TS転生娘は最強キャラロールプレイがしたい   作:TS最強娘万歳!

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うわ……やば……。キモ……

「えへへ」

 

 事件を解決した俺は、美味しいご飯を食べていた。

 もちろんおかずは、最強キャラロールプレイの脳内再生だ。記録の魔力回路に映像を記録しておいたから、何度でも再生できる。楽しい。

 

「祝賀会……お疲れではないかい?」

 

「いえ、全く」

 

 そんな俺の隣に、副団長は座り込んだ。

 あの魔法陣の中心への精鋭部隊にこっそりと付いて行って覗いてみたら、いつの間にか裏切っていた副団長だ。

 

「俺の口から、きちんと礼を言っておきたかったんだ。ありがとう」

 

「なんのお礼ですか?」

 

「それはもういろいろさ。君が思い浮かべられるものは全て含まれているだろうね」

 

「迂遠な言い方ですね」

 

 副団長はそういう人だ。正直、お礼なんてどうでもいいから、俺はそれ以上つつかない。

 

「今回、君の使った国全体を覆い尽くす魔法陣、ではなかったね……魔力回路のおかげで、カビの魔物の眷属にされていた者たちのほとんどは正気を取り戻した。魔力波長も正常だ」

 

「そうですね」

 

「特に魔力の多い騎士団の者たちは、手足の軽い痺れや違和感といったような、多少の障害が残ることになるが、日常生活に支障が出ることはないそうだ」

 

「でも、騎士はやめなくちゃでしょう?」

 

「そうなるね」

 

 要するに、剣を振れなくなるということだ。

 この副団長ほどに能力のない一兵卒は、基本的に騎士団を辞めることになる。

 

「騎士団は、どうなりますか?」

 

「今回の件で多大なる代償を払った。再編が必要となる」

 

「精鋭部隊も死にましたしね」

 

「……そうだね」

 

 苦い顔だ。

 まぁ、彼が殺したのだから仕方ないだろう。

 いくら俺でも、国全体からカビ菌を排除しながら、片手間に死んだばかりの人間を複数蘇らせることは難しかった。もし失敗したら、対消滅して吹き飛ぶし、危ない。

 

「例の魔法陣の解析の結果ですが、保存していた過去の記録を取り出す効果がありました。それよりも精度の高いものを私はよく使いますから、解析は楽でしたね。その記録はあなたの脳に出力されたようですが、抽出して今は私の手元にあります」

 

「……記録? その記録というのは……」

 

「大雑把に言えば、この国に恨みを持つ人間によるものの記憶ですかね」

 

「過去の亡霊ということか」

 

「そうなりますかね。詳しく踏み込みすぎると、私が操られてしまいそうなのでここまでです」

 

 なぜあんなことが起きたのか、正直な話、俺は興味がなかった。

 面倒だから、適当に誤魔化して話を打ち切る。

 

「ありがとう。君の魔法はなんでもできるな」

 

「この世界の理が破れるわけではありません。できないこともあるでしょう」

 

「それでもだよ。君を見ていると、なんだってできるのではないかと思えてくる」

 

 まぁ、俺は最強キャラだし仕方がない。

 味方が苦戦する強敵を路傍の石みたいに吹き飛ばすために鍛えた。もっと、俺を崇めるがいい。

 

 そういえばと、俺は一つ思いついた。

 

「そうです。学校作りましょうか?」

 

「学校……?」

 

「ええ、騎士学校です。騎士団の再編のために作りましょう。ぜひ作りましょう」

 

 学校はいいぞー。

 こう、主人公が通って、青春するんだ。

 

 ただ……なによりもそう、テロリスト。学校といえばテロリストだ。

 たぶん俺がいない時にテロリストがやってきて、生徒たちが頑張る。そして生徒がある程度の活躍をするが、ついに危機的状況を迎え、そんなときに俺が登場、危機を解決するのだ。

 

 やっぱり、学校はいいなー。

 

「騎士の養成所ならばすでにあるけれどね」

 

「学校がいいです。騎士は、まぁ、身分が確かな貴族でなおかつ家督を継げない人がなるのが通例ですが、魔力を持った平民に試験を受けさせて入学させましょう。学校で教養を身につけさせるんです」

 

「なるほど……たしかに今の騎士団の人員不足を補うには、平民を一から育てるしかない……というわけか」

 

「それに、私が魔法を教えましょう。だいたい……十二年みっちり教えれば、形にはなると思います」

 

