デート・ア・ウィザード〜絶望を希望に変える魔法使い〜   作:黒崎士道

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指輪の魔法使い

「兄さん……?」

 

士道は目の前の兄の姿に驚愕の表情を浮かべていた。

士道だけではない。周りの武装をした女性たちも、ファントムや精霊と呼ばれた少女も、その場にいた面々に衝撃が走った。

目の前にいた一人の人間が、異形の仮面の戦士へと姿を変えたのだ。

手のような形のベルト、赤く煌めく宝石を模した仮面、はためく魔法使いのようなローブ。

その姿は、只者ではないと雰囲気で分かるほどだ。

 

「お前は一体何者だ⁉︎」

 

ミノタウロスは異形の戦士に問う。そしてその戦士は右手に輝く赤い宝石の指輪を見せつけるように掲げる。

 

「俺は、ウィザード……希望の魔法使いさ」

 

異形の戦士ーー火のエレメントを司る、フレイムスタイルへと姿を変えたウィザードは高らかにそう告げる。そして指輪をバックルに翳す。

 

《コネクト・プリーズ♪》

 

「やれ!グールども!」

 

ウィザードは出現した魔法陣から、自身の武器ーーウィザーソードガンを取り出した。

それを合図にグールがウィザードに襲いかかり、ウィザードはそのまま敵に向かって走り出す。ウィザーソードガンをガンモードからソードモードに変形させてグールたちを斬り裂いていく。そしてそのまま華麗なアクロバティックな動きと、洗練された体術でグールどもを蹴散らしていく。槍を振るってくるグールには槍を掴み取り、ウィザーソードガンで叩き斬るとグールを蹴りで吹き飛ばす。

 

「ふっ!だぁっ!」

 

ウィザードは背後に槍を振るってくるグールの攻撃を軽々しい動きで躱し、ウィザーソードガンで斬りつける。

そして、グールどもがウィザードを追い詰めるように取り囲んで来た。だが、それはウィザードにとっては一気にグールどもを倒せるチャンスであった。

 

「さぁて、そろそろ決めるか」

 

ウィザードはそう告げると、ウィザーソードガンを再度ガンモードに変形させ、手形のハンドオーサーを展開する。

 

《キャモナシューティング・シェイクハンズ♪キャモナシューティング・シェイクハンズ♪》

 

ウィザードはウィザーソードガンのハンドオーサーに左手に装着したフレイムウィザードリングをまるで握手するように翳す。

 

《フレイム・シューティングストライク!ヒーヒーヒー♪ヒーヒーヒー♪》

 

「はあっ!」

 

ウィザードはウィザーローブを翻しながらその場で回旋させながら炎の魔法陣が躍る銃口から無数の火炎弾を連射させ、立ち上る火柱が周囲のグールを全て焼き払った。

 

「馬鹿な…⁉︎グールどもがこんなにもあっさりと……!」

 

「師匠とナタリアに死ぬ程まで鍛えられたんだ。舐めんなよ」

 

ウィザードは自分が呼び出したグールが全滅させられたことに驚きを隠せないミノタウロスにウィザーソードガンをくるりと回して銃身を構える。

 

「ぐっ…貴様ああぁぁ!」

 

ミノタウロスはグールが全滅させられたことに怒り、斧を取り出してウィザードに振り下ろすが、ウィザードはウィザーローブを翻しながら華麗に躱していく。

バタフライで宙を舞い、ウィザーソードガンの銃口が火を噴けば銀の銃弾がミノタウロスを撃ち抜いていく。

 

「ふっ!」

 

着地と同時に踏み込み、ウィザーソードガンをソードモードに変形させたウィザードはミノタウロスの振り回す斧を吹き飛ばし、続いてミノタウロスを十字に斬りつけた。

 

「ぐうっ……ならば!」

 

ミノタウロスは手に火炎弾を溜め込むと、それをウィザードの背後にいた士道に向けて放った。だが、ウィザードはそれをさせないと素早く指輪を変え、バックルに翳す。

 

《ディフェンド・プリーズ♪》

 

