デート・ア・ウィザード〜絶望を希望に変える魔法使い〜   作:黒崎士道

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約束を果たす時

轟音と共に周囲が吹き飛ばされていく。十香は剣を振り回し、衝撃波を折紙に放ち続ける。折紙は随意領域でどうにかそれを防いでいるが、それ以外は何もせず、ただその場にへたり込んでいた。

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああ‼︎」

 

十香は剣を上段に振り上げると、雄叫びと共に折紙に振り下ろす。一瞬、抵抗した随意領域だったが、次の瞬間にはクレーターを形成しながら消滅した。

その折紙に十香は剣を突きつける。

 

「ーーーー終われ」

 

十香が剣を振り上げ、それを振り下ろそうとした瞬間。

 

「十おおおおお香ああああああああああああああああああああああああ‼︎」

 

はるか上空から聞こえた声に十香は目を見開き、空をふり仰ぐ。すると、上空から一つの影が猛スピードでこちらに落ちてくる。

 

それはーー折紙に撃ち抜かれたはずの魔法使いウィザード、晴人だった。

 

「ハーールト…?」

 

ハリケーンスタイルのウィザードの身体が風の力で落下の重力に抗うようにふわりと浮かぶ。十香はそのままウィザードの元に飛んで行くと、ウィザードの身体を抱きとめる。

 

「ハルト……本物か?」

 

「幽霊に見えるか?心配かけてごめんな、十香」

 

ウィザードのその言葉に十香は目じりに涙を浮かべると、そのままウィザードに抱きつく。

 

「ハルト、ハルト、ハルト……‼︎」

 

「ああ、なんーー」

 

なんだ、と答えかけたところでウィザードの視界の端に凄まじい光が満ちた。

十香が握っていた剣が、あたりを夜闇に変えんばかりに真っ黒に輝いている。

 

「十香!これは⁉︎」

 

「【最後の剣】の制御を誤った……!どこかに放出するしかない……!」

 

「どこかって、一体どこに…」

 

十香は地面の方に目を向ける。ウィザードも十香につられてそちらを見ると、そこには今にも瀕死状態で倒れている折紙がいた。

 

「いや駄目だぞ⁉︎流石にあそこは駄目だぞ⁉︎」

 

「ではどうしろというのだ!もう臨界状態なのだぞ!」

 

そういっている間にも、十香の握る剣は辺りに黒い雷を撒き散らしていた。まるで機銃掃射のように地面を抉っていき、十香の罅割れもだんだん広がっていく。

 

「大丈夫だ。俺が絶対に助ける」

 

約束の指輪―――エンゲージウィザードリングを見せながら、そしてウィザードは言う。

絶望を振り払い、希望を救う、絶対の誓いを。

 

「約束する。俺がお前の、最後の希望だ」

 

決意を表す言葉に小さく微笑み、十香の右手を優しく手に取り、ウィザードは小さな指に指輪を潜らせる。

 

《エンゲージ・プリーズ♪》

 

指輪をハンドオーサーにかざすと、ウィザードの目の前の空間に魔方陣が出現した。

それは十香の心へと繋がる希望の扉。ウィザードは魔方陣の中に飛び込み、姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウィザードは十香の精神世界ーーーアンダーワールドへと降り立つ。十香のアンダーワールドは、天宮市の商店街だった。ウィザードは周囲を見渡すと、そこには十香に手を引かれている晴人の姿があった。

アンダーワールドとはその者が過去で経験した記憶の中で最も心に深く刻まれた風景が映し出される。十香にとって、今日の出来事が一番の思い出ということだろう。

 

ーーーだが、その光景は突如として停止して空間に紫の亀裂が起きる。そこから姿を現したのは、巨大な紫色の西洋龍の姿をしたファントムーーージャバウォックだ。

 

ジャバウォックは現れる途端、現実世界に出ようと十香のアンダーワールドを破壊し始める。

 

「これ以上、十香を絶望させてたまるか‼︎」

 

《ルパッチマジックタッチゴー♪ルパッチマジックタッチゴー♪》

 

《ドラゴライズ・プリーズ♪》

 

ウィザードはハンドオーサーに指輪を翳すと、音声コールの後に呪文のような音声が流れる。そして、ウィザードの上空に出現した巨大な魔方陣からはーーー

 

《グオオオオオオオオオオオッ‼︎》

 

咆哮を上げながら、巨大な西洋龍が姿を現した。この龍の名は、ウィザードラゴン。晴人のアンダーワールドに存在するファントムの本来の姿だ。

 

「ドラゴン、俺に力を貸してくれ!」

 

ウィザードの言葉に頷いたドラゴンは、そのままジャバウォックに向かって進撃する。その間に、ウィザードはコネクトウィザードリングで現実世界に置いてきたマシンウィンガーを取り出す。

 

《コネクト・プリーズ♪》

 

コネクトで取り出したマシンウィンガーに跨ると、ドラゴンとともにジャバウォックに向かっていく。ドラゴンは空中から火炎弾を吐き、ジャバウォックを攻撃。その隙にウィザードはマシンウィンガーを操作してドラゴンの上に飛び上がると、マシンウィンガーは通常のバイクではあり得ない変形を遂げてドラゴンと合体。ドラゴンはさらに大きな翼を持つウィンガーウィザードラゴンとなった。

 

「行くぞ、ドラゴン!」

 