 魔法の道は一日にしてならずだ。

 俺は生まれてから常に、この道を極めてきた。日々の暮らしの中で魔法を進化させていない瞬間はなかったくらいだ。

 普通に生活して、友達と遊んだりしながら、片手間に習得しようってくらいなら、そのくらいかかるだろう。

 

「ずいぶんと気の長い話だ。だが、十二年かかれば、今の君みたいになれるのかい?」

 

「いえ、たぶん無理です。よほどの天才なら、あるいは可能かもしれませんが、まぁ、そこらへんにいる魔物を簡単に倒せるくらいで終わると思います」

 

 今のメティは三年くらいだが、あれは魔眼に絞ったからこそ。それに、家事以外の時間を魔力回路の修行と魔物を倒す魔法の実践にあてているから今の実力だ。

 学校みたいなぬるい環境では、六年くらいかかると思う。

 

「そうか、それはよかった。君みたいな人間が増えるだけなら構わないが……それが敵対をする可能性を考えると、容易に許可できない計画だったからね」

 

「まぁ、そのときは私がぶちのめしますよ」

 

 最悪、魔法で改心させることも可能だ。

 ふふ、それにしても、魔法学校の裏切り者……それを追うが、敵わずに危機に陥る主人公……颯爽と現れて、元生徒を改心させる俺。いい……すごくいい。やっぱり、学校はいいぞー、必須だ。

 

「君が味方でよかった。俺には、君がどういう価値観で動いているかよくわからない部分があるが、この国を守ってくれる存在だと、俺は信じたいよ」

 

 この国を守るとか、正直なところ俺にはどうでもいい話だ。

 ただ、最強キャラムーブをしたら結果として国が守られただけ。それでもこの国が嫌いというわけではない。

 

「ふふ、この祝賀会。みんなが私のことをいっぱい誉めてくれるんですよ?」

 

「あぁ、そうだね。君が主役だ。君に助けられたみなは、君に感謝をし、讃えている。俺も含めてね」

 

「今もパレードで全国ツアー中ですよ? 毎日祝賀会です。この国の人たちは、私を誉めてくれるいい人たちです」

 

 最強キャラムーブにしか、俺は興味がないが、それでも誉められれば気分がいい。俺を誉めてくれる人たちが、俺は好きだ。

 

「疲れないのかい? さすがに全国を回るというのは」

 

「私は幸せです」

 

 パレードをすれば、みんなが俺のことを一目見ようと集まってくる。俺はすごい人気者だ。

 

「毎回作るあの像はなんなんだい?」

 

「やむを得ない事情で私の姿を見れなかった人たちのためです。カッコいい私の姿を一分の一サイズで色彩や質感も正確に再現した像ですよ? 拝めば疲労回復に、感染症が治る魔力回路のおまけ付きです」

 

 目立つところに作るのだが、騎士団の人がすぐにやってきて服を着せる。全裸の芸術品なんて珍しくもないはずなのに、ウブなことだ。

 

「医師は……患者が少なくなったと嘆いていたが……」

 

「医者にかかっても、効果がないのがいいところで、たいてい前よりも悪化させるじゃないですか。いなくなっても誰も困りませんよ」

 

 中世ヨーロッパ風の世界だから、医術レベルもそんなもんだ。

 医者に行くより俺を崇めた方が建設的だろう。

 

「彼らの仕事がなくなってしまうのが問題なのだが……」

 

「物乞いでもやってればいいんです。お金をとって病気を悪化させるとか、やってること犯罪者ですし変わりません」

 

 俺には三種類の許せない相手がいる。

 俺よりも強そうな雰囲気を出しているやつ。目標に向けて励む人間にケチをつけるやつ。ロリコンクソトカゲだ。

 

 副団長が苦言を呈したということは、ヤブ医者たちがなにかしらの抗議をしたということだ。

 せっかく、俺が気持ちよく誉められてるのに、水を差すなんて、ヤツらは俺の嫌いな相手の二つ目に違いない。

 

「君の像を壊そうとする過激な人間も出てくるくらいだ。実行する前に、周りで拝んでいた住民に囲まれて、集団で暴行されたそうだが……」

 

「そうですか。いい気味です」

 

 やはり俺は間違っていなかった。

 俺の行動に文句をつける異端者は、排斥される運命にあるのだ。世界が俺の存在を祝福している。

 

「もう、好きにしたらいいと思う。俺は、これから学校の件、上に進言してくるよ」

 

「行動に移すのが早いですね。私好きですよ、そういうの。人生の時間は有限ですし。頑張ってください」

 

「あぁ、そうだね」

 

