リィエル・レプリカと転生日誌 作:氷月ユキナ
「……暇だね」
「ん、暇」
とある宿に泊まっている二人組。
俺とジャティスは、暇を持て余していた。
「すること……ないかな」
「ない」
しーん……という言葉が似合うような、微妙に気まずい空気が流れる。
お互い、どうにかしようにもすることがないと思っていたとき。
──くぅ
俺のお腹が、鳴った。
「……そういえば、そろそろ夜ご飯?」
「そうだね。近くで食事でも取ろうか」
椅子から立ち上がったジャティスを他所に、俺の頭の中で何かが閃いた。
そうだ……することがないなら、作ればいいのだ。
「ジャティス。おれが夜ご飯を作る」
「…………え"」
ドヤ顔の俺を見たジャティスの顔が、何故か引きつったように見えた。
■□■
「鶏肉に玉ねぎ、じゃがいも、人参……それに、カレールゥ。揃ったね、材料が」
「ん、これでつくれる」
色々考えて、最終的に作る料理はカレーとなった。
近くにあった街へ買い出しへ行き、材料も整った。
さぁ……料理を始めようか!
「まずは、野菜を切るから……あ」
「ん? どうしたんだい? 切るなら包丁を……あ」
俺達はそこで、一番重要な物が足りていないことに気がついた。
……気づいてしまった。
「……ジャティス……ここ、調理器具……ある……?」
「……あ、あはは……ティア、これまで僕たちが自分で料理をしたことがあったかい? ……それが答えだよ」
包丁や鍋どころか、このアジト(仮)には調理器具が何もないッ!
……なら、今持っているものを工夫するしかないよね?
「ん、分かった」
「……どうするつもりだい?」
「これを使う」
ジャキ、と俺は
さーて、野菜を切っていき──
「やらせないよ!?」
ジャティスに止められた。
「……なに」
「何じゃないよ……全く、そうするのは"読めなかった"……というか、衛生面は大丈夫なのかい?」
「……?」
「首を傾げてないで……いや、もういいか」
なんか諦められたんですが……。
「……ん、冗談」
「本気だったよねぇ? 僕が止めてなかったから普通に切り始めてたよねぇ?」
それから結局、ジャティスが錬金術で調理器具を作ってくれた。
錬金術が生活でも滅茶苦茶便利だ。
やっぱりジャティスは優しい……! 流石は正義の魔法使い。
「"正義"は関係ないと思うんだけど」
ナチュラルに人の心を読まんといてください。
……それは置いといて、今は肉と野菜を炒めているところだ。
火がほしいと言われたから
「ああ、沸騰してきたね。弱火に変えてアクを取ろうか」
「ルゥ持ってきた」
「ありがとう、そこに置いておいてくれ」
■□■
完成品がこちらになります。
料理番組でありそうな
クソマズだったり、クソ辛だったり。
ギャグ時空でありそうなテンプレを起こすこともなく、俺達はカレーを作り上げたのだ。
「おいひい……」
「そうだね……手料理なんて久しいけど、たまにはこういうものも良い」
テーブルで向かい合い、ジャティスと二人で俺達はカレーを頬張る。
……美味い。
「ジャティス、今日はありがとう」
「いいさ。僕にとっても貴重な体験ができたよ。……だが」
ジャティスは鍋……正確には、その中にあるカレールゥの
「
「やめて」
必死に目を逸らしてた現実に引き戻さないでくれ……。
そう。確かに味は問題なかった。
むしろ、カレー屋に出てもおかしくないレベルのものだった。
失敗したのは、
「…………何日かに分けて、二人で頑張ろうか」
「……ん」
俺は鍋から目を離し、目の前にあるカレーをスプーンで掬った。
口に入れれば、カレーのスパイシーな辛さが広まる。
辛いけど、美味しいな。
次から本編入ると思います。