デート・ア・ウィザード〜絶望を希望に変える魔法使い〜   作:黒崎士道

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更新が遅れました。
今回で十香との遭遇にしようと思ったのですが、次回になりました。




妹とドーナツ

晴人が士道たちとの再会を果たしてから数日が経った。あれからファントムは少しずつ活動を始め、グールが街に現れることもある。今日の授業が終わり、晴人はファントム探しのために街を探索しようと鞄を片手に下校の準備をしていた時。

 

「きゃああああああああああああああーーッ‼︎」

 

廊下の方から、女子生徒の悲鳴が聞こえてきた。

 

「……っ⁉︎ファントムか⁉︎」

 

ファントムが学校に侵入して来たのかと思い、急いで廊下に行くと、数名の生徒が集まっているのが見えた。そしてその中心に、白衣を着た女性がうつ伏せに倒れているのが確認できた。

 

「ちょ、大丈夫ですか⁉︎」

 

晴人は急いで女性の元に駆け寄ると、女性はがしっ、と晴人の足を掴んだ。

 

「うおっ⁉︎」

 

「…すまないね。転んでしまっただけだよ」

 

そう言いながら、女性はゆらりと立ち上がる。長い前髪に、分厚い隈。眼鏡をかけていて、豊満な胸の女性だった。ちなみに、何故か胸ポケットに傷だらけのクマさんが覗いていた。

晴人はその女性に見覚えがあった。確か数日前に晴人のクラスに兼任してきた副担任の先生だった。

 

「えっと…村雨先生……でしたっけ?」

 

「ああ…二年四組の副担任に兼任した、担当は物理だ。よろしく」

 

「俺は二年四組の神代晴人です。よろしく」

 

晴人は一応村雨先生に自己紹介をしておく。

 

「晴人…?ああ、そういうことか…」

 

「え…?」

 

「…いや、なんでもないよ。ハンク」

 

「…は、ハンク?いや、俺は晴人なんですけど」

 

「そうか、すまないねハル」

 

「直す気ゼロか!」

 

もう名前に関して諦めた晴人はそのままで構わないと思い、スルーした。

そこで晴人は、なにやらこちらに向かってくる足跡が聞こえてきたので、後ろを振り向くと。

 

「晴人おにーちゃぁぁぁん‼︎」

 

「ばうっ⁉︎」

 

中学にいるはずの長く赤いツインテールの妹、琴里が晴人の腹部に突撃してきたのだ。突然の奇襲に対応できなかった晴人は、妙な声を上げて倒れてしまった。

 

「あはは!ばうっだって!飛龍だー!」

 

晴人の腹の上では琴里が何故かテンションが高くはしゃいでいる。晴人は琴里に視線を向けながら起き上がろうとする。

 

「こ、琴里…お前なんで高校にいるんだ……?」

 

晴人が琴里にそう問いかけると、琴里は笑顔で答える。

 

「来ちゃった!」

 

晴人はため息をつく。よく見れば琴里は来賓用のスリッパを履いて、制服には入校証がつけられていた。そして、その後から士道がやって来る。

 

「あれ、兄さん?」

 

「よう士道……って、なんか顔色悪くないか?」

 

晴人は士道の顔を見て驚く。目元に隈はあるし、なんだか痩せ細っているようにも見えた。この数日で士道に何があったのだろう。

 

「ああ…ちょっとな……」

 

士道は歯切れが悪くそう言う。そこで晴人は、久しぶりに三人でドーナツを食べに行こうと思いついた。

 

「そうだ、この後一緒にドーナツでも食いに行かないか?」

 

晴人がそう提案すると、士道がまるで救世主でも見つけたような目をした。本当にどうしたのだろうか。

 

「あ、ああーー」

 

「士道おにーちゃんはこの後用事があるからだめなんだって」

 

士道は答えようとしたが、琴里の言葉に遮られてしまう。その時の士道は救いの手に見捨てられた時のような絶望顔だった。

 

「お、おい!琴里!」

 

士道は琴里に抗議をしようとしたが、すぐにそれをやめた。晴人の位置からでは見えないが、士道は琴里を見て何かを恐れているような様子だった。こんなにも可愛らしい妹にそんな顔をする必要があるのだろうか。

 

「ど、どうした?」

 

「い…いや!なんでもない……」

 

