デート・ア・ウィザード〜絶望を希望に変える魔法使い〜   作:黒崎士道

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デート・ア・ディケイドの執筆を一旦中断して、新しい小説を書きました。
今回はウィザードバージョンです。では、どうぞ!


十香デッドエンド
物語の始まり


あの天宮市の大火災から五年が経った。

 

あの後、晴人は自身を救ってくれた男性ーー神代切嗣の養子となり、日本を離れ彼の本拠地であるイギリスへと旅立った。

それから晴人は切嗣にあらゆることを教えてもらった。

 

ーー魔力を持つゲートと呼ばれる人間。

 

ーーゲートを絶望させ、それによって仲間を増やしていくファントムと呼ばれる異形の怪物。

 

ーーそれらから希望を守るために戦う切嗣を含めた指輪の魔法使い。

 

それらをすべて話し終えた切嗣は、晴人に『君はどうしたい?』と問われた。

晴人は誰にも絶望なんてさせないために切嗣の弟子となり、指輪の魔法使いとなることを選んだ。兄妹たちに強く、そう誓って。

 

そして五年後、物語は始まりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「五年ぶりだなぁ…日本も……」

 

イギリスから飛行機の旅を終えた晴人は空港に降り立っていた。周りの人通りも多く、まだ空港だというのにも関わらず日本の雰囲気を感じ取れた。

 

「どうだい。久しぶりの日本に戻った感想は」

 

晴人の後ろから黒いコートを羽織った切嗣がこちらに歩いてくる。

 

「うーん…やっぱり、帰って来たぞ!って感じかなぁ。ずっとイギリスに居たんだし」

 

「そういうところも、坊やらしいね」

 

切嗣の後ろから一人の女性が荷物を持ってやってくる。ショートヘアの銀髪に碧眼という出で立ち、切嗣と同じ黒いコートを羽織った美女とも言える女性は気だるそうに言う。

 

「いいじゃないかナタリア。晴人も、すっかり五年前の絶望を乗り越えたんだ。彼が日本に帰りたがるのは無理もないよ」

 

切嗣は女性ーーナタリア・シャーレイにそう言う。

彼女は晴人を救ってくれた切嗣の相棒のような存在であり、晴人を一人前の魔法使いに鍛えてくれた先生だ。

 

なんでも彼女はどこかの企業で腕利きの魔術師だったらしいが、あることをきっかけにそこを抜けたらしく、その後出会った切嗣と共にファントムと戦うことを選んだらしい。

 

だが、晴人が日本に帰国したのはただここで三人一緒に平穏に暮らすためではない。

切嗣とナタリアの調べによると、ファントムはこの日本で最も活動が多く今はまだ目立った動きをしていないが、近いうちに本格的に動き出すとのことで三人はイギリスから日本に拠点を移した。

 

それよりも日本に帰って来れたのは晴人にとって嬉しいことであったが肝心の拠点がまだ決まっていないのだ。

晴人が暮らしていた五河家も恐らく炎に焼き尽くされ存在しないだろう。

 

まずは、物件を探さねばならない。それについてはナタリアが手配をしてくれたらしい。

ついでに晴人は年齢的に高校生ということで勝手に入学手続きをされた。

 

「そういえば、ナタリア。晴人が入学する高校はなんていったんだい?」

 

切嗣がそう聞くとナタリアはキャリーバッグからファイルを取り出す。

 

「ああ…確か、都立来禅高校ってところだったかな」

 

「なあ、入学するのっていつなんだ?」

 

「明日だよ」

 

「早すぎだろ⁉︎」

 

三人はそんな会話をしながら荷物をタクシーに詰め込み、ナタリアが、手配した新しい拠点を目指してタクシーに乗り込む。

 

そして、辿り着いた場所は正直言ってでかい豪邸だった。それも貴族が暮らしていそうな。流石に三人で暮らすにはでかすぎる。

 

「どうだい?すごいだろう」

 

呆然とする晴人の隣でナタリアが自信満々に言いながら胸を張る。それに対して切嗣は苦笑を浮かべている。

 

「なあ、ナタリア。確かにすごいが、ローンの方も相当じゃないかい?」

 

「そこは私の貯金から負担しておいたよ。どうせ使ってもまだ腐る程あるしね」

 

実はナタリアは以前所属していた企業の給料が高かったらしく、本人曰く『こんなの貰っても大したものなんて買わないよ』とのことで長年ずっと貯金をしていたらしい。

その額は実に億を超える程で金庫を見せられた晴人はショックでひっくり返った程だ。

 

「さぁて坊や、早速明日からは高校生だ。ここは、みんなでぱぁっとジャパニーズフードでも食べに行こうか」

 

「ああ、そうだね。僕も久しぶりに日本の料理が食べたくなったよ」

 

そうして晴人の日本に帰国した初日は何事もなく幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそして次の日。

 

ナタリアが用意してくれた朝食を食べ終え、鞄の中に入学手続き書など必要なものだけを入れると、晴人の自室にエプロン姿のナタリアが入ってくる。

 

「支度は出来たのかい?」

 

「バッチリだよ。今日は特に持って行くものもないみたいだし」

 

今日は晴人の人生初の高校生活だ。晴人はイギリスにいた頃は魔法使いになる修行に明け暮れていたため、高校に通うことが出来なかった。

 

「そうだ、学校に行く前にこいつを持っていきな」

 

ナタリアはそう言ってエプロンから何かを取り出し、それを晴人に投げ渡す。晴人はそれを上手くキャッチし投げ渡されたものを見ると、そこには魔法石によって作られた赤い宝石の指輪『フレイムウィザードリング』があった。

