され竜転生 〜竜に転生して勝ち組と思ったら、され竜の世界だった〜 作:ホイナン三兄弟
第二十八話 ムブロフスカの試練
俺はエニンギルゥドとニドヴォルクの前で、ムブロフスカとの会話を説明した。二頭はそこまでの間、口を挟まず黙ってきていてくれた。
『と言うことでだ、ムブロフスカの試練を乗り越えることができれば、縄張りが手に入る。どうだエニンギルゥド、挑戦してみるか?』
『それは構わないが、俺が一緒でもいいのか?』
『それはちゃんと確認してある。仲間のエニンギルゥドと行ってもいいかと尋ねたら許可された』
俺が答えるとエニンギルゥドが頷く。
『よし。ならやろう。それで、試練とは?』
『うん、それなんだが、ムブロフスカは俺の父上様と、さらに他の四頭の竜と共に今の縄張りを手に入れたそうだ。そこで二百年ほど共同生活し、その後、他の五頭はそれぞれの縄張りを手に入れるために旅立った。残ったムブロフスカがその縄張りを継承したそうだ』
俺はムブロフスカの縄張りの歴史を説明した。この部分が試練の根幹をなす。
『そして試練だが、その時縄張りを共にした他の竜に会いに行き、許可を得ること。それが試練だそうだ』
俺が試練の内容を説明すると、エニンギルゥドは頷いた。
『なるほど、許可を得る旅をしろと言うことか。まぁ全員の縄張りを継承するのだし、許可をもらいに行くのは妥当だな』
『うん、仲間の竜が住む座標は教えてもらっているので、場所は判明している。ただし、道中では飛行咒式の使用は禁止だ。歩いて行けとのことだ』
おそらく長く旅をすることも、試練の一つなのだろう。
『そして許可に関してだが、五頭の竜のうち一頭は俺の父上様だから、こちらはすでに許可は得ている。残る四頭だが、彼らの許可を得るためには、何かしらの課題があるとのことだ。それは行ってみなければわからない』
俺の説明を聞きエニンギルゥドはうんうんと頷く。
『もちろん旅の途中で直面する問題や、出された課題は俺たちの力だけで解決しなければならない。つまり……』
俺は傍で話を聞くニドヴォルクに視線を向けた。彼女はエニンギルゥドの護衛であるため、この旅にも同道することとなる。しかし彼女は部外者だ。
『私が手を貸すのも禁止。と言うことか』
ニドヴォルクが呟き、俺は顎を引いた。
ムブロフスカの試練に挑戦しない以上、彼女の手を借りては行けないだろう。
『なるほど、私を呼んだ理由は理解した。そして試練に関してだが、エニンギルゥド様がヨギストラと共に試練に挑戦するのは構わない。私も手出しはしない』
ニドヴォルクは頷きながら言葉を続けた。
『だが私はエニンギルゥド様の護衛だ。エニンギルゥド様に命の危機があった場合、全てを優先してお助けする。また賢龍派の竜として、嘘偽りを述べるわけにもいかん。手助けした場合は試練失敗となるが、それでもいいか?』
続くニドヴォルクの言葉に、今度は俺たちが頷く。
保護者同伴の旅となったが、これはこれで悪くない。俺たちを監視する中立な審判ができたと思おう。
『よし、これで話は決まりだな』
『それでヨギ、いつ出発する?』
『今からと言いたいところだが、今日はゆっくりして明日からにしよう。目的地は四つもあるんだ。どこから攻略するか、一晩じっくり相談しようじゃないか』
俺はエニンギルゥドを自分の巣穴へと招こうとする。すると背後からニドヴォルクが声をかける。
『盛り上がっているところ悪いがヨギストラよ。そなたの御母上は、ハレルストラ様であったな』
『そうだけど……なんで知っているんだ?』
まさかニドヴォルクの口から、母上様の名前が出るとは思わなかった。
『ハレルストラ様には昔お世話になったことがあってな、旅に出る前にご挨拶しておきたい。取り次いでもらえぬか?』
『ああ。いいけど……』
俺は頷き、ニドヴォルクとエニンギルゥドも連れて両親がいる巣穴へと案内する。しかし自分の母親を知り合いに紹介するのは、なんとも言えない気恥ずかしさがある。この辺りは人であっても竜であっても変わらないらしい。