晴人が尋ねるが、士道は必死に否定をした。晴人は士道が心配になって来たが、目をキラキラさせてドーナツを食べに行きたがっている琴里をほっておくのも悪い。

 

「そ、そうか……じゃあ、行くか琴里」

 

「うん!」

 

晴人は琴里とともに高校を後にした。その後ろでは士道が絶望顔で村雨先生に連れられて物理準備室で謎の訓練を繰り広げていたなど、晴人が知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちはー」

 

晴人が琴里を連れてやって来たのは、晴人が行きつけのドーナツ屋、移動ドーナツショップ『はんぐり〜』だ。晴人が来ると、二人の人物が迎えてくれた。

 

「あらハル君、いらっしゃい!」

 

晴人をハル君と愛称で呼んだのは、ピンクのエプロンに奇抜なヘアスタイルの女性(というかオネエ)。この『はんぐり〜』の店長だ。

 

「晴人君、その子は?」

 

次に晴人に話しかけたのは、少し長めの黒髪をポニーテールにした女性。この店の店員の稲森真由さんだ。

 

「ああ、今日は妹を連れて来たんだよ」

 

「こんにちは!五河琴里です!」

 

「こんにちは、琴里ちゃん。私は稲森真由よ。よろしくね」

 

真由さんが琴里と仲良くしている中、それを見ていた晴人に店長が声をかける。

 

「ねえねえハル君、今日は新作作ったのよ!名付けて『七色ドーナツ』!どう、食べてみない?」

 

そう言った店長の手に持つ皿の上には、鮮やかな七色のデコレーションがされたドーナツがあった。晴人はそれを見て悩むような仕草をする。

 

「うーん…じゃあ、プレーンシュガーで」

 

悩んだ末、お気に入りのプレーンシュガーを注文した晴人に、店長と真由さんがずっこけた。

 

「また駄目でしたね店長…」

 

「もう〜!いつも同じのなんだから!」

 

そう。晴人はこの店のあらゆるドーナツの中で、プレーンシュガーしか注文をしたことがない。

それ以来、店長は新作を勧める度にプレーンシュガーしか注文しない晴人に食べてもらえるようなドーナツを作ろうとしている。

 

「じゃあ私は七色ドーナツ!」

 

「は〜い。ありがとね〜」

 

七色ドーナツを注文した琴里に店長は笑顔で答えると、ケースからプレーンシュガーと七色ドーナツを取り出し、皿に乗せて二人の元に運ぶ。

 

「お待たせしました〜」

 

「おー!ありがとうなのだ!」

 

「どういたしまして〜」

 

元気よく手を振る琴里に店長はにこやかに返す。

 

「も〜!ハル君ったら可愛い妹さんね!」

 

「まあね」

 

笑顔でそう言う店長に晴人は笑いながら返事をした。

琴里は皿からドーナツを手に取ると、リスのようにドーナツにかぶりついた。それを見た晴人は苦笑しながらプレーンシュガーをかじる。

そんな時、不意に琴里が口を開いた。

 

「ねえ、晴人おにーちゃん」

 

「ん?どうした?」

 

晴人は琴里の方を見ると、琴里が丸っこい瞳で晴人を見つめている。

 

「おにーちゃんは、どうして魔法使いになろうって思ったの?」

 

琴里は晴人にそう聞いた。それを聞いた晴人はドーナツを皿に置くと、それに答えた。

 

「それはーーー誰にも絶望なんてさせたくないからさ」

 

晴人はそう言うと、空を見上げた。そして、再び口を開く。

 

「五年前の大火災……あの時俺は、お前と士道が炎に飲み込まれた瞬間を見て絶望しかけたんだ。大切な家族を守れなかった自分の無力さに……」

 

「おにーちゃん……」

 

「でもさ、お前たちとの約束のおかげで俺は希望を捨てずに絶望しなかったんだ。だから…今度は俺が全ての人たちの希望を守る。それが、魔法使いになった俺にできる……精一杯のことだから」

 

晴人は強く、そういった。晴人がこの力を得たのは単に偶然かもしれない。だからこそ、晴人は誰にも絶望なんてさせたくないのだ。

 

「晴人おにーちゃん!」

 

琴里がいきなり叫んだので晴人は視線を戻すと、グールの群れが晴人たちを取り囲んでいた。店長と真由さんはグールに怯えて動けなかったので、晴人はグールを蹴り飛ばす。

 

