デート・ア・ウィザード〜絶望を希望に変える魔法使い〜   作:黒崎士道

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遂に晴人がウィザードに変身します!
では、どうぞ!




再開する兄弟

HRが終わり、学校の屋上で二人の影が立っていた。

一人は、少し長めの青い髪に、左手の中指に赤い宝石の指輪をつけた背の高い少年。

もう一人は、その少年と同じ青い髪、その面影を持った容姿の少年だった。

二人の少年は互いに向き合い、何か言いたげな様子だったが、それでも口を開かなかった。

二人は互いが死んだと思っていた兄弟と思わぬ展開で再会したことで何を言えばいいのか分からなかった。そんな状況のまま、ただ時間だけが過ぎていく。

 

「晴人兄さん……」

 

ようやく士道の口が開かれ、そこから出たのは五年前に行方不明となり、自分のせいで死んだと思っていた、そして今目の前にいる実の兄の名だった。

士道は今にも泣きそうな顔で目の前にいる人物ーー神代晴人を見つめる。

対する晴人は、泣きそうになりながらも無理やり笑顔を作って士道を見つめていた。

 

「生きてたのか…士道……」

 

「兄さんこそ……」

 

互いに絞り出すような声でそんなぎこちないやり取りをする。こんな二人を見て、かつてこの二人が仲が良かった兄弟だと連想できるものは少ないだろう。

 

「琴里は…あいつは、大丈夫なのか?」

 

「あ、ああ……琴里もみんな元気だ…」

 

「そうか……えっと………お前は、その…元気にしてたか?」

 

「まあ、な……」

 

五年ぶりに再会した兄弟に何を話せば良いのか分からず、晴人の口から出るのはそんなことばかりだった。本当は、話したいことなんて山ほどあるはずなのに、いざ言うとなると凄く勇気がいる。

そこで士道がゆっくりと口を開いた。

 

「この五年間…ずっと、何をしてたんだよ……」

 

「………ッ」

 

それは、士道が一番知りたいことだった。

五年前の大火災で行方不明となってしまい、遂には警察がいくら捜索しても見つからず、ずっと士道が殺してしまったと思っていた兄が一体何をしていたのか。

士道の問いに、晴人は答えられなかった。

 

「心配したんだぞ……琴里も、ずっと泣いてた……」

 

「…………」

 

士道はそれでも晴人が何処かで無事でいると信じていた。だから毎日毎日、もしかしたらと思いながら家のポストを覗いたり、携帯の着信を見て彼からの頼りを待っていた。

俯き、声を震わせて涙を流す士道の言葉に晴人は答えられない。

そしてついに士道は感情を抑えることが出来ず声音を強くする。

 

「俺のせいで!兄さんが死んだと思ってたんだぞ!」

 

いつまでも問いに答えない晴人に士道は声を荒げて詰め寄る。その瞳から涙を流して。そんな士道に晴人がゆっくりと口を開いた。

 

「……それは、言えない」

 

晴人は震える声でそう言った。

 

「ーーーッ!」

 

その瞬間、士道の拳が晴人の頬を叩いた。頬を殴った勢いで士道はそのまま彼の制服の胸倉に掴みかかる。

 

「言えないだと⁉︎ふざけんなよ!兄さんがいなくなったあの日!俺がどれだけ絶望したのか分かってるのか⁉︎」

 

士道は叫びながらその瞳から大粒の涙を流した。

 

「いくら探しても見つからないし!俺は…もう、兄さんが……死んだのかって……っ!」

 

そこまで言って士道は晴人の胸倉を掴みながら顔を俯かせる。士道の中では晴人が生きていたという喜びと、何があったのか自分に話してくれない怒りが入り混ざって上手く感情が整理出来なかった。その肩を震わせ、士道は涙を流す。

 

殴られて頬を赤くした晴人は士道の手をゆっくりと引き剥がす。相当強く握っていたのだろう。彼が握っていた場所はくっきりと皺が残っていた。

 

「この五年間、何があったのかをお前に話すことは出来ない」

 

晴人ははっきりと、そう告げる。

 

「でも、これだけは言える。俺は誰にも絶望なんてさせないために戻って来たんだ」

 

