デート・ア・ウィザード〜絶望を希望に変える魔法使い〜   作:黒崎士道

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今回は晴人とASTの交渉がメインです。
では、どうぞ。


捕まる魔法使い

陸上自衛隊・天宮駐屯地にて。

 

あの後晴人はASTに連行され、現在は取調室のような密室で三人の女性に尋問をされていた。

一人目は、二十代半ばくらいの女性、晴人を捕まえた日下部燎子。

二人目は、白い髪に人形のように無表情な少女、晴人と同じクラスの鳶一折紙。

三人目は、勝気な容姿の黒いショートヘアの初めて見る少女だった。

 

「えっと…君は?」

 

「私はAST部隊隊員の小野寺凛子よ。よろしく」

 

「ああ、よろしく」

 

凛子に挨拶をされたので晴人も挨拶を返す。そこで燎子から驚くべき言葉が告げられた。

 

「因みに彼女、あなたと同じ来禅高校の生徒よ」

 

「え、マジで⁉︎」

 

晴人は折紙もそうだが、こんな学生でも自衛隊に入れるのかと思いつつ感心していた。

因みに念のためにと、晴人はウィザードリングを押収された。

 

「じゃあ晴人君、改めて聞くけどファントムって何なの?」

 

燎子は早速ファントムについて聞いてくる。

本来なら切嗣から魔法使いのことについてあまり口外するなと言われているが、どう考えてもこの状況ではそうもいかないと思い素直に答えた。

 

「この世界には魔力の高い人間、ゲートって呼ばれる人間が存在するんだ。そのゲートの全てを奪って生まれる魔力の塊、それがファントムさ」

 

「全てってどういうこと?」

 

今度は凛子が尋ねてくる。

 

「そのままの意味さ。絶望したゲートの心の中で生まれたファントムは、ゲートの命も記憶も、そして希望を、その全てを奪って現実に現れるんだ」

 

「そんな…⁉︎」

 

晴人の言葉を聞いて、その場にいた全員が思わず目を見開き、絶句してしまう。

彼女たちでなくとも、死に関する概念が浅ければ誰が聞いても同じ反応だろう。実際、晴人は切嗣との修行中に絶望してファントムを生み出したゲートを何度か目にしたことがある。

 

「で、そのファントムの力の源となっているのが「魔法石」って呼ばれる石なんだ。俺の指輪もその魔法石から作られてる」

 

晴人はファントムについて全て話し終えると、燎子はため息をつきながら言う。

 

「まあ、そのファントムって化物についてはだいたい分かったわ」

 

「じゃあ俺はこの辺でーー」

 

「まだ。次はあなたについて聞きたいことがある」

 

「ですよねー…」

 

燎子の要件が済み、早くウィザードリングを返してもらって帰ろうと思ったのだが、そこで今まで何も言わなかった鳶一折紙が口を開いた。

 

「神代晴人。あなたはどうやってその力を手に入れたの?」

 

折紙はそう聞いてくる。それはこの場にいる皆が知りたがっていることだろう。晴人はふっと笑みを浮かべて口を開いた。

 

「俺も体の中にファントムを一匹飼ってるから」

 

その一言で全員が絶句するのが分かった。

 

「どういうこと?ファントムは絶望しなければ生まれないのではなかったの?」

 

「まあ、五年前に色々とあってね」

 

折紙は訝しげな鋭い視線を向けるが、晴人はそれだけ答えると口を閉ざした。晴人にとって五年前のあの日は悪夢に等しいため、その時の出来事は話さない。

 

「…なんでそんなこと聞くんだ?」

 

晴人は折紙に訊き返す。折紙は一拍置いてから口を開く。

 

「それは………力が欲しいから」

 

「力が……?」

 

折紙のその言葉に晴人は再び訊き返すが、折紙は口を閉ざしたまま何も言わない。そこで今度は凛子が口を開いた。

 

「それにしても、本当に魔法使いなの?」

 

「まぁね」

 

「なら、見せてもらってもいいかしら?」

 

凛子がジト目で晴人を見てくる。まだ晴人が魔法使いなのか疑っているようだ。

 

「魔法使うのも結構疲れるんだけど……ねえ、指輪返してもらってもいい?」

 

晴人がそう言うと、燎子は渋々と小さなケースを取り出し中を開くと、晴人から押収したウィザードリングがたくさん詰まっていた。晴人はそのうちのコネクトウィザードリングを取り出しベルトに翳す。

 

《コネクト・プリーズ♪》

 

晴人は出現した赤い魔法陣に手を突っ込むと、そこから取り出したのは何故か紙袋に入ったドーナツだった。晴人はドーナツを取り出すと、それを頬張る。

 

「食べる?」

 

「……もらっておくわ」

 

凛子と燎子はちゃっかり晴人からドーナツを貰う。ドーナツを食べ終えると、燎子が口を開いた。

 

「ねえ、晴人君。私たちASTに協力してくれないかしら?」

 

「……なあ、なんなんだ?さっきからそのASTって…」

 

晴人はASTなんて言葉を始めて聞くため、キョトンとした顔になる。

 

「ああ、そういえば説明してなかったわね」

 

それから燎子は晴人にASTについて説明をしてくれた。

アンチ・スピリット・チームーーー通称AST。この世界には隣界と言われる場所からこちらの世界に現れる特殊災害指定生命体ーー精霊という存在がいる。その精霊がこちらの世界に現界する際の余波、それが空間震だという。ASTはその精霊を武力を持って殲滅するために結成されたということ。

