俺がソニアの助手になってもう2週間もたつ。
その間に様々な街に行き、いろんな人とポケモンに出会った。
ソニア曰く、男がいると荷物やボディガードという面で助かるとのこと。
実際、凶暴なポケモンが出たときはミロカロスとともに戦い撃退したこともあった。
ポケモンの数はまだこいつ1匹だが、それでも確かに俺は強くなっている。
トレーナーとして大成したいわけでも、ましてチャンピオンを目指しているわけでもない。
それでもこの世界で独り立ちしていくには強さも必要だ。
そのことをソニアに話したとき、
『ワイルドエリアで捕まえてくれば?』
と言われたため、フラフラと歩いているが
正直ポケモンの知識が乏しい俺にはどいつを捕まえて、なんてものは難しい。
ポケモンにはそれぞれタイプと相性がある。
みずはくさに弱いため、ひこうやほのうを選ぶといい。
ということは直観的にわかる。
しかし、個体によっては性格や特性もある。
これに関しては慣れや自分のやり方次第だろうか。
MSも何度も操縦するから勝つことができる。
今の俺に足りないのはバトルでの経験だろう。
ミロカロス自身のポテンシャルに頼っている部分も多かった。
視線を草むらに向けると、地面をふよふよと浮く剣型のポケモンがいる。
「ヒトツキか」
はがね・ゴーストタイプのポケモン。
物は試し、やってみなければ始まらない。
ヒトツキに立ちふさがり、ボールを構える。
「頼むぞ、ミロカロス。りゅうのはどう」
真っすぐに放たれたりゅうのはどう。
タイプが一致でないにしても、直撃は痛手だろう。
それでもと立ち上がってくるヒトツキ。
すかさずボールを投げる。
「その気概、気に入った。俺とともに来い」
数度揺れるボール。
しかし、やがて揺れは収まり火花を散らした。
「2匹目だ」
ボールからヒトツキを出し、きずぐすりを振りかける。
「強くなるぞ、俺もお前も」
...
.....
.......
あれから何体か気に入ったポケモンを時間が来るまで捕まえた。
約束の時間が来る前にとっとと切り上げた後は、ワイルドエリアを出て、
ソニアのいるカフェテラスに寄る。
「こっちこっち」
店に入ると4人席に座っているソニアが手を振ってきた。
定員に案内されソニアのほうへ向かう。
どこの世界もこういった場所は変わらないらしい。
対面になるほうの席が空いているので座る。
「それで、どんなポケモン捕まえたの?」
「ああ。ヒトツキとルチャブルとドガースだ」
「それだけ?もっと他に捕まえなかったの?」
「気に入ったのがこいつらしかいなかったんでな」
「そう。なんかボブらしい。...なんか頼む?」
メニュー表を見るが、どれも洒落たものばかり。
こういったもののよさがわからない。
別段特に目を奪われるものもないので、無難にアイスコーヒーだ。
「ああ。すいません」
ちょうど近くを通りがかった店員を呼ぶ。
「アイスコーヒー一つ」
「私もアイスコーヒーと、あとはパンケーキ一つ」
かしこまりました、と言い残し厨房に注文を伝えに行く定員。
学生だったときにはこうやってゆっくりする機会もなかなかなかった。
自分の中で生き急いでいる面もあったんだろう。
誰かに認められたかった。
誰かに近くに寄り添ってほしかった。
でも今は違う。
ボールの中にいるこいつらがいる。
顔を上げると、ちょうどソニアと目が合う。
「?どうした」
「ボブってさ、彼女とかいないの?」
「...婚約者ならいた」
「それって前に言ってた気の合わないご令嬢でしょ。そうじゃなくて陰でお付き合いーとか、片思いしてた女の子とかいないの?」
「いないといえば噓になる」
「おお、それってどんな子?」
「決闘で俺を負かしたやつだ」
「え?それって婚約者を取った人でしょ。ってことはおと」
「ち、違う。スレッタ・マーキュリーは女だ!」
「スレッタさんって言うんだ。...てことは女性同士で結婚するの?すごいね」
「堅いんだな。前いた場所では普通だぞ」
「へー、進んでるんだねえー。で、そのスレッタさんにボブはどんなことしたの?」
「ぷ、」
「うん?」
「プロポーズ」
「???」
「だからプロ」
「聞こえてる。信じられなかっただけだから。え、プロポーズしたの?なんでまた?」
「初めて認めてもらえたからな。それでだ」
「結構チョロいんだね、ボブ」
「う、うるさい!...今となってはもう少しマシなやり方があったと思う」
「...未練は?」
「ないと言えばうそだろうな。時々脳裏によぎることもある。それでも、今の俺はボブだ。ガンダムやジェターク家とも関係ない、ただ一人の男」
「会いたい?」
「わからん。会いたくもあるし、二度と顔も見たくないといえる」
顔をみた瞬間未練が再燃しそうだから
この感情が沸き立ちそうだから
自分が止められなくなりそうだから
「そっか。そういえばルリナが最近会いたそうにしてたよ」
確かに、あれ以来一度も顔を見合わせてない。
流石に恩人に対して失礼にあたる。
今度ジムにでも顔をだそう。
「女の子、泣かせちゃダメだよ少年」
前髪をぐしゃぐしゃといじられる。
俺は...ミオリネ・レンブランを泣かしただろうか。
お互いのそりは全く合わず、見る表情はいつも不機嫌。
トロフィー扱いも少し後悔している。
彼女のこころは...どうだったんだろうか。
俺のように愛を欲していた?
それとも別の何かが必要だった?
いずれにせよ、あいつにとって水星女は光と言える。
俺にとっては...
【逃げれば一つ、進めば二つ】
あの時の言葉は今でも脳を焦がす。
すこし、笑みがこぼれる。
俺の未来は暗く、冷たいものであるかもしれない。
しかし、俺にも分け与えられた光があるから。
不安でも、怖くても、進めそうだ。
今だけは感謝しておこう、スレッタ。
「ああ、泣かせないさ」