リィエル・レプリカと転生日誌 作:氷月ユキナ
あの後、レオスの授業を俺も見れるようになった。
具体的に言えば後ろで授業参観のように立っているだけだが。
そんな、レオスの軍用魔術についての授業。
それは、一言で言えば完璧だった。
「――これまでこのツァイザーの魔力エネルギー変換効率式を解説してきたわけですが……これで、なぜ、帝国で採用されている軍用の
だが、理解できるとは言ってない。全く分からん。
いや、完璧なんだろうけどさ。使える魔術が偏りすぎてる俺が聞いても何一つわからない。
「そう、魔力を物理的な作用エネルギー……すなわち、
えっと……つまり、『炎熱』、『冷気』、『電撃』の三属の魔術の威力が、他の魔術と比べて特に高いってことか?
「ではここで、実際に皆さんもツァイザーの魔力エネルギー変換効率式を利用して、各呪文の
いや知らん。『高くなるでしょう?』なんて言われても、
「逆に……例えば風系の
まとめると、風の
「仮に10の魔力を使用したとします。その際
つまり、威力が高い順に並べると『炎熱』、『電撃』、『冷気』となるのか。
「あなた達が
「ぉおおお……な、なるほど……ッ!」
「れ、レオス先生……素敵……」
細かく、そして分かりやすく(俺にはあんまり分かんないけど)生徒達に教えるレオスに、たくさんの生徒が没頭していた。
俺? 意味が分かんない授業だけど、夢にまで見た魔術の授業なんだから勿論真剣に聞いてるよ!
「さて、これまでの講義で、現在の軍用魔術において"風の呪文は弱い"、そんな結論になるかと思いますが……それでも風の呪文ははっきりと現在も存在していますし、状況や作戦に応じて適宜運用されています。それはなぜか? ……論ずるまでもなく風の呪文には風の呪文なりの利点があるからなのですが……」
キーンコーンカーンコーン……。キーンコーンカーンコーン……。
レオスが話していた時、前世では大喜びだった授業終了のチャイムが鳴り響いた。
「……時間ですね。それでは次回の講義では、風の魔術の利点と、それらの軍における運用方法についての話から始めましょう……ご清聴、ありがとうございました」
レオスが一礼し、聴講者達から五月蝿いほどの拍手が上がった。
「……完璧だ」
そして、俺の近くで授業を聞いていたグレンは悔しそうにしていた。
「軍の一般魔導兵の半分以上が、そんなに理解してねえ
「はい、本当にすごい授業でした……」
あれ、ルミア居たの? 本気で気づかなかった……。
俺、大丈夫かな……?
「難しい理論が、私達にも理解できるようにとてもよくかみ砕いてあって、説明も理路整然としていて、とてもわかりやすかったです……まるで先生の授業みたい」
「わたしも、すごくよくわかった」
……は? リィエルが、アレ分かったのか?
俺は仮にもリィエルの記憶を持っている。ライネルの魔術式のお陰だ。
だから俺も錬金改【
けど、そんな俺も理解できなかった授業を、リィエルが理解できた……?
「ま、マジかよ? お前すらもあの授業、わかっちまったのかよ?」
「ん。あいつの言っていることが……わたしには何一つわからないということが、すごくよくわかった」
……えぇ……。
「……お前は実に通常運転だな」
なんだ……。びっくりしたぁ……。
「……なぁ、ルミア」
「気を付けないといけませんよね……先生が常に言っている、力の意味と使い方をよく考えろ、力に使われるなって言っている言葉が今ならなんとなくわかる気がします。でも、大丈夫ですよ。少なくとも、先生の教えを受けた生徒で、きっと間違える人はいませんよ。もっと私たちを信じてください」
「……別に? なんかあの噂のイケメンが俺の思った以上にやるようだから、嫉妬してるだけだし。くっそ、天は二物を与えずって格言は何処行っちまったんだ……二物どころか、あいつ四、五物もあるじゃねぇか、卑怯だぞ……ッ!」
グレンが文句をぶつくさ言っていると、レオスが俺たちへ……いや、システィーナの元へ来た。
「やぁ、システィーナ」
「あっ……レオス……」
「私の講義、聞きに来てくれたんですね。どうでしたか?」
「え? えぇ、その、とても素晴らしい授業だったわ。正直、文句のつけどころがない……」
「そうですか。それは良かった。まずは、第一関門突破……といったところでしょうか? 将来の伴侶すら納得させられない授業しかできない者など、あなたの夫にふさわしくないでしょうしね」
「だっ、だからッ! どうして貴方は昔からそういうことを人前で……」
「ふふ、貴女を愛していますからね。隠し立てする必要なんてありません」
レオスのキザなセリフに、システィーナは顔を真っ赤にする。
イケメンが言うと、何でもカッコ良くなるなぁ。
ズルい。
「システィーナ。少し、外を歩きませんか?貴女とお話ししたいことがあります」
「うぅ……それは、今でないとダメなことなの……?」
「別に今でなくても構いません。でも、いずれは話さなければならない重要な事です」
「あの……ルミア。ごめん、私……ちょっと行ってくるね?」
「う、うん……」
「ティアさんは、この教室で待っていてください」
「ん、待ってる」
レオスはシスティーナを連れて、この場を去った。
確かこの後、グレン先生がレオスに決闘を挑む筈。
……俺が表舞台に出るのはまだ先だな。
「はあ〜〜、あのレオスとか言う野郎も物好きだねぇ……」
「先生……」
「ふぁ……ねむ……んぁ? ルミア、どうかしたか?」
「一つお願いがあるんです。その……大変、申し訳ないことなんですが……」
「……ん? なんだ?」
うんうん、そのままレオスに手袋ぶつけて来てくれよ〜。