燎子が話を終えると、晴人は納得した風に頷く。

 

「成る程…じゃあさっきの子はゲートじゃなくて、その精霊ってやつなのか」

 

「そうよ、私たち的にはあなたが来てくれればかなりの戦力になるし、精霊を倒すことも簡単だわ」

 

燎子は改めて晴人をASTに勧誘する。だが、晴人の返答など始めから決まっている。それはーーー。

 

「悪いけど、お断りさせてもらうよ」

 

「あら、どうしてかしら?」

 

ASTへの勧誘を断った晴人に燎子は理由を問う。

 

「俺は人々の希望を守るためにファントムと戦ってる。俺はその精霊っていう子が絶望するのなら、必ずその子を助ける」

 

それが晴人の答えだった。晴人はあの時の少女の顔を見たが、あれは全てに絶望をした時の表情に似ていた。たとえ精霊だろうと、晴人は目の前で誰にも絶望なんてさせたくない。だからこそ、あの少女を助けてやりたい。

燎子は晴人の返答を聞くと、ため息をつきながら髪をかく。

 

「はあ……」

 

晴人の言葉に込められた決意に燎子は彼の勧誘を諦め、尋問を終えようと思った時だった。

 

「神代晴人。あなたはその力の重要性を理解していない。その力は精霊を殺すために使うべき」

 

そこで声を発したのは折紙だった。その声は相変わらず淡々としたものだが、晴人を睨む目が険しくなっていた。

 

「悪いけど、俺はそんなことはしない。この力は誰かの希望を守るためにあるんだ」

 

晴人は折紙にそう言い返す。だが、折紙も晴人を睨む目が鋭くなり、更に口を開く。

 

「違う。あなたの魔法の力は人類を脅かす脅威……つまり精霊を殲滅させるためにある。そんな希望を守る程度の気持ちで使うべきではない」

 

「なんだと!」

 

折紙の言葉に晴人は立ち上がる。

晴人は人々の希望を守るために戦いを始めた。誰にも絶望なんてさせないために。だが、折紙のその言葉は、晴人のその決意を侮辱しているようなものだった。

 

「折紙、言い過ぎよ。晴人君だって人々を守るためにファントムと戦っているんだから」

 

燎子が折紙を諌めるが、折紙はそれでも止まらない。

 

「私にも魔法使いの力が手に入れば、精霊もファントムも全て殲滅して見せる」

 

取調室はシーンとした状態になる。そして、折紙の言葉を聞いた晴人は口を開いた。

 

「君が精霊を憎もうと構わない。でも、俺は君が誰かを絶望させるようなら………ただじゃおかない」

 

晴人は目つきを鋭くさせ、強く、低い声音でそう言った。

 

「……尋問は終わりよ。小野寺、晴人君を外まで案内してあげて」

 

「は、はい!」

 

燎子の言葉で放心状態だった凛子が跳ね上がり、晴人を取調室の外まで案内しようとする。そして部屋を後にする前、晴人は後ろを振り返る。

 

「それともう一つ、もし士道をーー俺の家族を危険な目に合わせるなら、容赦無くあんたたちを潰す」

 

その言葉を最後に、今度こそ晴人は取調室を後にした。部屋に残されたのは折紙と燎子の二人だけだ。

 

「神代晴人……」

 

折紙は拳を強く握り締め、晴人が出て行った扉を見つめていた。

 

「折紙、あんたねぇ。あんなこと言えば晴人君だって怒るに決まってるでしょう?」

 

「彼はあの力の在り方をまったく理解していない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさいね、神代君」

 

「ん?何が?」

 

駐屯地から外に案内される最中、凛子は突然晴人に謝罪をした。

 

「ほら、鳶一さんのこと……彼女、なんでか精霊のことになると凄くムキになるのよ」

 

凛子は申し訳なさそうにそう言う。

 

「いいよ別に。彼女も何か理由があるかもしれないし」

 

「そう言ってもらうと助かるわ…」

 

そして駐屯地の外に出ると、晴人はコネクトウィザードリングをベルトに翳す。

 

《コネクト・プリーズ♪》

 

出現した大きめの赤い魔法陣から愛車のマシンウィンガーを引っ張り出し、エンジンをかける。

 

「んじゃ、俺はもう行くから」

 

「ええ、気をつけてね」

 

晴人はフルフェイスのヘルメットを被り、そのままマシンウィンガーで走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃……何処かの教会で三人の人物が、祭壇に立つ一人の男に跪いていた。そして、その男が口を開く。

 

「そうか……指輪の魔法使いが動き出したか…フェニックスよ」

 

「はい、サー・ワイズマン」

 

男、ワイズマンに答えたのは赤いコートを羽織ったフェニックスと呼ばれた男性だった。続いて口を開いたのはその隣に佇む紫のドレスを着たメデューサと呼ばれる女性だ。

 

「如何なさいます?サー・ワイズマン」

 

「しばらくは様子を見るんだ。我々が今なすべきことは……分かっているね?」

 

「分かってますよ。ゲートを絶望させて、新しいファントムを生み出せばいいんですよね?」

 

答えはのは緊張感が全くないパーカーを着た青年、グレムリンだ。

 

「そうだ。我々が再びサバトを開くために。………行け」

 

「「「はっ!」」」

 

三人はワイズマンに答えると、その場から姿を消した。そして、教会で一人佇むワイズマンは不敵な笑みを浮かべる。

 

 




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