ウィザードは士道に向けて放たれた火炎弾を炎で形成された赤い魔法陣の防壁で防いだ。

 

「何っ⁉︎」

 

「お前の相手は俺だろ?」

 

ウィザードはミノタウロスにウィザーソードガンの剣戟を繰り出し、蹴りで吹き飛ばす。

呻き声を上げながら後退したミノタウロスは、斧を放り投げると姿勢を低く構え、二本の角を突き出すようにウィザードに突っ込んでくる。

 

「うおおおおおおおお‼︎」

 

雄叫びとともにウィザードに突っ込んでくるミノタウロス、ウィザードはそれをウィザーソードガンで受け止めた。が、ミノタウロスのパワーに押され、ウィザードはどんどんその場から動いてしまう。

 

「えっ⁉︎ちょ、ちょ、ちょ、おい、おいおいおい⁉︎」

 

ミノタウロスのパワーに戸惑うウィザードは、その場から高く飛躍し、ミノタウロスの頭を踏みつけるとその背後に着地する。

 

「まったく、困った暴れん坊だ」

 

そう言いながら、ウィザードは左手の赤い指輪のフレイムウィザードリングを黄色い宝石の指輪に付け替えると、ハンドオーサーを左手側に傾けバックルに翳す。

 

《ランド・プリーズ♪》

 

《ド・ド・ド・ドドドン♪ドン・ドドドン♪》

 

ハンドオーサーを翳した左手を下に向けると、ウィザードの足元に土塊が浮遊した黄色の魔法陣が出現する。せり上がる魔法陣が通過するウィザードは黄色を基調とした出で立ちに、四角形の黄色い宝石を模した仮面が煌めく、土のエレメントを司る、ランドスタイルへと姿を変えた。

その光景を目にした全員は思わず動揺を見せた。

 

「色が変わった⁉︎」

 

「貴様…!エレメント変化が出来るのか⁉︎」

 

「まぁね」

 

ミノタウロスに答えながらウィザードは右手の指輪をはめ変える。

 

《ドリル・プリーズ♪》

 

「ほっ!」

 

ウィザードはその場から跳躍すると、ギュィィイイイイン!と、鋭い音を鳴らして高速回転する身体が地面に着地すると同時に地面を掘り削る。

地面の下に消えたウィザードがどこから現れるのかと焦りながら周囲を警戒するミノタウロス。しかし、丁度ミノタウロスの背後に地面から飛び出したウィザード。反応に追いつかず、ミノタウロスはウィザードの強烈な蹴りをくらい、高く宙を舞う。

 

「ついでに、もうひとつ特別サービスだ」

 

軽口を叩きながらウィザードはハンドオーサーを左手側に傾け、ランドウィザードリングをはめた手に緑の宝石の指輪をはめ変えると再びバックルに翳す。

 

《ハリケーン・プリーズ♪》

 

《フー♪フー♪フーフーフーフー♪》

 

頭上に展開した風が渦巻く緑の魔法陣を跳躍して通り抜け、ウィザードはランドスタイルから緑を基調とした出で立ち、逆三角形の緑の宝石の仮面が煌めく、風のエレメントを司るハリケーンスタイルへと姿を変えた。

 

「はあっ!」

 

魔法陣を足場に大空高く飛翔したウィザードはウィザーソードガンを逆手に持ち、ミノタウロス目掛けて滑空していった。

一瞬にして距離を詰めるウィザードが纏う暴風がミノタウロスを更に空中へと吹き飛ばす。しかし、それだけでウィザードの攻撃は止まらない。

辺りを縦横無尽に飛び回り、次々とミノタウロスに蹴りを入れ、ウィザーソードガンで斬りつける。綺麗に着地をしてローブを翻しながら振り返るウィザードに、無惨に地面に叩きつけられるミノタウロス。

 

《フレイム・プリーズ♪》

 

《ヒー♪ヒー♪ヒーヒーヒー♪》

 

ウィザードは左手の指輪をハリケーンウィザードリングからフレイムウィザードリングに付け替え、フレイムスタイルに変化する。

 

「フィナーレだ」

 

《ルパッチマジック・タッチゴー♪ルパッチマジック・タッチゴー♪》

 

