デート・ア・ウィザード〜絶望を希望に変える魔法使い〜 作:黒崎士道
いよいよ夏休みも終わりが近づき、僕も必死で残った宿題を終わらせようとがんばっています。
では、どうぞ!
「あらハル君、いらっしゃい」
「いらっしゃい、晴人君」
「よっ、店長に真由さん」
一人、『はんぐり〜』に来た晴人を店長と真由が営業スマイルで出迎えた。晴人はカウンターに行くと、店長と真由がケースから新作のドーナツを取り出す。
「見て見て、今日の新作ドーナツ!名付けて『虹色ドーナツ』!」
「しかもその名の通り、七種類の色んな味がします!」
そう言って店長と真由が皿の上に乗せたのは、鮮やかな七色のドーナツだった。おそらく真由が言っていた七種類の味とは果物の味のことなのか、ドーナツからは果物の香りが漂う。
「プレーンシュガー」
「やっぱり!」
だがやはり晴人はお気に入りのプレーンシュガードーナツを注文する。店長はケースからプレーンシュガードーナツを取り出すと、ドリンクと一緒に晴人に渡す。晴人はそれを受け取るとテーブルに座り、ドーナツを頬張る。
「それにしても…まさか士道が魔法使いになるなんて……」
晴人はため息をつきながら、思わず呟いた。
結局、あの後士道は魔法使いに変身したところをフラクシナスのモニターで見ていた琴里たちによって回収され、身体に異常がないかということでそのまま精密検査を受けさせられているらしい。そのことを聞いたコヨミや十香たちはフラクシナスへ行き、置き去りにされた晴人は一人でドーナツを食べるハメになった。
だが、晴人も内心ではそのことについて悩んでいた。
魔法使いになるということは、士道もファントムとの戦いに身を投じなければならないということだ。家族を危険な目に合わせたくないと思う反面、士道がこれからどのような選択をするのか気になって仕方が無いと思う自分がいることに晴人はどうすれば良いのか分からなくなっていた。
「相席、いいか?」
晴人が悩んでいる中、そんな声がかけられた。晴人は意識をその声の主に向ける。晴人と同じ来禅高校の制服を着た闇を思わせる少し長めの黒い髪、髪の間から覗く金色に鈍く光る瞳が特徴的な晴人と同じ年のような少年だった。
「え?ああ、別にいいけど……」
「そうか。ありがとう」
晴人の返事を聞いた少年は晴人と同じテーブルの席に座り、その手には今日の店長の新作、虹色ドーナツが乗った皿があった。
「俺は葛場千秋だ。よろしくな」
「俺は神代晴人。こっちこそよろしく」
晴人は、この千秋と名乗る少年を見てふと思った。千秋は来禅高校の制服を着ている。だがもし千秋が来禅高校の生徒ならば、晴人は彼のことを一度も見たことがないし、何よりこの少年は何故か違和感を感じた。
そこで晴人は思い切って聞いてみる。
「なあ、千秋ってこの辺りじゃ見かけないけど、どこから来たんだ?」
晴人の問いに千秋は数秒程考える仕草を取ると、口を開いた。
「そうだな…ディケイドと同じ世界……と言えばわかるか?」
「……っ!」
瞬間、晴人は反射的に席から立ち上がり飛び退いた。千秋はその言葉を言ったと同時に僅かながら殺気を放ったのだ。晴人はウィザードリングをベルトに翳す準備をしておく。
そんな晴人の反応を席に座りながら眺めている千秋は不敵な笑みを浮かべながら言った。
「流石だなウィザード。即座に戦闘態勢に入ったのは称賛するが、こんなところで戦う気か?」
千秋はそう言って周囲を見やる。確かに、この場には少なくとも一般人がいる。そんな空間で戦闘をすれば、確実に巻き添えを食らう人が出る。
晴人は渋々と席に戻る。
「……お前、パラドクスなのか?」
「正解。俺はパラドクスのメンバー、葛場千秋。またの名を仮面ライダールシファーだ」
ーーーパラドクス。晴人は士からその話を何度か聞いた。あらゆる世界の怪人たちを統率し、士の世界で暗躍する謎の組織。そのメンバーの仮面ライダーたちの中でもルシファーという仮面ライダーはディケイドを狙っているような行動をしていると。
「パラドクスのメンバーが……俺に何の用だ?」
「ああ、ちょっとお前と話がしたいと思ってな」
「話……?」
わけが分からないという様子の晴人を無視し、千秋はゆっくりと口を開き、晴人に問う。
「……お前が戦う理由は、何なんだ?」
「戦う…理由?」
千秋の問いに、晴人は思わず聞き返す。
「ああ、この世界ではファントムなんて強大な勢力が存在する。そんな中で、どうしてお前は傷ついてでも戦う?誇りとやらのためか?それとも使命を果たすためか?」
千秋の言葉に、晴人はしばらく考えるとそれに答える。
「………さぁな、俺にもあんまりわからねぇよ」
「なんだと…?」
晴人の答えが予想外だったのか、千秋は目を見開いた。晴人はそれに構わずそのまま続ける。
