リィエル・レプリカと転生日誌 作:氷月ユキナ
演習終了後、俺たちはアストリア湖に居た。
……リィエルの零距離射撃は予想できないよ。
「貴方達ッ! なんなんですかその体たらくはッ! あの無様な戦いはなんですか!? 貴方達が、もっと私の指示にきちんと従い、作戦行動を遂行していれば──」
自分の行動がなんの意味もなさなかったことに若干落ち込みながら、俺はレオスの顔色を見る。
……レオスはそろそろ、時間切れかな?
レオスは生徒たちに叫び終わったらグレン先生のもとへ行き、手袋を投げつけた。
「再戦ですッ! 今度は、私が貴方に決闘を申し込むッ!」
「お前、まだ白猫を諦めきれねぇのか?」
「当然です! システィーナに魔導考古学を諦めさせ、私の妻とするまでは、諦めるつもりはありませんッ!」
「……なる程な。俺は別にいいぜ? 何せ、やっぱし逆玉は魅力的だしな。なら、次の決闘は──」
「レオス! 先生! もう、やめてッ! いい加減にしてよッ!」
この展開はアレだな。私の為に争わないで!ってやつか。
……今のところ、俺の出番が一切ねぇ。
ふ、ふん! 別にいいもん! 俺にはリィエルという友達がいるからね!
「……すみません、システィーナ。その件については心から謝罪します。ですが──」
「色々と言いたいことがあるけど、レオスはまだいいわ……一応、レオスなりに私のことを考えてくれてるようだし……でも、先生は一体、なんなんですか!? 事あるごとに毎回逆玉、逆玉って!? おまけに魔術師として正々堂々戦うわけでもなく、あんな卑怯な真似までして! それでもし先生が勝っても、先生の求婚を私が受けるなんて本気で思ってるの!?」
「………………今度は、一対一の決闘戦で勝負だ、レオス。日時は明日の放課後、場所は学院の中庭。ルールは致死性の魔術は禁止で、それ以外の全手段を解禁──これで、決着をつけようぜ」
「────ッ!?」
「ふっ……いいのですか?」
「バカめ。これで勝ちゃあ、一生遊んで暮らせるんだぜ? ここで身体張らねーで、一体どこで──」
ぱぁんっ! システィーナが、グレン先生の頬を思いっ切り平手打ちした。
……今の、グレン先生なら簡単に躱せた筈なのにな。それでもわざわざ受けたってことは多少の罪悪感はあるって事……だよね?
「……嫌いよ、貴方なんか」
システィーナは、そう言い残して走り去っていった。
「……ティア。システィーナ、すごく怒ってる……なんで?」
そして当たり前のように、リィエルがいつの間にか背後にいるのは無視する。
「……グレンが不器用だから、だと思う」
「? グレンは器用。
「……そういう意味じゃない」
「……よくわからない」
う〜ん、なんて説明すれば良いのかなぁ。
その後、頑張ってリィエルに自分なりに説明した。大変だった。
■□■
レオスの馬車にて。
「くそっ……グレン=レーダスッ! 本当に忌々しい男ですッ!」
「レオス、あいつはそういう男だよ。昔からそう……はは、一筋縄ではいかないんだ」
「ん、グレンはすごい」
「そう……魔術師としては、実は大したことないんだよ。君や僕の足下にも及ばないだろうね。だが……たとえ100戦中、99回負けるだろう戦いでも、その残り1回の勝利を、必ず最初に引き当てて見せる……グレンはそういう男なのさ。くく……そうでなくては」
「貴方達は随分と、グレン先生を買っていらっしゃるのですね?」
「それはそうさ。でなければ、こんな回りくどいこと、する意味がない」
「ん」
うんうん。それに、グレン先生はこの物語の主人公なんだからね。
あんな良い感じに皆を救えるヒーローで……いや、グレン的には救えなかった人もいたか……。
「……回りくどいこと? 貴方は本当に時折、訳のわからないことを言いますね?」
「君が分かる必要はないさ、レオス。分かる意味もない……
「
「君のお陰で、
「ええ、
……『
「ところで、自信の程はどうだい? グレンと決闘をすることになったんだろう?」
「ところで……どうして、貴方がそれを知っているのです?」
「勝てるのかい? グレンには」
「勝てますよ。グレン=レーダス。たかが、
「……随分と大きく出たね」
「当然でしょう? 私は軍用魔術の研究は当たり前ですが、他にもそれを行使する技術も他者の追随を許さないと自負しています。……今度こそシスティーナは私のものです。そう……システィーナさえ手に入れてしまえば、フィーベル家を得たクライトス家主家筋が、忌々しい分家筋よりも完全に有利に立てる。私の未来の当主の座は確定されたようなものです……」
「それは無理」
……あ、口に出しちゃった。
「無理、ですか? ティアさん……それはどういう……?」
「そうさ。ティアの言うとおり、君に栄光は掴めない」
お、ジャティスが俺のセリフを繋いでくれた。
「まず、君はグレンに勝てないよ。君に負けるようなら、僕の『正義』がグレンに敗れるはずもない」
「……」
「システィーナさえ手に入れればフィーベル家が手に入る? 上流階級同士のお家問題だろう? 大きな家同士が勝手に結婚に踏み切れば、政府だって介入する。個人的な婚姻でどうこうできるわけないのに、そんな短絡的な思考する自分に君は気づかない。いや、気づけない……まぁ、それらは些細なことだ。僕の目的からすれば、それは別にどうでもいいことだしね……だけど、まぁ……君が栄光をつかめない最大の理由……それは」
「……それは?」
「……もう、時間切れっていうことさ」
ジャティスがそう言った瞬間、レオスの全身の血管が浮いて……
ぼんっ! ぶしゅううううううーっ!
「ッ!」
頭が弾けて、全身から血が舞った。
予想してたとはいえ、この光景は精神衛生上でもキツいなぁ。
「……『
「ああ、そうさ。これが『
うわぁ、グロい。今もまだ体から血がブシャーって出てるし……。
「……ジャティス。死体、どうするの?」
「彼という存在からはもう、僕の正義執行には何の干渉もない……なら、放っておくさ」
「……ん」
え、これ放っておくの? 血だらけでシスティーナが見たら失神すると思えるほどグチャグチャなんだけど?
……ま、いっか。
「さぁ、そろそろ準備しておきなよ。魔術学院に着くだろうからね」
「ん」
準備……そもそも俺の持ち物がないよ。
何を準備すればいいの……?