「兄さん……」

 

晴人の言葉に士道は顔を上げる。晴人は士道に笑顔を浮かべると、それ以上は何も言わずそのまま屋上を後にする。

先ほどの晴人の言葉が何を意味するのか、士道には分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「五河、一緒に帰ろうぜ」

 

今日の行事を全て終え、他の生徒たちが帰り支度を終える中、士道の友人の殿町宏人が話しかけてきた。

 

「悪い。今日は先約があるんだ」

 

「なぬ?女か」

 

「まあな、って言っても琴里とだけどな」

 

士道は殿町にそう答えながら兄、晴人の席を見る。晴人の方は既に帰る支度を済ませていた。どうせなら晴人も一緒に誘って琴里に会わせてやろうと士道は思った。

 

ーーーと、その瞬間。

 

ウウウウウウウウウウウウウウウウーーーー

 

教室の窓をビリビリと揺らしながら不快なサイレンが鳴り響く。この警報はこれから空間震が発生することを意味する。

 

「空間震警報⁉︎」

 

「おいおい……マジかよ」

 

殿町が額に汗を滲ませながら、そう言う。だが、生徒の全員は多少不安な声が上がりながらも特に問題なく避難が出来そうだった。

 

「お、落ち着いてくださーい!だ、大丈夫ですから、ゆっくりぃー!おかしですよ!おさない!かけない!しゃれこうべー!」

 

担任のタマちゃん先生は断然他の生徒たちより焦っていた。その光景に他の生徒たちは緊張がほぐされていく。そして士道はそこで琴里がちゃんとシェルターに避難をしているのか気になり、最悪の場合を考えてスマホの地図アプリを開いてGPSを使い琴里の現在地を確認する。

 

「ッ!」

 

士道が予測した最悪のシナリオが現実に起きてしまった。琴里の位置を示すアイコンがさしていたのは、今日約束をしていたファミレスの前だったのだ。そのことに毒づきながらも士道は人混みを飛び出して出て行った。

 

「おい!どこに行くんだよ五河!」

 

殿町の言葉を背に受けながら士道はそのまま昇降口を出る。それに気がついた晴人はすぐさま士道の後を追いかけるが、姿を見失ってしまう。晴人は右手に魔法の指輪をはめると、ベルトにそれを翳す。

 

《コネクト・プリーズ♪》

 

少し大きめの魔法陣が出現し、晴人はそこに腕を突っ込むと愛車のバイクーーマシンウィンガーを引っ張り出す。そして更に指輪をはめ変え、ベルトに翳す。

 

《ガルーダ・プリーズ♪》

 

晴人の目の前にプラモデルのようなものが出現し、組み立てられていく。晴人の使い魔であるレッドガルーダだ。晴人はガルーダに指輪をはめ込むと、ガルーダはピコピコと動き出す。

 

「ガルちゃん、士道を追ってくれ」

 

晴人の言葉にガルーダはこくりと頷く仕草をすると、そのまま何処かに飛んでいく。晴人はマシンウィンガーに跨りガルーダの後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー五河士道は困惑していた。妹の琴里を探しに来たはずなのに、突然の衝撃波によって地面には大きなクレーターが掘られ、ビルや道路が破壊されていた。そんな中で、一人の少女がそこにいた。

奇妙なドレスを纏った絶世の美女とも言える少女は剣を片手に悲しみに満ちた表情で呟いた。

 

「お前も…私を殺しに来たのか……?」

 

「え……?」

 

次の瞬間、無数の銃声と、砲撃音が鳴り響いた。

上空を見るとボディースーツを着て武装をしている女性たちが少女に向かってミサイルをいくつも発射していた。その中には士道のクラスメイトである鳶一折紙まで居た。だが少女は剣を握っていない手を上にやり、グッと握る。するとミサイルは圧縮されたように潰れ、その場で爆発した。

 

「こんなものが無駄だと、なぜ学習しない?」

 

少女は剣を振り抜くと、その衝撃で武装をした女性たちが吹き飛ばされる。女性たちは体勢を立て直そうとした次の瞬間、何処からが火炎弾が彼女たちに襲いかかる。

 

「見つけたぞ、精霊…」

 