「確かに、昔の俺なら俺は人々の希望を守るためにってがむしゃらに戦ってたこともある。仮面ライダーは、正義のために戦うんだろ?」
「まあ、大半の奴らはな。だが正義なんて簡単に崩れていくぞ。親しかった存在が敵になり、人々の平和を守るためにその存在を殺すことだってあるし、そもそも正義なんてもの自体が曖昧なものだからな。要するに正義なんて人それぞれだが、自分の正義すら貫けない奴は何も守れないと思うが」
「俺には正義とか難しいことはよく分からないけどさ、俺には大切な存在がたくさんいるんだ。俺はそんな人たちと生きていきたいから、大切な日常を守りたいから戦うんだと思う」
そう答えている間、晴人は千秋を見据えていた。
「それが…お前の正義ってやつか……」
「ああ。お前の正義はなんなんだ?」
晴人の問いに千秋は黙ってしまう。そして、ドリンクを口にする。
「俺の正義……か」
ドリンクのカップを置いた千秋はそう呟いた。晴人は千秋の答えを待っていると、千秋が口を開いた。
「……もし、お前は人類を救うために大勢の人間を犠牲にするしかないとしたら…どうする?」
「え……?」
千秋の言葉に晴人は言葉を失った。世界を救うために大勢の人間を犠牲にする。その言葉はまるで自分に対する問いかけのように聞こえたのだ。
「世界を、人類を守るために、人類に敵対し暗躍する。何の関係もない人々を巻き込んで、恨まれ、憎まれていく。だがそれでも俺は人類を救ってみせる。たとえ犠牲を出し、永遠に犠牲者から恨まれてでも俺は世界を救いたい。それが俺の正義だ」
「お前……」
千秋が言った言葉に晴人は何も言えなかった。晴人は士たちの世界がどうなっているのかは知らない。だが千秋の言葉には強い覚悟と誓いに似た重みを感じた。
千秋は自分自身が傷付いてでも世界を救いたいと思っているのなら、何故パラドクスのメンバーとなっているのか。不意にそう思った晴人だが、それを聞くのは悪いと思い、黙っていた。
「長居をしたな。また会おう、ウィザード」
千秋はそう言うと席から立ち上がり、テーブルの上に紙幣を置くと、そのまま何処かへと去って行った。
千秋と別れた後、晴人は自宅に帰宅しようと鞄を持って帰路を歩いていた。空いた片手には『はんぐり〜』で買ったドーナツの入った紙袋が持たれている。
「あ、兄さん」
声が聞こえて振り返ると、先ほどフラクシナスに回収されて精密検査を受けていたはずの士道がいた。買い物の帰りなのか、手にはレジ袋が握られていた。
「よう士道。検査の方はどうだった?」
「ああ…血液から何まで全部調べられたよ。一応異常は見つからなかったみたいだけど、魔力がなくなると魔法使いに変身できなくなるらしいんだ」
「そっか……まあ異常がなくてよかったよ」
士道が魔法使いになったことで特に身体に異常がないことに晴人はほっと胸を撫で下ろす。そんな時、不意に晴人と士道に目掛けて光弾が放たれた。
「ーーっ!」
《ディフェンド・プリーズ♪》
晴人は咄嗟に目の前に魔法陣の防壁を展開、光弾を全て防いだ。攻撃が止み、光弾を放った正体を確認すると、そこには炎に覆われた黒い身体のファントム、ヘルハウンドがいた。
「魔法使いども!ここで始末してやる!」
ヘルハウンドはそう言って石をばらまくと、そこからグールが現れる。晴人と士道は互いにドライバーを待機状態にし、指輪を装着すると、不意に二人の背後から声がかけられた。
「なら、お前が俺の旅を終わらせてくれるのか?」
晴人と士道は後ろを振り向く。そして少し離れた場所から、ディケイドライバーを片手にこちらに歩いている士がいた。士は歩きながらその腰にディケイドライバーを装着する。
「士!」
「お前がディケイドか。お望み通り、お前も始末してやろう」
「歓迎するぜ。誰にも相手にされないよりかマシだからな。変身!」
士は左腰に連行されているライドブッカーからカードを取り出し、ディケイドライバーのバックルに挿入、バックルを回転させる。
《KAMEN RIDE・DECADE》
瞬間、士の周りに14の紋章と、14のモノクロのシルエットが出現する。
それらが士と重なると一瞬だけ発光し、次の瞬間にはモノクロだったシルエットと同一の姿の仮面にバックルから出現したマゼンタのプレートが頭部に突き刺さる。
士はディケイドに変身すると、ライドブッカーを本型のブックモードから剣型のソードモードに変形させグールどもに向かって駆け出し、斬り倒していく。
「変身!」
《フレイム・プリーズ♪ヒー♪ヒー♪ヒーヒーヒー♪》
晴人はウィザードライバーにフレイムウィザードリングを翳し、魔法陣に向かって駆け出すとウィザード・フレイムスタイルに変身を終えた。
「俺も…!変身!」
《セット!オープン!L・I・O・N!ライオン!》
