リィエル・レプリカと転生日誌   作:氷月ユキナ

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エレンの覚悟

「エレン」

 

 4周目。

 

 魔力測定が終わり帰り道を歩いていたエレンの前に立ちふさがったのは、セラを名乗っている俺だった。

 

「…………セラ。あの……ごめん、あんなことになっちゃって。覚えてる、んだよね?」

「……そうだね。今回で巻き戻るのは3回目かな?」

「やっぱり……でも、なんでセラも記憶を継承してるの?」

「それは私にも分からないなぁ」

 

 困ったものだと言いたげな顔で、俺は横に首を振る。

 

 転生者だからとかは思いつくけど、実証する方法がないんだよね……。

 

「……まずは、座ろうか。あそこにベンチがあるしね」

「あ……うん」

 

 気まずそうな顔をしたエレンをベンチに座らせて、俺もその隣に座った。

 

「それで、聞かせてくれる? エレンが、どうしてこんなことをしてるのか」

「それ、は……」

「……なるほどね。言いたくないんじゃなくて、そもそも言えないの?」

「!?」

 

 エレンは息を呑んだ。

 

「前回、私が死ぬ前に『その行動は完全にアウト』って言ってたよね。もしかして、何らかのルールに接触すると、あの不気味な女の子が出てくるんでしょ。もしこれが合ってるなら、エレンが私に説明できないのもルールに触れちゃうから……ってところかな」

 

 凄い、と。エレンは心から感じていただろう。

 

 なにせ微笑みを浮かべている俺は、この短時間と少ない情報から、正解を導き出した……ということになるからね。

 

 本当は原作知識なんだけど……言ってもややこしくなるだけだ。

 

「ふふ、これでも頭はいい方だからね」

「そうは見えないけど……」

「ぐふっ!?」

 

 いきなりエレンに精神攻撃されるとは思わなかった……!

 

 ……いや、待て。今の俺はセラの姿をしている。

 

 つまり、頭が悪そうに見えるのはセラということになったりしない……?

 

 え? しない? そっか……。

 

()()()()()この現象を起こしてるのかは聞かない。けど、()()()()この現象を起こしてるのか、聞かせてくれない? エレンのことが知りたいんだ」

「セラ……うん、分かった」

 

 覚悟を決めるようにエレンは深呼吸をして、一拍おいて理由を話し始めた。

 

「……まだ、私の優しい父のグラハムが存命で、ナルシストだけど頼もしい兄のレオスもいた頃の話だよ。たまの休暇で、父さんの友人のレナードさんに連れられて、娘のシスティ……システィーナが遊びに来てたの。思い返せば、システィはその頃から本当に凄かった。凡人の私とは違うシスティに、私はずっと憧れてたんだ。システィはレオス兄さんと仲が良くて、私はオマケみたいなものだったんだけどね……」

 

 自虐のように笑うエレンの話を、俺は真剣に聞いていた。

 

「……羨ましかったんだね、システィーナさんのこと」

「そうなのかな……うん、そうかも。システィみたいになれたらなって、ずっと思ってたから。父さんが死んで、レオス兄さんも事故で亡くなってからは、その気持ちも強くなってた。……システィみたいになりたいって」

「だから、こんなことを起こしてるんだね。あの選抜会でシスティーナさんに勝ちたい……っていうのが、エレンの根幹かな」

「うん。これが理由だよ、セラ。……ごめんなさい、こんなことを起こして」

「謝らないでよ。……そうしてまで、エレンには叶えたいものがあった。それだけだよ」

「セラ……」

 

 するとエレンは、何故か俺の横にくっついて座った。

 

「ありがとう、セラ。少し楽になったかも。……叶えたいんだ、絶対に。この気持ちがおかしかったとしても」

「おかしくなんかないよ」

 

 俺はエレンの言葉を否定して、左手でほわりと頭を撫でる。

 

「私はね、誰かみたいになりたいっていうのは悪いことじゃないと思うんだ。だから私はエレンを応援するよ。……だけど、これは違う」

「……え?」

 

 エレンの気持ちはわかる。

 

 だが、それでも間違っていることを指摘しなければいけない。

 

「エレン、よく聞いて。この一週間を繰り返したとしても、エレンはシスティーナさんに勝てない」

「な……ん、で……なんで、そんなこと言うの!? セラなら、わかってくれるって……ッ!」

 

 立ち上がって怒るエレンに、俺は諭すように言葉を続ける。

 

「いい? エレンがいくら努力をしても、天才のシスティーナさんも努力してたら勝てる訳がない。……現実は、そんなに簡単じゃないよ。エレンとシスティーナさんじゃ、器の大きさが違う」

「やめて……やめてよ……ッ! 私はシスティみたいになりたくて……ッ! でも、それなら、私はどうすればいいの……?」

 

 ついに怒りを通り越して泣きそうになったエレンを、俺は抱きしめた。

 

()()()()()()()()()()()()()()

「……え……?」

「確かに、エレンだけじゃ無理だよ。だけど、エレンは独りじゃないでしょ? ……エレンには、私が居るよ」

「セラ……」

「私が、エレンを強くしてあげる。メイン・ウィザードにしてあげる。……システィーナさんみたいな、強さにしてあげる。どう、かな?」

 

 俺がそう提案すると、エレンも俺を抱きしめてきた。

 

 ……ちょ、力強い! 痛いよ!

 

「……ッ! セラ……ありがとう……ッ!」

「その言葉は、エレンがメイン・ウィザードになったときに聞きたいな」

「あ……ごめん、セラ」

「大丈夫。……絶対に、エレンをメイン・ウィザードにする。だから、そのときにまた言って」

「うん……分かった。私の全て、セラに預けるよ」

「任せて。私の全てを賭けて、エレンを勝たせてあげるから」

 

 ……さて、どうやってエレンを鍛えるか考えないとね。

 

 前周で俺が死ぬときに見せてくれたエレンの絶望顔を思い出して笑わないように注意しながら、エレンを強くする方法を考えだした。




凡人のエレンを大天才のシスティーナ並みにまで仕上げるとかいう無理ゲー。
そしてセラ(ティア)に依存していってる気がするエレンでした。
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