リィエル・レプリカと転生日誌   作:氷月ユキナ

20 / 70
レオス(ジャティス)の脅し

「フッ……婚約者(フィアンセ) である私を差し置いて、他の男と逢瀬ですか、システィーナ」

「レオス!?」

 

 グレシスコンビがイチャイチャしている現場に、俺はジャティスとカッコつけて姿を見せた。

 

「いやはや、貴方も実に卑怯な男だ、グレン=レーダス。ご自分の過去をまるで美談であるかのように巧みに語って、システィーナの同情や共感を得ようとしている……違いますか?」

「なんだと……?」

「今まで黙っていましたが、実は軍用魔術研究という国家プロジェクトに関わる仕事柄、私は帝国軍の機密情報にも、それなりに触れてましてね……故に知っているんですよ……あなたが過去に何をやってきたのかを……ねぇ? 《愚者》のグレンさん?」

「──────ッ!?」

「せ、先生……?」

「フフッ、よく考えてください、システィーナ。グレン先生はあえて流していますが……あの話の裏で一体、何人の人間をその手にかけたと思いますか? 運よく今の立場を獲得したようですが……グレン先生、貴方は本来、こんな日向の世界にいる資格はないんだ。その血塗られた手で……貴方は一体、生徒たちに何を教えるつもりなのです?」

「あ、あの……グレン、先生……?」

「……黙れよ。警告するぞ。今すぐその口をつぐんでここから失せろ」

 

 ……怖。殺気がこっちまで来てるんだけど!?

 

 ちょっと! 俺はなんも言ってないよ!!

 

「おやおや、事実を指摘されたら、逆上ですか?ますます貴方はシスティーナにふさわしくありませんねぇ……?」

 

 ジャティスも煽るな!

 

「だから、黙れと言ってる……二度目だ……」

「ふふ……貴方はここにいていい人間じゃない。帰るべき世界へ帰りなさい、グレン」

「三度……警告は──したぞ」

 

 その瞬間、グレン先生はジャティスへ跳びながら愚者のアルカナを抜いて【愚者の世界】を発動。

 

 そのまま右腕でジャティスへ向けて──

 

「やれやれ、暴力はいけませんね」

 

 まぁその拳がジャティスに当たる訳ないけど。

 

 ぺしん、と軽く受け流し、

 

「え──?」

 

 体勢を崩したグレンをジャティスが回転して蹴った。

 

「ぐぅああああ──ッ!? げほっ……ちぃ──」

 

 うっわ、痛そー。

 

 そんなグレン先生に追い打ちで、ジャティスは人工精霊(タルパ)を顕現させた。

 

「──ッ!? 人工精霊(タルパ)、だと!?」

「そうです。 強いですよ、人工精霊(タルパ)は。特にあなたに対しては……ね」

 

 そう、人工精霊(タルパ)は妄想強化によるもの。【愚者の世界】は効果がない。

 

「おっと、動かないでください。この人工精霊(タルパ)は【爆焰霊(サラマンダー)(フェイク)】……触れたら火傷じゃすみませんよ? さて、もう明日の決闘を待つまでもなく勝負は見えてしまっているようですが……いやいや、あなたはこんなものではないはずだ。魔導士時代のあなたの武勇から察するに、あなたにはまだまだあなた自身も気づいていない高みがあるはず……『本気』を出してください、グレン。『本気』を出さねば、私には到底届きませんよ? 明日は是非ともあなたの『本気』を見せてもらいたいものですね」

「………………」

 

 グレン先生は、何も言わずに立ち去っていく。

 

 おーう、最高です!

 

「せ、先生……」

「あのような惨めな負け犬など放っておきなさい、話があります、システィーナ」

「は、離して! 離してよッ!」

「……黙れ、小娘。話があると言っているだろ」

「え……? あ、ぅ……」

「……ふっ。それでいいんです。まぁ、話と言っても分かりきっていますよね? 私と結婚してください。先ほどのことを見たでしょう。もう私の勝ちは決定しています。今更何をためらう必要があるのです?」

「あ……あなた……何を言って……」

「残念ながら、あなたに拒否権はないのです。あなたのお友達……ルミア=ティンジェル。その素性と能力……世間には秘密のままにしておきたいでしょう?」

「──なッ!?」

「はははっ、さすがに顔色が変わりましたね……? それとリィエル=レイフォード……『Project:Revive Life』の大いなる成功例……彼女たちを欲しがる地下組織なんて、ゴマンとあるでしょう」

「ど、どうして……それを……ッ!? ま……さか……レオス……貴方……天の智慧、研究会の……ッ!?」

「なんだと……ッ!? このクソアマが……ッ!? 僕を……あんな下劣で下賤なクズどもと……一緒にするな……ッ!」

「ひ──」

 

 ジャティスが天の智慧研究会扱いされてキレてるけど、流石にこれは見過ごせない。

 

「……レオス、ストップ。止めて」

「……ああ、そうでしたね、ティアさん。とにかく、賢いあなたならわかるでしょうが、どうします? 私の求婚を受けていただけますか? 実はもう結婚式場は手配してあるんです。場所はフェジテ中央区のカタリナ聖堂。式は今週末の休日──戦天日にあげます。ああ、周囲の通知や諸々の手続き関連は私の方でやっておきましたのでご心配なく」

「な……ッ! ま、待って……ッ!? せ、せめて、お父様とお母様に……は、話を通さないと……」

「貴女のご両親は『天使の塵(エンジェル・ダスト)』で帝国各地方を巡回調査中で、1ヶ月は帰って来れませんよ。今のうちに籍を入れて、既成事実を作ってしまえばいいんです。なにせ、私たちは『愛し合って』いるのですから。貴女は全て私に任せていればいいんですよ、システィーナ。そうすれば全てが上手くいくんです……そう、全てがね。ちなみに、この話は他言無用ですよ? さもないと……貴女の大切な友人たちが学院どころか、この国にいられなくなりますからね?」

 

 あぁ……システィーナが恐怖で震えてる……。

 

 う〜ん……こういうのも好きだけど、やっぱり自分で曇らせたいな。ここら辺は俺の感覚だけど。

 

 んじゃ、この後はシスティーナと仲良くなるか……? 今はまだ心弱いし、曇らせられるだろうからね。

 

 ……まだ具体的なやり方は考えてないけど。

 

「はぁっ……はぁっ……」

「それでは、私はそろそろ失礼しますね?」

 

 ジャティスは言いたいことを言うと、そのまま去っていった。

 

「……システィーナ、平気?」

「貴女……リィエル?じゃなくて……えっと、ティア、だっけ?」

「ん、正解」

「……ねぇ、ティアはどうしてレオスのメイドをしているの?」

 

 ……何を言おう。普通に仕事だから、じゃ"面白くない"し……よし!

 

「……それしか、おれには無かったから」

「……え? それって、どういう──」

「じゃ、バイバイ」

 

 俺は別れを告げるとささっと屋上から出ていく。

 

 ……ジャティスに無理矢理従わされてるとか勘違いして曇ってくれたら"面白そう"だなぁ。

 

 ある意味正解だし。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。