デート・ア・ウィザード〜絶望を希望に変える魔法使い〜   作:黒崎士道

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聖獣vs魔法使い

あの後、晴人は何とか十香の誤解が解けたようなので、無事に仲直りができた。仲直りの印にきなこドーナツを渡した時の十香は一段と可愛らしかった。

そして現在、晴人は琴里の呼び出しでフラクシナスの艦内にいた。

 

「それで、士道はどこに行ったんだ?さっきどこかに行ったみたいだけど」

 

「シンならば、ASTの鳶一折紙の家に行ってもらった」

 

士道の行方について語ったのは令音だった。いつの間にかに入ってきたのであろうか。と、思う晴人を気にせずに話を続けた。

 

「本当ならば実際に四糸乃のことを知っているシンにはここを離れてもらいたくないのだが、パペットがある鳶一折紙の家に潜入するにはシンしか適任がいなかったんだ」

 

「わかりました。けど、何で士道だけを鳶一の家に行かせたんですか?別に、俺も一緒に付いて行ってよしのんを探したほうが早く見つけられると思うんっすけど」

 

一人でよしのんを捜索するよりも二人で探した方が効率が高いし、もしも折紙に怪しまれた場合でも上手く二人で役割を分担して気づかれずによしのんを確実に奪取できるかもしれないのだ。

 

「残念ながらそれは無理よ」

 

琴里がそれを否定した。何やら諦めにというか呆れたというような表情をしながら応えた。

 

「どういうことだ?」

 

「本当まったくありえないわよ!褒められた方法でないけれども、士道を鳶一折紙の家に送り込む前にうちの機関員を送ったわ」

 

「それで……どうなったんだ?」

 

「その機関員全員病院送りになったわよ。家全体に赤外線を張り巡らせていたり、その赤外線に触れたら神経毒系の矢が家中から発射されるなんて意味がわからないわ」

 

「そ…そうか……って、士道をそんなところに送り込んだのかよ⁉︎」

 

「安心しなさい。さすがに自分の好きな相手にセキュリティをつけたまま家に上げさせないでしょう…たぶん」

 

そんな他人事のように言う琴里に晴人は頭を抱えた。今の話を聞いている限り士道が天に召されそうな気がする。

 

「なら、余計に俺が行った方がいいだろ」

 

「それはダメよ」

 

「何でだよ?」

 

「鳶一折紙の家には妨害電波があるの。だから、二人とも行ったら私たちと連絡が取れなくなる。鳶一折紙のことだから精霊に接触させないように何かしらの仕掛けがあるはずよ。それに考えてみなさいよ、晴人はウィザードとして精霊を守っているわ。ASTである彼女があなたを家に上げると思う?」

 

「う……、言われてみれば確かに……」

 

確かに、晴人はウィザードとなって何度かASTと戦闘を繰り広げ、叩き潰した。当然上がらせてもらえるはずがない。

 

「まったく世話が掛かるわね。あと晴人、これを持っていきなさい」

 

琴里はそう言って晴人に何かを投げ渡す。晴人はそれを確認すると、それはインカムのようなものだった。

 

「これは…?」

 

「士道と同じインカムよ。それがあればファントムとの戦闘中にも連絡が取れるし、情報が伝わらないのは不便だわ」

 

「ああ、わかった」

 

「さあ……私たちの戦争(デート)を始めましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、士道はよしのん奪還作戦を遂行している途中であった。といっても、もう既によしのんは手に入れて腹の辺りに隠してある。あとは、ここから脱出するだけなのだがーー

 

「今日は泊まってほしい」

 

「な、何でまたそんなことを…」

 

「ダメなの?」

 

「う…」

 

ダメというよりもむしろ容姿端麗の折紙にそんなことを言われてしまえば是非とも泊まりたい。だが、今はよしのんをできるだけ早く四糸乃にわたさなければならない。

 

「士道」

 

「はい、何でしょうか?」

 

いきなり名前で呼ばれ思わず敬語になってしまった。だが、折紙は真剣な面持ちで尋ねる。

 

