リィエル・レプリカと転生日誌 作:氷月ユキナ
時の遡行
アルザーノ帝国の学院アリーナにて。
女王陛下の尽力によって数十年ぶりに開催されることとなった魔術祭典にらアルザーノ帝国魔術学院、聖リリィ魔術女学院、クライトス魔術学院などから、各地の有力生徒が結集していた。
そんなこんなで、原作における14巻が始まるというときに、俺とジャティスはアルザーノ帝国に戻ってきていた。
何かをするつもりはないが、何かとてつもない嫌な予感がしたからだ。
■□■
────。
「──ィ──ア……ほら……起き……」
……? 何が……。
「──ティア? ほら、起きなよ……もう朝だよ?」
「…………ん」
ジャティスの声により、脳が眠りから覚めていく。
「今日はグレンの生徒達の魔術祭典の為の選抜会なんだよ? 行きたいと言ったのは君じゃないか」
「ん、ごめん。すぐ起きる……」
眠たい目を擦り、俺はベッドから起き上がった。
ジャティスの用意してくれたメロンパンを食べて、歯を磨き、パジャマを脱いでいつものメイド服ではなく変装用の平凡な服を身に着ける。
……もう、メイド服を着てないと違和感を感じるようになっちゃってるな。
そんなことを思いながら俺とジャティスはバレないように変装し、選抜会への会場に向かった。
まずは初日。ここで、今回が何周目なのかが分かる。
何周目……というのは、14巻ではループが起こっているのだ。
エレン=クライトスによるル=キルを利用した時間の繰り返し。
それが14巻の事件だ。
なので、エレンの言動に気を向けていたら今がループの何周目なのかが分かると思ったのだ。
そして、会場に来た俺は観客席から魔術によって盗聴を始めたのだが……。
『久しぶり……システィーナ……また、会えて嬉しいよ……』
『えっ! そうなんだ、エレンも代表候補に選ばれたんだ!? 凄いじゃない!』
『うんっ! システィ。私じゃ、相応しくないかもしれないけど……でも、頑張ったんだよ? えへへ……』
『そう、じゃあ、お互い代表入りを目指して頑張ろう! エレン!』
『うん、頑張ろうシスティ!』
……これ、どっちだ? と、俺は困惑していた。
会話的に、エレンにとってシスティーナに会ったのが久しぶりなのは事実らしい。
特に嘘をついているような気配も無かったのだ。
つまり、可能性はニつある。
一つ。グレン達が事件を解決し、これはもうエレンの騒動が終わった後という可能性。
もう一つは……これが一周目で、これから事件が始まる可能性だ。
……まぁ、確かめる術は何もないので、このまま見ていることにした。
その後は、システィーナとレヴィン=クライトスが圧倒的に目立っていた。
けれど、ほかの生徒達もそれぞれ奮闘し、活躍していた。
そのまま一週間が過ぎて、メイン・ウィザードにシスティーナが選ばれ、魔術祭典代表選手選抜会は大賑わいで幕を降ろした。
その夜、俺はホテルのベッドの上に居た。
……俺にとっては、ここからが本当の勝負だ。
覚悟を決めた俺は目を閉じて、意識を暗い意識の底に落とした。
■□■
────。
「──ィ──ア……ほら……起き……」
………………。
「──ティア? ほら、起きなよ……もう朝だよ?」
「…………ん」
ジャティスの声により、脳が眠りから覚めていく。
「今日はグレンの生徒達の魔術祭典なんだよ? 行きたいと言ったのは君じゃないか」
「ん、ごめん。すぐ起きる……」
眠たい目を擦り、俺はベッドから起き上がった。
「……ごめん、ジャティス。少し一人にさせて」
「ん? ……ああ、わかったよ」
ジャティスは何かを察したのか、そのまま部屋の扉へ歩いていく。
「メロンパンを買っておいたから、食べたくなったら来なよ」
「ん」
それだけ言い残して部屋から出ていったジャティスを見送った俺は、頭を抱えた。
「……マジで……?」
ループによる記憶の継承が、俺にはできている。
ただの直感だった。だが……。
「……このままじゃ、ヤバい」
後々明らかになることだが、エレンは後ループを何千回も繰り返す。
主人公であるグレンが記憶の継承をできるようになったのも、5045回繰り返されてからだ。
……このままだと俺は、5045回この一週間を過ごすことになる。つまり、35315日。
年数に変換すれば、約97年間。
いや、正確には5045回というのはグレンが記憶の継承をできるようになったときの回数なので、厳密にはもっとだ。
そして、記憶の継承ができてしまう俺は、その全てを過ごさなければいけない。
グレンによる解決なんて、待っていられる訳がない。
「……おれが、なんとかしないと」
絶対に、このループを止めてやる。