デート・ア・ウィザード〜絶望を希望に変える魔法使い〜   作:黒崎士道

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異世界からの来訪者

ディケイドが放ったいくつかの弾丸が被弾し、サラマンダーの動きが一瞬止まったところでディケイドは駆け出した。

専用武器、ライドブッカーを本型のブックモードから、剣型ソードモードに変形させてサラマンダーに斬りかかる。

サラマンダーは咄嗟に炎で形成された剣を作り攻撃を受け止めた。

だが、ディケイドはすぐに機転を利かせライドブッカーを掬い上げるように振り上げ炎の剣を払い除けた。

そして、すかさず胸部から腹部にかけての前面に一撃を入れた。

 

「ガァッ…!」

 

呻き声とともに火花が舞った。

斬られた傷口を抑えながら3歩ほど後退したサラマンダーがすぐに突きを繰り出してきたが、ディケイドにライドブッカーの刀身で巻き抑えられ、逆にがら空きになった腹部に鋭い蹴りを叩き込まれた。

無様に後方に身体を飛ばされる姿を見つめる仮面の視線に、サラマンダー怒りを覚え発狂したように火炎弾を放ってきた。

だが、闇雲に繰り出す攻撃が届くことはなかった。

ディケイドはすべての攻撃を剣で払う、体を捻るなどの最小限の動きでかわしていく。

そして何度目かの攻撃をくるりと体を回転させてかわす。

その最中に、ディケイドライバーのバックルを展開し、カードを挿入する。

 

《ATTACK RIDE・BLAST》

 

「はっ!」

 

ディケイドライバーが音声を発すると同時にガンモードに変形させたライドブッカーの銃口をサラマンダーに向け、引き金を引いた。

するとライドブッカーの銃身がマゼンダカラーの分身を作り出しし、合計で5つの銃口が同時に火を噴いた。

一斉に連射される光弾を正面から受け、サラマンダーは更に火花を上げながら地面を転がる。

それを見据えるディケイドは別のライダーカードを再び目の前に掲げた。

 

「変身!」

 

《KAMEN RIDE・BLADE》

 

カードを装填すると、ディケイドライバーからオリハルコン・エレメントと呼ばれるヘラクレスオオカブトの絵柄が浮かぶ青い光のゲートが眼前に放出された。

臆することなく光の壁を通過すると、ディケイドの姿は大きく変わっていた。

ディケイドライバーはそのままだが、赤い複眼と一本角を携えた仮面に、青を基調としたスーツに、白銀の鎧の胸部にはスペードのマークが存在を主張するように鎮座していた。

それは友と世界を救うために、運命と戦うことを選んだ戦士。

名を、仮面ライダーブレイド。

ブレイドに変身したディケイド・ブレイドは手に持つライドブッカーを構えサラマンダーに向かって駆け出した。

サラマンダーもすぐに炎の剣で応戦しようとするが、ディケイドの時よりも洗練された剣撃の前で、パリンという儚い音を立てて砕け散ってしまった。

 

「この…うおおおおおっ!」

 

得物を砕かれ、自棄気味になったサラマンダーは炎を纏った拳で殴り掛かってきた。

しかし、ディケイドは冷静にそれらを躱していき、カードをディケイドライバーに挿入した。

 

《ATTACK RIDE・TACKLE》

 

ディケイドはライドブッカーを構え、眩い白光を放ちながら猛スピードで強烈なタックルをサラマンダーにかました。

重い衝撃をモロに受け、大きく後ろに飛ばされるサラマンダーに追い打ちをかけるようにディケイドはまた新たなライダーカードを取り出した。

 

「次はこいつだ!」

 

《KAMEN RIDE・RYUKI》

 

ディケイドライバーが音声を鳴らすと同時に、3方向から迫る虚像がディケイドに重なった。

サラマンダーが肩で息をしながら立ち上がる時には、ディケイドの姿は変わっていた。

目の前に赤いボディの左手に龍を模した手甲と、同じく龍の意匠を施した鉄仮面の戦士が立っていた。

その名は、仮面ライダー龍騎。

かつて、望まぬ宿命に苦悩しつつも、命尽きるまで己の信念を貫いた龍の影を纏う騎士の姿を見るサラマンダーの心はすでに折れていた。

目の前の戦士に勝てないと悟り、サラマンダーは炎の翼を広げ戦線離脱を試みる。

しかし、サラマンダーの逃走をディケイド・龍騎は許さなかった。

 

「逃がすか!」

 

《ATTACK RIDE・ADVENT》

 

《ギャオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!》

 

鼓膜を破るような咆哮とともに現れたのは龍騎が使役する契約モンスター、“無双龍ドラグレッダー”である。

ドラグレッダーはその炎のような真紅の巨体をくねらせ、龍騎に変身したディケイド・龍騎の周りを漂う。

ディケイド・龍騎はパンパンと手を払うように叩く仕草を見せた後、その場で跳躍した。

サラマンダーは咄嗟に後ろを振り向くと、雄叫びを轟かせるドラグレッダーの背に乗るディケイド・龍騎が迫っていた。

サラマンダーがその迫力に言葉を失い、動きを止めた刹那、爆音が空中に響いた。

数秒と経たないうちに、煙の中から現れたのはどしゃりという音を立てて倒れるサラマンダーと、元の通常形態で着地を決めるディケイドだった。

ふらつきながら立ち上がるサラマンダーにトドメと言わんばかりにディケイドは自身の紋章が描かれたカードを引き抜いた。

 

