東方のキャラに憑依したやつがすげーバカだったら   作:ナチュラル7l72

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第6話

さくさくと気持ちの良い音をたてながらキッズ用防水靴を履いて近所の道を歩く。

 

歩く度謎の擬音がなるのはさくさくパンダを食べ歩きしているわけではない。雪がさんさんと今もなお降り注いでいるからだ。

 

服装はいつもの水色のワンピだ。半袖かつ手袋もしていないが特に寒いと感じる事はない。夏のときは逆に暑すぎて死にそうだったがやはりそこは中身が俺でも皮がチルノな事はある。

今も素手で雪玉をゴロゴロ転がしながら歩いているが手がかじかんだりは全くない。

 

「まあ今の時期だと逆に当たり前なんだけど…」

 

そろそろ止められる携帯をポッケから出す。そこには8月と表示されていた。

なめこ栽培キットの裏技を使用しているわけではない。雲にパーフェクトフリーズしたらどうなるか試してみたくなって試したらこうなっただけだ。

すでに作っておいた身体の方の雪玉の上にゴロゴロ転がしていた頭の雪玉をずんと乗せる。後はその辺の枝を二本刺して石を顔に埋め込めば完成だ。

 

空に浮かんで周りを見渡すと半袖の制服を着ている学生らしき男や半袖の私服を着た女等々が寒そうにしながら走って最寄り駅に向かっていた。

しょうがないね。だって雪降ってるのここだけだもん。下手に防寒具なんて着て外出たら目的地につく頃には暑すぎてしんじゃうもんね。

 

わははははと笑いながらあたいはまた地に足をつけ雪だるまを作り始める。

今日で十個目。元家から10kmは離れた俺はまだまだ歩き続ける。

これからご飯どうしようかなあ。清潔面は壁を飛んで乗り越えれば露天風呂に入ればどうにかなるけど。

ご飯どうしよ。食い逃げしてもゆるされないかなあ。

効かないねえっ!チルノだから(ドン!!!)

みたいな感じで…

 

<><><>

 

最近力が付いてきた。

筋トレしたからとかではなくチルノぱわーが増えたというか。

最初はかき氷を作るレベルの事しかできなかったのに最近は雪を降らすくらいの事ができるようになってきた。

 

しかも日に日にその力が強くなっていくようにも感じる。

 

あたいはゴリゴリ氷を噛んでお腹が空いたのを誤魔化しながら歩く。

 

あたいは…そう。あたいは俺だ。

 

俺は元々「あたい」なんて一人称は使っていなかった。自分の女装姿なんて想像できない。「あたい」を使うような趣味をしていない。

でも今は俺が不自然になりあたいが自然になった。

 

この意識はチルノぱわーが増えれば増えるほど強くなっていった。

 

ふわりと空に浮かび目的地に急ぐ。

周りの人が目ん玉飛び出そうなくらいこっちを見てるけど知ったことではない。あたいは考え中なのだ。しかし真の強者は民衆のためを思うもの。あたいはテキトーにくるくるかっこよく回りながら…

ってちがーーう!!

 

オーディエンスのことなんてどうでもいい。

俺は自分の趣味くらいにしか興味がなかったはずだ。範馬の一族でもないんだから強いとか弱いとかどうでもいい。

 

この感覚とチルノぱわーが強くなっていく感覚はたしかあの時から感じていたはずだ。

 

俺が渋谷で仲間を探すため大立ち回りをしたあの時。

絶っ対あそこが節目だった。大勢の人からの目線、興味、恐れ、自分の存在が認められていったあの時。

 

たしかチルノは妖精だ。そして妖精は妖怪の一つとwikiで読んだことがある。

 

恐れだとか恐怖に準ずる感情が向けられたとき。

あたいは力が強くなり、俺はチルノになっていくのだろう。

 

スタッと東京スカイツリーの天辺に立つ。そして腰を落ち着かせ考える人ポーズ。あの石像くらいなら誰でも作れそうな気がするのはあたいだけかな?

このままだとどうなるか。もれなく俺は皮も心もチルノになる。

これでいいのか。俺があたいになるこの感覚を放置していいのか。

 

そよそよと風がふきはじめまわりが騒がしくなる。

がしゃがしゃがしゃとおよそ自然には発生しない機械音が出始め閉じた視覚には瞼の裏の色が赤くなったり黒くなったりちかちかちかちか鬱陶しくなり始めた。どこからあたいのことを聞きつけたのかヘリが大量にたむろしている。

 

真剣に考えているふりをしていた俺はおもむろに立ち上がりぐいーっと伸びをする。

 

うん。どうでもいいな。

というかもうこれは終わった話だし。

 

いままで見ないようにしていたがもう俺には帰る家がない。

あたりまえだ。こんななりでバイトなんかできるわけがない。

バカなことに俺は渋谷駅での動画撮影会用の準備で貯金すべてを使い切った。

その一世一代の散財の結果、なにもわからないことがわかった。

今もぎりぎり携帯の充電ギリギリまでネットを見ているが特に同士と思わしき人物はあらわれなかった。

きっとシャイなんだろう。俺のバカを許容してくれるのならその内気さも許すぞぉ俺ぁなあ。だって絶対俺のバカの方が致命的だもん。

親にも相談できない。友人もいない。なにもできない。

 

ならもう俺はあたいとして生きようじゃないか。

そう決めたからまだ家賃を滞納してもらってる我が家から夜逃げして歩きでここまで来てるんじゃないか。

 

正直あたいはなにをすればいいかなんてわからない。どうやって明日ご飯を確保すればいいのか。なにをすべきなのか。このさらさらした髪のケアとかどうすればいいのか。

 

全然わからないがとりあえずむかつくから羽虫のように周りにいるヘリコプターに向けてパーフェクトフリーズを浴びせる。ほーらこのまま浴びてたら手がかじかんで操作まちがって落ちちゃうんじゃないのぉ?あたいを餌に視聴率は稼がせやさせねえ!

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