リィエル・レプリカと転生日誌   作:氷月ユキナ

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繰り返し

 今回のループでも、システィーナがメイン・ウィザードに選ばれた。

 

 エレンは既に連続起動(ラピッド・ファイア)疾風脚(シュトロム)ニ反響唱(ダブル・キャスト)術式介入(スペル・インタベンション)などの技術を習得済みだが、それでもシスティーナと比べれば練度も才能も遠く及ばない。

 

 それに加えて魔力量もシスティーナと比べて悲惨なくらいに少ないのだ。……負けるのも、当然と言えるだろう。

 

 なので予想していたことではあるのだが、それでもまた繰り返さなければいけないという事実が頭にのしかかる。

 

 それを無理矢理振り払い、俺は高い家の屋根から目標を遠くから目視していた。

 

 ……夜の暗い街を歩いている、ゲイソン=ル=クライトスを。

 

 炎の剣(フレイ・ヴード)に熱量を出来る限り収束させて、跳んだ。

 

「──いいいいぃぃいやぁぁあああああああッッ!」

 

 掛け声がもうセラではないが、そんなことはお構いなしに全力で奇襲を仕掛ける。

 

 そして未だに反応できていないゲイソンに向かった剣を振った……が。

 

「……え?」

 

 目の前にはいつの間にか冒涜的な姿のル=キルが立っており。

 

 炎の剣(フレイ・ヴード)の剣の刀身が、"滅びの風"によって滅ぼされていた。

 

「ッッ!」

 

 咄嗟に後ろに跳んで距離を取ろうとしたときに、足の肉がぶちまけられていることに俺は気がついた。

 

「ぐ……ぅ……ッ!」

 

 立っていられなくなった俺は地面に倒れ、そこでようやくゲイソンはこちらを向いた。

 

「……なんだ? 貴様は……この私に向かって送り出された暗殺者か何かか? ……まぁいい。この私を殺そうとしたこと、後悔させてやる」

 

 グシッ、と頭を強く踏まれて、頬が地面に押し付けられる。

 

 だが、足の痛みでそれどころでは無かった。

 

「ぅ……ぁ……あぁ……ッッ!」

「クハハハッ! 痛いか? 痛いだろうなぁ!? バカめ、クライトス家のゲイソン=ル=クライトスを殺そうなどと思った罰だ、この女が! クライトスの栄光に敗れ、惨めに無様に死んでいけ! ふははははははははははははははは──ッ!」

 

 顔面を思い切り蹴り飛ばされて、俺の体が宙を舞った。

 

「──ぐ、ぇ……!」

 

 地面にぶつかり、衝撃がとてつもない痛みを生み出す。

 

 ゲイソンの声がぼやけて聞こえながらも、俺はその痛みで言葉を理解する余裕が無かった。

 

 ただ、もう俺は限界に近づいてきていた。

 

 何度も何度も繰り返して、殺される日々が。

 

 だから、俺は。

 

 何を血迷ったのか、思わず呟いてしまった。

 

「……………………助けて」

 

 一人で解決しなければと思っておきながらの他力本願。

 

 ここまで無様なことがあるだろうかと、俺は心の中で自嘲した。

 

「…………クッ、ハハハハハハハハッッ! 他人に助けを求めるか、とことんゴミクズだな貴様は!? だが、残念だったな……こんな夜中に、この道を通るのは私以外にはおらぬよ。だから、貴様を助けに来る者など」

「──()()()()()()()()()()()?」

 

 その声を認識した時には、俺の視界は先程とは違うものが映っていた。

 

「……貴様は」

「ジャティス=ロウファン。……ただの旅人さ」

 

 帽子を深く被り、数々の人工精霊(タルパ)に囲まれたジャティスは、片手でボロボロになったティアを抱きしめていた。

 

「《慈悲の天使よ・痛みを知らぬ静寂を与え給え・安らぎの中で終焉を迎えよ》……白魔【トランキル・ディスパス】」

 

 ジャティスが聞いたことのないの呪文を唱えると、俺に訴えていた痛みがスッキリと消え去った。

 

「……これは」

「怪我をなくしたわけじゃない、神経を鎮静化させて、痛覚を完全に遮断しただけだ。……ティアがもうすぐ、死んでしまうことは変わらない」

 

 それだけ言い残すと、ジャティスは地面にそっと俺を寝かせると、ゲイソンに向き合った。

 

「……旅人だと? フン……貴様が何者であろうと、私には勝てぬぞ」

「知っているとも。僕がここに来るまでに、君のことをどれほど調べたと思っているんだい? 君の目的も、《ル=キル時計》の事も把握済みさ。……まあ、僕は時間が巻き戻っていることを認識することはできないんだけど」

「そこまで分かっていて、どうして私に立ち向かうのだ? いっておくが、墜ちたとはいえル=キルは元は神の眷属……貴様程度の塵芥、造作もなく殺せるぞ」

「そうだろうね……だが、それでも僕には"邪悪"を駆逐するという義務があるんだ……」

 

 ジャティスは両手を振るって疑似霊素粒子粉末(パラ・エテリオンパウダー)を空気中に散布し、人工精霊(タルパ)の天使たちを無数に生み出していく。

 

「……この私に、勝てるとでも?」

「僕の固有魔術(オリジナル)の計算によれば……()()()()()()()()()()()、0.0424%だ」

 

 だが、何がおかしいのか。

 

 ジャティスは心から、嗤っていた。

 

「ほう……そこまでわかっていても、女のために立ち向かうか。ならば……ここで死ねッ!」

「ああ、そうだね。()()()()()()……だけどティア、覚えておいてくれ」

 

 それは、ゲイソンへの言葉ではなく。

 

 俺に対する言葉であり。

 

「時間が戻ったら、僕を頼ってくれ。理由を説明しなくてもいい。根拠を持ってこなくてもいい。……ただ、次の僕に助けを求めてくれ。……それだけだ」

 

 それだけ言い切ると、ジャティスはゲイソンに向き直る。

 

 ゲイソンが下卑た表情を浮かべて、ル=キルが人工精霊(タルパ)とぶつかり合う。

 

 その光景を最後に、このループでの俺の命は、深い闇へと堕ちていった。

 

 

■□■

 

 

 ──何回だって、終わり(Ω)が訪れる。

 

 そしてまた、始まり(Α)へと回帰してゆく──

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