 

「まあ学校初日だしそんな危険なことはないかもしれないが、持っておいて損はないだろう?」

 

ナタリアは煙草に火をつけながらそう言う。晴人にとってナタリアは厳しく一切の加減もしない先生である以前に大切な母親のような存在だ。

そんな母親の気遣いに、晴人は心が温かくなるのを感じて玄関まで歩くと、ナタリアの方を振り返る。

 

「じゃあ、行って来るよ。ナタリア」

 

晴人のその言葉に、ナタリアは気恥ずかしそうに頬をかきながら学校へ行く晴人に言葉を返す。

 

「ああ、気をつけていきなよ。高校生活、楽しんで来な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来禅高校二年四組の教室で、少年ーー五河士道はぼんやりと教室の天井を見上げていた。目を閉じれば、今はもういない兄との思い出が走馬灯のように見える。

 

 

そう。全ては五年前に天宮市を襲った大火災が原因だった。あの日、あの場で倒れていた士道は目を覚ますと病院の一室で眠っていた。士道が起きたことで妹の琴里は士道の胸に飛びつき泣いていた。

だが、そこで士道と琴里は兄の晴人の姿がないことに気がついた。後から病室に両親が入って来ると、母は涙を流して晴人が火災に巻き込まれて行方不明になったと聞かされた。父はポケットから、晴人が身につけていた少し焼け焦げたライオンのネックレスを取り出した。それは晴人が士道と琴里と三人でお揃いのネックレスをプレゼントした時に絶対に手放さないとつけていたものだった。

 

その少し焼け焦げたネックレスを見て士道は悟った。何故晴人がいなくなったのか。

あの日、二人は琴里のプレゼントを買いにデパートへ出かけた。だがその後、士道は燃える天宮市を見て急いで自宅へと向かった。それからの記憶は覚えていないが、恐らく晴人はいなくなった自分を探してあの燃え盛る街の中を走り回ったのだろう。

つまり、ずっと自分を支えてくれていた兄を、士道が殺したということだ。

琴里は父と母に抱かれながら泣き続け、士道は自分のせいで兄が死んだという絶望感に叩き落とされた。

 

 

 

 

「みなさ〜ん!注目してくださ〜い!転入生を紹介しますよぉ〜!」

 

士道がそんな思い出に浸っていると、自分のクラスの担任となった小柄な女性の岡峰珠惠先生、通称タマちゃん先生が教卓につきそういった。

転入生が来ると聞いてクラス中が大騒ぎとなった。

 

「それじゃあ、神代君。入って来てください」

 

タマちゃん先生がそう声をかけると、ガラリ、と。教室のドアが開けられた。

 

そこから現れたのは少し長めの青い髪、美形な顔立ちの少年だった。その時、士道は何故かその少年を見て自分の兄の晴人のことを思い出す。

 

だが、そんなはずはない。

兄は五年前の大火災で行方不明となり、死んだと聞かされたのだ。

士道がそう考えている間に少年は黒板の前まで来るとクラスの生徒たちに向き直る。

 

「神代晴人です。これから一年間、皆さんと学園生活を楽しみたいと思っています。よろしくお願いします」

 

晴人は爽やかな笑顔でそう告げて一礼する。

 

『キャーーーーーーーーーッ‼︎』

 

次の瞬間、クラスの一人を除いた女子全員によって教室に大音響が響き渡った。

 

「カッコいい!爽やか系のイケメンよ!」

 

「あの素敵な笑顔が眩しすぎる!」

 

「お母さん、産んでくれてありがとう!」

 

などと、女子が晴人について話題を盛り上げている中、士道は晴人の名を聞いて心臓が大きく跳ねた。

『晴人』それは間違いなく士道の兄であった少年の名だ。髪も、容姿も、少しだけ士道と同じ面影がある。

 

「じゃあ、晴人君に質問をしたい人はいますかぁ?」

 

タマちゃん先生がクラスにそう言うと、バッと女子たちの手が上がり、選ばれた一人が立ち上がり晴人に質問をする。

 

「はい!じゃあ、好きな食べ物は何ですか?」

 

「甘いものが好きだけど…やっぱりドーナツかな」

 

晴人は甘いものが好きだと答える。士道が知っている兄も甘いものが大好きで、よく琴里と三人で一緒にドーナツを買いに行ったこともあった。

 

「じゃあ、趣味は何ですか?」

 

「料理だな、特にイタリアンは得意だ」

 

兄は両親が出張中、よく琴里と士道に手料理を作ってくれた。特にナポリタンが得意で、よくそればかりを作っていた。

 

その質問だけで、士道は分かってしまった。互いに成長しても、彼が五年前にいなくなった士道の大切な兄『五河晴人』だということを。

 

 

「兄さん……なのか?」

 

士道は思わず席から立ち上がり、晴人にそう言った。

周りの生徒たちが士道の方を見たり、声をかけたりしたが士道はそれに構わず晴人を見つめる。

 

それに対して晴人の方も、士道を見つけると信じられないものを見たような表情となる。

 

それもそうだ。何故なら五年前、目の前で義妹の琴里と共にあの業火に飲み込まれたはずの実弟が今、生きて晴人の目の前に居るのだ。

 

そして、震える唇をゆっくりと開き、死んだと思っていた弟の名を告げる。

 

 

「士道………?」

 

 

 

こうして、互いにもう出会うことはないと思っていた兄弟はここに再会を果たしたのだった。

 

 

 

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