士道も指輪をビーストドライバーのシリンダーに差し込み、バックルが展開すると士道の身体を黄色の魔法陣が通過して、古の魔法使いビーストへと変身した。
「行くぞ、士道!」
「ああ、兄さんとなら負けはしない!」
「士道、一応俺もいるぞ?」
「え?ああ、誰か知らないけどよろしく!」
自分のいた世界では家族だった士道にスルーされたのが悲しかったのか、ディケイドは指摘をする。だが士のことを知らない士道はそれに構わずダイスサーベルでグールを斬り倒していく。
ポツンと佇むディケイドの肩に、ウィザードはなんとも言えぬ様子で手を乗せた。
「何つーか……ドンマイ?」
「慰めるな!余計自分が惨めになる!」
《ATTACK RIDE・SLASH》
「はあああああっ!」
ウィザードの前に出たディケイドのマゼンタの光を纏ったライドブッカーの斬撃がウィザードたちの周りにいたグールたちを吹き飛ばす。
「おお、凄いね」
「これ以上はさせん!」
「ぐああっ!」
ウィザードがそんな軽口を言っていると、ディケイドは突然どこからか斬撃を食らい、そのまま地面を転がった。ウィザードは声のした方を見ると、そこにはトカゲの姿をしたファントム、リザードマンがいた。
リザードマンとヘルハウンドは隙が出来たディケイドに止めを刺すためにその手に光弾を溜めた。ウィザードとビーストもグールに足止めをされてディケイドを守ることができない。
「……何をしているんだい士?君はこの程度ではないだろう?」
「ぐあああっ!」
『っ⁉︎』
その時、リザードマンとヘルハウンドの背中に目掛けて幾つもの銃弾が浴びせられた。予想外の攻撃を受けた二体はその攻撃者を睨みつける。
「くっ⁉︎誰だ‼︎」
そこにいたのは、来禅高校の制服を着た少年だった。サラッとしたショートヘアの黒髪に右目下に泣きぼくろがある少年の手には青い銃器が握られている。
「大樹っ⁉︎」
予想外の人物の登場にディケイドは驚く。それもそのはずだ。目の前にいるこの少年、海東大樹は本来『ディケイドの世界』に存在するはずの人物なのだ。
「酷いなぁ、士。僕を置き去りにするなんて」
「いや、そんなことよりなんでお前がここに⁉︎」
「ああ、それはねーーー」
「貴様ら!俺を無視するな!」
互いに同じ世界から来た二人の会話に、蚊帳の外となっていたヘルハウンドが苛立ちの声を上げた。
「……全く、人の話を待つこともできないのかい?」
大樹はディエンドライバーとカードを構えながらそう言うと、カードをディエンドライバーの銃身に装鎮すると銃口を天に向ける。
「変身」
《KAMEN RIDE・DIEND》
その瞬間、銃口からシアンカラーの12枚のプレートが放たれ大樹の身体がモノクロの全身スーツに包まれる。
そして上空に浮いていたプレートはスーツを纏った大樹の頭部に突き刺さり、モノクロのスーツは黒とシアンが基調の姿に変わる。
「また仮面ライダー⁉︎」
「お前は一体⁉︎」
「僕は仮面ライダーディエンド。通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておくといい」
「それ俺の台詞!」
ディケイドがそう言うとディエンドは左脇のカードホルスターから一枚のカードを手に取り、ディエンドライバーの銃身に装鎮、ポンプアクションのようにスライドさせる。
《ATTACK RIDE・BLAST》
「はあっ!」
ディエンドはディエンドライバーにカードを挿入すると同時に銃口を向けると、引き金を引いた。
すると、ディエンドライバーの銃身がシアンカラーの分身を作り出し、同時に五つの銃口が火を噴いた。
一斉に連射される光弾を正面から受けたヘルハウンドとリザードマンはその場に崩れ落ちた。
「なっ……!」
「さあ、止めは任せたよ」
「ああ!」
《FAINAL ATTACK RIDE・de、de、de、DECADE》
「はあああああああ!」
カードをバックルに挿入したディケイドとリザードマンの間にホログラム状のカード型エネルギーが出現、ディケイドはライドブッカーの刀身を構えカード型ホログラムを潜り抜ける。そしてマゼンタの光を纏ったディケイドの『ディメンションスラッシュ』がリザードマンを葬る。
《チョーイイネ!キックストライク・サイコー!》
「だあああああああ!」
ウィザードの足元に赤い炎を纏った魔法陣が出現、燃え盛る炎を右脚に纏ったウィザードはロンダートから跳躍する。そして、『ストライクウィザード』がヘルハウンドを貫いた。
『グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼︎』
二人のそれぞれの必殺技を喰らったヘルハウンドとリザードマンは、断末魔を上げながら爆発とともに消滅した。