ウィザードはミノタウロスに対してそう告げる。この戦いのフィナーレ、つまりどちらかの敗北を意味する。それが今まさに決しようとしている。ウィザードはウィザードライバーのシフトレバーを操作し、ハンドオーサーを右手に傾ける。鳴り響く待機音声の中で、ウィザードは右手の指輪を別のものに付け替え、バックルに翳す。

 

《チョーイイネ!キックストライク・サイコー!》

 

その音声とともにウィザードの足元に燃え盛る炎を纏った赤い魔法陣が出現、ウィザードは右脚に炎を纏い、ロンダートから飛躍する。

 

「だああああああああッ!」

 

ウィザードの必殺技『ストライクウィザード』がミノタウロスを貫いた。

 

「ぐああああああああッ⁉︎」

 

ウィザードは着地と同時に身体を回転させてポーズを決める。その背後でミノタウロスは絶叫とともに爆発し、燃え盛る炎の中で赤い魔法陣が浮かび上がった。

 

「ふぅ」

 

ウィザードは一息つくと、ミノタウロスがいた場所を見る。先ほどまでミノタウロスが存在していた場所には、まるで宝石のような不思議な光を持った石ーー魔法石がミノタウロスが存在していたことを示しているように残っていた。

すると、レッドガルーダがその場に現れ魔法石を回収。すぐさま何処かに飛んで行ってしまった。

それを確認したウィザードは変身を解き、晴人の姿に戻る。晴人は士道の安否が気になりそちらを見るが、士道は何処にも見当たらなかった。それも気になるが、晴人にはそれ以上に気がかりなことがあった。

 

「さっきの子…もしかしてゲートなのか?」

 

ーーゲート。ファントムが狙う魔力を持った人間。

晴人は先ほどの少女がそのゲートなのかと一瞬思ったが、ミノタウロスは彼女のことを『精霊』と呼んでいた。それはゲートとはまた違う存在なのだろうか。

 

「動かないで」

 

「え?」

 

そんな思案をしていた直後、晴人は声がした背後を振り返るとそこには武装をした女性たちが、晴人に向けて銃を構えていた。しかもそのうちの晴人に声をかけた少女は、確か晴人と同じクラスの鳶一折紙だった。

そしてその中から、部隊の隊長と思われる女性が前に出てきた。

 

「私は陸上自衛隊のAST部隊をしている日下部燎子よ。よろしくね、魔法使いさん」

 

「あ、えっと…神代晴人です。よろしく」

 

晴人は現在自分が置かれている状況に戸惑うが、名乗り出てくれた隊長さんに律儀に自己紹介をしておく。

 

「そう、じゃあ晴人君。あなた、さっきの化物のことを知っていたみたいだけど?」

 

晴人はやっぱり聞いてきたか、と内心で思った。化物とは当然、ファントムのことだろう。

 

「ああ、ファントムのことか」

 

「ファントム…?」

 

晴人が答えると、燎子は初めて聞く言葉に眉を顰める。だが、晴人は彼女たちにこれ以上知られると面倒だと思いそれ以上は言わない。

 

「奴らとは関わらない方がいいよ」

 

「そういう訳にはいかないわ。あなたに聞きたいことがたくさんあるから」

 

「嫌だって言ったら?」

 

晴人は一応そう言うと、燎子が晴人に近づく。

 

「あなたを拘束、連行します!」

 

燎子がそう言うと、晴人の手元にガチャリッ、という音がした。晴人は視線を手元に向けると、晴人の両手には手錠をかけられていた。

 

「なんで⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……何やってんだか」

 

晴人たちの暮らす屋敷でナタリアは切嗣の使い魔である白いガルーダ、ホワイトガルーダからその様子を水晶越しで見て頭を抱えていた。そんなことも知らずに切嗣がコーヒーの淹れてあるカップを二人分持って来た。

 

「どうしたんだいナタリア?そんな頭なんて抱えて」

 

「坊やがASTに捕まった…」

 

「え……⁉︎」

 

切嗣はその場で固まり、持っていたカップを落としそうになった。

 

 

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