リィエル・レプリカと転生日誌 作:氷月ユキナ
3周目。
俺は魔力測定の会場へ辿り着くと、観客席ではなく生徒達の集まる場所に黒魔【セルフ・トランスパレント】による透化結界で不法侵入していた。
今回のループで、エレンに俺がループの記憶を継承していることを伝えるためだ。
死ぬのはもう、仕方ないって諦めたよ……。
会場にこっそりと降りて周りを見てみると、そこにはアルザーノ帝国魔術学院の生徒達、聖リリィ魔術女学院の生徒達、そしてクライトス魔術学院の生徒達が並んでいた。
その中心には、魔力を測定するための三つのガラス円筒形の魔導装置が設置してある。
その周りでガヤガヤと騒いでいる生徒達とは違い、エレンは会場の隅で佇んでいる。
「すぅーー…………はぁーー…………」
これから死ぬという恐怖を、深呼吸ですっと鎮める。
そして俺は呪文を唱えた。
「《沈黙せよ・静寂せよ・汝は音無しき妖精》」
音声遮断魔術の黒魔【ノイズ・カット】によって靴音などを消して、エレンのもとへ歩いていく。
そしてエレンの背後まで来ると、俺は透化結界と音声遮断を解いた。
「エレン」
「…………え?」
こちらに振り向いたエレンは、見ればすぐにわかるほどに驚いていた。
……まぁ、そりゃ驚くよね。エレンからすれば訳がわからないだろうし。
「……どう、して……セラが関係者専用の此処に……って、待っ、て? 私、
「……
途端、エレンの顔が青ざめていく。
「ま、さか……セラも、記憶の継承を……? どうして……? 《ル=キル時計》の力で、そんなことできないはずなのに……い、いやっ! 違うのセラ! あっ、でも、これを言ったらルールに……ッ!」
「待って!」
混乱してしまい、訳がわからなくなっている様子のエレンの腕を、俺は咄嗟に掴んだ。
このままだと、話すらできずに逃げてしまう予感がしたからだ。
「ま、待ってッ! お願いセラ! 放してッ!」
「お願い、聞かせて。……エレンが何を抱えてるか、私には分からないよ。だから、教えて欲しいの。エレンがどうして、こんなことをしてるのか」
「…………セラ、だと?」
その時、聞き覚えのある声がした。
エレンの腕を掴みながらそちらを振り向くと、信じられないと言わんばかりの顔をしたグレンが居て。
……ごめん、待って? このタイミングでグレンに気づかれるのは想定外だよ?
「セラ……? 本当に、お前なのか……?」
「……グレン君、ごめん。今はそういう場合じゃ──」
「…………セラ?」
「えっ……セラって、グレン先生が言ってた、あのセラさん……? って、エレン? エレンなの!?」
あっ、リィエルとシスティーナまで!?
ガチ目に収拾つかなくなってきた……俺は一体どうすれば。
くっ、こうなればもうグレン達はガン無視でエレンと少しでも話を!
「エレン、私は──」
「セラ、駄目なの!
一旦エレンへ向き合おうとしたとき。
──ぼんっ!
鈍い衝撃が、俺の身体を揺らした。
「……ぁ……」
途端、周りのざわめきが消え去り、静寂が訪れる。
俺が衝撃を感じた胸元を見てみれば、そこには大穴が空いていた。
「そっ……か……これ……」
いつの間にか。
本当にいつの間にか、エレンの横には何かが居た。
半ば機械化されて拘束具に縛られた、翼を持つ少女。
「……ル=キル、か……ぁ」
身体が震え、力が入らなくなり、身体のバランスが保てなくなって俺はバタリと床へ倒れた。
……きゃああああああああああああああ──ッ!?
それか切欠となったのか、場の全体を悲鳴が支配してゆく。
「セラ……? セラ! なんで、私は……こんなことを、したかった訳じゃ……どうして……ッ!?」
エレンは頭を抱え蹲り、ひたすらどうしてと叫ぶ。
「セラ……おい、セラッ!」
ぼやけ始めた目を開くと、そこにはグレンが駆け寄ってきていた。
「……俺には何が起こってるのか分からねぇし、どうしてセラがここに居るのかも分からねぇよ……けど、辞めてくれよ……
「グレン、君……ごめん、ね……?」
「〜〜ッ! セ、ラぁ……!」
いつもの飄々とした雰囲気を壊し、涙でグチャグチャになった赤い顔のグレンは俺を抱きしめる。
俺は右手を頑張って上げて、グレンの頬に触れた。
「"どうか……夢を追う歩みを止めないで"」
それを聞いたグレンは、驚いた顔をする。
おそらく、直感とかで気づいたのだろう。それが、セラ=シルヴァースの
「…………ね?」
「……ああ、分かった。ありがとう、セラ……」
それだけ言い切ると、グレンは泣き顔で、情けなさそうで、それでも無理をした笑顔をしていた。
……これから死ぬというのに、グレンのお陰でどこか安心感がある気がする。
どうしてだろう? 巻き戻るって、分かってるからかな?
自分でもよくわからないけど、何故か俺は嬉しかった。
そんな気分のまま、俺は目を閉じて。
そして。
そして──
そして────
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
──これが、今回の
そして、再び
※ティアの想像では、心臓ぶち抜かれたぐらいにグレンに気づかれると思ってました。