リィエル・レプリカと転生日誌 作:氷月ユキナ
あのドアの奥を勘だけで進んで行くと、下水道のような所に着いた。
ずっと歩きっぱなしだけどこれ、本当に外に出れるのか?
だんだん不安になってきたぞ。
「うぅ。くさい」
けど、とにかく歩くしかない。
そのまま歩いて、歩いて、歩いて、歩き疲れてきた時、ついに何かからの光が見えた。
よく見ると、奥にあるドアから光が漏れていて……。
「外ッ!」
俺は、無意識に駆け出していた。
バンッ!
そのドアを勢いよく開けたら、目の前には大きい海があった。
「綺麗……」
朝日が海の水に反射して煌めいていて、幻想的な雰囲気もある。
「ん……? ……涙?」
……俺、泣いてるのか?
なんで……? そう思う間にも、何故か涙がどんどん溢れていく。
……ああ、そうか。
この光景を見たときに、やっと本心から実感できたんだ。
俺は、ロクアカの世界に来たんだって。
おそらく、もう元の世界には戻れないって。
■□■
「……恥ずい」
見た目はリィエルと同じロリとはいえ、中身の精神が高校生なのに泣いたのは恥ずいな。
うわぁ、黒歴史確定じゃねぇか。
誰にも見られてなくてよかった。
…じゃあ、早速これからのことを考えるか。
ひとまず逃げて来れた事で、俺の死亡率は大幅に下がった筈だ。
なので少しは安心していいと思う。
つまり、今一番の問題は……。
「お腹……減った……」
ぐきゅるるるぅーー……。
そんな気の抜けるような間抜けな音が、俺の腹から盛大に鳴った。
「……苺タルトが食べたい」
……最初に解決するべき問題は、ご飯だな。
「食べもののお店、探そう」
食を求めて、俺は近くにある街に行くことにした。
どうして街の場所が分かるのかって? 『アストラル・コード』のお陰だよ。
■□■
街を歩いていると、お手軽で丁度良さそうな鳥の串焼きを売っている店を見つけた。
だが、苺タルトは無かった。
大切な事なのでもう一度言おう。
苺タルトはなかったのだッ!
それは置いておいて、焼き鳥屋のメニューはこんな感じだ。
もも 一セルト
ねぎま 一セルト
つくね 一セルト
レバー 一セルト
ハツ 一セルト
砂肝 一セルト
せせり 一セルト
なんこつ 一セルト
ぼんじり 一セルト
かわ 一セルト
てばさき 一セルト
さて、何を頼もうか。買うなら3本程度が良いな。
まずは無難にももを一つだ。
後の2本は……ねぎまとつくねにしよう。
「もも、ねぎま、つくねの三つ頂戴?」
「はい、全部で三セルトだよ」
「ん、このくらい?」
「ああ、合ってるよ。お嬢ちゃん」
お金の価値は『アストラル・コード』から分かるので、銅でできたコインを3枚、屋台のおばちゃんに出す。これで正解なはず。
「……あんた、保護者の人はどうしたんだい?」
「家。お使いに来た」
「そうかい。頑張りな」
お使いなんて嘘だけどね!
けど、何かを言っておかないと兵士に通報とかされるかもしれないし。
俺の身分証明書はないからな。それで捕まったりしたら面倒なことになるし、なによりそれは"面白くない"。
銅のコインを三枚渡して、串焼きを受け取った。
「あそこにベンチがあるから、そこで食べな」
「ん、ありがと」
よし、食べよう!
転生してから初の食べ物だ。
最初に食べるのは、ももだ。
目の前のももの串焼きを見る。
色々なアレンジがあるわけじゃなく、シンプルにただ鶏のももを焼いてタレを漬けただけ。
なるほど、こういうの好きだな。
いただきます!
「はむ……おいしい!」
もも……美味いなっ!
肉を噛むたびにジューシーな肉汁が溢れ出し、タレの味と混ざり合い絶妙にマッチしている。最高だ。
「……あ、食べ終わっちゃった」
ももという名の幸福な時間は、あっという間に過ぎていった。
だが、まだ2本残っている。
「次は、ねぎま」
どんな味か楽しみだ。
※ネタ紹介
・焼き鳥を食べている時の主人公
⇒"孤独のグルメ"の五郎