リィエル・レプリカと転生日誌   作:氷月ユキナ

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拒絶

 ……ああ、また負けた。

 

 ル=キルに殺された俺は、自嘲するように心の中でぼやいた。

 

 ……あれから、俺とエレンは何回も時を繰り返した。

 

 エレンを出来る限り鍛えて、ループの終わりにゲイソンに挑み殺される。

 

 それを、繰り返した。

 

 一度、原作とは違って他人に情報を話してはダメだというルールが無いという僅かな可能性に掛けてジャティスに助けを求めたが、すぐにル=キルによって殺されてしまった。

 

 そのループのジャティスは、次のループの自分を頼れという遺言を残したが、他人に情報を渡したらルールに接触するということが分かった時点で不可能なのは分かり切っている。

 

 今回の件では、俺はジャティスを頼ることはできない。

 

 だから、この件は俺一人で、何とかするしかない。

 

 そう思って必死に考えてきたが、終わりが見えなかった。

 

 エレンが確実に強くなっているが、それも亀のような速さだ。

 

 翼を持つシスティーナが飛んでいき、至った場所と同じところまで昇ることを考えれば、何千回も繰り返さなければならない。

 

 幸いゲイソンに関しては、戦いになっている。

 

 ……少し話は逸れるが、何度目かのループで、ゲイソンとの戦闘中にこう問われた。

 

 『どうして自分を害することを、ルール違反にしていないのか』と。

 

 その答えは単純だった。ただ、自分に歯向かう相手を圧倒的な力でねじ伏せて悦を感じたいだけらしい。

 

 クソとしか言えない理由だが、そのお陰でマトモな戦いになっているので複雑な気持ちだ。

 

 だが……それでも、ル=キルを倒せるビジョンが思い浮かばない。

 

 "滅びの風"による概念的破壊が強すぎるのだ。

 

 そうして、何回も時を繰り返しても何もできそうにない俺は、ゴールが無い迷路に迷い込み、閉じ込められたような気持ちになっていた。

 

 

■□■

 

 

 ────。

 

 ────。……

 

 

「──ィ──ア……ほら……起き……」

 

 ………………。

 

「──ティア? ほら、起きなよ……もう朝だよ? 今日はグレンの──」

「黙れ」

 

 側によってきて、身体を揺すっていたジャティスの胸ぐらを掴み、俺は睨む。

 

「……ぁ」

 

 数巡後に自分が何をしてしまったかということに、ようやく理解が追いつき、愕然とした。

 

 そんな俺の目には、いつも飄々としているジャティスにしては珍しく、困惑している様子が写っていた。

 

「……ま、まって。ちがう、ちがうの……あ、ぁれ……? おれ、なに、やって……? い、いや……っ、嫌わないで……」

 

 自分でも何を言っているのかがよく分からないまま、それでも何か言わなければと必死に口を動かす。

 

 ここでジャティスとの関係に傷がつくのは今後を考えると勿体無い。

 

 ……いや、本音を言ってしまえば、そんなどうでもいいこと以前に単純に嫌なのだ。

 

 この世界に転生を果たして、初めて優しくしてくれた相手との関係が壊れてしまうことが。

 

「だ、だからっ」

 

 明らかに文章として成り立っていない言葉を発していた俺を、ジャティスは自分の元へ引き寄せる。

 

 数秒経って、そこでようやく俺は、ジャティスに抱きしめられていると気づいた。

 

「……え……?」

「……正直に言ってしまうと、ティアがどうしてそこまで追い詰められているのかが僕にはさっぱり分からない。少なくとも昨日までは君は普通だったし、僕の正義の女神(レディ・ジャスティス)を以てしても、全く"読めない"。……だが、それでも君が追い詰められていることは分かった」

「どう、して……」

「その酷い顔を見れば、誰だってわかるに決まっているだろう? ……ほら、ひとまず深呼吸、深呼吸」

 

 ジャティスに言われた通りに、息を思い切り吸って、ゆっくりと吐く。

 

 荒ぶっていた心が静かになっていき、温もりが生まれる。

 

「さて……そろそろ、話してくれないかい? ティアが抱えている事情をね」

「…………」

 

 だが、その言葉で俺の感じていた温もりは冷めてしまった。

 

 ……話したくても、話せない。

 

 話せない理由を言うことすら、定められたルールは許してくれない。

 

 もし少しでも話してしまったら、ジャティスに待っているのは死あるのみだ。

 

「……おれ、は……」

 

 だから、俺は。

 

「……ごめん、ジャティス……話せない、よ……」

 

 ジャティスの為に、ジャティスの願いから背いた。

 

 死んでほしくないから、などという愉悦を心がけている者とは思えない想いによって、沈黙を肯定したのだ。

 

「そうか……」

 

 その言葉に哀しみが入っていると気づいた俺は、罪悪感で潰れそうになっていた。

 

 だが、それでも。

 

「……もう、行くから。すぐに、終わらせてくる」

「ティア?」

 

 ジャティスの腕からすり抜けて、俺は床に立ち上がった。

 

 そして、今の俺ができる精一杯の笑顔を見せて。

 

「だから──待ってて?」

 

 それだけ言い残して、俺は部屋から出た。

 

 ……ジャティスが、その言葉で。

 

 俺が出ていった扉を見つめながら、どれほどの決意をしたのかを知らずに。




ティア✕ジャティスの、お互いの執着心が作者の予想をとことん超えていく……
どうしてこうなったんだろうか……?
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