突然声が聞こえて全員がそちらを向くと、そこには異形の怪物がいた。青い身体に二本の大きな角を頭部に持つ、牛のような怪物だった。

 

「我々の目的のためにも、貴様には絶望してもらうぞ」

 

怪物がそう言うと、何やら不思議な石を取り出し、それを地面にばらまく。すると、その石から異形の姿が現れる。

頭部に二本の角を生やし、全身に罅のようなラインが走る身体。数えるだけでもその数は30を超えていた。

 

「行け、グールども!」

 

怪物の指示で異形の姿ーーグールが槍を持ち少女に襲いかかる。少女は剣を振るい、グールどもを吹き飛ばしていくが、残りのグールたちが士道に襲いかかろうとした。士道は己の命がここで終わってしまうのかと覚悟を決めた、その瞬間だった。

突然、その場に強いエンジン音が鳴り響いた。そして、次の瞬間、士道に襲いかかろうとしたグールがその場に乱入した何者かの乗るバイクに蹴散らされた。その人物はバイクから降りると、指輪をはめた右手をベルトに翳す。

 

《コネクト・プリーズ♪》

 

瞬間、何者かの側に赤い魔法陣のようなものが出現し、そこに手を突っ込むと右手に奇妙な形の銃のようなものを取り出し、グールや怪物に目掛けて発砲する。発砲された銃弾はグールどもを蹴散らし、怪物の角に直撃すると、その角をへし折った。その突然の出来事に、全員が驚きを隠せなかった。

何者かは被っていたフルフェイスのヘルメットを外すと、そこから現れたのは、今日来禅高校に転入して来た士道の実の兄ーー神代晴人だった。

 

「兄さん…⁉︎」

 

「危ないとこだったな、士道」

 

驚く士道に晴人は笑顔でそう言った。その一方、晴人の放った銃弾から、怪物がその正体に感づいた。

 

「銀の銃弾…⁉︎お前、魔法使いか⁉︎」

 

「魔法使い……?」

 

ミノタウロスの叫びにその場にいた全員の視線が晴人に集まる。それに対して晴人は不敵な笑みを浮かべる。

 

「ご名答、まさか日本に帰った次の日に会えるなんてな。ナタリアの勘は本当によく当たるよ」

 

「お前に構っている暇はない!」

 

「俺も同じさ」

 

ミノタウロスの言葉に晴人が即答する。晴人はミノタウロスとグールの群衆を睨みつけながら前へと踏み出し、右手に手形の指輪をはめると制服の上着のボタンを外してベルトに翳す。

 

《ドライバーオン・プリーズ♪》

 

瞬間、その音声とともにベルトはその形を変化させた。待機状態のウィザードライバーが本来の姿に戻り、晴人はバックルの両端に備えられたシフトレバーを操作して右手側に傾いていた黒い手形のバックル、ハンドオーサーを左手側に傾ける。

 

《シャバドゥビタッチヘーンシーン♪シャバドゥビタッチヘーンシーン♪》

 

「変身!」

 

ドライバーが軽快な音声を鳴り響かせる最中、晴人は赤い宝石の指輪『フレイムウィザードリング』のバイザーを下ろし、力強い言葉とともに再びハンドオーサーに翳す。

 

《フレイム・プリーズ♪》

 

晴人はそのまま左手を真横に伸ばすと、そこから赤い魔法陣が出現する。

 

《ヒー♪ヒー♪ヒーヒーヒー♪》

 

そこに出現した赤い魔法陣が歌のような音声コールとともにゆっくりと晴人に近づき、その体を通過する。魔法陣が晴人の身体を通過し終えると、晴人の姿が変化していた。

 

特徴的な赤い宝石を模した円状の仮面が日の光を反射し、全身に纏う黒いロングコートがはためく。左手には仮面と同じ赤い宝石の指輪が煌き、腰には手のような形のドライバーがある。

この姿こそ、絶望を希望に変える指輪の魔法使い。その名はーーーウィザード。

 

 

「さあ、ショータイムだ」

 

ウィザードはフレイムウィザードリングを見せつけるように、真紅の仮面の横に持っていくと、静かに、力強い声音でそう告げた。

 

 




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