「何故あなたは精霊を庇うの?」

 

折紙は一切の躊躇なしに言った。

この質問はあの時、ウィザードーー神代晴人にも尋ねたものだ。晴人ははっきりと精霊の希望を守るためだと答えた。

 

「俺は……精霊とか人間とか関係ないと思う。精霊がどうとかASTがどうとか込み入った事情は全くわかんない。でも、これだけは言える」

 

士道は一拍空けてから自分自身の根源にあるものを言葉にして続けた。

 

「目の前に困っていたり、悩んで辛そうにしているやつがいたら助けたい。そいつがどんなに世界に否定されたとしても。きっと兄さんならそうする」

 

「…そう」

 

士道は魔法使いとなったからには、人々の希望を守る。そう決めたのだ。だからこそ、晴人と同じ理由で精霊を守りたい。士道は折紙の表情と声の調子からは感情をあまり読み取ることは出来なかったが、それでも僅かながら折紙から滲み出ている空気が教えてくれる。

 

ウウウウウウウウウウウウウウウウーーーー

 

だが、そこで空間震警報が鳴り響いた。

 

「もしかして四糸乃…」

 

「私は出撃する。あなたは早くシェルターへ」

 

「…わかった」

 

折紙はそれだけ言うと外へ駆け出していった。士道もぼんやりとするわけにもいかない。折紙には便宜上ああ言ってしまったが、一刻でも早く四糸乃の元へ駆けつけなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けて四糸乃は狼狽し、辺りを見渡す。

どこか知らない街の真ん中。だが、四糸乃の周囲だけは爆発が起こったように消し飛んでる。

そして空からは冷たい雨が降っている。

そして自分の左手には、無二の友達がいない。

 

「……っ!」

 

空から聞き覚えのある音が聞こえてきて目を向ければ、そこには機械の鎧をまとった幾人もの人間が浮遊していた。

 

「目標を確認。総員、攻撃開始」

 

『はっ』

 

そんな会話の後、人間たちの手足から幾つもの弾が四糸乃めがけて放たれる。

 

「……!」

 

四糸乃は息をつまらせると地面を蹴って空を舞って回避するが、

 

「逃がすんじゃないわよ!」

 

『了解!』

 

後方からそんな声が響きさらに何発もの弾が射出される。

 

 「……!……!」

 

四糸乃は錯乱気味に空を舞いながら声にならない叫びを上げる。

絶対的な悪意と殺意をぶつけられること、四糸乃には許容しきれなかった。

いつもなら四糸乃の左手にはよしのんがいた。だが、今はいない。

それでも必死に攻撃を避け、ビルの間を縫うように回避して顔を上げた瞬間、青ざめる。

前方に待ち構えていたように別の人間がいた。

その人間が持っていたものから弾が吐き出されそれが四糸乃を直撃、その衝撃で地面に叩き付けられる。

よろよろと四糸乃が体を起こすと人間たちがまがまがしい武器が一斉に向けられる。

 

「よし、このまま一気に行くわよ!」

 

その声と同時に武器が一斉に動きだし、おびただしい量の弾丸が放たれる。凄まじい恐怖が四糸乃の心を侵食していき、ガチガチと歯が鳴り、ガタガタと足が震えて、グラグラと視界が揺れて、頭の中がグシャグシャになっていく。

 

「ぅ、ぁ、ぁ………」

 

次の瞬間、四糸乃は右手を高く掲げて、

 

「《氷結傀儡》……!!」

 

その言葉と共にそれを振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

「仕留めた⁉︎」

 

