され竜転生 〜竜に転生して勝ち組と思ったら、され竜の世界だった〜   作:ホイナン三兄弟

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 第三十二話 工夫

 第三十二話 工夫

 

 轟々と流れる大河の前で、俺はどうやって川を渡るか考え続けていた。

『おーい、どうした早く来ぬか』

『式を分けてやろうか?』

 対岸ではニドヴォルクとエニンギルゥドが囃し立てる。

 

 さてどうするか。

 

 まず水中を行くのは無しだ。エニンギルゥドが使用した、泡で体を包む咒式は組成式を見て覚えることはできた。だが使用するとなると、何日も研究しなければいけない。他にも水中を移動する方法はあるかもしれないが、俺には思いつかない。それに新たな咒式を構築している余裕もない。

 

 となると水面の上をいくしかない。しかし圧縮空気を噴射したりしては、飛行咒式とニドヴォルクが判定するだろう。水面の上をいくにしても、飛行咒式と判定されない咒式を使用せねばならなかった。

 

 得意系統の電磁系ならば多少の応用は可能だ。だが電磁系でどうやって川を渡るか……。

 

 最初に思い付いたのは、電磁気の力で浮遊する方法だ。自分の鱗を伝導体として、電磁気の力で浮遊する。そしてニドヴォルクのように水面を渡る。いい方法に思えたが、膨大な咒力が必要なため数十秒で力尽きることがすぐに判明してしまった。

 

『磁力を帯びた金属の足場を作って、その上を飛び跳ねていくか?』

 俺はつぶやきながら、新たな方法を模索した。

 

 次に思いついたのは、磁力を使う方法だ。自分の鱗を伝導体とするのは同じだが、足場に磁力を持たせた金属を生み出し、レールガンのように反発の力を借りて跳躍。飛距離を稼いで渡り切る方法だ。

 

 これならば電磁気力を生み出すのは一瞬でいい。さらに自分の跳躍もプラスしているので、電磁気の力で浮くよりも咒力の消耗を抑えられるはずだった。

 

 俺は脳内で検証してみた。だが、これでも、川の中ほどで咒力が尽きるという計算結果が出た。

 まだ足りない。

 

 俺の咒力量を考えれば、一瞬で渡れる方法でなければいけない。しかしレールガン方式は悪くない気がする。だが今考えた方法ではだめだ。この方法では咒力量の問題以外にも、足場を作り自分を瞬間的に磁化させ、さらに跳躍を続けて川を渡らねばならない。

 ぶつけ本番で試すにはやることが多すぎる。もっとシンプルに、単純で合理的な方法があるはずだ。

 

 考えろ、必ず答えはある。ただ答えをまだ見つけてないだけだ。

 

『おーい、助けに行こうか?』

 エニンギルゥドが対岸から声をかける。だがその時、俺の頭にひらめきが起きた。

 この方法ならばいけるかもしれない。俺は何度か頭の中で計算してみたが、計算結果では行けると出た。

 

『試したいことがある。ちょっとみていてくれ』

 俺は対岸にいるエニンギルゥドとニドヴォルクに声をかけると、首を返し川岸から離れた。

 川から距離をとった俺は、振り返って対岸にいる二頭を見る。これだけ距離があれば助走には十分だろう。計算も合っているはずだ。

 

『今から行く!』

 俺は対岸で待つ二頭に声をかけると、川に向かって走り出した。

 手足を動かし、ぐんぐんと加速していく。しかしただの脚力では速度には限界がある。そこで俺は組成式を生み出して咒式を使用した。

 青い組成式が発光を終えた直後、俺の体からは紫電が迸り走る速度が一気に加速した。

 

 俺が使用したのは、電磁電撃系第一階位〈電加〉の咒式だ。本来は槍や剣を加速するためのものだが、ここでは俺の鱗を伝導体とした。

 

 俺の出した答えはシンプル。レールガンのようにして川を渡るのではなく、レールガンそのものとなって自分を打ち出すことだった。

 

 竜の膨大な咒力で〈電加〉の咒式を連続発動、体が音速に近い速度まで加速していく。あまりの速度に足がもつれそうになったが、俺は必死に手足を動かして駆けた。そして川岸に到達すると同時に、地面を蹴って跳躍した。

 

 通常ではあり得ない速度により、俺の体は大きく飛び上がった。対岸にいるエニンギルゥドとニドヴォルクの目が、驚きに見開かれるのが見える。

 

 行ける!

 

 全て計算通りだった。放物線を描く俺の体は降下を開始していた。だがすでに川の半分を超えている。このままならニドヴォルクたちのすぐ後ろに着地するはずだ。

 俺は成功を確信した。だがその直後、俺は自分の間違いに気づいた。

 

 俺の計算は完璧だった。間違いなくニドヴォルクたちの背後にまで到達するだろう。しかし俺は着地や減速の方法を、まるで考えていなかった。

 

 ああ、まずい。

 

 俺は減速する手段を考えた。だが何かを思いつく前に地面が迫り、激突した。

 

 全身を地面に打ちつけた俺は、ひっくり返り夕焼けに染まる天を仰いでいた。

 俺の視界に、影のようなニドヴォルクの顔が入り込む。漆黒の顔はため息を吐いた。

 

『自分自身を電磁加速して、砲弾のように打ち出す。自身の脚力であるから跳躍と取れるし、飛行したとは言えぬ。だが何というか、もう少しこう、何とかならなかったのか?』

 不細工な着地に、ニドヴォルクが首を横に振る。

 

『自分の鱗を伝導体にして加速したんだから、同じ要領で減速や方向転換もできたのでは?』

 エニンギルゥドが、憎らしいほど明快な正解を導き出す。ああ、全くその通りだよ、天才っ!

 

『まぁいい、それより体は大丈夫か?』

 呆れながらもニドヴォルクが治療咒式を発動しようとしてくれたが、怪我には慣れているのでいらないと立ち上がった。

 

 

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