効化した。

 

 彼女の髪の毛の先にくっついた魔眼には神経が通っていて、そこから周りを見ることもできるらしい。

 

「へぇ、たくさん作りましたね。なんの魔眼ですか?」

 

「えへへ……えっとこれが、高揚の魔眼。昂る気分に視野が狭くなって、緊張で体がうまく動けなくなっていって、気持ちよくなる魔眼でしょ。これが、麻痺の魔眼。体から力が抜けていって、頭もぼーっと痺れて考えられなくなっていって、気持ち良くなる魔眼でしょ。これが、魅了の魔眼。相手をとても親密に思って、言うことを聞きたくなって、気持ち良くなる魔眼でしょ。これが、幻覚の魔眼。まわりが不思議に見えて、体から意識が外れて、気持ち良くなる魔眼だよ」

 

「そうですか。いい回路です」

 

 気持ち良くなる魔眼が多い気がするが、それは魔物といえども死ぬ瞬間に苦しんでほしくないというような、彼女なりの慈悲だろうか。

 

 ちなみに彼女は人間と呼べる存在からは離れてしまっている。

 ロリコンクソトカゲが、俺にやったことを真似て、彼女におこなったからだ。彼女の提案で、ロリコンクソトカゲの血ではなく、俺の血でおこなったから、カッコよさは俺の方が上になる。

 

 彼女の首もとや、手首からは、ダークブラウンな鱗が露出する。俺は白い鱗だったが、彼女の魔力的な特性に影響されてか、色が変わっているようだった。

 

「ううん、全然きかなかったし、まだまだかな」

 

「そうですか。頑張ってください」

 

 きっと強い魔物に魔眼の効果がなかったのだろう。

 中でも精神に直接影響を与える魔法は、毒のようなものだから、体格が大きい相手には効きづらかったりする。未熟な回路では、ままあることだ。

 

 なんにせよ、上を目指すのはいいことだ。

 朝の支度が終わって、俺は出勤する。

 

「じゃあ、いってらっしゃい」

 

「ん、行ってきます。また後で」

 

 頬へと俺は親愛のキスを受けて、騎士団の詰所に向かう。

 パトロールと言って抜け出すから、そのときにまた合流だ。メティも、海の魔物を一捻りできるくらいには強くなっているから、一緒に魔物を倒してくれる。

 

 それにしても最近は、浜辺でくつろいでいても襲われないくらいには、魔物が減ってきていた。

 魔物を倒すために、ちょっと遠出しているくらいだ。後数年あれば本当に絶滅するかもしれない。

 

 詰所に着くと、何やら騒がしい様子だった。

 先輩が、誰かと話している。

 

「中央の近衛騎士団、副団長さまが何の用件で?」

 

「君に用事があってきたんだ。わかるだろう?」

 

 それは、俺の見知った顔だった。

 あの、俺があの騎士団に入団したときに、魔法で倒した男だ。毒のせいで剣を振れない体になったと噂に聞いていたが、元気な様子だ。

 

「あの、お身体の具合よろしいのですか?」

 

 会話に割って入るようで悪いが、気になったので、俺は尋ねる。

 

「えっと……君は……。あぁ……」

 

「エリン・スカーレットです」

 

 うやうやしく、騎士団の作法で頭を下げる。こんな辺境では作法も適当だから、ぎこちなかったかもしれない。

 

「なんだ? 知り合いか?」

 

「そういえば、スカーレットくん。君には礼を言っていなかったね。あの毒ガスの中から君が救い出してくれていなかったら、俺は今頃ここにはいなかっただろうからね。ありがとう」

 

 形式的なものだろう。俺と戦わなければあんなことにはなっていなかったのだから、内心では恨んでいるのかもしれません。

 

「いいえ、礼には及びません。それにしても、その際の後遺症で、二度と剣が振れぬ体になったと聞き及んでいましたから……」

 

「あぁ、それなら、騎士団の仕事は剣を振るばかりではないからね。それ以外の能力が買われてだよ。剣を振ることしかできない誰かとは違うのでね」

 

「ち……。いちいち嫌味な野郎だ……」

 

 そんな言葉に、先輩が反応した。

 なんというか、かなり面識がある感じがする。歳も近そうだし、同期とか、そんな感じなのだろうか。

 

「おっと、不快になったなら失礼。これでも褒めているつもりなんだ」

 

「それで、その剣を振るしか能がない男になんのようだ? そんなとりえの剣の腕も、長い間の辺境暮らしで鍛錬をさぼったから、今はただの能なしだぜ?」

 

 別に誇ることでもないのに、先輩は自慢げにそんなことを言っていた。

 

「あぁ、先週の、青の惨劇は知っているだろう?」

 