「こいつで決める!」

 

《FINAL ATTACK RIDE・de、de、de、DECADE》

 

ディケイドライバーが音声とともに読み込んだカードの能力を解放する。

瞬間、サラマンダーとディケイドとの間に15枚のホログラム状のカード型エネルギーが出現した。

ディケイドはライドブッカー・ソードモードの刀身を撫でると、先ほどと同じようにカード型のホログラムを潜り抜けた。

一枚ずつ通過するごとにライドブッカーの刀身が放つマゼンダカラーの光が増していく。

すでにサラマンダーには、反撃する気力も攻撃をよける余力も残されていなかった。

 

「はああああああああああっ!」

 

サラマンダーが最後に見たのは最後の一枚を潜り、眼前に躍り出るディケイドの姿だった。

 

「ぐあああああっ!?」

 

サラマンダーの断末魔とともに、ディケイドの必殺の斬撃『ディケイドスラッシュ』の一閃がサラマンダーを葬った。

揺らめく炎を背にしたディケイドはディケイドライバーに手を掛けた。

バックルのハンドルを開くと、マゼンダカラーのボディが色褪せるのと合わせて、シルエットとなったディケイドの姿が弾けるように離反し、元の少年の姿に戻った。

 

「大丈夫か?」

 

少年は心配そうな表情で晴人を見て、手を差し出した。

 

「あ、ああ。ありがとう」

 

晴人は礼を言いながら少年の手を掴み、そのまま立ち上がると晴人は少年に尋ねた。

 

「えっと…君は?」

 

「俺は五河士。通りすがりの仮面ライダーだ」

 

「仮面ライダー…?って、五河⁉︎」

 

晴人は士と名乗った少年が口にした『仮面ライダー』という言葉に疑問を感じたが、それ以上に少年の名がかつての自分と同じ『五河』であるということに衝撃を受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーっと、大体こんなとこかな」

 

「……マジかよ」

 

晴人は士から聞かされた話を聞き、驚きを隠せなかった。

なんでも次元が隔てる向こう側には、それぞれの歴史を築き、独自の文明が発展した様々な平行世界が存在するという。

その世界の中には仮面ライダーと呼ばれる戦士が数多く存在するようだ。

そして、どうやら晴人が変身するウィザードもその仮面ライダーの一人らしい。

それを含めて、士が変身するディケイドはさらに多くのライダーに変身する能力を有している。

士がいた世界にもこの世界とは異なる天宮市が存在し、士道や琴里に十香など、この世界に存在する人物もその世界にいるらしい。

そして士は自分たちの世界に存在する謎の組織、パラドクスのメンバーを追って晴人のいるこの世界に訪れたらしい。

 

「そっちの事情は分かったけど…これからどうするんだ?」

 

「そうだなぁ…流石に違う世界の五河家に帰るわけにはいかないし、公園で野宿かな?」

 

士は苦笑しながら頭をかき、そう言う。そこで晴人はあることを思いついた。

 

「だったらしばらくうちに来いよ。どうせでかい家だし一人くらい増えても問題ないしさ」

 

晴人が士にそう提案すると、士は目に涙を溜めて晴人に抱きついてきた。

 

「晴人!お前…いい奴だなぁ…!」

 

「い、いいって。同じ仮面ライダーなら助け合いだろ?」

 

「…その台詞、どこかの仮面ライダーが言ってた気がするけど、まあいいか」

 

士はそんなことを呟きながら晴人から離れる。そのまま二人は日の暮れた路地を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから士を連れた晴人は自宅に辿り着き、玄関を開けてリビングの方に向かう。

だが、そこには予想外の人物が二人を迎えた。

 

「え……」

 

「あ、おかえりなさいハルト」

 

晴人と士を出迎えたのは、制服から簡素な白い短衣と膝上丈のスカートに着替えたコヨミだった。その手には良い香りが漂う鍋が持たれていた。

 

「こ、コヨミ…?なんで、うちに……」

 

「なんでって、私も今日からここで暮らすにきまってるじゃない。キリツグから聞いてないの?」

 

「初耳なんですけど⁉︎」

 

コヨミからとんでもないことを言われ、晴人は困惑すると奥の部屋から切嗣が苦笑しながら現れた。

 

「すまないね晴人。早く言おうと思っていたんだが、ナタリアが面白そうだから内緒にしてくれと言ってね」

 

「ぐっ…ナタリアめ……」

 

切嗣の言葉に晴人は今この場にいない女性の名を口にする。本来ならばすぐにでもナタリアに問いただしたい所だが、あいにくなことにここ最近彼女は家を留守にしてしまっている。

なんでも何処かの遺跡で魔法使いに関連する石碑が発見されたらしいのでそれを探しに出掛けたらしい。

 

そこでコヨミは今頃晴人の後ろに立つ士の存在に気がついた。

 

「ところでそこの子は誰なの?」

 

「ああ、こいつは士。泊まるところがないからしばらくうちに泊めることにしたんだけど、いいかな?」

 

「勿論だよ。士君、色々と不便があるかもしれないが、くつろいでいってくれ」

 

「あ、いえ。こちらこそしばらくの間ですがよろしくお願いします」

 

こうして士は、元の世界に戻るまでこの神代邸で暮らすこととなった。互いに同じようで違う世界の住人である二人の仮面ライダーはこの世界でどんな物語を紡いでいくのだろうか。

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