リィエル・レプリカと転生日誌 作:氷月ユキナ
……まったくもって、訳が分からねぇ。
それが俺、ティア=レイフォードが抱いた感情だった。
ただの村娘だと思ってたロザリアが実は黒幕のリッチで?
そのロザリアが『ロクでなし魔術講師と
ジャティスがいつの間にか村の中心に【メギドの火】を設置してて?
なんかよう分からんうちにロザリアが追い込まれてジャティスにボコボコにされて絶望して?
その絶望を愉悦してたら、何故か何もしていない俺に向かってロザリアが愛を囁いて?
しかも愉悦しようと顔を見たら幸せそうに微笑んでて、そのまま死んだ?
マジで訳わかんねぇ!(二回目)
「……ジャティス」
「どうしたんだい?」
「ロザリア……て、なんだったの?」
「随分と曖昧な質問だね……僕には、よく分からないなぁ」
演技がかったように話すジャティスは、本当のことを言っているのか悟らせない。
「……別に、何でもいいじゃないか。ロザリアは、こんなに幸せそうに逝ったんだしさ」
リッチという存在は死ねば、死体は残らない。
現に、ロザリアの身体もみるみると魔力の粒子となって空中に散っていっている。
「……そうだね、おれにはよくわからないけど」
……それから、ロザリアの身体の全てが消えるまで、俺は見届けていた。
そして、村……いや、もう【メギドの火】に燃やされて更地になったけど。そこを、俺たちは去ることになった。
「いまさらだけど、どうしてここに来た?」
「うん? "正義の魔法使い"として、悪を制す……それの何がおかしいんだい?」
「それでも、こんな村まで来るのはおかしい。リスクが大きすぎる。アルベルトにも捉えられたし。……もう一度、きく。どうして?」
「……これだよ」
観念したように、ジャティスは懐から何かを取り出して、俺に見せるように差し出した。
それは──
「……"金槌"と"釘"?」
「そう……《ヨトの槌》と《ヨトの釘》、といってね。これらには聖句が刻まれていて、神威の力を宿しているんだ……ロザリアが所持していたんだけど、僕の計画に必要でね」
「《ヨトの槌》と《ヨトの釘》……」
これは確か、原作でジャティスが聖エリサレス教会教皇庁聖堂騎士団の
……ロザリアが持ってたのか、こんなの。
「そんな神聖そうなもの、リッチのロザリアがもってたの……?」
素手で触ったりしたら浄化されちゃいそうなんだけど……。
「ハンカチとかで掴んでいたんじゃないかな?」
「絵面……」
死霊の王がハンカチで釘を持っているのは、なんというかシュールすぎないか?
……そういうものか。無理やり納得することにした。
「さて。次の目的地へと行くとしようか」
「次……?」
「そう──魔術祭典が行われる、自由都市ミラーノだ」
いよいよ、原作で言う15巻が始まる。
「魔術祭典だ……おそらく、グレンも来るだろうね」
「グレン……システィーナと、ルミアと、リィエルもいるかな?」
「来るはずさ……まぁ、リィエルは別行動だろうけど」
「そう……」
「……
ジャティスは、ちょっと悪い笑顔を浮かべて。
「エレン=クライトスも来る。……メイン・ウィザード として、ね。彼女、ちょっと読み辛いんだよねぇ……そこにグレンも居るんだから……僕も、気合を入れないとね」
「……ん」
「自由都市ミラーノ……そこで僕は、天の智慧研究会に最大の痛手を与えるつもりだよ」
そう語るジャティスの眼は、真剣だった。
「さぁ、そろそろ出発しよう」
そう言って、差し出された手。
それが俺には、囚われていた牢獄から解放してくれた時の光景と重なって見えた。
「んっ!」
ジャティスの手を、俺は思いっきり掴む。
……その手が離されることを心の何処かで怖っていることに、決して気づくことのないように。