「ん? 青の……あぁ、ライラッシュの……。噂程度には、だな」

 

 ライラッシュ……ここから北西に村をいくつか超えた場所にある都市の名前だ。

 内海に面しており、豊富な海の幸に、その加工場も多くある都市だったと思う。

 

「その惨劇だが、おそらくは人間の魔物の眷属の仕業だ。主人は天災級の魔物に匹敵する」

 

 副団長は、ちらりとこちらを見た。

 魔物の眷属となると、専用の機械で魔力波長を測定しなければ、まず、見分けつかない。

 そして、俺はただカッコいいだけだが、魔物の眷属というのは、人にはない特別な力を発揮できるそう。

 

「天災級ねぇ……。あんなものは御伽噺にしか出てこないと思っていたが……」

 

「ここは渦鯨の領域だというのは知っているだろう? その強大な魔物の魔力波長はここからでも観測できる。間違いなく実在はしているさ」

 

 東の魔竜に、南の渦鯨、西の石鳥、北の氷骸、天の雲蛇。

 たしか、そんな感じだったと思う。ロリコンクソトカゲの仲間だから、みんなきっとロリコンに違いない。

 

 その強大な魔力の波長は、人間の暮らす領域でも観測できるそう。

 そういえば、今の俺には探知能力がない。そういう波長をキャッチできれば魔物を探す作業も楽になるかもしれない。

 

「それで、それを起こしたのが魔物自身じゃなく、眷属だっていう根拠は?」

 

「惨劇は街の中心だ。突然に起こった。魔物は街の外からくる他にないが、ある程度の距離は潜伏していたとしか考えられない。そんなことは、知能のない魔物では不可能だ」

 

「なるほど、だが、人間がその中心になんらかの目的で魔物を運んだっていう可能性もある。見せ物とかな」

 

「あぁ、もちろんその可能性も考えたさ。だが、人を装った魔物の眷属が、街の中心でその魔を解放したという可能性が高い。檻など、そういったものの痕跡はなかった」

 

 眷属にされた人間は、基本的に頭がおかしくなっており、主人となる魔物の利益のために動く。

 

 俺の場合は、ロリコンクソトカゲが死んだし、魔力コントロールで影響を完全に抑えているから違うが、眷属になった人間は、もう魔物の仲間として処理されるのが通例だ。

 

「なるほど、で、それが天災級に匹敵するって理由は?」

 

「そこに残存していた濃い魔力の波長を調べたところ、天災級の魔物と同じように、一帯に薄く広がる魔力波長が確認された」

 

「それは、やべぇんじゃないか?」

 

 副団長は、それに深く頷いた。

 

「あの……そんなに大規模な反応があったのなら、気がつかないものなのでしょうか?」

 

 あのロリコンクソトカゲが死んだことに気がついていたくらいだ。常に、そういう魔物の反応を探っていてもおかしくはないと思った。

 

「あの惨劇以降に、突然に広範囲に反応が広がったとしか言えない。この魔物についての調査も同時に行っている。おそらくはその魔物の活動域が禁足地に指定されると思うが、被害が広がらないように特定を急いでいる」

 

「なるほど」

 

 随分と、不思議なこともあるものだ。なにかカラクリがあるのかもしれない。興味深い。

 

 そして副団長は、俺から先輩の方へと向き直る。

 

「それで君には、眷属の捜索および追跡班の護衛に回ってもらいたいんだ。さらに見つけ次第、その眷属を始末してほしい」

 

「嫌だ」

 

 先輩は即答した。

 隠そうともせず、露骨に嫌そうな顔をしている。

 

 そんな先輩に、副団長はため息をついた。

 

「そういえば、結婚式には呼んでくれなかったね? 相当な美人な妻だそうじゃないか?」

 

「……あ?」

 

「家も買ったって聞いたよ? なかなかに立派な家だ。まぁ、ここら辺は物騒だから、家の防犯機能は高いに越したことはない。賢い選択だと思うよ?」

 

「お、おう」

 

「それで、この指令を受けなければ、騎士団での立場がさらに危ぶまれることになると思うのだけれど」

 

 ただでさえ辺境に左遷されているのだ。さらに立場が低くなれば、たぶん……。

 

「そんなに、ヤバいのか?」

 

「あぁ、そうだ。私がここに直接出向いたのも、騎士団に内通者がいる可能性を考えてだ。伝達に齟齬があってはいけないからね。それくらいだ」

 

「マジかよ……」

 

 なんだか、楽しくなってきた。

 これは、俺が最強キャラムーブをする大きなチャンスだ。最高にワクワクしてきた。

 

「じゃあ私は、眷属の主人の魔物を捜索する班に合流しても構いませんか?」

 

「いや、君はここで大人しくしてくれてたら、嬉しい」

 

