リィエル・レプリカと転生日誌 作:氷月ユキナ
「……白猫、なんとか切り抜けたぞ。おい、聞いてんのか? とりあえず合流 すんぞ。白猫……? おい、白猫ッ!」
「グレン……?」
グレンがいくら叫んでも、システィーナの返事は聞こえない。
ティアもそのグレンの様子に困惑している。
「白猫ッ! 返事しろ、白猫!? クソッ……!」
グレンの頭の中が真っ白になり、思わずシスティーナの元へ駆けだそうとしたとき。
「……安心しなよ、グレン」
……あの
通信器からのものではない。
「彼女は無事だ……君と同じく、試練を乗り越えてくれたよ……」
──コツ、コツ、コツ。
レイクによってメッタメタに壊された元・倉庫の隙間から、一人の男がやってきた。
「せ、先生……」
その隣には、一人の少女が。
「大体、君は少し過保護すぎる……もっとシスティーナを信じてあげるべきだ……曲がりなりにも、君の教え子だろう?」
「ッ! ジャティ──」
と、ティアが言いかけた時に、既にグレンは動いていた。
「ジャティスゥウウウウウウウウウウ──ッ!」
その身に残った力を振り絞り、ティアを置いて全力でジャティスに拳を向ける。
だが。
「おっと」
そんなグレンの殴打を、ジャティスは軽く身を捻り躱した。
「ぐ……ッ!」
「せ、先生!?」
「下がってろ、ルミア!」
「ははは。そんな体で無茶するもんじゃないよ、グレン……」
「……ん、少し安静にしたほうが良い」
グレンに会えたことで歓喜の表情を浮かべるジャティス。
そしてその隅で、『せっかく修羅場を乗り越えたのに、グレン先生のインパクト強すぎて構ってもらえない……』とティアが軽く落ち込んでいた。
「ひどい怪我……すぐに治癒魔術を!」
「ルミア! 何もされてねえか……よかった。……それにしても、ずいぶん早い登場じゃねぇか、ジャティス……」
「確かに、ここで会うつもりはなかったけど"読めなかった"んだよ……まさか、彼女がシスティーナを助けるとは。おかげで手間が省けてね……君と話す余裕ができたのさ……まぁ、感謝しときなよ」
「……んぅ♪」
さらっと落ち込んでいたティアの頭をそっと撫でながら、ジャティスは笑う。
撫でられたティアは嬉しそうだ。
「彼女……? ちっ……まったくもって、わけわかんねーが、ンなことどうでもいい! テメェ……また、俺を意味不明な理由で狙ってんのか? レイクの奴と戦わせることで、俺を消耗させんのが狙いか? ……いいぜ? なら、ここで決着つけてやるよッ!」
苦しげながらも、全く意味の無い壮大な決意を固めているグレンを、ティアは微妙な顔で見ている。
あまり会話に参加できずに少しだけ拗ねているようだ。
「……君が弱っているのにかこつけて、まるで闇討ちのような卑怯な真似をすると本気で思っているのかい? ……嗚呼、悲しいな」
「……はぁ?」
「僕と君の決着は、こんなくだらない茶番劇の舞台上で、ついでのようにつけていいものじゃなかったはずだッ! もっと雌雄を決するにふさわしい状況、ふさわしい大舞台がきっと僕たちにあるはずだッ! そうだろうッ!?」
ンなこと言われても何一つ理解できねぇ……となっているグレンの横で、ティアはうんうんと賛同するように頷いていた。
「君の正義と僕の正義……どちらが上か、君が一刻も早く白黒つけたいのはよーくわかる。だが……まぁ、焦るなよ。まだその時じゃない……そのうち、僕はこの頂上決戦にふさわしい、極上の舞台を心を込めて用意してあげるから。どうか、それまで待っていてくれ」
■□■
sideティア
「イヴが来てる!? その上、白猫を助けたのがあいつだとッ!?」
ジャティスに案内された俺たちは、今現在進行形でグレン先生の叫び声が響き渡っている下水道通路を歩いていた。
「ああ、そうさ……だが、システィーナはあのジン=ガニスをほぼ単独で打ち破った。彼女の成長速度は素晴らしいよ……君も誇らしいだろう? グレン」
「俺たちにはレイク=フォーエンハイムの相手をさせて、か。自分の目的のためにルミアはどころか、白猫まで巻き込みやがって」
「さすがの僕も、あの2人を相手にして目的を達成するのは難しいからねぇ……君たち2人には本当に感謝してるよ……」
「テメェ……ッ!」
あーっははは……やっぱり怒るよなぁ。
まぁ、セラに似てるシスティーナに対しての態度は、グレンもちょっと複雑だろうし。
「しつこいな……そんなにシスティーナを巻き込んだのが気に食わないのかい? 君にとって、彼女なんて所詮セラの……」
笑顔のまま反論しようとしていたジャティスは急に言葉を止め、少し俺の方を見る。
ん? なんだ?
