され竜転生 〜竜に転生して勝ち組と思ったら、され竜の世界だった〜   作:ホイナン三兄弟

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されど罪人は竜と踊る22巻《去りゆきし君との帝国》発売記念小説

独自解釈多めです
ガユスとギギナは多分出てこないです


 第一話 され竜買ったら、隕石に打たれた

 第一話 され竜買ったら、隕石に打たれた

 

 俺の名前は世木須藤。二十九歳。しがないサラリーマンだ。特にこれといった生きがいもなく、死んだ様な目で仕事に行き、そして帰宅するだけの毎日だった、だが今日という日は、二千二十二年十二月二十日という日だけは違っていた。

 

 俺は仕事帰り、本屋に寄り一冊の本を購入した。

 買った本のタイトル《されど罪人は竜と踊る 二十二巻 去りゆきし君との帝国》だった。

 この《されど罪人は竜と踊る》通称《され竜》という本は、浅井ラボ先生の代表作だ。

 学生時代俺はこの本にハマり、何度も読み返すほど好きだった。だが二十一巻を最後に長く新刊が発売されず、刊行が止まっていた。

 

 しかしついに今日、二千二十二年十二月二十日に最新刊である二十二巻が発売されたのだ。

 これには俺もテンションが上がり、仕事終わりに本屋に直行して本を購入した。あとは家に帰って本を貪り読むだけだった。

 

 スキップしたい気持ちで街を歩いていると、街ゆく人々が空を見上げていた。中には携帯を掲げて撮影する者もいる。

 何かあるのかと俺も見上げると、空に赤い線が引かれていた。一瞬何かわからなかったが、空に赤く光る何かが、飛んでいるのがわかる。

 

「なんだあれ?」

 つい独り言が口から溢れた。周囲からは流れ星じゃないかというものもいる。

 流れ星という声を聞き、俺は空を見上げ驚いた。なかなか奇跡的な光景だ。おそらく俺の人生でこれほど長い流れ星をみることはもう二度とないだろう。

 

 俺もスマホで撮影しようかと思ったその時、落雷の如き轟音が空から鳴り響いた。

 慌てて見上げれば、空に光っていた流れ星がまっすぐこちらに向かってくる。

 

「え?」

 驚いた次の瞬間、俺の全身を衝撃と振動が襲った。

 俺は痛みに気を失い、次に意識を取り戻した時、街並みは一変していた。

 

 あちこちから火の手が上がり、人々の呻き声が聞こえてきた。街並みは破壊されまるで爆弾でも落ちたかの様だった。

 俺は体を動かそうとしたが、体は全く動かなかった。目だけをなんとか動かして周囲を見ると、地面には大きな穴が空いていた。

 

 最後に見た光景を思い起こせば、原因はあの流れ星だろう。あれは流れ星などではなく、隕石だったのだ。

 まさか隕石に当たるとは、信じられない不運だ。《され竜》の主人公ガユスよりも不運かもしれない。

 ガユスに似ていると思って少し笑えてきたが、くだらないことを考えている場合ではなかった。なんとかして助けを呼ばなければいけない。だが声が出ない。今の自分の体がどうなっているのか調べようとした時、自分の胸に大きなガラスが突き立っているのが見えてしまった。

 

 明らかな致命傷に、俺は悲鳴をあげそうになったが、声は出ずに代わりに血が吹き出た。

 俺は死ぬのか?

 死の予感が俺を支配した。胸と口からは血が吹き出して止まらない。体からは急速に温度が失われていき、視界がぼやけてくる。

 

 まさか、隕石に打たれて死ぬなんて……。

 俺は自分のありえない確率の死が信じられなかった。

 霞んでいく視界の先に、一冊の本が見えた。青い背表紙の文庫本は、先ほど俺が買った《されど罪人は竜と踊る》だった。

 

 死ぬならせめて、本を読み終えてから死にたかった……。

 最後にそう思った瞬間、俺の意識は途絶えた。

 

 

 次に意識を取り戻した時、俺は真っ暗な部屋の中にいた。

 ここはどこだ? 俺は隕石に打たれて死んだのではなかった?

 俺は声を出そうとしたが、鳥の鳴き声のような変な声しか出なかった。

 

 訳が分からなかった。だが体に痛みはない。もしかしたらあの後救助がすぐにやってきて、俺は奇跡的に助かったのかもしれない。そして傷が治っても意識が戻らず、ようやく今さっき目覚めたのかもしれない。だとすると声が出ないのも頷ける。

 

 助かったことはうれしかったが、真っ暗なのは不安だった。

 俺は起き上がり、明かりを探そうとした。だが上体を起こした俺の頭が、固い何かにぶつかった。

 

 何に当たったのかわからず、俺は手を伸ばし周囲を探ってみる。すると手が固く冷たい壁のようなものに触れた。手を四方に伸ばしてみるが、壁は途切れることなくアーチを描いていた。

 

 訳が分からないが、俺は球状の何かに閉じ込められていた。

 暗闇に加え、閉じ込められているという状況にはパニックになった。

 誰か助けてと叫んだが、俺の声は枯れきっていて言葉にならない。

 

 俺はなんとかこの場所から脱出すべく、俺を閉じ込めている場所を調べた。どこかに扉や取手のようなものがあるはずだと、出入り口を探した。だが全周囲を隈なく探しても、出入り口にあたるようなものはどこにもなかった。

 

 まさか俺を閉じ込めたあと、出入り口を埋めて固めたのか?

