され竜転生 〜竜に転生して勝ち組と思ったら、され竜の世界だった〜   作:ホイナン三兄弟

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 第二話 竜に転生して無双できると思ったら、され竜の世界だった

 第二話 竜に転生して無双できると思ったら、され竜の世界だった

 

 俺は目を開けると、そこは洞窟の様な場所だった。

 岩肌は高熱で溶けたのかガラス化しており、ツルツルとした光沢を放っている。一方俺の周囲には、やわらかい羽毛が敷き詰められており、俺を優しく包み込んでいた。

 

 周囲を見回すと、洞窟の入り口が見えた。入り口からは赤い火が差し込み、ゆっくりと日が沈んでいるのがわかる。

 最後に見た時は、陽の光はまだ高かった。どうやら数時間ほど眠っていたらしい。

 

 俺は小さくため息をついた。

 竜となって半日が経過した。

 

 どうやらこれは夢ではないらしい。一度寝て起きても覚めないのだから、もう受け入れるしかない。

 おそらくこれは異世界転生というやつだろう。まぁ、隕石に打たれるという、どう考えてもありえない死に方をしたのだから、異世界転生なんていうありえない状況もありえるのだろう。

 

 俺は目の前の現実を受け入れることにした。

 元の世界に戻ろうにも、俺の体は死んでしまっている。転生した以上、この状況を受け入れておまけの人生を楽しむべきだろう。

 

 それに竜としての人生は悪くないかもしれない。

 なにせ竜だ。大抵のゲームやファンタジーの世界において、竜は最強のモンスターとして描かれている。

 

 実際に俺の両親と思しき赤い竜と黄色い竜は、体が大きく畏怖すら抱くほどだ。その子供である俺も、同じぐらい大きくなれるのだろう。だとすると勝ち組確定。第二の人生はそれなりに楽しそうだった。

 俺が一人でニマニマと笑っていると、黄色い巨体が近づいてくる。我が母上様だ。

 

『あら、坊や、起きたのね』

 母上様は目を細めて俺を見る。初め見た時は怖かったが、こうしてみると美しい竜だ。そしてその所作から、俺に惜しみない愛情を注いでくれていることがわかる。

 

『お腹が空いたでしょ? さぁ、ご飯をお食べなさい』

 母上様が口を開くと、喉が蠕動し、口の奥から白い塊が逆流してくる。母上様は舌で白い物体を掬いあげると、俺に向けて差し出す。

 

 ドロドロの白い物体。見た目はゲロ。そして実際ゲロそのものだろう。

 これが俺の食事であり、実は眠る前にも食わされたものだった。

 

 正直見た目は最悪だが、これは食べなければいけないものだった。

 おそらくこれは竜にとってミルク的なものなのだろう。一部の鳥類は食べた食物の一部を消化吸収せずに、溜め込んで子供に与える習性がある。その食べ物には子供に必要な栄養素だけではなく、消化に必要な腸内細菌や免疫なども含まれている。このミルクを食べないと病気にかかりやすく、最悪死んでしまうこともある。

 

 例え見た目は悪くとも、食べる必要があった。

 首を伸ばして口をつけると、見た目は最悪だが味はそんなに悪くはない。目を瞑って食えば美味いとすら言えたかもしれなかった。

 

 とりあえず腹一杯食うと、母上様が俺の口元を大きな舌でぺろぺろと舐める。

 長く大きな舌が怖いが、愛情あふれる行動にちょっと嬉しくなる。

 母上様が俺を舐め回していると、大きな足音が響いてくる。赤い巨体を揺らしてやってくるのは、父上様だった。

 

『あら、あなた。お帰りなさい』

『うん、ただいま。おっ、子供は起きたかい?』

 父上様は俺に顔を向けると、舌をのばして俺の顔を舐める。しかし加減がなっておらず、舐める力が強すぎた。舌に押しつぶされて俺は床に押し付けられる。

 

『ちょっと! もっと優しく』

『ああ、すまない。加減がわからなくて』

 父上様の手荒な愛撫を母上様が止める。

 

『まったくもう』

『すまない。五百年目にして、初めての子供だ。許してくれ』

 父上様が頭を下げる。

 

『子供のことを何も知らないんだから。まぁいいわ。私が教えてあげます。私は八百年の間に三回子育てをして、これが四回目ですからね』

『うん、頼むよ』

 頭を下げる父上様に、母上様が首を伸ばして顔を父上様の頬に擦り付ける。おそらく親愛の情を示す行為だろう。父上様も嬉しそうにして、母上様の顔にひたいを擦り付ける。

 

 子供の頭上でイチャつく両親を見ながら、俺は喜びに震えた。

 両親の会話を整理すれば、父上様は五百歳。そして母上様はなんと八百歳ということになる。

 つまりこの世界の竜は千年近い寿命を持っているということだ。しかもそれだけ長生きできるということは、他に天敵と呼べる生物がおらず、竜が生態系の頂点に君臨していることお意味している。

 

 これは勝ったな。第二の人生は無双間違いなしだ。

 俺はイチャつく両親の下でニヤリと笑った。

 

『さて、この子の名前をどうしようか?』

 父上様が俺を見る。どうやらまだ名前は決まっていないらしい。

『それも大事だけれどあなた、白銀龍様にはお会いできた?』

『ああ、ギ・ナランハ様には御目通りが叶った。我が子の誕生を告げることができたよ』

 睦み合う両親の言葉を聞き、笑う俺の顔は凍りついた。

 

 白銀龍。そしてギ・ナランハ。

 俺はその言葉に聞き覚えがあった。俺の背筋に冷たい悪寒が走った。

 

 いや、まさかそんなことは……しかし、もしかして?

 俺が頭の中で嫌な予想を打ち消していると、頭上で両親が話を続ける。

 

『我ら賢龍派の竜として、子供の誕生をお伝えできることほどの幸せはないわね』

『ああ、まったくだ。そうそう、そこでも良い話を聞いたのだが、白銀龍様の直系の子孫が近々誕生するそうだ』

『まぁ、白銀龍様の血を引く竜と、うちの子が同世代となるだなんて、光栄だわ』

『うん。すでに名前も決まっているらしい』

『あら、なんていうの?』

『エニンギルゥドという名前だそうだ』

 頭上で交わされる両親の会話を聞き、俺は愕然とした。

 

 白銀龍にギ・ナランハ。そして賢龍派にエニンギルゥド。

 これだけ揃えばもう間違いない。

 ここは《されど罪人は竜と踊る》の世界に間違いなかった。

 

 

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