され竜転生 〜竜に転生して勝ち組と思ったら、され竜の世界だった〜   作:ホイナン三兄弟

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 第二十七話 ムブロフスカとの話

 第二十七話 ムブロフスカとの話

 

 俺の下にムブロフスカが尋ねてきたのは、試しの谷から戻って二十日ほどが過ぎた頃のことだった。

 その時俺は自分の巣穴の前で座り、どのような方法で修行すべきか思案に暮れていた。そこに地響きを立てて一頭の竜がやってきた。

 王冠のように幾つもの角が起立した、鈍色の鱗を持つムブロフスカだ。

 

『ヨギストラよ、元気にしていたか?』

『はい、なんとかやっております』

 落ち着いた声のムブロフスカに、俺は深々と頭を下げる。

 ムブロフスカは思慮深く、行動も落ち着いている。父上様と同世代だが、ずっと年上にすら見える。

 

『お前もそろそろ独り立ちの時期だが、どうするか決めておるのか?』

『はい。仲間のエニンギルゥドと共に、どこかで縄張りを探そうと考えています』

『そうか。私もお前ぐらいの歳の頃、ヨギルググや他の竜と共に小さな群れを作り、今の縄張りを手に入れた。この時期にできた友は、一生を通じた仲間となる。大事にせよ』

 ムブロフスカの言葉に、俺は力強く頷いて答える。

 

『ところでヨギストラよ、実は私は白銀龍様より、ある勅命を賜ってな』

 ムブロフスカは、命令の内容までは話さなかった。しかし俺には思い当たるものがあった。

 

 原作《されど罪人は竜と踊る》では、ムブロフスカは人類と竜との融和のために、竜の因子を持つ人間を生み出す事をしていた。ムブロフスカが白銀龍より賜ったとされる勅命は、おそらくこの一件に関わるものだろう。

 

 俺の中に迷いと苦しみが生まれた。

 

 ムブロフスカが行った人類と竜の融和。この果てにアナピヤという一人の少女が生まれる。そしてムブロフスカとアナピヤは、壮絶な運命の果てにその命を落とすこととなるのだ。

 

 一人の読者として、両者の死は胸に苦しくとても悲しかった。できればあのような悲劇は起こってほしくない。だが……。

 

『お役目、おめでとうございます』

 俺は感情を殺し、逆に祝辞を述べた。

 ムブロフスカを止めたいが、止めることはできない。

 

 まず事情を話しても信じれもらえない。頭がおかしくなったと思われるのがオチだ。そして仮に信じてもらえたとしても、やはりムブロフスカを止めることはできない。真実を知ってなお、ムブロフスカは行くだろう。

 

 白銀龍からの直々の命令とはそう言うこと。拒否はできないし、命令の果てに死ぬと言うのであれば、喜んで命を差し出すことが賢龍派の矜持である。

 

 今は止めても止められぬ。ならば笑顔で送り出すしかない。だがあの悲劇は何としてでも防ぎたかった。幸いまだアナピヤの悲劇が始まるまで何百年と時間がある。今は原作に介入すべきではない。力をためて時を待つしかなかった。

 

『うん、ありがとう』

 ムブロフスカも重々しく頷く。そこには与えられた役目を、命を賭しても成し遂げる覚悟があった。

 

『さて、お役目を賜ったからには、そのことに邁進せねばならぬ。おそらくお前と会うのも、これが最後になるだろう』

 ムブロフスカと会えなくなるのは残念だが、仕方のないことだった。これもお役目である。だがいつか原作の時間が近づいたころには、必ず会いに行き、アナピヤの悲劇を防ぐつもりだ。

 

『そうなると、私も自分の縄張りに帰ることはなくなる。そこでだ、お前に私の縄張りを譲りたいと思う』

『本当ですか?』

 俺は驚いた。だがそうなれば願ったり叶ったりだ。他の竜と争い、縄張りを奪うのは気が引けていたのだ。

 

『ああ。放っておけば、誰かにとられるだけだしな。お前が引き継いでくれるのであれば、私も安心して仕事に専念できる』

『それはありがとうございます』

『早まるな。譲りはするが、一つ条件がある』

『条件?』

『そうだ、お前に試練を与える。それを乗り越えることができれば、我が縄張りをお前に譲ろう』

 ムブロフスカは口を広げて笑った。

 

 




明日も投降します
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