リィエル・レプリカと転生日誌   作:氷月ユキナ

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エルザの覚悟

「あっははははははははははっ! あっはははははははははははは──ッ!」

 

 ……はい。マリアンヌが発狂してます。

 

「《光り輝く護りの障壁よ》──ッ!」

 

 システィーナが白魔【フォース・シールド】で炎を防ごうとするが、防ぎきれてない。

 

 一応、俺のメイド服には黒魔【トライ・レジスト】が常時付呪(エンチャント)されてるが、あくまで無効化ではなく()()()()()()()()()である。

 

 つまり、俺も熱い。

 

「あちちち!? 熱い!? 熱いって!? おい、白猫!? 熱、遮断しきれてねえぞ、もっと出力上げろっての! サボんな!」

「これが限界よッ! あの魔法遺産(アーティファクト)の出力がおかしいのッ! 私のせいじゃないわッ!」

「ちぃッ! 【フォース・シールド】を張られては、こうして脚を止められ、焦れて突撃すりゃ、【エア・スクリーン】を切り裂かれ、とどめに【トライ・レジスト】を超える熱量を撃ち込んできやがる……地味に反則だな、おい!?」

 

 グレン先生、解説あざっす。

 

 ……この状況、どうしよう。

 

 剣も壊れたし……いや、それは作り直せばいいだけなんだけど。

 

 そもそも俺は漁夫の利作戦で、マリアンヌと戦うつもりはなかったので対策もゼロだ。

 

 つまり、為す術が無い。

 

 それに、固有魔術(オリジナル)ティア(おれ)の天秤】の弱点である"どうやっても避けられない攻撃は避けられない"を突かれている。

 

 相性、マジで最悪なのだ。

 

「あっははははぁ……燃えろぉ……ッ!? 燃えてしまえぇえええ……ッ!」

「あぢぢぢぢぢッ!? あづいって!? トーストになっちゃう!?」

「ん……あづい」

「くぅううう──ッ!?」

 

 グレンとリィエルと俺は【トライ・レジスト】に、システィーナは【フォース・シール】に魔力を全力で注ぐが、紙一枚分の意味すらあるかわからない。

 

 ……紙一枚分くらいは流石にあるかな。

 

 というか、マリアンヌ状況気付いてるのか? このままじゃ周りで燃え広がっている炎で機関車が熱くなって加速していって、事故ったら大量に人が死ぬぞ!?

 

 ……気付いてないなー、あれ。まぁ、魔将星の戦闘技術なんてものを再現してるからなぁ……逆に飲まれたみたいだな。

 

「せ、先生、このままじゃ……」

「ああ、やべぇな……マジで。おい、ティア。なんか奥の手とかあるか?」

「ない」

「……出し渋ってるなら、もう出したほうがいいぞ」

「本当にない」

 

 奥の手なんてあったら、とっくに使ってるわ!?

 

「そうか……おい、白猫! 例のおとぎ話で、『正義の魔法使い』様は、どうやって炎魔帝将ヴィーア=ドォルのアホを倒したっけな!?」

「"炎を切り裂く風の刃"」

「おう、お前(ティア)には聞いてなかったがありがとな! よし、白猫! 黒魔【エア・ブレード】だッ! こないだ教えただろ!?」

「無理よッ! 私は対抗呪文(カウンター・スペル)で手一杯だわ! あんなに節数がかかる大呪文を悠長に唱えてたら、皆、丸焦げじゃない!?」

「だよなぁ、クソッ! ティアッ! お前、黒魔【エア・ブレード】使えたりするか!?」

「むり」

 

 そんな高等魔術使えるわけ無いだろ!? 俺が使える攻性呪文(アサルト・スペル)はせいぜい黒魔【ショック・ボルト】レベルだよ!!

 

「使えねぇな!?」

 

 ……あ? 誰が使えないって!?

 

 攻性呪文(アサルト・スペル)は俺とは相性が悪いだけなんだけど!?