少し興奮したように燎子が言ってくる。

折紙は細く長く息を吐きながら油断なく煙に包まれた地表を見つめる。

が、次の瞬間その煙を突き破ってその巨体は現れる。

そこにあったのは鈍重なシルエットでの全身から白い靄を放つ鋭い牙に赤い目の巨大な兎の人形だった。

それは四糸乃の天使、《氷結傀儡》だった。

だが、一つだけ違うところがある。その大きさだった。

前はだいたい3mほどだったのだが、今の大きさはビルと同じぐらいはありそう、もはや怪獣としか表現できない巨大さだ。

《氷結傀儡》が低い咆哮を上げた瞬間、周囲の街並みが凄まじい勢いで凍り付いていく。

その《氷結傀儡》の背中に張り付いている四糸乃目掛けて二人の隊員が攻撃を仕掛けるが、それは霊装で防がれ、《氷結傀儡》はゆっくりと振り返るとその口を開けて周囲の冷気を集め始める。

そして次の瞬間、口から冷気を砲撃の様に放つ。

それをくらった隊員は一瞬のうちに、丸い氷の塊となって地面に落ちた。

 

 「……っ!随意領域ごと……⁉︎」

 

燎子が驚愕の声を発する中、四糸乃は氷結傀儡ザドキエルを動かし、四つ足をつくとそのまま凄まじい勢いで地面を滑っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、四糸乃が出現する少し前ーーー

晴人は空間震警報が鳴り響く中、街の中にいた。

空間震警報を聞いた住人たちは半ば早歩きで次々に近くのシェルターに移動するために晴人を通り過ぎていく。

晴人も早くフラクシナスに行かなければならないが、そのなかでも晴人は動くことはしなかった。

 

眼前に自分の容貌を隠すようにして傘を差している上下黒のスーツに、黒のサングラスを身に付けた二十代後半と思われる男性が住人の流れにも乗らず晴人に向かい合うようにして佇んでいたからだ。

 

「空間震警報鳴ってるけど、避難しなくていいのか?」

 

「ああ、必要がないからな」

 

晴人は眼前の男性に問いかけると男性は淡々と応答する。表情はまるで見えないがサングラス越しの双眸は獲物に狙いを定めた猛禽類のように鋭く剣呑としたもので晴人を威圧してくる。

 

「……バロン、あんたは俺が倒す」

 

「…ふん。威勢だけは褒めてやる。だがいいのか?既にノームは《ハーミット》の元へと向かったぞ?」

 

「安心しろよ、四糸乃は俺の弟がーーー士道が救う。だから俺にできるのはお前に勝ち、みんなのところに帰ることだ」

 

「怪我を引きずったまま勝てると思ってるのか?」

 

「勝てるかどうかなんて問題じゃない。勝つんだよ」

 

『晴人、ここが正念場よ。絶対に勝ちなさい』

 

インカムから琴里の声が聞こえてくる。今は四糸乃のことで忙しいというのに、こちらにも気を使ってくれるなんて優しい妹を持ったものだ。

 

「……わかってるさ。まあ見てろ、絶対に勝つ」

 

晴人は耳を抑えて何を話しているかバロンからはわからなかったがバロンは戦う前に、問いかけておくことがあった。

 

「一つ聞こう、ウィザードよ」

 

「なんだよ」

 

「……貴様は何故、精霊を救おうとする?」

 

「救う価値のない奴なんていないからだ。人間も、精霊も」

 

「立派な理屈だな」

 

バロンはそう言って傘を投げ捨てると、黒い鬣に白い獅子の頭部を持ち、身体に赤白い屈強な鎧を身に纏ったファントムの姿になる。

 

晴人も傘を投げ捨て、ウィザードライバーのシフトレバーを操作し、ハンドオーサーを左手側に傾ける。

 

《シャバドゥビタッチ・ヘーンシーン♪シャバドゥビタッチ・ヘーンシーン♪》

 

「変身!」

 

《フレイム・プリーズ♪ヒー♪ヒー♪ヒーヒーヒー♪》

 

晴人はフレイムウィザードリングをハンドオーサーに翳すと、魔法陣が晴人の横に展開される。そして魔法陣を通過すると、晴人はウィザードへと変身する。

 

「さあ、ショータイムだ!」

 

「来い……ッ!」

 

ウィザードはウィザーソードガンを片手にバロンに駆け出した。

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