され竜転生 〜竜に転生して勝ち組と思ったら、され竜の世界だった〜   作:ホイナン三兄弟

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 第二十六話 ひたむきな思考

 第二十六話 ひたむきな思考

 

 試しの谷から戻り三十日ほどが過ぎた。俺は自分の巣穴の前に座りながら、目を瞑っていた。

 寝ているわけではない。強くなるための考え事をしていた。

 

 考えることは重要だった。修行といえば、がむしゃらに体をいじめることを想像しがちだ。だが思考なき努力に意味はない。得られるのは自分はやったと言う満足感だけであり、本当の努力ではない。

 

 修行の第一段階は、まず自分の至らなさを認識する所から始めなければならない。

 自分の駄目な部分を洗い出し、未熟さを認めて向き合うこと。これがまず大事だった。

 

 次の第二段階は、認めた未熟さを改善する方法を模索することだ。

 どのような課題をこなせば、今の未熟さを克服できるか。これを考えて考えて考え抜く。

 実際に修行に入るのは第三段階であり、修行の完遂が第四段階だ。

 ひたむきな努力の前に、ひたむきな思考が必要となるのだ。

 

『よし!』

 

 修行の方針を固めた俺は、立ち上がり軽く身構えた。そして目の前に、咒式の組成式を生み出す。

 青い光を放つ組成式が空中に浮かび上がると、組成式から炎の矢が尾を引いて飛び出る。化学錬成系第一階位、黒色火薬の花火を生み出す〈噴矢〉の咒式だ。

 

 放たれた炎の矢は大きく弧を描き、放った俺に元に戻ってくる。俺は咒式の軌道を見切り、最小限の動きで回避した。

 顔の横を、火花を散らす矢が掠めるように飛んでいく。

 

『うん』

 炎の矢を回避した俺は、頷いて座り直した。

 修行法としてはやはりこれが正解だろう。向かってくる攻撃を超視力で見切り、最小限の動きで回避する。あるいは他の竜と模擬戦を繰り返し、体術を鍛える。

 

 これが今の俺に求められている修行法だった。しかし自分だけでは修行にも限界がある。ともに修行をする仲間がいてくれれば、効率的な修行が出来ると思われた。

 

 もう少しすればエニンギルゥドが縄張り探しのために、ここに来る予定だ。首尾よく縄張りを手に入れることができれば、腰を落ち着けて彼と修行が出来るだろう。しかしその縄張りなのだが、ちょっと話が変わってきていた。エニンギルゥドが来れば、その辺りのことを話さなければならない。

 

 さてどう説明したものか。俺は巣穴の前に座り込み、目を瞑って思案した。そうこうしていると顔に影がさし、光が遮られたのがわかった。

 目を開けて見上げれば、翼のある黒龍が太陽を背にしていた。エニンギルゥドだ

 

『ヨギ、約束通りきたぞ』

 エニンギルゥドは咒式で作った翼を折りたたみ着地する。

『おお、よく来たな。まぁゆっくりしてくれ』

 俺が座るように促したが、エニンギルゥドは座らず俺の巣穴を覗き込んだ。

 

『これが君の巣穴か? 床や壁を整形しているんだな』

『ああ、咒式の練習にやってみた。正直住み心地は良くないから、元に戻そうかと思っている』

『へぇ』

 エニンギルゥドは物珍しそうに巣穴をのぞいていた。エニンギルゥドは俺の巣穴を見てみたいようだが、話が終わった後にしたい。

 

『まぁ座ってくれ。実は縄張りの件で、話しておきたいことがあってな』

『ん? どこか目星をつけてくれたのか?』

『ああ、それなんだが……。あっ、その前にニドヴォルクはいるのか?』

 俺は周囲を見回した。ニドヴォルクの姿は見えない。だが彼女はエニンギルゥドの護衛を任されている。エニンギルゥドがいる限りニドヴォルクもいるはずだ。

 

『ああ、どこかにいるはずだ。どこにいるかは見当もつかないが』

 エニンギルゥドであっても、ニドヴォルクがどこで護衛しているかは知らないらしい。

 

『おーい、ニドヴォルク! いるか? いたら姿を見せてくれ。君にも聞いてもらいたい話があるんだ!』

 俺は大声で叫んだ。声が空に広がっていく、だがニドヴォルクの姿は見えない。

 

『何か用か?』

 ニドヴォルクの声が返される。その声は近く、俺の背後から聞こえてきた。俺とエニンギルゥドは慌てて振り返るが、そこには誰の姿もない。

 

 俺とエニンギルゥドは互いの目を見合わせる。だがその直後、何もない空間に紫電が走った。そして紗幕を外したかのように、ニドヴォルクの姿が突如現れる。

 

 突然の出現に俺たちは驚愕した。

 おそらく電磁光学系第二階位〈光陰身〉の咒式による光学迷彩だろう。さらに重力咒式で自身の体重を相殺して足音を消し、生体系咒式で体臭も消し去っていたのだ。

 

 原理は理解できるが、ここまで完全に気配を消すことができるとは思わなかった。

 ニドヴォルクは悪戯が成功したように笑うが、やっていることが高度すぎる。

 

『意外に早い再会となったな』

 ニドヴォルクが俺を見る。確かに、俺も次に会うのは一年後だと思っていた。

 

『うん。俺もこう言う形で会うとは思わなかった。それで話なんだが、君たちはムブロフスカという竜を知っているか? 俺の父上様の友なのだが』

『話をしたことはないが知っている。なんでも最近、白銀龍様から勅命を賜ったとか。この前、白銀龍様の元へと行くところを見た』

『私もその噂は聞き及んでいる。もちろんご命令の内容までは知らぬが』

 俺の問いにエニンギルゥドが答え、ニドヴォルクも頷く。

 

『らしいな、実はその話も少し関係していてな。数日前、そのムブロフスカが俺の元に訪ねてきたんだ』

 俺は二頭に対し、ムブロフスカと出会った話をした。

 

 




すみません、明日から数日程旅行に行ってきます
とりあえず数日分は予約しておきます
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