 

「くっそ、やっぱり、俺とリィエルとティアの三人でなんとかするしか──」

 

 その時、システィーナの【フォース・シールド】に穴が空き、炎が入り込む。

 

 その先は……原作でこの戦いでとどめをさしていた重要キャラのエルザ。

 

 ちょっ、マジで巫山戯んな!

 

「あ……、……あ、ああ……ぁああ……ッ!?」

「《白銀の氷狼よ・吹雪纏いて・疾駆()け抜けよ》」

 

 俺は黒魔【アイス・ブリザード】で鎮火させ、エルザを見る。

 

「……え、えっと……ティアさん、でしたっけ……?」

「ん、あってる」

 

 エルザの問いかけに俺は頷く。

 

「……あなたはそれで良いの?」

 

 俺はエルザに発破をかけるために、尋ねた。

 

「え……?」

「あなたは、何の為に剣を取った?」

 

 再び、俺は尋ねた。

 

 ……今、エルザの中では色んな感情が蠢いてるだろう。

 

 マリアンヌに利用されそうになった自分への怒りとか、イルシアと間違えてリィエルを攻撃してしまった自分への怒りとか、そんなリィエルを最初の頃からずっと騙してた自分への怒り……………あれ、自分への怒りばっかだな。

 

 ねえ君、やらかしすぎじゃない?

 

「よし! なんとか、あいつを切り崩すぞッ! うぉおおおおおお──ッ!」

「あっひゃはははははははははははは──ッ!」

 

 お、グレンがマリアンヌに突撃した。

 

 流石主人公、勇気すごいなぁ。

 

 ……けど、そのままじゃジリ貧だよ。

 

 エ〜ルザ? そろそろ覚醒してよ?

 

 

■□■

 

 

「みんな……」

 

 エルザは、体を震わせながら戦いを見ていた。

 

『あなたは、何の為に剣を取った?』

 

 リィエルそっくりの少女、ティアの言葉が脳裏に浮かぶ。

 

 一体、私は、何の為に剣を取ったのか。

 

──エルザ……守るために剣を振るいなさい。人を活かす剣を振るいなさい──

 

 そんな、父の言葉が蘇った。

 

「これ以上……ッ! 父の名を……技を……穢して……たまるかぁあああああ──ッ!」

 

 エルザは吠える。

 

 このままでいいわけがないと。

 

「……ん、それでいい」

 

 ティアが何かを言ったような気がするが、エルザの耳には入らなかった。

 

 震えは止まらない。恐怖が心臓を犯していく。

 

 ()()()()()()

 

「お前……ッ!?」

「エルザさん……ッ!?」

「……みな……さん……後、一手が……足りないんですよね……?」

「ああ……そうだが……?」

「な、なら……私が……活路を……切り開きます……」

「バカ言え。鏡見てみろ。今のお前に何が──」

「グレン」

 

 言い返そうとしたグレンを、ティアが止めた。

 

 全てを知っているかのような瞳で、エルザを見据える。

 

「……エルザ、やれる?」

「もちろんです……ッ! わ、私が……やらなくちゃ、いけないんです……ッ!」

 

 エルザは即答した。

 

「お願い……しますッ! 信じてください……ッ!」

「……やれるのか? エルザ」

 

 グレンは、ティアと同じ質問をもう一度した。

 

「やります」

 

 エルザは過呼吸に喘ぎながら、真っ青な顔で、それでも本気の眼をしている。

 

「……どう? グレン」

「……オッケー。わかったぜ」

 

 グレンはマリアンヌに再び向き合いながら、言葉を続ける。

 

そいつ(ティア)が何を言ったのか、おまえ(エルザ)がどういう手段を取るつもりなのか知らねーが……俺たちの命運、お前に託したぜ、エルザ」

「せ、先生……」

「さぁ、行くぜ! 最後の一合いだッ! これで決めるぞッ!」




ティア(おー、こうやって女性とのフラグを立てていくのか。
 勉強にな……いや、ならねーな)
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