 副団長は、席を立つと、どこかへ行った。

 俺は濃縮した甘いオレンジっぽいジュースをストローで飲みながらそれを見送る。甘いものは好きだ。

 

 次に隣に座ってきたのは先輩だった。

 

「あいつから、お前の事情は聞いたよ」

 

 ずずずと俺はジュースを飲み切る。

 

「そうですか」

 

 先輩はからの器にジュースを注いでくれた。気が利く。

 

「あいつ、俺のところに面倒ごとばかり送りやがって……」

 

「信頼されてるんじゃないですか? なんだかんだで、窮地に一番頼ってる感じがしますし」

 

 不穏分子な俺に対して、ある程度、相手になる人物に監督させるのは合理的な判断だろう。

 

「あの街に送られる時もそうだよ。あの危険な場所にこそ、君のような優秀な騎士が必要だなんて体裁のいいことを言って送りやがって……」

 

「ふふ、半分くらいは本音かもしれませんよ? この国を想う心は本物だと思いますから」

 

「そうかもな。だが、そういうところも嫌いなんだがな」

 

「露悪的……とでもいうんでしょうか? なんとなく、わざと先輩に嫌われようとしている感じがします。損な性格ですよね」

 

 洗脳から解放するために記憶を探ったとき、副団長については少しだけ詳しくなった。

 まぁ、興味がないから、どうでもいいことなのだが。

 

「そういえばだ。お前、剣術は下手だろう? 鍛えたりとか考えないのか?」

 

 あからさまに、先輩は話題を変える。先輩にとっても、これはどうでもいい話だったのかもしれない。

 

「人生の時間は有限です。同じ時間でも、私は剣術よりも魔法を鍛えた方が強くなれるので、剣術はやらないと決めているのです」

 

「……そうか」

 

 最終的には超強化したパワーで剣を振り回せば勝てるのだから、剣術なんていらないだろう。

 だから、俺は剣術をやらないのだ。

 

 

 

 ***

 

 

 

 今日の祝賀会が終わって、俺は、昨日作って置いておいた俺の像の様子を見にきた。

 

 やっぱり、像を作って作りっぱなしでは俺はなにも嬉しくない。なら、なぜ像を作るのか。俺の作った像を民衆が拝み倒している姿はいつ見ても楽しいからだ。

 その姿を陰ながら見つめるのが目的だった。

 

「ふん、ふーん、ふーん」

 

 フードを目深にかぶって顔を隠しながら、鼻歌を歌って目的地に歩いていく。

 

「……へ?」

 

 それは異様な光景だった。

 石だ。全てが石に変わっている。

 

 道を歩く人間に、動植物、建物……そして俺の像に祈りを捧げている人たちも、それは等しくだった。

 

 石……というのは表現の仕方が悪いか。

 石というのは鉱物だ。アルミニウムだったり、マグネシウムだったり、鉄だったり、珪素だったりと、そういう元素によって構成されているわけだが、これは違う。

 

 止まっている。ただ、止まっている。止まっている全ては光を均一に反射してか、同じ色をしていた。それがまるで石のように見えたのだ。

 

 そして、その中心にいるのは蛇――いや、鳥なのだろうか。一見は見上げるほどに巨大な蛇と思うような長い体躯をもつが、その体の全ては鳥のように体毛に覆われている。

 空を覆い尽くしてしまうのだろうかとも錯覚する巨大な鳥のような翼を持ち、その顔にはクチバシがある。まるで王冠のような立派なトサカを持つその魔物は、必死になにかに覆いかぶさって動いている。

 

 というか、そこには俺の一分の一の像がある。像に着せられていたはずの服が周囲にはボロボロになって散っていた。

 魔物はふるふると体の――おそらくは排泄部に近いだろう――一部を擦り付けて、俺の像を粘液だらけにしている。

 

「ぴー。ぴぴー。ぴーぃイィい」

 

「うわ……やば……。キモ……。雷切」

 

 俺はそれを確認すると、即座に雷切を放った。

 

「ぴ!? なんじゃ!?」

 

 俺の攻撃を鳥の魔物は飛んで躱した。

 その巨体に似合わぬ速さだ。感心する。

 不意打ちのはずだったが、ついでに俺の像をクチバシに咥えて持っていく余裕を見せている。

 

「喋る魔物……なるほど」

 

「急に攻撃しおって……! 他人が気持ちよく致しておったのじゃぞ? 見ないふりをして立ち去るのが礼儀であろう!」

 

 おそらくはロリコンクソトカゲの仲間だ。

 ロリコンクソトカゲの仲間であるから、まぁ、ロリコンクソトカゲ仲間で俺の像に発情したのであろう。

 