「……?」
「……いいや、なんでもないさ。それとグレン、システィーナを巻き込んだことを、心から謝罪しよう。申し訳なかった」
……え、ジャティスがグレンの心を計って謝った!?
原作だったら普通に"セラの代替物だろう?"って言ってたよな……え、何で?
「……ちっ」
「さて、君を連れてきたかった場所はここだ」
「……は? この商館は、もう廃館になったとこじゃ──」
その中に入った瞬間、グレン先生は言葉を止めた。
あ、ここは俺が
「……テメェ、これは」
「ああ、全てティアが先に掃除しといてくれたよ。おおっと、勘違いしないでくれよ? こいつらはほぼ全員天の智慧研究会だ。ほんの数人、関係ない人間もいたようだが……正義のための尊い犠牲さ。まあ、そんなことはどうでもいい……問題はここの地下さ……」
うんうん。こんなモブ達は別に俺からすればどうでもいいし、置いといて。
地下にある方陣が大問題なんだよねぇ……。
なんて思いながら、隠し扉から地下へと進む。
「……なんだ、こりゃ?」
その場にある方陣を見たグレンから、心の言葉が漏れていた。
「まぁ、見ててくれ。まずはこの方陣を
「……はい」
「お、おい……? 一体、何を……?」
呆然とするグレンを置いて、ジャティスはルミアの『
それを確認したジャティスは、手袋から
「《終えよ天鎖・静寂の基底・理の頸木は此処に開放すべし》!」
「助かるよ、ルミア。早々に協力を仰いでに正解だった……君の力がないと、これらを日没までに
「おい、さっきから何の話をしてやがる。これは何だ。お前の目的は……いい加減、説明しやがれ!」
「その方陣をもっとよく見てくれよ……それでわかるはずだよ……このフェジテに一体、何が起きているのか、がね……」
「何……?」
「最も、普通に生きていたら見ることはない方陣だ。博識な君くらいにしか、分からないだろうがね……」
ジャティスの言うとおり、俺が見ても、なーんにもも分からん。
「……『
「そう──正式名称、錬金【
「ん、ドッカーン」
「……」
くっ……強引に会話に入ったけど、まさかの無反応だと!?
「……グレン。今、天の智慧研究会が2つの派閥に分かれてるのは知ってるだろう……? ルミアから手を引いた『現状肯定派』……そして、ルミアを狙う『急進派』だ……」
「…………ッ!」
「だが、先の事件で《魔の右手》ザイードが捕縛され、急進派は大きく弱体化した……はっきり言って、もう奴らは虫の息だ……放っておいても、確実に滅ぶだろうね。だが、そこまで窮地に追い込まれても、彼らはルミアを殺したいんだ……それが《大導師》のためだと、本気で信じている……もはや、《大導師》狂信者の集団だよ。そうは思わないかい?」
「ん、狂ってる」
天の智慧研究会の人も、『正義厨』と『愉悦部』に狂ってるなんて言われたくないだろうけどね……。
「……おい。まさか……? いや、そんな……ルミアを殺すためだけに、このフェジテを丸ごと吹き飛ばすってことか!? ふざけんじゃねえぞッ!」
「当然──そんなことは、この正義の代行者たる僕が許さない」
「ッ!?」
「グレン、『
「くそ……ッ!」
「間違いなく敵の妨害に合うだろうが、もはや『
「ん、一緒に頑張ろ」
「……ち、仕方ねえ……その『
「ああ──アルザーノ帝国、魔術学院だ」
アリシア三世だっけ? 面倒なコトしてくれるよね……あんな精神状態じゃ、納得だけど。
……ま、取り敢えず、
後はグレン先生に任せよーっと!
■□■
「時は来た……さて、どうする? この国で最も賢き者たちよ」
作者が曇らせ下手クソなせいで、愉悦部設定がマトモに機能してない!
……まぁ、それは置いといて。更新遅れてすみませんでした!
これからもどんどん遅れちゃうかもしれませんが、許してください!