「嫌です。とりあえず、決闘しますか?」

 

 こんな楽しいイベント見逃すわけにはいかなかった。

 

「わかった。じゃあ、彼について行ってくれ。君なら大丈夫だろう」

 

「え、そっちですか? まぁ、わかりました」

 

 強い魔物なら、最強への研究のための助けになると思ったが、眷属の方か。

 そこまで魔物討伐にこだわりはないから、今回は魔物の眷属相手に最強キャラムーブを決めるとしよう。

 

「では、急いで合流地点に向かってもらいたい」

 

 そして、副団長は合流地点に関して指示をすると帰って行った。

 

「そういえば、この詰所、留守番どうします?」

 

「どうせ誰もこないだろ? 盗られて困りそうなものも大してないし」

 

「そうですね」

 

 

 

 ***

 

 

 

「はい、あーん」

 

「はむ。もぐもぐ」

 

 移動の馬車の中で、俺はメティにサンドイッチを食べさせてもらっていた。

 美味しい。

 

「遠足じゃないんだぞ?」

 

 向かいには先輩がいる。

 窓枠に頬杖をついて外の方を見つめていた。

 

「美味しいですよ?」

 

「味は聞いてない。というか、よく食えるな。酔わないか?」

 

 馬車は揺れる。かなり揺れる。

 けれど、俺は最強キャラだから、乗り物酔いなどはしないのだ。

 

「私は頑丈なので大丈夫です」

 

「そうか……」

 

 自分で聞いておいて、ずいぶんと適当な返事だった。

 

「そういえば、副団長となかなかに旧知というやりとりでしたが、どういう関係ですか?」

 

「ん? あぁ、まぁ、同期だ。あいつとは、剣の腕をよく競ったってだけだよ」

 

「へぇ……」

 

 そういえば、剣の腕がなんたらと言っていたような気がする。

 あの副団長は剣の腕が俺よりも圧倒的に上だった。ともすれば、この先輩は剣の扱いが上手いのかもしれない。

 

「なんだ? そんな目で見て?」

 

「お強いんですか?」

 

 直接、聞いてみることにした。それが一番だ。

 

「まぁ、そうだな。あいつと勝負になるのは俺くらいのものだったさ。昔の話だがな……」

 

 誇るでなく、懐かしむように先輩はそう言った。

 俺は首を捻る。

 

「なら、どうして、こんな辺境で燻っているのですか?」

 

「騎士団の立場的なやつだよ。あいつの出世のために、俺が邪魔だったから辺境送りってわけさ。本当ならあいつの要請もバックれたいくらいなんだが……」

 

「借金を盾にとられてはしかたありませんね」

 

「あぁ、そうだな」

 

 そう言って、先輩は苦笑する。

 

 それにしてもだ。この先輩、結構いい因果を持っているのかもしれない。

 たとえば、『騎士団の出世争いに負けた俺は、辺境の地に左遷され、その先で美人妻とのんびりスローライフを送る。災厄級の魔物のせいで人手がなくなり、今更、首都に呼び戻そうと中央は躍起になるが、もう遅い』みたいなタイトルの主人公ならできるかもしれない。

 

 でも、俺がなりたいのは少年漫画的な作品の最強キャラだし。そういう作品だったら、たぶん俺、ハーレムメンバーだし。先輩を主人公にする案は却下だ。

 

 そうやって一人で物思いに耽っているような、のんびりとした時間が過ぎていく。

 ふと、馬車がとまった。

 

「着きましたか?」

 

「いや、なにかトラブルじゃないか? 合流地点はすぐそこだが……着いたわけじゃ……」

 

「あれって……」

 

 馬車の窓の外に見えた……それは、青というより緑だった。

 

「マジかよ……」

 

 俺たちは、たまらずに馬車から出る。

 

 外に広がる光景は異質だった。

 自分達の馬車が進んできた道の先の一帯……建物の外壁に屋根、さらには石畳まで、全てが緑に埋め尽くされている。

 土、石、そして木材、あるいは生物だろうと関係ない。全ては緑へと変色している。

 

「変色……いや、これは苔? というよりはカビですか?」

 

 視力を強化して、確認した。

 おそらくは菌類に近い。それが、あたりの全てを覆っているのだ。よく見れば、中には倒れている緑の人型もある。

 

「これが、青の惨劇か……」

 

 凄絶な光景だった。

 だが、これが青の惨劇だったとして、一つだけ問題がある。

 ここは、青の惨劇が起こったとされるライラッシュという場所ではなかった。

 

「先手を打たれましたね」

 

 俺たちの本来合流するはずであった、青の惨劇を引き起こしたとされる眷属の捜索および追跡班は、全滅していた。







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