「二度とみくびりはしない……。最初から全力で……臨界――魔力回路」

 

「せ……石化!」

 

「な……」

 

 魔力が寸断された。

 国中を覆い尽くそうとした回路は、しかし、俺の像を置いたこの開けた場所でとどまってしまう。

 

「と、よく見れば、その魔力……この人形のもととなった女であるか。本物はよりいっそう美しい。愛おしいほどに流麗な魔力の染まり方じゃ」

 

 そう言って、鳥の魔物は光に包まれた。

 なんらかの魔法が発動したと考えられる。

 

 俺は即座に、第二の切り札を切ることを決めた。

 臨界で広がった回路をいじる。

 

「……離散……」

 

「魔力が……いや、消えたわけではない?」

 

 一つ階層(スケール)を落とした。

 相対座標への固定ではなく、物質への固定。空間を漂う気体分子へと魔力回路を貼り付ける。同時に、魔力回路の光は不可視となった。

 

 目的はナノサイズの汎用回路によるネットワークの構築。下準備は終わった。

 

「分解。鉄槌。風化。氷結。振動――」

 

「なんじゃとこれは……」

 

「――老化。崩壊。雷撃。融解」

 

 ネットワークの繋げ方によって発動する魔法は変わるが、一瞬で数百の魔法を切り替え放ち続ける。

 

 限りなく降る数百種の魔法に対抗するためだろう。鳥の魔物の羽が散った。

 魔物の細胞に刻み込まれた天然の魔力回路が光り、その力を発揮する。

 

「と……とまれぇええ!」

 

「無駄ですよ。これなら回路自体が寸断されてもまた新しく繋げられる」

 

 とはいえど、六割ほどは継続的に無効化されて使えていない。加えて、特化のしない汎用回路であるがゆえに、一撃の威力は小さい。

 まぁ、数分かけて数千、数万と積み重なれば致命傷には届くだろう。俺は回路を繋ぎ続ける。

 

 あぁ、しかし、そこまで待つ筋合いはなかった。

 

「く……この……!」

 

「耐えるな。だが、その状態では妨害もままならないんじゃないか? 臨界――」

 

 二度目だ。

 連打する魔法に手一杯な隙をついて、もう一度、国を覆うほど巨大な魔力回路を作り出そうと試みる。

 

「や……やめて……!!」

 

「な……ふぎゃ」

 

 なにかが、俺のことを押し倒した。

 おかげで、増殖する一つ目の回路が出来損ないになってしまう。

 

「おねがい……!」

 

「なにするんですか……!? て……あなたは……」

 

 見たことがある。

 俺の友達だった。

 

「あれは私の主人なの。だから、殺さないで!」

 

「ですが、いつかの眷属さん。あんなのですよ。眷属やめた方がいいんじゃないですか?」

 

「あんなのでも……。私は信じてるから……! いつか自分の行いの醜さに気が付くって……!」

 

「おい、お主ら……あんなのって、酷いではないのか……?」

 

 あんなのが俺たちに声をかけてくる。

 未だ発動し続ける魔法たちを受けながらも、こちらの会話に口を挟んできている。

 

「ずいぶんと余裕そうですね」

 

「無理じゃ……止めろ……止めてくれ……。死ぬ……死ぬぅうう!」

 

「お願い……やめてあげて……」

 

 他でもない、友達の頼みだ。

 これが、最強キャラムーブ中だったら、絶対に殺していたが、そういうわけではない。

 この気持ち悪い鳥を引き取ってもらえるならば、まぁ、殺さなくても構わないか。

 

「はぁ……」

 

 魔法の発動をやめる。

 あんがい形を保てるものなのだと俺は感心した。表面は、焦げたり溶けたり砕けたり、まぁ、いろいろだ。

 

「ありがとう……ぅ」

 

 泣いてお礼を言われる俺だ。

 なんというか、同情した。

 

「ふ……まだ、わらわの自己紹介をしていなかったな」

 

「…………」

 

 とても同情した。

 

「わらわは、西の砂漠の番人。石鳥マディフィス。すっごく強い魔物なのじゃ!」

 

 鳥の魔物はキラキラと光に包まれた。

 そして、そのシルエットが変わっていく。

 

「な……っ」

 

「くく……魔力で肉体に人間に姿を変える法よ……すごいじゃろ?」

 

 驚いたのはその姿にではない。その魔法でもない。

 

 ただ一点、俺の像を人の姿になっても抱きしめ続けるその魔物の性別だ。

 

「ロリコンレズバード……だと……」








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