 出口がない事態に俺は恐怖した。そして拳を固め、俺を閉じ込める壁を殴った。

 拳が跳ね返されることを予想したたが、意外にも手応えがあった。

 

 周囲を覆う壁は石にように硬いが、思ったよりも薄いらしい。なんというか割れそうだった。

 俺は歓喜した。そして全力で壁を殴った。とにかく、ほんのわずかでもいいから割れてくれと願いを込めて壁を殴る。すると願いが通じたのか、目の前の壁に一筋の亀裂が走った。亀裂からは光が差し込み、外が光で溢れていることがわかる。

 

 俺は光明に勇気付けられ、とにかく壁を殴った。すると壁の一部が欠け、穴となる。俺は穴の周囲をとにかく殴り続けると、ようやく自分の体が出られるだけの穴が空いた。

 

 俺は穴に体を捩じ込ませ、這い出るように外に出た。

 出られた!

 解放された安心感から、その場にへたり込みそうになったその時、巨大な何かが俺を覗き込んだ。

 

 本能が危機を感じ取り、俺は上を見上げた。するとそこには、あまりにも巨大すぎる生物がいた。

 大きな口に長い鼻、二つの瞳の瞳孔は縦に割れ、頭には王冠のようなツノが生えている。首は蛇のように長く、しかし胴体は太く大きい。その全身は黄色い鱗で覆われ、金属のような光沢を放っていた。

 

 竜!

 その生物の姿は、ゲームやファンタジー小説で語られる竜の姿そのものだった。

 

 あまりにも大きく、あまりにも圧倒的な存在感。

 ちっぽけな自分など、どう足掻いても勝てないと身体中の細胞が感じていた。

 俺は恐怖に身がすくみ動けないでいると、目の前に立つ竜が口を開く。

 

『産まれた! 産まれたわ!』

 恐怖に硬直する俺の耳に、竜が奇妙な声で鳴く。これまで聞いた、どの生物とも違う鳴き声だった。しかし初めて聞くその鳴き声の意味を、俺はなぜか理解できた。

 

『ねぇ、あなた。産まれたわよ』

 黄色い鱗の竜が首を動かし、視線を上げて俺の左を見る。俺は慌てて視線の先を追うと、そこにも一頭の竜がいた。こちらは赤い鱗を持つ竜だった。ただし目の前にいる竜より一回り、いや二回りは小さい。だがそれでも巨大な竜だった。

 

『ああ、見えているよ』

 赤い竜が、縦に割れた瞳孔で俺を覗きこむ。

 俺は巨大な竜に挟まれていることに気づき、後ろに一歩後退した。巨大な竜に挟まれていて逃げ場はほとんどない。唯一隠れる場所と言えば、先ほどまで自分が閉じ込められていた所だけだ。

 

 隠れてどうなるという話だが、巨大な竜の前で身を晒していることは耐えられなかった。

 さらに二歩後退し、俺はタイミングを見計らい後ろに振り返り、先ほどまで俺を閉じ込めていた場所に逃げ込もうとした。だが踵を返したその瞬間、俺の足は止まった。

 

 え? 卵?

 

 俺の背後にあったのは、乳白色の巨大な卵だった。石膏の様な卵殻にはヒビが入り、穴が空いていた。先ほど俺が出てきた穴だ。そして卵の一部には金属の様なものが付着し、銀色の光を反射していた。

 

 え? ええ?

 

 驚く俺の顔が、鏡の様に光沢のある金属に写りこむ。だがそこにあったのは、俺の顔ではなかった。

 

 突き出た口には牙が並び、瞳孔は爬虫類の様に縦に割れ、体は黄色い鱗で覆われている。

 俺は慌てて自分の体を見下ろせば、自分の手には体同様鱗で覆われ、鋭い爪で覆われていた。

 

『鱗から見るに雷竜だな。君に似て綺麗な鱗だ』

『でも顔立ちはあなたに似ているわよ』

 驚く俺の背後で、赤い竜と黄色い竜が話す。

 

『さぁ、私の坊や。もっとよく顔を見せて、私があなたのお母さんよ』

 黄色い竜がゆっくりと顔を下げて俺に近づける。

 

『私がお前のお父さんだぞ』

 赤い竜も大きな顔を近づける。

 二頭の竜の言葉を聞き、俺はようやく自分の置かれた状況を理解した。

 俺は竜になっていた。

 

 

 




基本週末頃に更新しようと思っています
土曜になるか日曜になるかは未定
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