《グオオオオオオオオオオオッ‼︎》

 

ウィザードの言葉にドラゴンは咆哮で答えると、ジャバウォックに向けて火炎のブレスを放ち、対するジャバウォックも黒炎のブレスをぶつけて相殺する。

 

《キャモナスラッシュ・シェイクハンズ♪キャモナスラッシュ・シェイクハンズ♪》

 

《フレイム・スラッシュストライク!ヒーヒーヒー♪ヒーヒーヒー♪》

 

「はああっ!」

 

ジャバウォックがドラゴンとブレスをぶつけ合っている間に、ウィザードはウィザーソードガンのハンドオーサーを展開、炎の斬撃を放つ。

 

《グルアアアアッ!》

 

ジャバウォックが弱ってきているのを見逃さなかったウィザードは、ウィザードライバーのハンドオーサーを操作する。

 

《ルパッチマジックタッチゴー♪ルパッチマジックタッチゴー♪》

 

「フィナーレだ!」

 

《チョーイイネ!キックストライク!サイコー!》

 

ウィザードはキックストライクのウィザードリングを行使。ドラゴンから飛び上がる瞬間、ウィザードラゴンとマシンウィンガーの合体が解除される。

すると、ドラゴンが普通はあり得ない変形を開始し、その形を巨大な龍の脚『ストライクフェーズ』に変形させ、マシンウィンガーがその後部に連結する。

 

「はああああああああああああっ‼︎」

 

ウィザードも高い魔力で生み出された炎を足に纏い、マシンウィンガーにキックを通じてそれをストライクフェーズとなったドラゴンに送り込む。

 

《グルアアアアッ‼︎》

 

ジャバウォックは火炎弾を放ち、必死にドラゴンを止めようとする。だがその程度の火炎弾ではドラゴンは止まらない。ジャバウォックのブレスはすべてドラゴンの纏う火炎の前には無力となった。

 

「だああああああああああああああああああっ‼︎」

 

《ガアアアアアアッ⁉︎》

 

ウィザードとドラゴンの必殺キック『ストライクエンド』を受けたジャバウォック。そんな想像もできないようなキックを受けて無事なものは少ないだろう。ジャバウォックは爆発と共に消滅。ウィザードが大地に降り立つ頃にはドラゴンがその上で勝利の雄たけびを上げていた。

 

「ふぃ〜、ありがとなドラゴン」

 

《グオオオオオオオオオオオッ‼︎》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、これは一体……⁉︎」

 

十香は声を上げた。自身の中で何かが消えるような感覚がしたと思うと、十香は自身の罅割れがまるで始めからなかったかのように修復され、手に持った【最後の剣】から放たれていた光も収まった。

 

「ハルトのおかげなのか…?」

 

十香がそう呟くと同時に、十香のすぐそばに魔方陣が現れ、そこからマシンウィンガーに乗ったウィザードが姿を現した。

しかし、ウィザードは忘れていた。ウィザードと十香が今いる場所は上空だ。そんなところから通常スタイルでバイクに乗って現れるとーーー

 

「のわああああああああああああああああああああああああああああああっ⁉︎」

 

当然、落下する。ウィザードはマシンウィンガーにしがみついたまま地面に向けて落下するというシュールな光景が広がっている。

 

「ハルト!」

 

「うおっ!」

 

十香は落ちていくウィザードの腕を咄嗟に掴む。それによってウィザードは何とか地面に落ちずに済んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

晴人は魔力切れによって強制的にウィザードから変身を解除されると、地面に膝をつく。十香はそんな晴人に近づくとその傍らに膝をついた。

 

「……すまない、ハルト…私のせいで……ハルトを危険な目に合わせてしまった………」

 

十香は悲痛な表情で、震える声を絞り出した。水晶のような輝きを持つ瞳からは涙が溢れ、宝石のように美しく輝きながら次々と滴り落ちた。

 

「十香……」

 

「やはり……私はもう、いなくなった方がーー」

 

十香がそう言いかけたところで晴人は十香の身体を抱き寄せた。そしてそのまま、十香の唇に晴人は自分の唇を押し付けた。

 

「ーーーッ⁉︎」

 

力一杯に目を見開き、声にならない声を上げる十香。

 

十香の唇は、柔らかくてしっとりしていて甘い匂いまでしてそんな感覚感触が晴人の脳内を駆け巡った。キスはレモン味とか聞いたが、実際は十香が昼間に食べていたきなこの味がした。

晴人は十香の唇から離れると、両腕でより強く背中を引き寄せ、低く呟いた。

 

「…十香、俺はこれからも君の希望になって……必ず君を守る。だから…もう二度と絶望なんてしないでくれ」

 

「……ハルト」

 

十香は震える声で晴人の名を言うと、晴人の身体を抱き返した。

一拍おいて、天に聳えていた十香の剣にヒビが入り、バラバラに霧散して虚空に溶け消える。

次いで、十香がその身に纏っていた霊装から光の粒子が放出され、その色を失う。それが晴人の身体に吸い込まれ、一瞬晴人の身体が輝き出したと思うとすぐに消えた。

 

「今のはーー」

 

「ど、どうなってんだ…?」

 

不思議そうに唇に指を触れさせていた十香に晴人は突然の出来事に混乱しながらも応える。

 

 

 

そしてこの出来事が、晴人の希望の魔法使いとしての運命を大きく左右するなど、まだ誰も知る由もない。

 

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