「店長!真由さん!早く逃げて!」

 

晴人の声に二人は急いでその場を離れた。二人がいなくなったところで晴人も戦いの準備が整った。

 

「…琴里、下がってろ」

 

晴人は琴里を自分の後ろに下がらせて、鋭い視線をグールにぶつける。そして、ドライバーオンウィザードリングをベルトに翳す。

 

《ドライバーオン・プリーズ♪》

 

「う、うん…」

 

突然、雰囲気が別人のように変わった晴人に戸惑いながらも琴里は晴人に言われたとおりに下がる。それを確認した晴人は、ウィザードライバーのシフトレバーを操作する。

 

《シャバドゥビタッチヘーンシーン♪シャバドゥビタッチヘーンシーン♪》

 

「変身!」

 

ドライバーが軽快な音声を響かせる中、晴人は左手に装着したフレイムウィザードリングのバイザーを下ろし、ハンドオーサーに翳した。

 

《フレイム・プリーズ♪ヒー♪ヒー♪ヒーヒーヒー♪》

 

ハンドオーサーに翳した左手を正面に向ける。

炎で形成された赤い魔法陣がゆっくりと晴人の身体を潜り抜け、晴人はウィザードに変身した。

同時に取り出したウィザーソードガンをくるりと回す。

 

「さあ、ショータイムだ」

 

ウィザードはそう告げると、グールたちに駆け出す。ウィザーソードガンの剣閃がグールたちを翻弄していく。

 

「よっと!」

 

グールが槍を振るって襲いかかるが、ウィザードは華麗な動きでかわしていく。そして指輪を付け替えてハンドオーサーを傾け直す。

 

《ビッグ・プリーズ♪》

 

指輪をはめた右手を出現した魔法陣に伸ばすと、魔法陣を通過したウィザードの腕は何倍もの大きさに巨大化する。そのまま巨大化した腕を振り下ろしてグールたちを潰していく。

 

「すごい…」

 

琴里はウィザードの闘いを見てその言葉しか出なかった。華麗な動き、様々な魔法、どれも琴里にとって初めて見る兄の姿だった。

 

「フィナーレだ」

 

ウィザードはそう宣言すると、ガンモードに変形させたウィザーソードガンをソードモードに切り替えるとハンドオーサーを展開させる。

 

《キャモナスラッシュ・シェイクハンズ♪キャモナスラッシュ・シェイクハンズ♪》

 

《フレイム・スラッシュストライク!ヒーヒーヒー♪ヒーヒーヒー♪》

 

「はああっ!」

 

ウィザーソードガンの刀身に炎で形成された赤い魔法陣が揺らめく。ウィザードはウィザーソードガンを一文字に振るうと、炎の斬撃が放たれグールたちを斬り裂いた。

 

「ふぃ〜」

 

ウィザードはため息をひとつ漏らすと、晴人の姿に戻る。

 

「大丈夫だったか、琴里」

 

「うん!凄かったよ晴人おにーちゃん!あんなにいたのにこう、ズバーン!っていって、それからドガーンってやって…」

 

「はいはい」

 

手を大袈裟に動かしながら興奮している琴里を晴人はなだめようとする、その時。

 

ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウーーーー

 

「っ!空間震警報か」

 

突如、何の前触れもなく警報が鳴り響いた。それと同時に、辺りの魔力を捜索させていたレッドガルーダとイエロークラーケン、ブルーユニコーンが晴人の元にやって来た。

 

「見つけたのか?」

 

晴人がそう聞くと、使い魔たちはピコピコと動きそれを肯定する。晴人はコネクトウィザードリングを取り出してベルトに翳す。

 

《コネクト・プリーズ♪》

 

出現した魔法陣からマシンウィンガーを引っ張り出し、エンジンをかけて跨る。

 

「琴里、少し用ができたから俺は行くけど…ちゃんとシェルターに避難しろよ?」

 

「うん…分かった」

 

琴里は不安そうに晴人を見上げるので、晴人は琴里の頭をくしゃくしゃと撫でる。

 

「心配すんな。すぐに戻るからな」

 

晴人は笑顔で琴里にそう告げると、マシンウィンガーを走らせて使い魔たちについて行く。

その理由は勿論、あの精霊と呼ばれた少女に会いに行くことだ。

 

 




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