リィエル・レプリカと転生日誌   作:氷月ユキナ

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燃ゆる剣(フレイ・ヴード)

 壮絶な戦いを繰り広げていた。

 

 俺の赤い炎が燃え盛り、激しいレイクの風が竜の咆哮とともに駆け抜ける中、グレンはあの手この手で俺たちの戦いに食らいついていた。

 

 グレン先生の戦い方が巧妙で上手いことがよく分かる……いや、本当に凄い。

 

「《紅蓮の獅子よ・憤怒のままに・吠え狂え》ッ!」

 

 グレンの力強い爆撃呪文が戦場に響いて火炎弾(ブレイズ・バースト)がレイクに当たるが、竜の鱗で覆われた身体は無敵のように無傷だった。ざけんな。

 

「ははは、クソ絶望的な状況だな、これ……ティア、何か切り札とかねぇのか?」

「……一応、ある」

「本当か!?」

 

 あるにはある……けど。

 

 補助する為に使う詠唱がクソ長いんだよなぁ……。

 

「……詠唱が終わるまで、時間を稼げる?」

「……それに賭けるしかねぇんだろ? やってやるよ!」

「ん、任せた!」

「おうッ!」

 

 さて……やろっか。

 

 

■□■

 

 

 息を整える。

 

 深呼吸をして、自分の《炎の剣(フレイ・ヴード)》に意識を全集中させる。

 

「《諸元を整えし炎の魔人よ、我が知識と力を融合させ、天地を舞台に奏でる炎魔の煌めきを紡ぎ出さん》」

 

 剣に秘められている炎の力を、『放出』するのではなく『集束』させろ。

 

「《大気の流れと燃ゆる炎の融合、舞い狂う紅い鍵の底力を示し、この炎剣に我が意志を注ぎ込め》」

 

 集中しろ、集中しろ、集中しろ。

 

「《大地の息吹と炎の律動、魔力の精華を結ぶ秘儀の中で、斬撃と炎魔が交わり、究極の螺旋を描く》」

 

 ……まだ、だ。まだ、これじゃ足りない。

 

「《これは炎の激情と紅炎の煌めきが交じり合い、魔術の楽章が天上に響き渡る儀式》」

 

 後、少し……。

 

「《欲望を秘めし我が誓う。紅炎纏いて、舞い踊れ》」

 

 ──ああ、できた!

 

「グレェンッ!!」

「行けっ、ティアぁぁあああああああ──ッ!」

 

 合図とともに跳躍しその場を離れたグレンを見届けて、レイクに狙いを定める。

 

 身体強化(フィジカル・ブースト)を全開にした俺は駆け出して。

 

 

「──【燃ゆる剣(フレイ・ヴード)】」

 

 

 超高温となっていた俺の剣を振るい、その全ての炎を解放した。

 

 

■□■

 

 

「はぁー……ッ! はぁー……ッ! はぁー……ッ! はぁー……ッ!」

「…………疲れた」

「……見事だ、ティア=レイフォード」

 

 レイクは驚きとともに、敗北を受け入れる言葉を紡ぐ。

 

 その姿は、上半身と下半身で真っ二つに別れていた。

 

 未だ絶命していないのも、竜としての力だろう。

 

 ……ま、それでももうすぐ死ぬだろうけど。

 

「殆ど力押しのみで私を倒すとはな……ふ、貴様らの勝ちだ……」

「……ん。けど、殆どこの剣のおかげ」

「それでも、これを為し遂げたのは貴様だ」

 

 何処か清々しい表情で、レイクは言葉を紡ぐ。

 

 そして、血を吐き出しながら、次にはグレンに目を向ける。

 

「……グレン=レーダス、『イヴ・カイズルの玉薬』を持ってこい……」

「──ッ!」

「それがなくては、次からの戦いに生き残れんぞ……」

 

 レイクは瀕死だ。それなのに、何処か力強い雰囲気で言葉を続ける。

 

「本気を出せ、グレン=レーダス……この私は終わりだ が……次の私には……更なる世界を見せろ……ッ!」

 

 ……気がつけば、レイクはすでに絶命していた。

 

 だけど、これはただの序章。

 

 まだ、事件は始まったばかりなのだ。

 

 ……トリックスターみたいに、出来る限り暗躍してみせるさ。

 

 ジャティスに命を削らせない。俺のやれることすべてを尽くせ、ティア=レイフォード。

 

 石像のように立ち尽くすグレンの隣で俺は静かに、改めて覚悟を決めていた。

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